費用面での選択肢の幅は広く。あらゆる高齢者の受け入れ体制が充実

埼玉県西部にある所沢市は、住民の4人に1人以上が都区内への通勤・通学者で、東武東上線で東京まで通勤可能とあってファミリー層も多く住んでいます。
駅前は、開発が進んでいる一方で、郊外には緑豊かな自然が。あのスタジオ・ジブリ制作の「となりのトトロ」の舞台になった狭山丘陵もあり、映画の景色が今もなお広がっています。
所沢市は、日本で最初に飛行場が建設された地域なので、所沢航空記念公園や所沢航空発祥記念館などの施設もあり、遠方から足を運ぶ人も多いようです。
市民参加型イベントが多いのも特徴。都内への通勤・通学者が多いため、地域との縁が薄くなりがちな傾向を解消することに努めており、地域住民同士の交流が盛んな地域ともいえるでしょう。
そんな所沢市の最近の試みでは、地域の宅配サービスを行っている業者を掲載したリーフレット「高齢者生活支援パンフレット」を作成し、高齢者支援課や地域のまちづくりセンターで無料配布しています。
また、認知症予防にも尽力。所沢市医師会により所沢認知症ネットワークが設立されました。「もの忘れが多くなってきたような…」と感じたらすぐに相談できる「もの忘れ相談医」を配属。40以上の病院で気軽に相談することができます。
そして、所沢市には豊かな自然環境を楽しめるホームが多くあります。小規模~大規模の施設を選ぶことができ、入居条件も厳しくないところがほとんどです。
価格も入居費用が1,000万円超えといった施設もある一方で、入居金0円という施設もあり、条件にあった施設を見つけることができるのではないでしょうか。
2040年までには高齢化率は35%超に
さいたま市・川口市・川越市に次いで県内第4位の人口を誇る所沢市内には、JR東日本の武蔵野線、西武鉄道の西武池袋線・西武新宿線・西武山口線・西武狭山線が発着しています。
高速バスは羽田空港行きや成田空港行きの空港連絡バスや、大阪のユニバーサルスタジオジャパン方面に向かう長距離バス、高速道路としては関越自動車道も市内を通っており、所沢市は交通アクセスが比較的発達した都市です。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
そんな所沢市ですが人口は現在ほぼ横ばいで推移しており、2017年の調査によると34万4,002人、2023年には人口34万4,070人となっています。
0歳から14歳までの年少人口や、15歳から64歳までの生産年齢人口は減少の一途を辿っていますが、65歳以上の高齢者人口が増加。2017年の段階で高齢者人口は8万9,359人、2023年には9万4,410人、高齢化率は2017年26.0%、2023年27.4%と年々高齢化が進んでいます。
2023年の高齢化率の全国平均は29.0%ですので、全国平均よりは低い水準を保てていますが、埼玉県の平均26.8%をやや上回っています。
今後も高齢者人口は増加し続け、2030年には10万6,038人となり、高齢化率は31.7%まで上昇、2040年には高齢者数が11万6,624人となり、高齢化率は36.2%まで上昇すると予測されています。
特養利用者の増加から、さらなる増設が期待されている
所沢市における2017年の介護保険サービスの状況を見ると、第1号被保険者数は8万9,532人。その内、65歳から74歳までの前期高齢者数は4万8,007人で、75歳以上の後期高齢者数は4万1,525人となっています。
2017年の要支援・要介護認定者数は1万4,544人、2024年には1万7,390人と年々増加、あと数年で2万人を超える見込みです。

この要支援・要介護認定者数は今後も増え続けると予測されています。
また、要介護認定者の内訳は要支援が4,992人、要介護が1万2,398人でした。中でも要介護1が最も多く4,140人となっています。
介護保険サービスの内訳をみると、介護度にかかわらず、どの階級も介護保険サービスを利用している人が多く、居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービスはそれぞれ利用者が多いです。
居宅サービスの中では「訪問介護」と「通所介護(デイサービス)」を利用している人が多く、地域密着型サービスでは「地域密着型通所介護(デイサービス)」の利用者が多いことがわかっています。
また、施設サービスでは「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」の利用者が多く、さらなる増設が期待されており、介護保険サービスにおける給付費も年々増加中です。
所沢市では介護保険サービスの充実とともに介護予防活動にも力を入れ、要介護状態にならない健康な体づくり、介護度が上がらない予防活動を推進しています。
地域全体で高齢者の見守り体制づくりを強化
超高齢社会を迎えた所沢市では、高齢者が増加し続けると同時に、要支援・要介護認定者も増加していくと予測されています。
今後、前期高齢者数を後期高齢者数が上回り、介護保険サービスなどの高齢者福祉サービスへの需要がますます拡大するようです。

