老人ホームを探すなら、加賀地方に選択肢の幅が広く
美術と工芸の街・金沢市を県庁所在地とする石川県も、全国的な例に漏れず高齢化の激しい県です。
特に人口が多いのは金沢市で、次いで白山市や小松市となりますが、これらは石川県の中でも加賀地方と呼ばれる地域。
能登地方と呼ばれる輪島市や羽咋市は人口の減少化が進んでおり、反面、高齢化率がぐんと高くなっています。
しかし、老人ホームの数を見てみると加賀地方に集中しており、能登地方は非常に数が限られているという悩みの種があります。
特別養護老人ホームが多くはありますが、その他、介護老人保健施設や介護療養型医療施設などがバランス良く開設されており、利用者のニーズに応じて選択できる幅広さはあります。
しかし数が少ないので、入居を考えるにあたっては多少の待機期間を念頭に置いておいた方が良いでしょう。
そんな状況ですから、県としてもしっかりとした高齢化対策に取り組んでいます。
中でも高齢者の住まいに関する対策としては「高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられる居住環境の確保」を基本理念とし、住まいの確保・住まいを選択しやすい環境の整備に注力しており、高齢者が暮らしやすい社会へと変貌を遂げようとしています。
昔から文化の発展が著しく、また観光名所としても名を馳せてきた石川県は、県民のホスピタリティの高さが顕著です。
人と人とのつながりを重視する生き方は、高齢者にとっては嬉しいもの。
こうしたソフト面には恵まれているわけですから、あとは老人ホームの数を増やすというハード面の充実が待たれるところです。
およそ3人に1人が65歳以上の高齢者となっている石川県
石川県は全国都道府県で14番目に人口が少なく、県全体では広島市と同じくらいです。
年齢別の人口を見てみると2015年現在、高齢化率は30.1%と平均を上回っており、高齢化が大きく進行していると言えます。
ただ10年間で老年人口の割合は約7%上昇していますし、推計では2020年に75歳以上の後期高齢者が65歳~74歳までの前期高齢者の数を上回ると言う超高齢化社会も予測されています。
地域別に見てみると能登半島の突端にあたる珠洲市が高齢化率48.0%と飛び抜けて高く、次いで能登町、穴水町46%台なので、能登地区の高齢化が進んでいます。
しかもこういった地域はここ10年で一気に10%以上上昇している地域でもあるので、今後の対応が急務になっています。
反面、野々市市などは20 %を切る地域であり、県庁所在地の金沢市に隣接する分ベットタウンとして機能しており、生産者人口の割合が県内で最も高くなっています。
全国的な傾向とも言えますが、高齢者の孤独化問題も深刻です。
2015年現在65歳以上の高齢者の一人暮らしが4.6万人、更には高齢者夫婦二人だけの世帯が5.4万世帯あります。
これは全世帯の約22%に当たることになりますので、既に家が5軒並んでいたら1軒は高齢者世帯ということになります。
特に一人暮らしはこれからも右肩上がりの上昇が見込まれているので、石川県も高齢者の孤独化問題を重点課題として取り組んでいます。
介護サービス利用者は着実に増加している
石川県は65歳以上の高齢者が目立って多いというわけではありませんが、それでも全国平均を上回っています。
それに伴って要介護認定者も年々上昇傾向にあり、2014年度には65歳以上の第一号被保険者の18.4%が認定を受けており全国平均を上回りました。
また75歳以上では33.6%もの認定率になっています。
介護保険サービスの推移を見てみると、やはり在宅介護へのシフトが進んでいることがうかがえます。
居宅型サービスが利用者全体の67%に達しており、デイサービスや小規模多機能型の施設介護などの地域密着型サービスを含めると80%弱が在宅介護の支援サービスになります。
全国平均ともほぼマッチする数字であり最期まで住み慣れた自宅で、家族や地域の支援を受けながら生活したいという希望の表れですね。
居宅型サービスを具体的に見てみると、訪問介護と共に近年訪問看護が増えており、病気になっても自宅療養が多くなってきています。
「居宅療養管理指導」という少し聞き慣れないようなサービスも年々上昇中で、これは往診とは違い、医療の専門家が自宅を訪問し生活指導やアドバイスを行うものです。
月2回までの訪問と決まっていますが、やはりこれもご本人はもちろん家族にとっても安心感のあるサービスなので、今後も需要は拡大することでしょう。
施設入居型のサービスに目を向けるとほぼ横ばいで推移しています。
将来的には廃止の方向で検討されている「療養型医療施設」の入居者が介護老人福祉施設に移ったという傾向はあります。
またグループホームや民間の有料老人ホームの利用も横ばいなので、バランスとしてはこれ以上在宅介護に流れるのは少し厳しいと予測されています。
