典型的な瀬戸内海気候は過ごしやすく、高齢者にとっての過ごしやすさ満点!
政令指定都市の岡山市を含む岡山県は、近年高齢化率が高くなってきています。
岡山市を地元にして他府県へ進出するなど、介護を核とした事業で全国展開する企業が多くあります。
これは、東に兵庫県、西に広島県、南では瀬戸内海を隔てて香川県など都市部と隣接しているためで、古くから商業の街として発展してきた岡山県民の商人魂が根源になっているとも考えられます。
老人ホームはこの岡山市と、隣の倉敷市に集中しています。
割合にして7割強にもなるので、この2都市では幅広い選択肢の中から老人ホームを選ぶことができます。
また、公共交通機関も発達しているので、面会などに通うのにも利便性が高いと言えます。
しかし、逆に言えばその他の地域で探すのがなかなか難しいというのが現状です。
また、冒頭にも記したように今の時点でも高齢化率が高いため満室となっている老人ホームが多く、待機している人数も他の地域よりかなり多くなっています。
入居を考えるのであれば、早めに行動に移した方が良さそうです。
こうした状況の中、岡山県では市町村が行う各種の介護予防・地域支え合い事業を支援したり、施設のバリアフリー化を推進したりといった取り組みを行なっています。
また、高齢者が健やかで生きがいに満ちた生活を送ることができるよう、閉じこもり防止などの生きがい活動を推進しているため、高齢者にとっての日常生活は充実したものになるでしょう。
岡山県は気候の良さでも高齢者にとって優しいのが特徴です。
北部の中国山地に面した地域を除けば、その他の地域は典型的な瀬戸内海気候に属しているため、年間を通して過ごしやすく、特に雨量の少なさが顕著。
日本一降雨量が少ないことから別名「晴れの国」とも称するほどなので、すっきりとした気分で生活を送れることうけあいです。
岡山県の高齢化率は2023年に30.5%
岡山県の人口は2023年現在約186万人で全国では20番目に当たります。
県庁所在地の岡山市は2009年に政令指定都市に認定され、中国地方では広島市に次いで2番目の都市となっています。
2005年をピークに近年は緩やかに減少傾向にあり、県ではこれからは人口減が少し加速的に進むと考えています。
高齢者人口を見てみると、2010年に48万4,718人だったものが、2023年には56万8,447人に。
政令指定都市を抱える岡山県でも、高齢化の波に抗うことはできないということが、数字からも見て取れます。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
高齢化も進んでいますが、特に深刻なのが生産者人口の減少です。
2015年時点で既に生産者人口の割合が60%を切っており、その後も減少傾向にあります。
2023年には高齢化率が30.2%と全国平均を1%上回る超高齢化の自治体になっています。
また75歳以上の後期高齢者が前期高齢者の数を上回っているのも見逃せません。
地域別に見ると鳥取、島根に隣接する県北部に高齢化の進行が目立ちます。
軒並み県平均を超えていますし、特に現役世代が隣接する岡山市に流出していることが考えられる久米南町では40%を越す高齢化率となっています。
県の中で圧倒的に人口が集中している岡山市と倉敷市は共に高齢化率でも全国平均を下回っていますので、生産者人口が都市部に集中しすぎている傾向にあります。
県全体の高齢化に伴い一人暮らし高齢者や高齢者だけの夫婦世帯も増加しています。
2020年時点で全世帯数における26.5%が高齢者のみの世帯となり、明らかに高齢者の孤立化が進み過ぎています。
うち3万5,331世帯は高齢者の一人暮らし世帯であり、いかに地域で高齢者を見守っていけるかが課題です。
2024年には65歳以上の20%が要介護認定を受けている
岡山県は全国的に見ても高齢化が進んでいる自治体です。
それに伴って要支援、要介護の認定高齢者も増加の一途をたどっています。
2024年度の段階で既に介護保険の第1号被保険者の17%以上の方が認定を受けています。
特に認定者の88%以上が75歳以上の後期高齢者の方で占められており、高い高齢化率がここにもうかがえます。
要介護度を見ると、要支援1~要介護1までで半数以上をしめており、軽度の方が多い傾向にあるようです。
介護保険サービスの利用状況ですが、全国的な傾向と同様、居宅型サービスの需要が年々増加し、最近の13年間で約1.2倍となっています。
2024年には全サービス中の67.3%が居宅サービスの利用者となっています。
一方、老人ホームなどへの入居が中心となる施設型サービスはここ数年は横ばい状態で、全体の15~18%の間で推移しています。
居宅サービスの利用率が80%に迫る自治体が珍しくない中で岡山県は比較的バランスが取れていると言えます。
地域密着型のサービスも年々飛躍的に上昇しています。
特に小規模多機能型サービスが顕著で、住み慣れた地域で自分のペースやニーズに合った介護を受けられる総合的なサービスの需要が高まっていることがわかります。
