気候の過ごしやすさや交通網の整理など、高齢者にとっての生活のしやすさは全国でも随一
「うどん県に改名しました」という発表で一躍、話題となった香川県。
さぬきうどんを題材にした映画がヒットしたことによって一躍、全国にその名を知らしめましたが、実は老人ホームの数(人口比)でも香川県は全国一。
2023年現在の香川県の人口は約95万人で、そのうち65歳以上の高齢者は約30万人。
31.6%という高い高齢化率となっていますが、人口10万人あたりの老人ホームの数が68.6と指標値を20も上回っているのです。
そのため、県民が入居するための老人ホームを探すとき、居室に余裕があるというだけでなく、瀬戸内海を挟んだ兵庫県や岡山県から入居を希望する高齢者も多くいます。
さらに香川県では、「香川県高齢者保健福祉計画」を策定しており、介護老人福祉施設、介護老人保健施設だけでなく、認知症高齢者グループホームや介護専用型特定施設の増設も進めており、高齢者がよりいっそう充実した生活を送れるような社会整備を目指しています。
ただし、こうして老人ホームの数が多いのは、主に高松市のみです。
県内においては最も人口が多いため致し方ありませんが、一方で丸亀市や坂出市、さぬき市、東かがわ市などはそれほど多くなく、入居待ちをしている高齢者の方も多いようです。
つまり、数においては県内で格差が生じているということになり、社会整備という面では地方部への注力が望まれています。
施設の種類に関しては、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護老人医療施設が中心ですが、昨今ではサービス付き高齢者向け住宅やグループホームも増えてきており、その選択肢は幅広いものがあります。
介護や医療が必要な人はもちろん、そうでない人も、いろんな施設を見て回って、数ある選択肢の中から理想の暮らしを追求してくださいね。
香川県は、こと生活という面では非常に暮らしやすい土地です。
瀬戸内海気候のために、特に冬は穏やかで過ごしやすい日が多く、雨量が少ないことでも有名です。
また、四国の鉄道の集中であり、特に高松市は四国市のターミナル駅になっているなど、公共交通機関が発達しています。
道路も、舗装率99.9%は全国一で、主要な国道は4車線以上のバイパスが完備されているだけでなく、幹線道路となる県道や市町道もほぼ全てが4車線以上となっており、車での移動も便利です。
施設面、気候面、交通アクセスの良さ…と、さまざまな面から見て香川県は、高齢者のための住居、そして家族の安心感という点で、もしかしたら全国で最も理想的な県かもしれません。
高齢化率は全国平均よりもやや高め
香川県の総人口は2000年以降年々減少を続けています。
2000年時には約102万3,000人でしたが、2015年には約97万人にまで減り、2023年時点では約95万人。2025年には90万人を割り、2040年には77万3,000人になると予想されています。
減少傾向が著しいのは15~64歳の生産年齢人口と0~14歳の年少人口で、高齢者人口は年々増加。
2000年では21万5,000人だった高齢者数が、2015年では29万3,000人に、2025年には30万4,000人にまで増えていく見込みです。
ただ高齢者人口の内訳をみると、前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳以上)で人口増減の波が異なることが分かります。
前期高齢者の人口数は2020年ごろまで増加し続けますがその後は減少に転じる見込みで、2020年では14万7,000人でしたが、2035年には10万6,000人ほどになると予測。
第二次ベビーブームに生まれた子供が高齢者を迎える2035年から2040年にかけては再び増加に転じ、2040年には11万8,000人となると見込まれています。
一方、後期高齢者の人口増減をみると、前期高齢者の場合とは異なり、大体2030年ごろまでは増加傾向をずっと見せ続けると考えられ、2030年以降は減少に転じると予想されています。
こうした高齢者人口の増減の波がある中でも、総人口は一貫して減少傾向にあるため、高齢化率は右肩上がりで上昇していくと考えられています。
2000年時点での高齢化率は21.0%で、2010年に25.8%、2015年で29.9%となり、今後は2023年で31.6%、2025年で33.7%となる見込み。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2040年には37.9%に達すると考えられています。
日本全体の高齢化率の推移は、2000年で17.4%、2010年で23.0%、2015年で26.7%となっており、将来的には2025年で30.3%、2050年では39.7%となると予想されています。
香川県の高齢化率は全国平均よりもやや高めに推移しているという状況です。
特定施設入居者生活介護とグループホームの利用が増加傾向
香川県の介護保険サービスの利用状況を見ると、ここ3年の総給付費の推移は、2015年度が812億7,500万円、2016年度が833億8,600万円、2017年度は853億300万円となっています。
高齢者の増加傾向が続く中、給付額も年々増額しているというのが現状です。
介護保険サービスの利用状況(2017年度)の内訳を居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスのそれぞれで見ていくと、居宅サービスでは訪問介護の給付費が58億7,900万円、回数が述べ220万2,467回、利用者数が11万2,428人。
通所介護・デイサービスの給付費が89億3,100万円、回数が述べ116万881回、利用者数が10万8,576人となっています。
地域密着型サービスでは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が給付費3億7,300万円、利用者数が2,460人、認知症対応型通所介護が給付費9億700万円、利用者数が8,016人となっています。
特養、老健、介護療養型医療施設の施設サービスでは、特養が給付費148億2,100万円、利用者数が6万1,836人。
