グループホームの充実ぶりは県内でも随一!
2001年に埼玉市と浦和市、与野市の3市が合併してできたさいたま市には、県内の他地域と比べ、種類面・費用面において選択肢が幅広いというメリットがあります。
老人ホームの絶対数が多いだけに、高額なところから低額で利用できるところまで千差万別。例えば夫婦で入居する場合では、入居一時金が数千万円、月額利用料が40万円を超えるところもあります。
もちろん、高額なところでは万全の医療サービスが用意されていたり、一人ひとりの健康状態に合わせた食事が提供されたりなど、値段相応の充実した生活が約束されています。
老人ホームの種類としては、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設という介護保険の施設サービスはもちろん、有料老人ホーム、グループホームに加え、昨今ではサービス付高齢者向け住宅も増えてきています。
ただし、有料老人ホームやグループホームは空き室のあるところも多いですが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設は常に入居待ち状態のところが多いというポイントも。特別養護老人ホームの入居待ちをしながら、有料老人ホームを利用しているという高齢者も数多くいるようです。
そうした状況を改善するために、さいたま市では「高齢者福祉事業計画」と「介護保険事業計画」が定められており、高齢者福祉施設の整備の促進を図っています。
高齢者とともに増加が予想される認知症患者の対応に注力しているのは市の政策としてだけでなく、民間でも認知症患者の受け入れを行っている有料老人ホームやグループホームが数多くあります。
2030年には約4人に1人が高齢者となる見込み
2024年の調査によると、さいたま市の総人口は134万3,507人で、2015年と比べて7万9,528人増加となっています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
総人口は全国の政令指定都市の中では平均的な数値ではありますが、人口増減数では福岡市、川崎市に次ぐ3番目に高い数値を示しており、さいたま市の人口の伸びの良さがうかがえます。
65歳以上の高齢者人口はその内の31万1,895人で、高齢化率は23.2%。他の指定都市と比べると高齢化率は低い数値を示してはいるものの年々増加しています。
これにはさいたま市の人口約5%を占める団塊の世代が、ちょうど65歳を超える年代を迎えたことが大きく影響。高齢化率は今後も増え続けると予測されており、2030年には25%にまで達し、約4人に1人が高齢者となる見込みです。
75歳以上の後期高齢化率も2024年には12%を超えており、今後10年ほどをかけて急激な伸びを見せ、15%にまで達すると見込まれています。
このように今後も高齢者の数が増え続けると見込まれている一方で、総人口に関しては2025年を境に減少傾向に転じるとの予測がされています。
まだまだ先の話ではありますが、さいたま市の総人口は今後30年をかけて10万人近く減少するとの見込みで、高齢化の進行と合わせて福祉サービスのさらなる充実が必要とされています。
特別養護老人ホームの施設不足が懸念されている
さいたま市の要介護認定者は2024年には約6万人。その内、要支援者数1万5,969人、要介護者数4万4,034人でした。
年々増加する高齢者数と同様、介護認定者数も増加傾向にあり、要介護者数が4万5,000人を超えるのも時間の問題です。
さいたま市の介護サービス利用者数は2024年時点で約2万4,729人。その内、65.4%を居宅サービス利用者が占めており、次いで施設サービス利用者が23.4%、地域密着型サービスの利用者が11.2%となっています。
また、今後どのような割合で介護サービスが利用されるかの見通しが発表されており、利用者数が一番多いと見込まれている居宅サービスの中では、訪問介護の利用回数が最も多くなるという予測です。
費用が安く済む特別養護老人ホームに利用者が集中するとの予測ですが、高齢者の増加に合わせて施設が不足することが懸念されています。
“自発的”に“継続”して参加してもらう介護予防を重視
さいたま市では支援が必要な高齢者の把握を進める「介護予防把握事業」、運動教室や介護に関する知識を広める介護予防予防教室などを中心とした「介護予防普及啓発事業」を軸に介護予防を図っています。
さらに、ボランティアの養成を図る「地域介護予防活動支援事業」や作業療法士・理学療法士ら専門家のアドバイスを提供する「地域リハビリテーション活動支援事業」も複合的に進め、より多角的な視点から高齢者の生活をサポートしています。
