見学時に確認すべきポイント
老人ホームを見学する際、事前に何も準備せずに行くと得られる情報が限られてしまいます。
そうならないためにも、前もってチェックすべき点を整理してから見学に行くようにしましょう。
見学する際にチェックすべき点は全部で22個あります。
項目 | 詳細 |
---|---|
建物・設備 | (1)居室 (2)共有スペース (3)入浴設備 (4)施設の使いやすさ・安全性 (5)清掃・設備メンテナンス (6)施設までの周辺環境・アクセス |
サービス (介護・医療・リハビリ) |
(7)健康管理体制 (8)通院時の付き添いや入院時対応 (9)人員体制 (10)ケア体制 (11)認知症ケア (12)リハビリ体制 (13)自立支援や介護予防 (14)医療連携・協力医療機関 |
スタッフ | (15)スタッフの対応 (16)勤続年数・離職状況・教育体制 (17)雰囲気 |
その他 (レク・ 食事・ 雰囲気) |
(18)レクリエーション・イベント (19)食事 (20)家族との面会 (21)嗜好品に関する対応 (22)ホーム長の運営方針 |
数が多いことから、事前にメモ帳などにチェックリストを書き留めておくことをおすすめします。
また、質問事項も合わせて記載しておくと聞き漏らすことも無くなります。
ページ内では「建物・設備」「サービス」「スタッフ」「雰囲気」の順でチェックポイントを解説しています。項目ごとに一つひとつ見ていきましょう。
1. 建物・設備について見るべきポイント
日常的に利用することの多い居室や設備の良し悪しは、入居後の暮らしを大きく左右する重要事項です。
「入居後にどのような暮らしを送りたいのか」といった入居の目的を照らし合わせながら、希望の生活ができるかどうかイメージすることが大切です。
建物・設備に関するチェック項目は以下の6つです。
- 居室
- 共有スペース・機能訓練室
- 入浴設備
- 施設の使いやすさ・安全性
- 清掃・設備メンテナンス
- 施設までの周辺環境・アクセス
以下で一つひとつ見ていきましょう。
1-1. 居室
居室の見学時には「生活動線上に不自由な点はないか」「快適に過ごせるかどうか」「必要な設備がそろっているかどうか」といった点に注意して見学しましょう。
以下は代表的なチェック項目をまとめた一覧表です。
- 窮屈に感じないくらいの広さがあるか
- トイレや洗面所などの有無
- 備え付けの設備(キッチンやべランダ、インターネット環境など)
- ナースコールの位置
- 介護ベッドは貸与なのか、レンタル料が必要か
- 家具・家電・寝具の持ち込みはできるか
- 収納スペース・洗濯スペースの有無
入居者の方が比較的自立している場合は居室の広さや、備え付け設備の内容は趣味などを楽しむうえで重要なポイントと言えます。
また介護を必要とする方や持病のある方の場合、もしもの時に備えてナースコールが手に届きやすい位置にあるかどうか確認が必要です。
居室が広い老人ホームを探す1-2. 共有スペース・機能訓練室
老人ホームに入居した場合、居室と同じく滞在時間が長いのが共有スペースです。
共有スペースに該当するものとしては「食堂・リビング」「機能訓練室」「多目的ホール・娯楽設備」などがあります。
毎日利用する食堂だけでなく、リハビリを受けたい方は機能訓練室を、レクリエーションを楽しみたい方は娯楽設備なども必ず見学するようにしましょう。
なお施設ごとに、共有スペースの広さや種類、形状などは大きく異なるため、入居後に自分が十分に活用できるかどうかも重要です。
また中庭やウッドデッキ、屋上庭園など外気や緑に触れられる空間があるかどうかも確かめておきましょう。
園芸ができる老人ホームを探す共有スペースにある掲示物もチェックする
老人ホームの共有スペースには、入居者が季節行事やレクリエーションを楽しんでいる写真や、入居者がつくった作品などが飾ってあることがあります。
そういった掲示物からも、施設での生活や雰囲気を推し量ることができます。
また掲示板には食事の献立や、1週間の予定なども載っているので、どんな毎日が過ごせるのかを垣間見れます。
見学時にはこうした掲示物にも目を向けてみることをおすすめします。
1-3. 入浴設備
入居時点では自立している方でも、入居後に要介護状態となり、介護度が上がっていく恐れがあります。
そのため、介護度が重くなった場合を仮定して、入浴設備をチェックしておくことも大事です。
以下は代表的なチェック項目をまとめた一覧表です。
- 安全対策(手すりの位置やスロープの設置など)に問題はないか
- 介護度に合った入浴設備(機械浴など)があるか
- 温度管理はきちんとされているか