それに対し、高齢者だけの世帯や在宅介護世帯の増加にともなう生活支援・介護支援への需要の拡大、認知症高齢者の増加など、高齢者に関する課題が山積しており、ほかの自治体と同様に、特に介護人材の不足が深刻です。
所沢市は人材不足の解消のために、地域全体で高齢者の見守りを行う体制づくりを行っており、『高齢者=支えられる側』という考え方を捨て、高齢者本人が社会の一員として介護施設や公共施設で活躍する一体型の社会を目指しています。
一方で、介護のサポートが必要な高齢者が快適に暮らせるよう、サポートシステムも整備中です。
包括的なサポートのためには医療や介護、住まいといった多様なジャンルのサービス従事者たちが、意思疎通や情報共有を行い、連携を強化する必要があります。
そのため、所沢市はサービス従事者の情報交換会の開催や、地域包括支援センターを中心としたスムーズな相互連絡を推進しています。
また、社会全体での支え合いのためには介護サービス事業者や医師会・歯科医師会・薬剤師会の相互連携に加え、自治会やボランティア、NPO団体などの協力も必要として、所沢市は地域活動を行うボランティア団体などへの支援も行っています。
介護予防のための「いきいき健康体操教室」を開催中
所沢市では、高齢者がいつまでも健康に暮らしていけるよう、介護予防・介護度の重度化防止の取り組みを行っています。
「寝たきり・認知症予防講演会」では、椅子を使った運動や介護予防講座とともに、血管年齢測定や認知症チェックシートなどを実施。自分の体力低下や認知症度合いが把握できるようにしています。

また、老人憩の家や老人福祉センターでは、定期的に「介護予防教室」を開催。老人福祉センターでは「健康生活相談」も行なっており、カラオケや囲碁将棋、入浴が楽しめるのが魅力です。
さらにはヨガや民謡、絵手紙、書道などのいろいろなサークル活動が行われています。高齢者の通い場や社交の場となっており、認知症予防や介護予防につながっているため、所沢市では助成金交付などを通じて活動を支援しています。
ボランティア活動や就労を通じた社会参加も、認知症予防に有効であることがわかっており、ボランティア団体の活動やシルバー人材センターの活動も支援しています。
さらに、各地の老人憩の家やフィットネスクラブでは、「いきいき健康体操教室」を開催中。教室では筋力アップ体操や健康づくりが学べる講話、グループワークを通じた住民の交流を実施しています。
運動機能の維持改善だけでなく、高齢者の社会参加のきっかけにもなっており、定期的に開催により、高齢者のコンスタントな外出を促し、閉じこもりを防止しています。
所沢市の高齢者相談
所沢市では、高齢者の日常生活の支援や孤立化の防止にも力を入れています。
こういった支援活動において「高齢者相談」は重要な役割を果たしており、所沢市は「高齢者は実際に何が必要で、何に対して困っているのか」を具体的に把握し、一人ひとりに対応できる体制づくり行っています。

市は高齢者や介護家族、そして地域住民の身近な相談機関として「地域包括支援センター」が日常生活圏域ごとに設置されています。
まだまだ認知度が低いため、高齢者の身近な相談所となるためにも、所沢市は地域包括支援センターの認知度アップに繋がる普及活動を行っています。
地域包括支援センターでは、介護保険サービスのマネジメントや介護予防活動などのサポートをしているため、介護サービスだけでなく、日常生活のこと、介護予防活動のことなど、いろいろな相談ができるのが魅力です。
加えて、認知症などによる判断能力の低下が見られる高齢者を対象に、権利擁護活動も実施。成年後見制度を通じてサービスの申し込み支援や金銭管理の代行を行なっています。
また、認知症高齢者が増えているため、認知症相談も受け付けており、高齢者本人だけでなく、家族や親族、地域住民からの相談も可能です。
「安心サポートネット」の愛称を持つ「日常生活自立支援事業」では、所沢市社会福祉協議会が窓口となり、成年後見制度と同様に、福祉サービスの利用を援助。「サービスを利用したいが、手続きがさっぱりわからない」といった相談もできます。