介護予防普及啓発事業の一環として行われている「すこやか運動教室」。これは65歳以上の高齢者を対象とし、身体の不調や転倒事故を予防するための運動教室で、市内33ヵ所の小学校や公園を開催場所として月1~2回ペースで市内各所にて開かれています。
区役所などで開かれる「健口教室」では食事の栄養バランスや口腔ケアについての知識を広め、認知症や肺炎などの予防を促進。健康教室は年度中に計3コース実施され、1コースごとに全3回で構成されています。
ここでは歯磨き方法や体操などの基本的な知識から高齢者向けの食事レシピまで、口内の健康を保つための予防方法を幅広く学べるのが特徴です。
さいたま市の介護予防事業では「自発性」と「継続性」に重きを置いており、高齢者に無理矢理強制するのではなく、あくまで自発的に継続して参加してもらうことが介護予防に繋がるとしています。
そうした自発性を促すために、高齢者が気軽に出向ける場所に通いの場を設置し、サロンや茶話会などレクリエーションを楽しむ場においても軽い体操を取り入れることで高齢者の予防意識の向上を図っています。
シニアサポートセンターや在宅介護支援センターの数が充実
さいたま市では団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に差し掛かる2025年を目標に、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に支援する地域包括ケアシステムの構築を進めています。
地域包括ケアシステムの構築において重要なポイントは地域の特性を活かしたシステムづくり。地域包括ケアシステムの中枢を担う施設として、さいたま市ではシニアサポートセンターを市内27ヵ所に設置しています。
介護や医療、福祉に関する総合相談や将来的に介護が必要となる要支援者に向けた介護予防ケアプランの作成し、高齢者虐待の早期発見や消費者被害対応などを含めた様さまざまな視点から地域で暮らす人々の支援を進めています。
また、市内35ヵ所に設置されている在宅介護支援センターでは在宅での支援を必要とする高齢者や家族が抱える不安を解決するための総合相談や人々のニーズに合わせた保険・福祉サービスの紹介、連絡調整などを行っています。
さらに、さいたま市では地域の民間企業や社会福祉法人、ボランティア、NPOなど様々な事業主体からなる重層的な生活支援・介護予防サービスの提供体制の構築も推進。
サービス内には高齢者の安否確認や食材配達、外出支援といった生活支援はもちろん、交流サロンやコミュニティカフェなど高齢者の交流を支えるサポートも含まれています。
市内各域に配置された高齢者支援コーディネーターは地域の状況を把握しつつ、必要とされているサービスの創出を図り、地域活動にも積極的に参加することで高齢者の生活をサポート。さいたま市は地域ケア会議を通じて連携を図り、高齢者支援コーディネーターの活動を支援しています。
さいたま市の福祉サービス苦情調整委員会とは?
さいたま市では市内の福祉サービスの利用に関する不満や苦情の相談窓口として「福祉サービス苦情調整委員会」を設置しています。
契約内容との相違や職員から不当な扱いを受けたなどの問題が生じた際に、福祉サービス苦情調整委員会は利用者とサービス提供者との間に入り、問題解決に向けた助言・調整を行います。
苦情調整委員は介護・福祉・法律などに関する学識経験を持った人員で構成されており、専門的な視点から問題解決に取り組みます。
契約内容など専門的な知識を有していないと判断の難しい問題については、苦情調整委員からのアドバイスをもらうことで適切な対処を行うことが可能です。
相談可能な対象としては過去1年以内の福祉サービスの利用に限られており、それ以前の利用に関する苦情は受付対象外となっています。
申し込みは福祉サービス苦情相談窓口への電話、または浦和ふれあい館への来所で可能。利用料金は無料ですが、相談日時は月・火・木・金曜日の10~12時、13~16時と決められているため、注意が必要です。
また、相談の申し出は利用者本人だけでなく、配偶者、3親等以内の親族、成年後見人なども行うことができ、受付の際には苦情の内容と申し出者の希望などを相談員に伝えた後、必要に応じて福祉サービス苦情調整委員会による提言や斡旋などが行われます。
相談対象としては高齢者や障がいを抱えた方に関わる福祉施設の利用や、通所のデイサービス・在宅でのホームヘルプサービスなどを中心にさいたま市が行う福祉サービスに関する苦情・相談が含まれます。