寝たままで入浴できる特殊浴槽がある施設だと、要介護度が重度になってもお風呂を利用できます。
また、見学する時間帯によっては確認できない場合もあることから、入浴設備の見学を希望する場合は事前に問い合わせておきましょう。
機械浴・特殊浴がある老人ホームを探す1-4. 施設の使いやすさ・安全性
施設の使い勝手はもちろんのこと、安全に利用できるか、入居目的に合った環境かどうかといった視点も大切です。
以下は代表的なチェック項目をまとめた一覧表です。
- 居室から食堂までの距離
- トイレや洗面所の使い勝手の良さ
- 床や壁の材質、使われている家具などの安全性
- 趣味嗜好を楽しめる環境か
趣味嗜好を楽しめる環境か否かは、生活の質を保つうえでも重要なポイントです。
使い勝手の良さや、距離の長さについては複数の施設を比較することで良し悪しがわかってきます。そのため、複数施設を見学し、自分に合った施設を選ぶようにしましょう。
1-5. 清掃・設備メンテナンス
老人ホームの入居者の中にはおむつを使っている方もいらっしゃいます。
また、排泄介助のいらない方でも、排泄時に便器周辺を汚してしまうことも少なくありません。そういったときにすぐにきれいにしなければ、床や壁などに臭いが染みついてしまいます。
対応力の高い施設であれば、汚れてもすぐにきれいにしているので、嫌な臭いがこもっているということはありません。加えて施設によっては、エレベーターを入居者用と施設職員用に分けていることもあります。
さらに、共有スペースは「整理整頓されているか」「ゴミや食べかすが落ちていないか」「人や車椅子が楽に移動できるか」といったことも確かめましょう。
1-6. 施設までの周辺環境・アクセス
施設見学では実際に現地までの道のりを体験し、周辺の様子を目で確かめることができます。
アクセスについては「家族が入居後に通いやすいか」という点をチェックしましょう。
家族が高い頻度で面会に行くことは、入居後の環境変化で感じやすい不安や孤独感などを和らげることにつながります。
さらに施設側も入居者のことを家族に相談しやすくなるので、入居者側と施設側の両方にメリットがあると言えます。
また、自立の方で、自由に外出ができる施設に入居する方の場合には、見学時に施設周辺を散策し、近くの買い物スポットや散歩コースを確認することをおすすめします。
駅近・アクセス良好な老人ホームを探す近隣住民やお店に老人ホームの評判を聞いてみる
見学の前後で余裕があれば、近くの喫茶店などに立ち寄り、施設の評判を聞いてみましょう。
入居者が近隣を散歩したり、地域の方を招いたイベントなどを開催したりしている施設なら、地域の方が客観的に施設をどう見ているのかを知ることができます。
みんなの介護の施設紹介ページでは実際に見学に訪れた方のリアルな口コミを紹介していますので、ぜひご覧ください。
2. サービス(介護・医療・リハビリ)について見るべきポイント
ここまでは施設や設備、周辺環境を解説してきました。この項目からは施設入居後に利用することになるサービスを紹介していきます。
サービスに関するチェック項目は以下の8つです。
- 健康管理体制
- 通院時の付き添いや入院時の対応
- 人員体制
- ケア体制
- 認知症ケア
- リハビリ体制
- 自立支援や介護予防
- 医療連携・協力医療機関
自立している方、介護度が重たい方、医療ケアを必要としている方など施設入居を考えている方全員に関わる内容なので、しっかりと確認していきましょう。
2-1. 健康管理体制
健康管理体制とは、入居者への訪問診療や健康診断などのサービスのことです。
チェックポイントとしては、これらサービスがどのくらいの頻度で受けることができるかどうか。こまめな健康診断は病気の早期発見にもつながるので、必ず確認したい項目です。
また「看護師が常駐している時間帯」「看護師不在時の緊急時の対応」について確認するようしましょう。
2-2. 通院時の付き添いや入院時の対応
通院時に、施設職員が付き添うサービスを提供している老人ホームがあります。
そういったサービスを利用する場合、別途費用がかかることがあります。利用を検討している場合は「利用料」「利用回数の上限」を確認しましょう。
また入居後に体調を崩して医療機関に入院することになっても、すぐに退去を求められることは基本的にありません。
しかし、退去しないで入院する場合、入院費用に加えて老人ホームの家賃や管理費を支払い続ける必要があるため、入院が長期化すると経済的負担が大きいです。
もし入院が長期化する場合は、施設側と今後について相談する必要があります。入院時の対応についても、事前に施設へ確認しておくと安心です。
Q.入院したら老人ホームから退去しなければいけないのでしょうか?
