田舎的な風景が色濃く残る鳥取県は、のどかに暮らすのに最適な地
全国で一番人口が少ない県として有名な鳥取県には、それに伴って老人ホームの数自体も少ないという特徴があります。
そのため入居にあたっては、そもそもの選択肢が少なく、希望に沿った老人ホームを見つけるのも難しいという現状があります。
2035年の高齢化は34.5%になると推測されていますが、伸び率の8.1ポイント増は全国で2番目に低くなっており、全国的に見て高齢化の波は穏やかと言えます。
これは、鳥取県が他地域の交流が少なく、大都市のベッドタウンといった機能を果たしていない、団塊の世代が少ないといった理由も一因だと考えられます。
施設の種類では、介護老人保健施設が充実しています。
定員の2,810人は、65歳以上人口100人あたり1.85で、徳島県に次いで高い数字。
リハビリや介護・看護が必要な高齢者のための施設だけに、手厚い介護・看護が必要な高齢者にとっては頼りにできると見て良いでしょう。
費用面は千差万別です。
入居一時金が数万円、月額利用料も数十万円という施設があるかと思えば、入居一時金が1,000万円を超えるところもあります。
このように高額な費用がかかる施設は、例えば温泉や露天風呂があったり、終末期医療への対応やペットとの入居も可能だったりと、高齢者にとって安心な、そして心にゆとりをもった生活を送ることができます。
こうした施設はすぐに満室になるということは少ないので、資金に余裕のある人は是非、選択肢に入れてみてください。
冒頭にも記したように、鳥取県は他地域との関わりがそれほど強くなく、一方で地域でのつながりを大切にするような県民性を持っています。
ある意味で田舎的な心情が色濃く残っており、助け合いの精神は他の地域と比べても非常に強いと言えます。
こうした人間味あふれる地域での生活は、高齢者にとってきっと充実したものとなるでしょう。
2035年には500万人以下まで人口が減少する
鳥取県の総人口は2023年時点で54万6,558人。
年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)ともに減少している影響から、2010年よりも約4万人減少しています。
総人口の減少傾向は今後も続くと見られ、2025年までには540万人、2035年にまでには500万人以下にまで人口が減ると予想されています。
高齢化率は2010年時点では26.3%でしたが、2023年には32.7%にまで上昇。現状のままだと今後急速に上昇していくと見られ、2025年には35.2%、2050年には40.9%になる見込み。
日本全体の平均値は、2010年で23.0%、2030年で31.6%、2040年で36.1%と予想されています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
鳥取県の高齢化率は、全国平均よりも2~3ポイント以上高い値で推移していくと見られます。
県は高齢化率の上昇を抑えるために、合計出生率を2030年までに1.95まで上げて(2013年時点では1.62)、さらにその後2.07まで上昇させること(自然減の歯止め)、県外への転出入を減らして転入転出者数をプラスマイナスゼロにすること(社会減の歯止め)を目標に掲げています。
現在は県を挙げて結婚・子育て環境の整備、Uターン就職の促進及び労働力の流出を防ぐための雇用の創出、県外からの移住者拡大への取り組み等を進めています。
2005年度の介護サービス費用は412億1,900万円に
鳥取県の介護保険サービスの利用状況は、県の介護サービス総費用額(年額)の推移を見ると、介護保険制度が始まった2000年度では261億8,400万円でしたが、5年後の2005年度には412億1,900万円にまで増加。
2010年度には488億1,800万円、2013年度には553億800万円と増え続けています。
今後も増加していくと見られており、2020年度には653億3,300万円、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年度には732億9,400万円、2035年度には470億円に達すると予想されています。
要介護者一人当たりの月額費用でみると、2000年度は12万1,763円、2005年度は13万412円、2010年度は13万6,301円、2013年度は13万9,278円となっています。
介護保険サービスの利用者となる要介護(要支援)認定者数も年々増えており、2000年度には1万7,920人でしたが、2005年度には2万6,339人、2010年度には2万9,746人、2015年度には3万4,227人、2024年度には3万5,122人と増加しています。
認定者数は将来的にさらに増え続けていくとみられ、2025年には3万8,866人、2035年には4万3,230人となると見込まれています。
「鳥取県健康づくり文化創造プラン」実施で介護予防を促進
鳥取県では現在、県全体の介護予防の方針として「鳥取県健康づくり文化創造プラン」を策定、実施しています。
