松山市・今治市を中心に高齢者向けの介護施設の選択肢が多数
他県と同様、愛媛県でも深刻な高齢化が進んでおり、2035年には高齢化率が37%にまで上昇、高知県に次いで四国で2番目に高齢化率の高い県になると推測されています。
そのためには、今の老人ホームの数は足りているとは言い難く(65歳以上人口10万人あたり55.7)、入居待ちをしている人も多くいるというのが現状です。
また、県内には介護療養型医療施設が多いのが特徴ですが、この施設は2018年には廃止の方向で調整されているため、病院が高齢者介護の受け皿となっている現状からの脱却が、県を主導にして図られています。
現状の療養病床のうち、医療の必要性の低い高齢者が入院する病床は介護老人保険施設や介護付有料老人ホームへの転居が進められるなど、サービス提供体制の整備という面で転換期にあると言えます。
老人ホームが分布しているのは、県内でも松山市と今治市が中心で、それ以外の地域ではなかなか施設の開設が進んでいません。
特に、四国山地の真ん中に位置する四国中央市や、県南部にあたる宇和島市は非常に数が少なくなっており、入居待ち人数は際立って多くなっています。
そのため、愛媛県内で老人ホームへの入居を考える際には、まずは松山市や今治市で探してみると良いでしょう。
愛媛県全体では公共交通機関が発達しておらず、また松山市内においても通称“チンチン電車”と呼ばれる路面電車が通っているくらいで、交通の便が良いとは言えません。
入居や家族が面会に行く際には車は必須で、なおかつ車イス利用者であれば、相応の設備が整った車を用意する必要があるので注意しておきましょう。
最後に、愛媛県の県民性を語る上で面白いデータがあります。
それは、「何に対して多く時間を使うか」という集計データで、「仕事・勉強」は全国で44位、それに対して「趣味・娯楽」が全国1位というものです。
つまり、“楽しむ”ということに人一倍、力を注ぐ県民性があるのです。
これは、高齢者が余生を過ごす上で大切なファクターではないでしょうか。
愛媛県の老人ホームで生活すれば、楽しさ、そして生きる歓びをきっと見つけられるはずです。
高齢者のみの世帯が全体の4割に
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
愛媛県の高齢者の割合がはじめて20%を超えたのは1999年で、30%を超えたのは2015年です。
そして、2023年の高齢化率は33.3%でした。
今後、総人口は減少していきますが、高齢者数は増えるとされ、2025年には高齢化率が36.3%になると予想されています。
また、今後の予想では、高齢者人口の中でも、介護が必要になってくるとされる75歳以上の後期高齢者数が2030年にピークを迎えるとされ、その後は減少に転じると見込まれています。
また世帯状況をみていくと、2020年における全世帯数は約60万1,402世帯あります。
そのうち高齢者のみの世帯は17万4,939世帯もあり、全世帯中の割合は29.0%になります。
今後は全世帯数は減少し、高齢者世帯が増えていくことが予想されています。
居宅サービスでは訪問介護と通所リハビリの利用者が増える見込み
愛媛県の要介護認定者数は2010年時点で7万7,017人、2015年に9万542人、2020年に9万3,503人、2024年に9万3,923人と推移。右肩上がりで増加しています。
また、2024年の要介護認定者数を要介護度別に見ていくと、要支援1は1万6,633人、要支援2が1万2,842人、要介護1が1万9,994人で、軽度者の合計は4万9,496人となります。
要介護2は1万3,674人、要介護3は1万959人で、合わせて中度者は2万4,633人。
要介護4は1万1,432人、要介護5が8,389人で重度者の合計は1万9,821人となっています。
それぞれの重度別の割合は、軽度者が約\52.7%、中度者が26.2%、重度者が21.1%です。
介護サービスの利用状況については、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービス全てにおいて、利用が増えると見込まれています。
特に居宅サービスでは、訪問介護と通所リハビリが、地域密着型サービスでは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と看護小規模多機能型居宅介護が増加すると見込まれています。
目標を基にケアプランを作成する介護予防支援を推進