2-3. 人員体制
介護付き有料老人ホームでは、利用者の人数に対して介護職員または看護職員を何人常勤させていなければいけないかを法律で定めています。
要介護者に対しては、利用者3人に対して1人以上、介護職員または看護職員を配置する義務があります。
これを「3対1」以上の人員体制と言います。
ただし、要支援者の利用者に対しては、10人につき1人以上の配置が義務付けられています。
人員体制が「2対1」であれば、3対1の人員体制よりも手厚いと言えます。
有料老人ホームのケア体制の充実度を測るひとつの指標になります。
職員体制が充実している老人ホームを探す2-4. ケア体制
有料老人ホームでは、大まかに「ユニットケア」「フロア分けケア」「混在型ケア」の3種類のケア体制のどれかを採用していることがほとんどです。
以下でそれぞれのケア体制が、どのような内容なのか解説しています。
2-4-1. ユニットケア
ユニットケアとは、入居者10名前後のユニット(グループのこと)をつくり介護をする体制です。
ユニットごとに共用トイレや浴室、食堂などが分けられていて、介護職員も決まったユニットを担当します。
顔なじみの入居者や職員と共同生活を送るため、よりアットホームな環境で生活することができます。
そのため入居者も過ごしやすく、ケアも細やかな介護を期待できると言えます。
2-4-2. フロア分けケア
有料老人ホームの各階(フロア)ごとにグループ分けし、ケア体制を整えているのがフロア分けケアです。
フロアの一部を、認知症フロアとして設定している施設も多くあり、認知症ケアに慣れている職員が対応してくれるメリットがあります。
ユニットケアのように、各フロアに担当の介護職員がつくため、慣れ親しんた職員からきめ細やかな介護が提供できる環境です。
2-4-3. 混在型ケア
介護度や身体状況によって入居者を区分分けしないケア体制です。
職員数が少なくても対応できるケア体制で、その分利用料金がリーズナブルになりやすいというメリットがあります。
また、介護職員が担当ユニット・担当フロアなどを持っていないため、すべてのスタッフが入居者全員の心身状況を把握できている安心感があると言えます。
2-5. 認知症ケア
認知症ケアに対して、どんな姿勢で取り組んでいるかなど、ケア体制は施設ごとの特色が出やすく、入居者にとっても非常に大切なポイントです。
例えば認知症ケアなら、次のようなポイントをチェックしてみましょう。
- 担当介護職員と顔なじみの環境か
- 徘徊防止などの安全対策は万全か
- 家庭的な雰囲気かどうか
- 拘束や虐待、事故防止のための対策があるか
- 音楽療養や回想法など取り入れているか
- 入居者に問題行動が見られる場合、退去が必要があるか
- 入居者の表情や様子はどうか
特に、退去要件は施設によって基準が大きく異なることから、必ず確認することをおすすめします。
認知症の方でも入居できる老人ホームを探す2-6. リハビリ体制
老人ホーム入居後も、寝たきりの予防や介護度の進行を防止したり、筋力を維持したりするために、リハビリや運動習慣をできる限り維持することが大切です。
入院生活後に老人ホームへの入居を検討する際には、特にリハビリを継続的に受けてほしいという家族も多くいます。
見学先の老人ホームがどの程度リハビリが充実しているかは、次のようなポイントを確認してください。
- リハビリ設備
- リハビリの頻度
- リハビリ専門スタッフの有無
- 具体的なリハビリ内容
上記のようなポイントを踏まえて、安心してリハビリをお任せできる施設を見つけましょう。
リハビリが充実している老人ホームを探す2-7. 自立支援や介護予防
有料老人ホームなどに元気なうちから入居した場合、入居後に自立支援や介護予防につながるサービスを受けることができます。
具体的な内容としては、トレーニングマシンの利用、体操や脳トレなどのレクリエーションなどが中心です。
介護予防運動指導員などの資格を持つリハビリスタッフを配置し、専門知識に基づく効果的な介護予防・自立支援サービスを行っている施設も多いです。
ただし、介護予防・自立支援サービスを行うための専門職員に法的な配置基準はありません。
施設によって取り組み姿勢に差が生じやすいので、入居後にどのような介護予防・自立支援のサービス・設備を利用できるのか、見学時に確かめておきましょう。
2-8. 医療連携・協力医療機関
今は健康だったとしても、将来いつ必要になるかわからないからこそ、医療体制の充実は入居者の大きな安心へとつながります。