具体的な個々の介護予防事業については市町村レベルで行われる「介護予防・日常生活支援総合事業」によって行われますが、県レベルではそれら市町村で取り組まれるべき介護予防事業の方向性の提示、及び市町村の支援を主に行っています。
鳥取県健康づくり文化創造プランでは、以下の3つのポイントについて力が注がれています。
- ①日常生活における生活習慣病の予防……鳥取県は県民一日あたりの歩数が全国で最低レベル。
また成人男性の喫煙率が高いなど、生活習慣の段階から改善すべき点が多いのが現状。
介護予防への啓発活動等を通して、生活習慣の改善の取り組みを強化しています。
- ②生活習慣病の早期発見、早期治療、重症化の予防……県内では高血圧症、高脂血症の有病者の推定数が年々増加。
糖尿病、メタボリックシンドロームについても、予備軍、有病者の推定数が増えつつあります。
医療機関間の連携体制の強化、保健指導のクオリティの上昇等を通して、生活習慣病対策を推進しています。
その一例として、市町村が行う健康マイレージ事業(健診の受診、健康教室への参加、禁煙の達成といった健康に資する行為をした人にポイントを付与。
ポイントが貯まると特産品等と交換できる)を支援するため「鳥取県健康マイレージ支援事業補助金」の設置が挙げられます。
- ③介護予防に取り組むための社会環境整備……行政や介護保険サービスが一方的に介護予防の機会を与えるのではなく、地域内の高齢者が相互に協力し支え合いながら健康づくりに取り組める環境の整備を目指しています(地域サロンの場の提供、高齢者のボランティア活動、就労機会の確保等)。
地域包括ケア構築を目指して高齢者の介護ニーズ把握に注力
鳥取県では、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に向けて、地域に住む高齢者への医療、介護、介護予防・生活支援等のサービスを包括的に提供できるように、「地域包括ケアシステム」の仕組みを構築することを目指しています。
具体的な介護予防事業は市町村レベルが行いますが、各市町村に指針を与え、適宜サポートを与えるのが県の役割。
県が取り組んでいる施策は主に6点に集約できます。
- ①地域に住んでいる高齢者の実態を把握……一人暮らしの高齢者、高齢者のみ世帯がどのような生活を送っているかを調査し把握。
その上でその内容を、高齢者を支援する事業者、機関に提供していく取り組みを進めています。
- ②高齢者のニーズの把握及び支援……高齢者が必要としているサービスを把握し、その実現のための仕組みづくりを行っています。
- ③介護が必要な高齢者が介護保険サービスを適切に受けられるような体制作り……在宅介護世帯への支援の強化、高齢者の心と体の機能の維持及び改善を図れる仕組みづくりを進めています。
- ④入院した高齢者が在宅での生活にスムーズに移行できる仕組みづくり……医療(病院や地域の診療所)と介護(介護サービス事業所、ケアマネージャー)の連携の強化。
地域における「かかりつけ医」、「訪問看護師」の確保(医師、看護師の育成強化)、在宅診療体制の充実化を図っています。
- ⑤地域が主導する介護予防を推進する……地域住民(高齢者を含む)、ボランティア、医療・介護関係の諸団体、行政が連携して、介護予防の取り組みを進める仕組みづくりを進めています。
- ⑥高齢者の生活の安全、及び尊厳を守る体制作り……権利擁護、虐待の防止、高齢者福祉に関する相談対応力の向上を図っています(地域包括支援センターの機能の強化等)。
鳥取県福祉サービス運営適正化委員会とは?
介護保険サービスを利用している中で、契約時に聞いていたサービス内容と異なる、サービスを提供するホームヘルパーや介護施設のスタッフの態度が悪いなど、サービス関して不満や疑念を抱くということは十分に起こり得ること。
その場合、一般的にはまず福祉サービスを提供する事業者に苦情を訴えることになります。
事業者の苦情解決責任者、第三者委員が速やかに問題の解決にあたることで、利用者が抱いていた苦情が解消されることは多いです。
ただ、事業者側との話し合いで問題が解決できない場合も十分にあること。
また苦情を訴えたくてもそれを言いづらい雰囲気が事業者側にあったりすると、苦情を申し立てることそのものが出来ないということにもなります。
鳥取県ではその場合の苦情受付機関として、「鳥取県福祉サービス運営適正化委員会」が設置されています。
いわば県レベルにおける苦情の受付け機関で、委員には福祉、法律の専門家が任命され、高度な問題解決処理能力を持っています。
相談はまず事務局の相談窓口で受け付け、その後委員会に図られ、内容によっては事業者側の許可のもと調査を行い、利用者・事業者への助言、あっせん等を行います。
運営適正化委員会の窓口は鳥取県立福祉人材研修センター内の事務局にあり、相談方法は電話、Eメール、ファックス、手紙、直接来所などで行います。
秘密厳守が基本で、匿名による相談も可能です(ただし事業者の調査を行う場合、匿名のままだと難しい場合もあります)。