温暖な気候が魅力。介護施設も過ごしやすいところが多い
高齢化について「どげんかせんといかん」と言ったかどうかは定かではありませんが、老人ホームの数が充実しているのが宮崎県。
空き室も多く見られるため、入居待ちをしたりといった苦労をするようなことも少ないでしょう。
それもこれも、行政としての取り組みの成果。
そもそも宮崎県は、2035年には11ポイント増の36.9%にまで上昇することが推測されており、急激な高齢化の進行への対策が不可欠だったのです。
そこで宮崎県では、2011年に策定された「未来みやざき創造プラン」の中で「健康長寿社会づくり」を掲げ、本格的な高齢化対策に着手しました。
具体的には、医療と介護の連携を重視し、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの老人ホームに参入しようとする事業者を支援する一方で、サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の普及にも注力。
同時に「バリアフリーの施設づくり」を推進することで、高齢者にとって住みやすい社会整備をしているのです。
現状では、介護療養型医療施設が多いのが特徴です。
宮崎県は人口10万人あたりの病院数が11.28軒と全国5位の多さであり、それに伴って医療を必要とする高齢者の受け入れ施設として病院が選ばれているのです。
一方で、介護老人福祉施設やサービス付き高齢者向け住宅などは少なく、介護を必要とする高齢者にとっては、少し選択肢が少ないかもしれません。
費用面では、それほど高額な老人ホームはありません。
数が多い介護療養型医療施設はもちろん、介護老人福祉施設なども入居一時金約2万円ほど、月額利用料は7万円前後というところが多いので、お金のことはそれほど心配しなくて良いでしょう。
名産品はマンゴー、フェニックスが県の木であることからも分かる通り、宮崎県は何と言っても温暖さが魅力です。
日照時間は全国屈指で、夏場はさすがに暑い日が続きますが、それでも海風が吹くためにそれほど高温にはなりません。
冬場は、プロ野球やJリーグの球団がこぞってキャンプ地にするほど暖かく、高齢者が暮らすための自然環境は抜群です。
宮崎県の高齢者人口は2025年にピーク!その後も高齢者の割合は増加する見込み
宮崎県の総人口は1995年に118万人を記録して以降減少が続き、2005年には115万人、2023年には106万人となっています。
今後も減少傾向は続き、2025年には98万人、2035年には93万人となる見込みです。
そんな中で高齢者人口は年々増加し続けており、1965年当時は7万7,000人でしたが、1985年には14万1,000人、2000年には24万2,000人、2010年には29万1,000人、2023年には35万2,867人となっています。
将来的には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年ごろまで高齢者人口の増加は続きますが、その後は減少に転じ、2025年に35万3,000人、2030年には34万8,000人、2035年には33万7,000人となると考えられています。
高齢化率の推移をみると、1965年時点では7.1%でしたが、1980年で10.5%、1990年で14.2%、2000年で20.7%、2010年で25.8%、2015年で29.5%、2023年で32.6%と着実に上昇。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
特に後期高齢者の割合が急速に上昇しており、2000年時点での総人口に占める後期高齢者の割合は10.1%だったのに対し、2015年には17.2%。
今後はさらに上昇し、2025年には20.4%となると予想されています。
高齢者人口自体は2025年をピークに減少に転じると予測されていますが、生産年齢人口(15歳~64歳)、年少人口(0歳~14歳)の減少幅が大きいため、結果として高齢化率は上昇し続けるようです。
生産年齢人口は1989年をピークに減少が続いており、1996年以降は年少人口を高齢者人口が上回る形で推移し続けています。
宮崎県の施設サービスの利用者はじわじわと増加中
宮崎県の介護保険サービスのここ最近の利用状況をみると、まず利用者数については、2024年時点で居宅サービスが3万7,624人、地域密着型サービスでは8,238人、施設サービスで8,970人でした。
団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には、居宅サービス利用者数が4万6,044人、地域密着型サービス利用者数が1万154人、施設サービス利用者数が1万168人になると予想されています。
介護給付費については2013年度が834億円、2014年度が902億円、2015年度が942億円、2016年度が981億円、そして2017年度が1008億円となっています。
内訳をみると、居宅サービスは2013年度が463億円、2014年度が510億円、2015年度が537億円、2016年度が531億円、2017年度が543億円と推移。
地域密着型サービスでは2013年度が91億円、2014年度が97億円、2015年度が105億円、2016年度が150億円、2017年度が161億円と推移。