有料老人ホームでは、医療機関との協力体制を築き、往診や健康診断、緊急時のサポートなどが受けられるようになっています。
ただし、医療連携の充実度は老人ホームによってさまざまです。
見学時のポイントは以下の通りです。
- 訪問診療が受けられるのか
- 退去が必要になる疾患はあるか
- 服薬サポートはどういう形で行っているか
- 糖尿病など持病があっても入居できるか
医療ケアが充実している施設は以下のページからお探しいただけます。
3. スタッフについてみるべきポイント
見学時のスタッフに対するチェックポイントとしては、「スタッフの対応」「スタッフの勤続年数・離職状況・教育体制」「ホーム長の運営方針」などがあります。
以下でそれぞれを見ていきましょう。
3-1. スタッフの対応
実際に見学に行ったときは、スタッフの身だしなみや挨拶の仕方、話す言葉遣いなどに注目しましょう。
加えてスタッフの疲れ具合なども要確認です。人員配置体制に不足があったり、スタッフにとって働きづらい職場だったりすると、疲労度が顔や姿勢、態度に現れます。
また、忙しくていつもバタついていてスタッフに話しかけにくい雰囲気がある場合、入居者に対しても同様の状況が生じている可能性があるので注意が必要です。
3-2. スタッフの勤続年数・離職状況、教育体制
見学の際は、その施設での勤続年数や離職状況、教育体制などもチェックしておきましょう。
施設職員の勤続年数が短く離職率の高い施設だと、入居後に職員と信頼関係が築けたとしてもほかの人にすぐに入れ替わってしまい、なじみの関係が作りにくいです。
介護職員の質は、提供されるサービスの質に直結しています。
離職率が低い施設は、定期的な研修が行われ、キャリアアップできる人事制度が整っていることが多いです。
職員が意欲を持って働ける環境を整えている施設は、人員体制が安定し、サービスも充実していると言えます。
3-3. 雰囲気
毎日を過ごす場所となるので、老人ホームの雰囲気が本人もしくは家族に合っているかは非常に大切です。
老人ホームの職員のあいさつや対応などを見学しながらよく観察してみましょう。
できれば介護中やレクリエーション中の様子などを見ることができれば、現在入居している方の雰囲気もうかがえます。
例えば、次のようなポイントがチェック項目として挙げられます。
- 入居者の方の表情は明るいか
- 職員がいきいきと笑顔で働いているか
- 職員の介護中の言葉遣いは丁寧か
- きちんと清掃が行き届いているか
- 季節感のある飾り付けなどがされているか
- 本人の性格に合ったケアが受けられそうか
落ち着いた雰囲気が良いのか、和気あいあいと温かい雰囲気が良いのかなど、あらかじめイメージしておくと良いでしょう。
4. ほかの入居者や施設の雰囲気について見るべきポイント
その他にチェックしておきたいポイントとして、レクリエーション・イベントの内容や食事、嗜好品への対応などがあります。
設備やサービスなどだけでなく、実際に足を運んでみて感じた印象も大切な判断材料になり得ます。
気になった点や感じたことがあればメモを取り、一緒に訪問した家族がいれば、どう感じたかを聞いてみましょう。
4-1. レクリエーション・イベント
老人ホームでは、レクリエーションが日々行われ、さらにひな祭りやクリスマスなど季節のイベントも開催されています。
職員が工夫を凝らして企画を立てており、その施設の特徴が表れる内容になっていることが多いです。
レクやイベントは入居生活の生きがいや楽しみを生み出すことにもつながるので、老人ホームを探すときは施設でのレクの実施状況も要チェックです。
見学時にレクやイベントをチェックしたいときは、申込時に相談してみましょう。
イベントに参加してみる
有料老人ホームでは、入居者の家族や地域の方も招いたイベントを開催していることが多くあります。
ほかの入居者や家族の様子、地域との関係性などが見られるだけでなく、実際の入居後のイメージもつかめるかもしれません。
老人ホームへの入居に本人が不安を感じている場合には、イベントなどを通じて「楽しく過ごせそう」と感じることができれば、入居への不安感も解消されます。
レクリエーションが充実している老人ホームを探す4-2. 食事
食事は入居生活における楽しみのひとつとなり、その良しあしは生活の質にもかかわります。
入居後、施設の食事が口に合わないということになると、食事が進まなかったりストレスがたまったりして、心身不調の原因にもなるケースがあります。
