四万十川や牧歌的な田園風景が高齢者の穏やかな暮らしを約束します
高知県は人口が少なく、その中で高齢者が占める割合が多い現状。
さらに、高知県では老人ホームの数もそれほど多いというわけではありません。
65歳以上人口10万人あたりの老人ホームの数が47.5と、指標値の48.6を下回っており、需要と供給のバランスが取れていないのです。
これから高知県で老人ホームへの入居を考える場合は、そうした現状も考慮に入れ、資料請求や現地での施設見学も早めに行動に移すと良いでしょう。
そんな数少ない老人ホームの中でも、介護療養型医療施設の数だけは多いという特徴があります。
総数は2,463床で、65才以上人口100人あたり1.15という数字は全国一。
そもそも高知県は、人口10万人あたりの病院数が全国で一番多いため、数多い高齢者の受け入れるための受け皿として病院が選ばれ、介護療養型医療施設として機能しているという背景があるのです。
ただし、介護療養型医療施設は2018年をメドに廃止の方向で検討されているので、これから入居を考える高齢者やその家族は、それ以降のこともきちんと計画に入れておきましょう。
高知県内での老人ホームの分布を見ると、県庁所在地である高知市が中心で、それ以外の市町村ではかなり数少なくなっています。
高知市内は比較的空き室も多いようですが、一方で高知市以外での入居を考える場合は、施設の種類の選択肢の少なさ、そして入居待ちとなるケースが多いことを頭に入れておく必要があります。
高知市内は意外とコンパクトにまとまっており、バスや路面電車など市民の足となる公共交通機関も高い利便性を誇っていると同時に、高齢者が利用しやすいような社会体制も整っています。
一方で、”最後の清流”と呼ばれる四万十川をはじめ、南には雄大な太平洋を望み、北には四国山地がそびえるなど自然に恵まれており、平野部では牧歌的な田園風景も広がっています。
高齢者が便利に、そしておだやかに生活できる環境は整っていると言えるので、あとは老人ホーム施設が充実することを願うばかりです。
高知県は65歳以上の高齢者が全国で2番目に多い
高知県は日本で3番目に人口の少ない県で、その人口は東京都の約半数程度です。
県の面積の80%以上が森林で占められている事からも居住地の少なさは明らかです。
また県民所得も全国平均の4分の3程度となっており、1955年の88万人をピークにこの60年間で16万人以上の人口減となっています。
高知県は何と言っても大変に高齢化が進んでいるのが特徴です。2023年には県民の35.6%が65歳以上の高齢者となっており、その割合は秋田県に次いで全国でも2番目に高い数値です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
生産者人口も60%を大きく割り込んでいますし、年少人口も全国平均以下ですから、いかに高齢化が進んでいるか分かります。
また平均寿命が長いということの象徴なのが、もう10年以上75歳以上の後期高齢者が74歳未満の前期高齢者の数を上回っています。
これは全国的に見てもこれからの将来はそうなると推定されていますが、現状で、しかももう10年以上続いているのは極めて稀な状況です。
高知県では人口の減少に歯止めが掛からないことから、今後も高齢化率は上昇し続けるとみられています。
2040年には40%を突破する見込みですが、これは各世帯に必ず高齢者の方が1人以上いる計算になります。
これだけの高齢者の方がいらっしゃいますので孤立化も深刻です。
2020年には既に全世帯の内31%が高齢者の単身、もしくは高齢者夫婦のみの世帯になっています。
特に単身高齢者が全国平均に比べ非常に高くなっており、地域での見守りなどが大きな課題となっています。
施設型サービスへの依存度が高い
2024年の調査によると、高知県では介護保険の第一号被保険者の内19.5%の人が要支援、要介護の認定を受けています。
認定率はそれほど高い訳ではありませんが、既に後期高齢者の数が前期高齢者を上回っている現状のため、今後は飛躍的に認定数が上昇する懸念があります。
介護保険サービスの利用状況ですが、認定者の内約2割がサービスを利用していません。
既に入院などで医療サービスを受けている方もいらっしゃいますが、介護サービスの利用率は決して高くないのです。
全国的な傾向からかけ離れた現状を鑑みて高知県では、地域密着型の介護サービスの充実に力を注いでいます。
特に過疎化、高齢化が進む中山間部では地域包括ケアシステムとも連携した事業展開を推進しています。
「いきいき百歳体操」を開発した高知市は、介護予防の意欲が高い
高知県は全国で秋田県に次ぐ高齢化率となっており、地域的な過疎化の問題なども山積しています。