老健が給付費120億7,000万円、利用者数が4万7,064人となっています。
民間の施設系サービスに絞って利用状況の推移を見ると、特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム、介護付ケアハウス、一部のサービス付き高齢者向け住宅)は、給付費が2015年度に31億6,400万円、2016年度に34億7,500万円、2017年度に36億8,700万円と年々増加。
利用者数も、2015年度が1万6,740人、2016年度が1万8,480人、2017年度では1万9,596人と増加傾向を見せています。
また地域密着型施設のグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、給付額では2015年度が51億2,800万円、2016年度が52億2,500万円、2017年度は54億3,400万円、利用者数では2015年度が2万1,480人、2016年度が2万1,912人、2017年度が2万2,752人と、こちらも緩やかながら年々増加しています。
地域にあるボランティア活動への支援・充実化を推進
香川県では市町レベルが行う各種介護予防、生活支援事業をサポートすべく、さまざまな取り組みが進められています。
介護予防面では、県内各地域で設置されている地域ケア会議や地域住民が運営している「通いの場」に対してリハビリテーションの専門家の派遣を行い、介護予防事業における課題の解決の促進を図っています。
また介護保険の「要支援」の認定者のためにケアプランの作成を行う地域包括支援センターへの支援も重視し、職員への研修、助言等を適宜行っています。
また高齢者がいきいきと生活できるための環境整備策として、「高齢者いきいき案内所」を設置。
高齢者が現役時代に培った技能、経験を地域のために活かせる場の案内・情報提供を行っています。
高齢者の社会参加や生きがいづくりにつながるとして、実際に多くの高齢者が活用しています。
さらに県では「かがわ共助のひろば」というホームページを開設し、高齢者向けのボランティア情報を随時発信しています。
香川県社会福祉協議会が主催するボランティア養成講座情報も確認できるので、老後に介護予防がてら、何か社会に貢献したいと考えている人は、ぜひ一度チェックしてみるとよいでしょう。
高齢者向けのボランティアとしては、県立の文化施設で行う文化ボランティア、観光客への説明を行う観光ボランティアなどさまざま。
「香の川パートナーシップ事業」や「さぬき瀬戸パートナーシップ事業」など、地域にあるボランティア活動への支援・充実化も県として取り組んでいます。
「かかりつけ薬局」や「かかりつけ歯科医」の定着化に取り組んでいる
香川県では、高齢者が住み慣れた場所・地域で長く生活し続けられるように、医療機関や介護事業者、高齢者向け施設の運営事業者、地域包括支援センター等が連携を組んで地域の高齢者を支える「地域包括ケアシステム」づくりを進めています。
香川県の地域包括ケアにおいて重視されているのは、地域の力。
地域内の民生委員、ボランティア、地域団体、NPO、民間企業、県や市町の社会福祉協議会等がしっかり連携し、高齢者の生活を支え、見守っていくという体制づくりに力が入れられています。
特にその連携をサポートする上で重要な役割を果たす地域包括支援センターについては、機能強化・職員の資質向上が進められています。
県によってもセンターで勤務する職員への研修会や講演会を多数主催し、先進的な取り組みをしている自治体の紹介をするなど情報の共有化に努めています。
また高齢者の生活を支えるという点で欠かせないのが医療と介護。
特に介護が必要な高齢者に対しては、この両者が一体的、統合的にサービス提供していくことが重要になります。
香川県では市町や医師会と連携してかかりつけ医の重要性の啓発活動を行い、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ歯科医」の定着化を進めています。
またその他、在宅医療の分野に携わる医師、看護師の育成、地域医療支援病院の増設、認知症の高齢者を支える仕組みづくり(認知症地域支援推進員への支援)等にも取り組んでいます。
生活支援という点では中心となるのは市町が行う生活支援サービスですが、県としても市町職員を対象とした研修、先駆的な取り組みの紹介、市町間における調整などを行い、市町が行う各種事業をサポートしています。
香川県福祉サービス運営適正化委員会とは?
香川県では、個々の事業者が提供する福祉サービスの質を評価する「福祉サービス第三者評価」が実施されています。
評価を行うのは事業者、利用者といった「当事者」ではなく、中立・公正な視点から評価を行える第三者機関が行います。
対象となるのは、介護保険サービス関連で言えば、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、通所介護、訪問介護、グループホーム、小規模多機能型居宅介護などで、居宅系、施設系双方の施設が評価対象となります。
評価結果は施設ごとに公表され、県民誰もが閲覧できます(香川県の福祉サービス第三者評価のホームページで閲覧可)。
なおこの県が行う第三者評価事業に苦情を申し立てる場合は、県が任命する苦情解決責任者(健康福祉部次長)が対応します。
第三者機関による評価を受けることは、社会福祉法78条で定められている社会福祉事業者における努力義務。
しかし自己評価ではなく外部機関による公正な評価を受け、その結果が公表されることで、利用者、県民から信頼を得られるは間違いありません。
また提供しているサービスの内容、質について改善すべき点を知ることができ、より具体的な取り組み目標を設定することができるようになります。
第三者評価を受けることで事業者が享受するメリットは、非常に多いと言えるでしょう。
評価項目としては、国が定める「第三者評価基準ガイドライン」に香川県が一部改良を加え、独自の評価基準を策定しています。
高齢者福祉施設の場合、「福祉サービスの質向上に向けた取り組みが組織的に行われ、機能しているかどうか」、「遵守すべき法令等を正しく理解するための取り組みを行っているかどうか」など45項目が評価基準となっています。