その施設でどんな食事が提供されているのかは、見学時の要チェックポイントです。
月間の献立表にも目を通し、メニューや食材に偏りがないか、季節感を持たせるなど楽しめる食事内容になっているかを確認する方法もあります。
食事でチェックすべき点としては、噛む力や飲み込む力(嚥下機能)が弱くなっている方の場合、介護食に対応しているのか確認する必要があります。
腎臓病や糖尿病など持病を持つ方の場合には、その施設が個別食や治療食に対応しているのかも重要な判断ポイントです。
4-2-1. 食事の時間に見学をする
職員や入居者の動きや表情、介護の様子を見るなら、食事の時間が最適です。
施設側からすると忙しい時間帯なので、見学が難しい場合もありますが、もし見学できるようなら見ておくと良いでしょう。
それ以外の時間では入居者が自室で休まれていることが多く、実際に入居している方や職員の様子は見えにくい可能性が高いです。
4-3. 家族との面会
老人ホームの見学時には、家族との面会について聞いておくことも大切です。
例えば、次のようなポイントがチェック項目として挙げられます。
- 入居者と家族はどこで面会できるのか
- 家族用の食事は用意されるのか
- 家族が宿泊できるのか
- 面会可能な時間帯はいつなのか
- オンライン面会は可能か
もしも面会時に入居者と同じ献立を楽しむことができれば、普段からどのような食事をしているのかを家族が確かめることもできます。
また、家族と面会するための部屋としてゲストルーム、ファミリールームなどを設けている施設もあります。
その老人ホームが入居者と家族との関係をどのくらい重視しているかによって、家族の面会にかかわるサービス、設備状況は大きく変わります。
4-4. 嗜好品に関する対応
老人ホームの中には、喫煙や飲酒ができる施設もあります。入居にあたってタバコ、お酒などの嗜好品を持ち込みたいと考えている場合は、その点を見学時に確認しましょう。
タバコの持ち込みを希望する場合は、喫煙できる場所は限られているのか、限られているならどこに喫煙スペースが設置されているのか要チェックです。
4-5. ホーム長の運営方針
ホーム長は現場の介護職員の統括者であり、施設運営の責任者です。
見学の際、もし可能であれば、施設の理念や運営方針、さらに職員の教育などに関する考え方を、ホーム長から直接聞く機会を持つようにしましょう。
また、その施設が持つ最大の特徴や入居後のメリット、注意事項などを聞いておけば、施設選びにおける重要な判断材料です。
老人ホームへの見学が必須の理由
老人ホームに関する情報は、パンフレットやホームページを見ればある程度わかります。しかし、見学をしないで入居すると「こんなはずじゃなかった」ということが次々と出てくるものです。
「百聞は一見に如かず」の言葉どおり、実際に見たり聞いたりしないとわからないことがたくさんあるのです。実際に見学すると施設全体の雰囲気はもちろん、スタッフや入居者の様子もわかります。
たとえ希望していた立地じゃなくてもその様子を見て、「ここにお世話になりたい」と思うことがあるかもしれません。
また、逆にどれだけ設備が整っていても、施設全体の雰囲気が悪ければ候補から外れることもあるでしょう。パンフレットなどをチェックして、ある程度の条件を満たしている施設は積極的に見学しましょう。
老人ホームの見学時に質問すべきこと
直接、施設職員と話ができる有料老人ホームの見学。しっかりと疑問を解消するためにも、チェックシートを準備をしておくことをおすすめします。
チェックシートを作成しておけば「チェックし忘れた」「聞きそびれた」ということがなくなります。
老人ホームの見学時に最低限聞いておきたいポイントは次のようなものがあります。
- 入居条件
- 入居一時金の償却条件
- 月額利用料
- 介護方針
- 個別対応
- 保証人の責任範囲
- 退去要件
- 運営法人の経営状況
上記はあくまで見学予約をする際にチェックしたい項目の一例に過ぎません。確認漏れがないように、あらかじめチェック項目をまとめておくことが大切です。
そこで、見学時の確認ポイントをまとめたチェックシートをご用意しました。老人ホームを見学する際には、以下のチェックシートをご活用ください。
画像をクリックするとPDFが表示されるので、ダウンロードして印刷し、当日持参すると良いでしょう。
続いては、各チェックポイントについて詳しく解説していきます。
入居条件