高齢者の多さは既に10年以上も前から後期高齢者が前期高齢者を上回っていることからも深刻で、介護、看護の必要性が日々高まっていく状況です。
介護、看護の体制づくりも重要課題ですが、重度な介護状態にならない方策、いわゆる介護予防も非常に大切です。
その中で高知市は全国にも広まっている「いきいき百歳体操」を開発した自治体です。
その広がりは顕著で、県内約500か所で週1回以上の体操教室が開かれており、西日本を中心に1,500か所で行われています。
10段階に調節できる重りを手首や足首に巻き付けながらゆっくりと動かす運動で、低下してしまう筋力アップに努めます。
筋力の運動は週2回程度で十分とされているので毎日行う必要がない分、長く継続できるメリットがあります。
南国市では「ひいといサロン」と名付けられた高齢者の方の集いの場があります。
「ひいとい」とは高知の方言である土佐弁で「一日」という意味だそうで、一日ゆっくり過ごしましょうという意味で命名されたそうです。
地域の高齢者の方が自主的に準備から片付けまで行っていますし、いくつかのグループに分かれてゲームをしたり、制作活動をしながら一日を過ごしています。
また安芸市では独居高齢者が安心して暮らせるように生活支援体制を充実させています。
介護保険の対象ではない人でも、風邪やけがをした時に一時的にヘルパーさんに訪問してもらえる制度があります。
さらに、緊急通報装置や老人電話の設置費用を市が負担し、24時間体制で緊急時の対応に当たる体制を構築しています。
独居高齢者や高齢者夫婦の支援を地域で強化している
高知県は全国でも他に例を見ないほど在宅介護への依存度が少なくなっています。
しかし、県全域に森林が広がり交通網も発達していないため、特に中山間部などでは訪問型の在宅介護や、看護が難しくなっています。
そのため、「選択肢がないから施設に入居する」という高齢者の方も多くいます。
県が行った調査では、全国的な傾向と同じく住み慣れた自宅で家族や地域サービスの介護・支援を受けながら余生を過ごしたいと思う方が25%以上に上っており、在宅介護、医療のニーズに応えなければならない現状です。
そのために高知県では地域包括ケアシステムの推進に力を注いでいますが、やはり課題は地域で在宅介護、医療をフォローできる病院や医師、看護師の確保にあります。
そして地域のケアマネージャーを中心としたプランの策定と病院や事業者等のあっせん、介護と医療のスムーズな連携などを強化してきました。
また医療では病院から退院し自宅に戻った際にそこで医療体制が途切れてしまうという課題があります。
そのため、ここでもケアマネージャーが退院後の訪問医療や看護を調整するようにしています。
もちろん地域包括支援センターも後方支援に回り、フォロー体制を築いています。
さらには高知県は独居高齢者や高齢者夫婦のみの世帯が多いため、地域のボランティアや民生委員、あったかふれあいセンターなどが、小地域規模で在宅介護者の見守りや、介護予防運動の教室などを開いて外出支援を行ったり、家事や買い物への付き添いなどの生活支援も行っています。
高知県福祉サービス運営適正化委員会とは?
福祉サービスを提供する側、される側の間のトラブルは頻繁に起こっていると言わざるを得ません。
そんなとき、本来であればトラブルは当事者同士が話し合って解決に向かうのが望ましい形。
そのために事業所によっては苦情専門の担当者もいます。
しかし、すべての事業者が苦情受付の体制を整えているわけではありませんし、話し合いがもたれたとしても平行線で解決に至らないことも当然あります。
また、そもそも苦情や異議を直接言えない人もいます。
そんな時に高知県では相談できる窓口を用意しています。
上記のような場合は高知県社会福祉協議会が設置している運営適正化委員会(福祉サービスこまりごと解決委員会)に相談します。
苦情の受付になるかどうかは相談内容次第になるので、その場で解決に至る様な問題であれば相談員の範疇で収める場合もあります。
苦情に至った場合は相談者の方の同意の上で、事業所側への調査を行い事実関係の確認をします。
その後双方に解決に向けての助言や、利用者がその施設をもう今後利用したくないとなれば別の事業所の紹介、あっせんも行います。
また調査段階で虐待などの重大な問題が発覚した場合、速やかに高知県知事に通達するのも委員会の重要な役割の一つです。
委員会に相談できるのはサービス利用者ご本人、家族などで、福祉サービスの内容をしっかりと把握し、なおかつ的確に伝えられる方です。
委員会事務局に来所すれば相談員と直接話せますし、書面やFAXでも受け付け可能です。
なお費用は一切掛かりません。