月額利用料10~15万円の施設が多く、費用面でも安心感あり
大分県は現在、九州において最も高齢化が進んでいる県です。
依然、高齢化率は高い数字を示していますが、その一方で老人ホームの施設数も充実しています。
2000年に高齢者保健福祉施策の基本方針を示す「豊の国ゴールドプラン21(大分県老人保健福祉計画・介護保険事業支援計画)」を策定した大分県では、それ以来、医療と介護を連携させた地域包括ケアシステムの構築に取り組み、介護予防や認知症対策、介護サービス基盤を整えてきたのです。
そのおかげで、65歳以上人口10万人あたりの老人ホームの数は68.3ヵ所となっており、これは香川県に次ぐ全国2位の数字。
空き室のある老人ホームも多く、希望の老人ホームに入居できる確率は高いと言えます。
ただし、こうして多くの選択肢から選べるのは大分県中部に位置する大分市や別府市だけです。
県北部・南部・西部では、人口の少なさに比例するように老人ホームの数も少ないため、大分県で老人ホームへの入居を考える際には、まずは大分市や別府市が第一選択肢となるでしょう。
費用面は平均的。
入居一時金が0~100万円、月額利用料が10~15万円程度のところがほとんどですが、中には高額な老人ホームもあります。
その大きな理由が温泉です。
全国的に有名なのは、別府温泉や由布院温泉。
大分県は温泉の源泉数(4,538カ所)、湧出量(29万1,340L/分)ともに日本一で、県として「おんせん県」を商標登録申請しているほどです。
そんな温泉源を利用し、施設内に温泉を有する老人ホームは概ね、高額の費用が必要になってきます。
とはいっても、入居一時金が数十万円、月額利用料も15万円以内がほとんど。
一年中、温泉の恵みを享受できることを考えれば、決して高い利用料ではないでしょう。
もちろん、施設内に温泉がなかったとしても、外出してちょっと足を伸ばせば、県内のそこかしこで温泉に入ることができます。
神経痛やリュウマチなど、関節に痛みのある高齢者の方は特に、温泉の恵みを実感できるはず。
大分県で老人ホームに入居するということは、他の県にはない大きなメリットがあるということを頭に入れておいてくださいね。
大分県の高齢化率は2040年まで上昇を続ける見込み
大分県の高齢者人口は、高度成長期以降急速に増加しました。
総人口、生産年齢人口(15歳~64歳)、年少人口(0歳~14歳)が軒並み年々減少しているのに対して、高齢者人口の推移はそれとは逆の傾向を示しています。
大分県の高齢者人口は、2005年に29万2,805人(高齢化率24.3%)、2010年に31万6,750人(高齢化率26.6%)、2015年に35万1,745人(高齢化率30.4%) 2023年に37万5,897人(高齢化率33.5%)に達しました。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
推計によると、高齢者人口は2025年までは増加し続け、高齢化率は少なくとも2040年までは増加し続けるとみられています。
介護給付費では居宅サービスが急増
大分県の介護保険サービスの利用状況を見てみると、まずサービス対象者たる要介護認定者数は、2024年度において要支援・要介護認定者が7万912人となっています。
これまでの推移としては、2010年度に6万1,877人、2015年度に6万5,862人、2020年に6万8,215人、2024年に7万912人となっています。
要支援認定者数は2005年度から2010年度にかけて増加幅が大きく、要介護認定者数は介護保険制度が始まった2000年度から2005年度にかけて増加幅が大きくなっています。
介護給付費の推移をみると、2000年度では県内の総額は459億円でしたが2000年代半ばにかけて急増化し2005年度には725億円に。
その後2006年度にいったん減少しますが、その後再び増額。
2012年度では962億円、2014年度では1,062億円と1,000億円越えとなっています。
介護給付費の内訳をみると、2000年度では居宅サービスが154億円、施設サービスが302億円と、施設サービスが居宅サービスの倍近い給付額となっていましたが、地域密着型サービスの始まった2006年度には、施設サービスが311億円、居宅サービスが329億円となり、居宅サービスの方が多くなります(2006年度の地域密着型サービスの給付費は34億円)。
その後、2010年には居宅サービスが489億円、施設サービスが321億円、地域密着型サービスが87億円、2014年には居宅サービス565億円、施設サービス330億円、地域密着型サービスが100億円となっています。2023年時点では居宅サービスが505億円、施設サービスが260億円、地域密着型サービスが142億円です。
多角的な介護予防「豊の国ゴールドプラン21」
大分県では介護予防への取り組み指針として「豊の国ゴールドプラン21」を策定。