有料老人ホームの施設種別ごとに入居条件が定められ、介護度や持病の有無などによって、入居の可否が違います。
次のことを担当者に伝え、実際に入居できるかどうかを相談してみましょう。
- 介護度
- 認知症の有無
- 持病や病歴
- 必要な医療対応の有無
- 介護食や療養食対応が必要かどうか
老人ホームの入居条件について詳しくは以下の記事で解説しています。
入居一時金の償却条件
高額な入居一時金を支払ったのに、退去時に考えていた額より返還金がずっと低い金額だった…というトラブルは数多く報告されています。
Q.老人ホームの入居金が返還されるのはどのような場合ですか?
入居一時金は、部屋代の前払いとして設定されているケースもあり、それぞれの施設ごとに償却額の計算方法が設定されています。
具体的に1年後や3年後に退去した場合、入居一時金がどのくらい返ってくるのか、質問しておくことでトラブル防止も可能です。
入居一時金0円の施設を探す月額利用料
後々のトラブルとなりやすいのが、月額利用料や入居費用などお金に関する問題です。
パンフレットに書かれている月額利用料には、医療費やおむつ代などの日用品費、レクリエーション参加費は含まれていないことがほとんどです。
【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)
また、介護保険サービス費も介護度や望む介護サービス内容によって異なります。
次のようなポイントを、担当者に質問してみましょう。
- 部屋ごとの水光熱費は料金に含まれているのか
- おむつ代などの日用品費はいくらくらいか
- レクリエーション参加費はかかるのか
- そのほか追加で必要になる費用はあるか
入居前に有料老人ホームにかかる費用をできるだけ細かくシミュレーションしておくことが大切です。
介護方針
どんな方針で介護やサービスを提供しているかは、非常に重要なポイントです。
担当者の話している内容と、実際の施設見学時の印象などを照らし合わせながら総合的に判断すると良いでしょう。
個別対応
入居する本人および家族が希望する医療行為やリハビリ、食事形態などに個別対応してくれるのかどうかを確認しましょう。
保証人の責任範囲
多くの有料老人ホームでは、入居時に連帯保証人を決めておかなければなりません。
連帯保証人は、万が一利用料金が未納になった場合の保証や、病気や怪我・急変時の緊急連絡先として求められることがあります。
有料老人ホームによって、保証人として認められる範囲や、責務などが異なります。
老人ホームの保証人について詳しくは以下の記事で解説しています。
退去要件
老人ホームでは、「退去要件」というものを定めており、終身利用契約であったとしてもケア体制が対応できないと判断される場合には、退去しなくてはならないこともあります。
終身利用を希望するなら、看取りに対応できるかどうかを確認しておきましょう。
施設の見学時に、看取りに対してどのような方針をとっているのかをスタッフに尋ねると、終末期ケアの充実度をチェックできます。
そのときになってトラブルにならないように、事前に退去要件を確認することが大切です。
運営法人の経営状況
近年では、介護分野を専門とする法人だけでなく、医療分野や不動産分野、さらには建設分野の法人が有料老人ホームの運営を行うようになっています。
運営法人には得意とする領域があるので、自分が入居後に受けたいサービスに合った施設を選ぶのもひとつの方法です。
また、民間企業が運営している施設では、運営途中で法人が交代するケースや、事業不振により倒産するケースも少なくありません。
運営法人の財務状況や情報開示要求への対応などを、見学の際に確認しておくと良いでしょう。
経営状況が安定しているかどうかは、入居者の入居率と退去率からも推測できます。退去率がほかの施設に比べて高いようであれば、退去理由を施設側に問い合わせましょう。
老人ホーム見学までの手順とマナー
見学前の施設の予習も大切
チェック事項を明確にしておくためにも、事前にパンフレットや重要事項説明書などを取り寄せて、老人ホームの概要を理解しておきましょう。
重要事項説明書には以下のような内容は記載されています。
- 職員の人数とその勤務形態
- サービス内容
- 入居者の平均年齢と要介護度
- 利用料金
- 介護にかかわる職員体制
パンフレットと合わせて、見学前に内容を確認することをおすすめします。
【契約時に確認すべき10項目】老人ホームの重要事項説明書とは?