ただひとつ懸念されるのは、要支援以上の認定者のサービスの利用率が若干低めなことです。
15年前と比較すれば10%以上利用率は増えていますが、80%前半はまだ低めです。
今後の課題としては介護サービスの質の向上と普及活動も必要ということになります。
介護予防に向けて生活コーディネーターの育成に力を入れている
まず岡山県では高齢者の在宅生活の支えとなる協議体の設置や、生活コーディネーターの育成に力を入れています。
また高齢者が高齢者を支える体制づくりも推進しており、社会参加や就労に意欲のある高齢者の方へ働きかけを行っています。
県内で活動するNPO法人やボランティア団体を一堂に会し、情報の共有や意見交換の場を提供してコミュニケーションの強化や新規参入のチャンスの場としたいという考えもあります。
また、岡山県には市町村の介護予防運動を統括する機関である「岡山県介護予防市町村支援委員会」があり、さまざまな地域の介護予防の事例を分析して的確なアドバイスを行ったり、各市区町村の職員を対象に研修会を行ったりします。
さらにリハビリテーションの専門職を単独では依頼できない地域に派遣することで、地域間格差を埋める施策も実施しています。
さらに県は、地域で運営している老人クラブやシルバー人材センターのバックアップも行っています。
「ねんりんピック」(全国健康福祉祭)には毎年のように選手、役員を派遣して、高齢者の社会参加や引きこもり防止に努めています。
具体的な政策として、総社市では住民運営の「体操の集い」が市内全域に100か所以上広がっているので、徒歩圏内で参加できる体制が整っています。
要介護の認定を受けている方も元気な方も分け隔てなく一堂に会して週1回行っています。
岡山県ではこういった集いの開設に当たっては地域の包括支援センターが指導を行い、かつ活動への助言も行います。
高齢者の交流拠点として「サロン・なんだ村」を開設
岡山県では地域包括ケアシステムの構築に向けて、5つの要素を一体化して提供することを目指しています。
医療と介護の連携はもちろんの事、介護度を上げないようにする予防政策や、ボランティア団体や地域の協力団体などによる生活支援事業、そして高齢者お一人お一人のニーズに合わせた住宅の提供が5つの課題とされています。
具体的な施策を見てみると、岡山市では地域の高齢者の交流拠点として「サロン・なんだ村」を開設しています。
リハビリ体操やカルチャースクール、介護相談などの介護予防事業に加え、昼食や喫茶店、買い物などもできる施設です。
また、大きな特徴として施設内でのボランティア活動などに対して、施設内で使用できる「ボラン」という通貨が支払われます。
その通貨を流通させていくことで新たな入村者なども獲得できるシステムになっています。
玉野市の玉・奥玉地区は高齢者率が45%に迫ろうかという超高齢化地域です。
若者に頼れない状況の中で「小地域ケア会議」を設置して、地域の行政や社協、包括の専門家と協議を重ねています。
その中で「いきいき百歳体操」に取り組み、それをきっかけに地域ぐるみで高齢者を見守っていく体制を構築しようとしています。
さらに、美作市では「みまさかほっとネット」と題した地域での見守り事業が展開されています。
警察署や消防署などの協力も得ながら、広いネットワークを持つ新聞屋さんや電気、ガスの事業者、またタクシーやバス会社にも協力を仰ぎ、見守る人、見守られる人を特定せずに、異変に気付いたらすぐに地域の包括支援センターに連絡を入れてもらう仕組みになっています。
岡山県福祉サービス運営適正化委員会とは?
福祉サービスは今やニーズや金銭面も考えながら自分で選択する時代になっています。
しかし、いざサービスを利用してみると、事前の説明と内容が違う、不当な扱いを受けたなどの不満や苦情が上がってくるものです。
そんな時は基本的には当事者同士の話し合いによる解決を目指しますので、まずはサービス提供者に直接申し出ることになります。
しかし、話し合いが平行線で解決に至らなかったり、そもそも直接申し出るのがはばかられるケースもあります。
その場合に次の相談窓口となるのが「岡山県運営適正化委員会」ということになります。
利用者からの申し出に対してまず助言という形で提案を行います。
その後必要に応じ施設に調査を入れますが、申し出人と施設側双方の同意が必要になります。
その後再度の話し合いの仲介役となったり、解決策の提案、あっせんを行い解決に向けて尽力します。
また一連の過程の中で施設、事業所側に重大な過失が認められた場合は、行政処分に向けた通知を県に行います。
実情を見てみると年度によってばらつきはありますが、相談段階で収まっているケースが6割、苦情として受け付けられ、対処事項になっているのが4割というところです。
相談内容は職員の待遇とサービスの内容に関する事が圧倒的に多いようですが、中には虐待や権利の侵害など、実際に損害を被った方からの申し出もあります。
高齢者福祉の相談は家族からの申し出がほとんどで、やはり家族の協力なくしては苦情の解決には至らないということでしょう。