県民への介護予防の普及啓発活動、介護予防に関わる職員への研修、介護予防市町村支援委員会の設置などを行っています。
特に普及啓発活動の一環として、県内の市町村の介護予防事業や各種事業所、高齢者の自主グループなどに取り組んでもらうべく、運動機能向上標準プログラム、口腔機能向上標準プログラム、栄養改善標準プログラム等を開発。
その普及を進めています。
運動機能向上標準プログラムは、3ヵ月に渡って全11回の運動教室を開くというもので、最初の1か月は運動できる体を徐々につくっていく「コンディショニング機関」。
2ヵ月目~3ヵ月目にかけては、負荷を高めて筋力増強を図るための「筋力向上期間」。
そして3ヵ月目の半ば以降は日常生活や趣味で必要となる動きを想定した「機能的運動期間」と定め、高齢者の運動機能を高めていきます。
口腔機能向上標準プログラムは、歯科医師、歯科衛生士などの協力のもと、集団指導、個別指導を織り交ぜた講座形式で行われ、月2回、1回90分で全6回開催が目安。
正しい歯の磨き方、入れ歯の手入れの方法、唾液の働き、気道感染と口腔ケアの関係など、口腔ケアに関する体系的な知識を学ぶことができます。
栄養改善標準プログラムでは、高齢者に多い栄養不足、骨粗しょう症や高血圧症対策、嚥下機能低下に合わせた調理方法などを総合的に学べます。
これら運動機能向上、口腔機能向上、栄養改善の取り組みは、県が提示した標準プログラムに沿う形で県内の市町村の介護予防事業、介護事業所、地域の高齢者の自主グループ等で実践されています。
もし介護予防活動に参加したい場合は、各市町村内にある最寄りの地域包括支援センターで相談してみましょう。
栄養士や歯科衛生士による訪問相談指導の充実を推進
大分県では、高齢者が住み慣れた地域で変わりなく生活し続けられるように、「地域包括ケアシステム」の体制整備に取り組んでいます。
日常生活域(中学校区規模)を「地域」と位置づけ、各地域内の医療、介護、生活支援・介護予防に携わるさまざまな組織、機関、団体が連携し、一体的に高齢者を支えていくというのが地域包括ケアの狙いです。
大分県では特に、各分野の専門家・代表者が集まって問題解決、情報共有を行う「地域ケア会議」の役割を重視。
ここを起点にして地域包括ケアシステム作りに取り組んでいます。
地域包括ケアの実現に向けて、医療分野では在宅医療の推進、医療と介護の連携、かかりつけ医・在宅支援診療所の増設、介護分野では地域密着型サービス・認知症施策の充実化等が進められています。
中でも重視されているのは医療と介護の連携。
地域包括支援センターやケアマネージャーがコーディネーター役となり、医療機関と介護事業所がうまく協働できるよう働きかけています。
従来の介助重視の「お世話型のケアマネジメント」から、自立して生活機能を高めてもらう「自立支援型のケアマネジメント」を実現するというのが、医療と介護の連携における目的です。
また生活支援・介護予防の分野では、地域の高齢者の集いの場の充実化、栄養士や歯科衛生士による訪問相談指導の充実化、リハビリ専門職を派遣して住民主体の取り組みを支援する、といったことが行われています。
大分県の「福祉サービス利用援助事業」とは?
大分県では、認知症の高齢者など自己判断能力に不安がある方に対して、福祉サービス利用の支援、日常生活における各種手続き・お金の管理の支援、重要な書類の管理などを行う「福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)」が実施されています。
県内でも一人暮らしの高齢者の方で認知症を患う人は増え続けており、認知症高齢者を狙った悪質商法などが多発しています。
もし一人暮らしをしている方で、医師から認知症の診断を受けた方、自分の判断に自信が持てなくなってきたという方は、この事業を活用することで自分の生活、財産を守ることができます。
福祉サービス利用の支援という点では、介護保険サービスなど各種サービスについての情報提供、利用の申し込み手続き、支払い手続き、本人に代わって苦情を申し出る、といったことを行ってくれます。
日常生活における各種手続き・お金の管理の点では、役所での各種手続き(住民票の届け出など)の代行、住居の改築や賃貸契約の手続きに関する相談、悪質商法に引っかからないためのクーリングオフの手続きの代行、福祉手当や年金の受け取り、公共料金・税金の支払い・家賃の支払いの代行、などを行ってくれます。
重要な書類の管理に関しては、各種証書、通帳、権利証、契約書類、保険証などの管理を行ってくれます。
利用の申し込みは各市町村内にある社会福祉協議会で相談することで行えます(秘密厳守)。
申し込み後、担当の生活支援専門員が高齢者宅を訪問し、さらに具体的な相談に応じます。
福祉サービス利用の支援、日常生活における各種手続き・お金の管理をお願いする場合は1回あたり1,330円、書類を預かってもらう場合は1か月あたり500円の費用がかかります。