また、見学に行く前に、口コミ情報をチェックすることもおすすめします。既に見学された方の感想を確認することで、当日確認すべき点が新たに見つかるかもしれません。
見学予約は絶対に取ろう
見学の予約は施設の担当者がいる日に合わせる必要があるため、見学日の前日などに連絡しても予約を取ることは難しいです。
時間的に余裕をもって早めに施設側に連絡し、しっかりと日程調整した上で予約を取りましょう。見学する時間帯は、施設までの移動時間などを考慮して決める必要があります。
すぐに施設見学をご希望の方は、みんなの介護入居相談センターをご利用ください。
見学予約時の確認事項
以下は見学予約時の注意点をまとめています。
- レクリエーション・食事・イベントなどの様子を見たい場合は、その旨を伝えて見学できる時間を確認する
- 施設で提供されている食事の試食をしたい場合、その可否を確認する
- 自家用車で見学先に行く場合は、駐車場の有無を確認する
- 重要事項説明書などの書類を閲覧したい場合は、その旨を伝える
- 本人が寝たきりで見学できない場合は、どこをチェックするかを本人と家族で事前に相談する
要望を当日に伝えると施設としても対応できない可能性があるため、あらかじめ相談員に伝えましょう。
持ち物
見学時には筆記用具、自分で作成した見学用のチェックシート、カメラ、持ち込みたい家具を置けるかどうかを確かめるためのメジャー、温度計・湿度計などを持参しましょう。
特にチェックシートは重要です。当日確認すべきポイントやスタッフに質問すべきことを忘れないように、事前にチェックシートにまとめておきましょう。
見学中に疑問を感じることがあれば、前もって用意した内容ではなくても積極的にスタッフに質問し、確認することも大事です。
見学前・見学時のマナー
見学前や見学時には、ほかの入居者や施設職員に配慮し、以下のようなマナーを守るようにしましょう。
- 予約日時は厳守が原則ですが、到着が早くなるとき、遅くなるときは前もって連絡する
- 居室で休んでいる人もいるので、勝手に中に入ることや、大声で話すことは控える
- 入居者に話しかけたいときは、職員の許可を取る
- 施設内の写真を撮りたいときは、職員の許可を取る。
また、撮影の際は入居者の顔を写さないよう配慮が必要です。
施設にいるほかの入居者や職員は、もし本人が入居した場合には一緒に過ごします。
気持ちよく入居できるように、見学時にも周囲の人たちに配慮することが大切です。
見学時間帯と回数は?