そして施設サービスでは、2013年度が280億円、2014年度が294億円、2015年度が300億円、2016年度も300億円、2017年度が305億円となっています。
なお2025年度では、居宅サービスが712億円、地域密着型サービスが196億円、施設サービスが314億円になると見込まれています。
宮崎県の介護予防ではリハビリテーション専門職の参加体制を強化
宮崎県ではこれまで、要介護状態になる恐れのある高齢者を対象とした「二次予防事業」、すべての高齢者を対象とした「一次予防事業」という2本柱の介護予防事業が進められてきました。
ただこれら事業では、介護予防の方法がもっぱら機能回復訓練のみに重点が置かれ、回復後の機能を維持するための「通いの場」や活動の場を確保するという視点が不十分な点がありました。
そうした問題点を解決すべく、現在宮崎県内の各市町村では介護予防。
日常生活支援総合事業の導入が進められています。
この事業の本来の目的は、介護保険サービスの介護予防に関わるサービスの一部を自治体の負担にするというもの。
しかし実際の内容としては、機能回復訓練にとどまらず、高齢者の地域内での生活環境そのものを介護予防活動の範疇に入れた介護予防の実現を目指すものとなっています。
特に力点が置かれているのは地域に住む高齢者のさまざまな活動。
高齢者本人が、地域内で支援・ケアを必要とする高齢者の支えとなり、その支え手としての活動を通して介護予防を行うという「自己実現型」の介護予防を推進しています。
また県では、要支援認定で「要支援」の認定者を受けた人のケアプランを作成する「地域包括支援センター」への支援の強化も行っています。
介護予防ケアマネジメントの能力向上のため、職員に対する研修や介護予防に関する情報の提供などが進められています。
また市町村の介護予防事業への支援として、リハビリテーション専門職が各種介護予防事業に参加できる体制づくりも推進しています。
宮崎県の地域包括ケアシステムの特徴は“高齢者同士の共助”
宮崎県では、地域に住む高齢者が要介護・要支援状態になっても住み慣れた場所で長く暮らし続けられるように、「地域包括ケアシステム」の構築が進められています。
医療分野、介護分野、介護予防・生活支援分野、住まいの分野がそれぞれ連携し、一体的なサービスの提供を高齢者に行えるようにするのがその目的です。
中でも医療と介護については、高齢者の健康状態、心身状態を維持・ケアする上で重要な役割を果たす分野。
両者の連携は地域包括ケアにおいて不可欠な要素だと言えます。
ポイントになるのが各地域内の在宅医療と介護保険サービスの連携体制。
かかりつけ医、薬局(かかりつけ薬局)、と居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)や訪問介護・訪問看護事業所とが連絡を密に取り合い、高齢者の在宅生活の支援を切れ目なく行える体制づくりが進められています。
介護予防・生活支援分野については重要な役割を果たすが地域の組織や団体。
老人クラブ、ボランティア団体、NPO団体、自治会、地域高齢者の自主グループなどの活動を自治体が支援。
ここで重要になるのは、高齢者同士が共助するということ。
お互いが協働しあって介護予防活動、生活支援サービスを行っていくことが、地域包括ケアにおいて重要視されています。
住まいの分野では、高齢者の住み替え先となる施設の整備が重要となり、現在はサービス付き高齢者向け住宅の整備が進められています。
バリアフリー完備で生活相談、安否確認を行ってくれるので、地域に住む一人暮らしの高齢者の方にとっては安心して生活できる環境が整っている施設です。
宮崎県では「日常生活自立支援事業」を実施
宮崎県では、認知症等の影響により日常生活における判断能力が衰えてしまった人をサポートすべく、「日常生活自立支援事業」が実施されています。
各市町村の社会福祉協議会に申し込むことで、福祉サービスを利用する際の各種手続き、普段の生活におけるお金の管理のサポートを行ってくれるのです。
サポート役となるのは、福祉協議会が雇用した「専門員」および「生活支援員」。
専門員は、相談の受付から支援計画作りなどサポート開始後の利用者の全般的な状況把握を担当し、生活支援員は支援計画の下で利用者と密に連絡を取りながら、実際に援助を行っていく役割を担います。
具体的な援助としては、①福祉サービスを利用する際の支援(福祉サービスに関する情報の提供、各種福祉サービス利用のための手続きの支援、苦情解決制度の利用の手続き支援など)、②日常生活における金銭管理の支援(年金や福祉手当の受け取りの手続き支援、医療費の支払い手続きの支援、公共料金の支払い支援、日用品を購入する際の支払い支援など)、③重要書類の預かり(年金証書、権利証、保険証書、預貯金通帳、各種契約書類)、等が行われています。
一人暮らしをしていて認知症を発症した方など、今後の生活に不安のある方にとっては利用を検討する価値はあると言えるでしょう。
利用の際は別途費用が掛かります。
専門員への相談や支援計画の策定については無料ですが、生活支援員が行う援助を利用する場合は有料になります。
1回1時間1,000円必要で、それ以降は30分毎に500円が追加されるという形になっています。