「ユーリンピック」で介護予防を全面的に後押し
石川県では介護予防の一環として高齢者の体力づくりに力を入れています。
「ユーリンピック」は地域や世代間を超えた文化・スポーツの交流を図るもので毎年1万人以上が参加する石川県の一大イベントになっています。
また高齢者の方の社会参加や健康維持、生きがいづくりなどを目的に行われる「全国健康福祉祭」にも毎年のように選手、役員をほとんどの競技に派遣しています。
また老人クラブの活動も盛んで、県全体の高齢者の約3割の方がクラブに所属しています。
主な活動は「健康・友愛・奉仕」の推進にあります。
介護予防運動はもちろんの事、ユーリンピックや全国健康福祉祭への積極的参加、健康ウォーキングの実施などシニア世代にもスポーツを普及させる活動を行っています。
友愛の活動には1クラブに1チームを結成し地域の在宅高齢者とその家族の支援にあたっています。
全国社会奉仕の日(9月20日)には一斉活動を実施し、「花のあるまち、ゴミの無いまち」を全国にアピールしています。
更に石川県では高齢者が生涯学習を行える場を提供しています。
約2年間の修了期間となりますが、いしかわ長寿大学や石川県民大学校などを通じてこれまでに1200以上の方が見事に卒業を果たされています。
また高齢者の方に社会参加と生きがいの創出を図る「シルバー人材センター」で就労をあっせんしています。
2014年度は県内18カ所にセンターが設置され、約9,000人の方が何らかの仕事を行っています。
毎年着実に仕事の依頼件数が伸びてきており、まだまだ高齢者の方の出番が増えていきそうな勢いです。
「急性期病院」「回復期病院」を中心として高齢者の生活をサポートする域包括ケアシステム
石川県は、地域包括ケアシステムの構築には地域に根差した医療と介護を総合的に確立することが大切と考えています。
中でも地域医療構想は入院医療からステップを踏んでいき自宅や社会への早期復帰への道筋を付けていきます。
また在宅療養と介護の連携を強化することも掲げられています。
入院医療では4つの機能を持つ病院に分類してそれぞれが次へのステップに向かって連携、連動を図っていきます。
「高度急性期病院」では最も高度な医療を必要とする急性期の患者さんに対応する為に、医師、看護師を増員して早期に「リハビリ病院」や「急性期病院」に転院出来るようにします。
「急性期病院」「回復期病院」は地域包括ケアシステムの要ともなる存在で、自宅や社会復帰へ向けた治療がここで行われることになります。
また利用者が身近に利用できる地域の病院を退院調整スタッフが探しますので、退院後の病院を自分で探す必要はありません。
特に石川県の場合は入院患者が、高度専門医療が可能な金沢市を中心とした県中央部に集中してしまう傾向にあります。
また富山県からの流入も見られるので、各地域に分散していくことも大きな課題ですし、中央部の人員の強化も必要不可欠な状況です。
自宅に戻ってからの医療は地域の病院や診療所にゆだねられますが、訪問診療や訪問看護もいつでも身近にいる医師のサービスを受けることができる様になります。
この地域の医療施設と介護の連携が最も大切であり、この調整を図るのが包括支援センターなのです。
「福祉サービス第三者評価」で福祉サービスを公正に評価する
石川県の「福祉サービス第三者評価」は、福祉サービスを行う事業者に対して公正・中立な立場の第三者機関が事業内容を調査、精査して評価をするものです。
結果は事業所にフィードバックされるだけでなく一般公開もされますので、サービスの利用者が事業所を選択する際の材料にもなります。
仕組みとしてはまず県が福祉サービスの事業所に第三者評価機関の利用を促します。
各事業所は複数ある第三者機関と任意で契約を交わし調査を実行してもらいます。
任意とは言ってもグループホームだけは年1回の調査が義務付けられています。
その他の事業所にはいわゆる自らを律する為に評価を依頼するという形を取っています。
まず事業所では自己評価を行います。
その調査結果を受けて第三者機関の調査が入ります。
複数の担当者によって訪問調査が行われ結果が導き出されます。
結果は事業所と県に報告され県はホームページをとして一般に公開します。
実際に公表されている調査報告には実に70以上にもわたる項目の調査が行われています。
特にグループホームなどでは地域とのつながりや家族との連携に対して細かく調査されています。
また身体拘束や虐待などデリケートな部分にも当然踏み込んだ調査が行われており、信頼できるものと思われます。
義務であるグループホームを除くと任意の調査で有る為に利用する事業者はまだ少ないのが現状ですが、石川県は結果に関わらず、自ら調査を受けるという姿勢がその事業所の真摯な態度の表れであると一定の評価をしています。