愛媛県内では、これまでの介護予防事業から、2017年度にすべての市町で介護予防・日常生活支援総合事業へ移行するとして、自治体への支援を行っています。
高齢者が住み慣れた地域で暮らしていくためには、医療と介護の連携がかかせませんが、その連携推進のために、情報共有の支援や研修の開催、24時間365日サービスが提供できる体制の構築などを支援しています。
また民間企業やNPO法人、ボランティアなどが生活支援サービスの提供者として、参画しやすい体制を整えるよう市町に働きかけています。
さらに健康な高齢者や地域住民を支え手(サービス提供者)に、そしてその支え手の社会参加の場として生活支援サービスの体制を整えていくとしています。
これまで要支援1・2に該当していた高齢者は、介護予防プランに沿って、サービスを利用していました。
今後は、要支援者も、基本チェックリストに該当したサービス事業対象者にも、介護予防プランが立案されます。
これまでのケアプランはただサービスを利用するためのものでありがちでしたが、今後はサービスを利用することによってどうなりたいかという目標をもち、それに向かっていけるプランを作成できるよう、県は市町村に対して支援していきます。
さらに愛媛県では、「介護予防市町支援委員会」を設置しています。
この委員会では、市町によって実施されている介護予防事業についてを調査・分析・評価を行い、必要な支援につなげるというものです。
認知症高齢者のために専門家の対応力の向上を推進
愛媛県には、6つの圏域がありますが、地理的・文化的差異が大きく、地域包括ケアシステムの構築には、その地域の実情やニーズに合わせたものが求められています。
愛媛県では、地域包括ケアシステムを構築するための中心的役割を、地域包括支援センターが担うとしています。
愛媛県には、34ヵ所の地域包括支援センターがあり、直営が17ヵ所、委託が17ヵ所となっています。
その数は十分に整備されていますが、今後増大すると見込まれる業務量を見こし、人員体制の確保や研修の開催による職員の資質向上も目指していくとしています。
また、在宅介護支援センターを地域包括支援センターの支所として活用するなどの整備案も出されています。
また認知症高齢者への対応もあげられています。
まず認知症高齢者やその家族への理解者を増やすことを目的に、認知症キャラバン・メイトを養成するための研修を開催し、認知症サポーターをさらに増やしていけるよう継続的に取り組んでいます。
また認知症初期集中支援チームや認知症地域支援専門員を地域包括支援センターや認知症疾患センターに配置し、認知症高齢者への対応を行う体制を整備しています。
さらに、認知症高齢者への対応として、医療従事者や介護職員に対しても研修を行っています。
特に、かかりつけ医や病院に勤務している医療従事者向けの対応力を向上させる研修を行い、その研修修了者数を公表しています。
認知症高齢者を地域で見守っていくためには、専門家の力がかかせないため、この愛媛県の取り組みを見守っていきたいですね。
愛媛県の『救ピット委員会』とは?
社会福祉法が2000年に改正され、社会福祉法第83条にのっとって、全国の都道府県社会福祉協議会内に「運営適正化委員会」が設置されました。
愛媛県では、松山市にある愛媛県社会福祉協議会内に設置されています。
愛媛県の運営適正化委員会には、福祉サービスに対する苦情を解決する部会と福祉サービスの運営を監視する部会があります。
苦情を解決するための部会は、『救ピット委員会』と呼ばれ、福祉サービスに係わる苦情の相談を受けています。
専門の相談機関がある介護保険のサービスに関しては、苦情相談を受付けていませんのでご注意ください。
福祉サービスを利用するためには、自分でサービスを選び、契約をする必要があります。
その契約時に聞いていたサービスの内容が実際とは違ったり、受けているサービスでとても不快な思いをしている、不当にサービス提供を拒否されたなど、どんなことでも相談を受付けてくれます。
不満や苦情がある場合は、まずはサービス事業所の苦情受付担当者か事業所に設置されている第三者委員へ相談してみましょう。
サービスを受けている事業所の職員へは話しずらいという場合や、第三者委員に相談しても納得ができなかった等という場合は、ぜひ救ピット委員会へ相談しましょう。
救ピット委員会では、まず苦情受付担当者が相談を受付けますが、在籍している社会福祉の専門家や弁護士などと一緒に、相談事を解決に導いてくれます。
ここで相談された内容に関することは、絶対に秘密にしなければならないという決まりがあるので、安心して相談できますよ。