老人ホームの見学は、できる限り複数の施設を訪問し比較検討できるようにするのがオススメです。
複数の施設を見て回る際のポイントは、「入居費用や条件が似ている施設を選ぶこと」です。
同じような条件の施設同士を比較すると、それぞれの特徴を把握しやすく、自分に合った施設を見つけやすいでしょう。
また、訪問の際は昼食時やレクリエーションの時間など、入居者と職員が共有スペースに集まる時間帯を目安に見学すると、施設の雰囲気や日常生活の様子をチェックしやすいです。
1回見学しただけでは、施設のことをしっかりとは理解できないかもしれません。「もう1回見ておきたい…」と少しでも感じたら、施設職員に相談してみましょう。
『みんなの介護入居相談センター』を活用する
「みんなの介護」入居相談センターは無料で、プロの相談員が希望条件に沿った施設を紹介しています。
立地条件や費用、設備、利用したいサービスなど大まかな条件を伝えていただければ、該当する施設をご提案します。
また、資料請求や見学予約もまとめて対応しています。
相談は電話とチャットにて受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
パンフレットを見る際の注意点
ここまでは施設見学のチェックポイントや質問事項を解説してきました。
この項目では冒頭でも少しふれた施設のパンフレットに関する注意点を紹介します。
パンフレットの記載内容に惑わされないためにも大切なチェック事項です。
チェックポイントは以下の3つです。
- 特定施設入居者介護の指定
- 終身介護の記載
- 24時間対応の表現
特定施設入居者介護の指定
まずチェックしたいのが、パンフレットに「特定施設入居者介護」の指定を受けていることが記載されているかどうかです。
特定施設入居者生活介護の指定を受けていれば、施設が直接的に介護保険サービスを提供することが許可されています。
終身介護の記載
パンフレットに「終身介護」と書かれていると、一生安心と思ってしまいがちですが、実はこの「終身介護」という言葉にも注意が必要です。
各老人ホームには退去要件というものが定められており、認知症の悪化により他人に危害を加える恐れがある場合などには退去が求められることがあります。
また、入院治療が必要になり3ヵ月以上など長期間の入院が必要となった場合には、退去しなければいけないという退去要件を設けている施設もあります。
24時間対応の表現
有料老人ホームなどの入居施設のパンフレットに「24時間対応」と書かれていても、実際の24時間対応の内容にはいろいろあります。
24時間対応の意味
- 介護スタッフが24時間ずっと施設内に常駐している
- 看護スタッフも24時間ずっと施設内に常駐している
- 夜間でもナースコールで外にいる職員に連絡が取れる
- 医師と24時間、連絡がつく
夜間の時間帯にどんな職員が、何人体制で常駐しているのか、夜間の医療対応には具体的にどんなものがあるのか、などを確認することが大切です。
夜間にもスタッフが対応している施設をお探しの方は以下のページから施設をお探しください。
見学の次は体験入居で生活を確認
複数の施設を見学し、その中から「ここの施設でお世話になりたい」と思えるようなところが見つかれば、次は体験入居を申し込みましょう。
ここでのポイントは、比較検討するのはあくまでも見学までということです。たとえば複数の施設で体験入居をしたあとで候補を絞ろうと思うと、得られる情報が多すぎて決められなくなります。
それよりも見学で「ここ!」というところを決め、その施設に体験入居することで、実際に入居したあとのことを考えてみましょう。
入居すべきか迷ったときは、マイナス点をどれだけ重視するのか、入居してから慣れることができないかなどをじっくり考えてみましょう。
実際に入居してみないとわからないのであれば、90日以内のクーリングオフ期間を体験入居の延長期間ととらえ、入居してみるのも良いかもしれません。
施設での生活を体感する
体験入居をすると施設での生活がどのようなものか体感できます。老人ホームの一日の流れはおおよそ決まっています。
食事の時間は3食とも1時間~2時間程度とられていることが多く、スタート時間もたとえば「朝食は7:00から」「昼食は11:30から」「夜は18:00から」など、各施設で決まっています。
入浴は午前中に済ませる施設が多いです。共有の入浴室を使う施設は入浴時間が決まっていますが、浴室が付いているタイプの居室なら自由に入れます。入浴介助が必要な方は週に2~3回程度の入浴になることがほとんどです。
介護保険では、入浴回数は最低週2回と決められています。ほかにも掃除や洗濯の頻度は各施設によって違うので、実際に体験して気づくこともたくさんあるでしょう。
生活リズムが合わないと感じたときは、どこまで希望を考慮してもらえるかも確認しましょう。
老人ホーム見学は早めの行動が肝心
自分に合った老人ホームかどうかを確かめるためには、実際に施設を訪れて、施設やサービス内容を見学することが大切です。
入居後に「こんな施設だとは思わなかった」と後悔しないように、見学を通して施設の実態を自分の目で見ることが重要といえます。
見学に行くことで、現在まさに入居して生活している方々や、働いているスタッフの様子をチェックできます。パンフレットやホームページからでは伝わらない、施設全体の雰囲気を肌で感じることができます。
見学時は現在の状況を伝えながら、将来症状が悪化した場合にも住み続けることができるのかも要チェックです。
ご本人が入居を拒んでいる場合でも、見学や体験入居をきっかけに、「ここなら入りたい」と考えが変わることもありえます。
早め早めに入居できる老人ホーム探しを始めてみると良いでしょう。