介護と医療の連携も充実。高齢者の健康に取り組む都市
越谷市は、健康保険制度を日本で初めてスタートさせた都市で、1938年に健康保険法が制定される3年も前に、「越ヶ谷順正会」という制度をスタートさせているのです。
昔から福祉に力を入れる土地柄であり、現在の越谷市では独自にワーキングチームが作られ、介護と医療、そして介護予防、生活支援サービスなどを上手く連携させています。
また、ワーキングチームでは、「元気で長生き、かつ特別養護老人ホームを利用しなくても良いように」という考えのもと、特に介護予防に力を入れており、体操教室や食生活改善教室などを開催しています。
こうしたさまざまな活動によって、越谷市では高齢者にとって質・量ともに充実した生活が送れる可能性が高いでしょう。
ちなみに越谷市は、全国でも有数の猛暑地として有名で、2007年には40.4℃を記録したこともあるほど、暑さの厳しい土地です。
また、冬場では-5℃以下になることも珍しくなく、高齢者が外出する時などは特に注意する必要があります。
老人ホームでは空調がしっかりしていますし、看護体制が整っているホームであればそれほど気にする必要はないかもしれませんが、それでも健康面に不安のある方は、入居前の検討材料として頭に入れておいた方が良いでしょう。
越谷市の高齢化率は2040年までには30%超に
越谷市は、越谷レイクタウンなどが誕生して買物がしやすくなってから、ますますベッドタウンとして人気が高まり、全国的な人口減に反して越谷市の総人口は微増傾向にあります。
2009年の越谷市の総人口は32万5,265人、そのうち高齢者数は6万1,235人、14歳までの年少人口は4万6,006人でした。
2013年の総人口は33万1,561人、高齢者数7万2,882人、14歳までの年少人口は4万5,186人。2017年はそれぞれ34万206人、8万3,287人、4万4,934人、2023年には総人口34万3,866人、高齢者人口8万7,698人、年少人口4万2,305人、総人口と高齢者は増えていますが、子どもの数は減っています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
高齢化率は年々上昇しており、2009年の高齢化率は18.8%、2013年は22.0%、2017年は24.5%、2023年には25.5%という数字が出ています。
2023年の高齢化率の全国平均が29.0%ですので、全国平均は下回ってはいますが、もうすぐ越谷市にも3人に1人が高齢者という状況が訪れるでしょう。
高齢者の内訳を見てみると、74歳までの前期高齢者の数は、2009年には4万1,060人、2013年には4万4,813人、2017年には4万5,716人、2023年には3万7,994人となっています。
一方、75歳以上の後期高齢者の数は、2009年には2万175人、2013年には2万8,069人、2017年には3万7,571人、2023年には5万30人となっています。
後期高齢者は前期高齢者よりも少ないですが、後期高齢者の方が急激に増加。越谷市は少子高齢化の波に合わせ、介護予防や在宅介護サポートなどを充実させています。
訪問介護の年間利用回数は3万回を超える
介護保険の被保険者数は今後ますます増えてゆく見通しで、なかでも、65歳~74歳までの前期高齢者数は、2023年に3万7,994人、75歳以上の後期高齢者は5万30人。これが2030年にはそれぞれ3万4,595人、5万4,546人と後期高齢者が大きく増えると推測されています。
要支援・要介護認定者数も増えており、認定率は2020年15.4%、2023年17.8%と年々増加。2030年には21.8%まで増加する見込みです。越谷市の介護保険サービス利用者は、緩やかに増加しています。
2020年の要介護認定者数は1万3,416人でしたが、2024年には1万5,473人まで増加。2030年には1万9,411人となる見込みです。
そのほかにも訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅栄養管理指導などの居宅サービスがあり、どれも利用者が増えています。
福祉用具のレンタルや特定福祉用具販売、住宅改修、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などのサービスもあり、高齢者のニーズに対応しています。
また、デイサービスや通所リハビリテーション、グループホームなどの施設サービスの利用者も増加。特にグループホームの利用者が増えており、越谷市は早急な認知症対策が求められています。
近隣大学と連携しシルバーカレッジを開催
越谷市に在住の高齢者へのアンケートによると、半数近くが「サポートを受けながらでも自宅で生活したい」と答えています。
そんな高齢者のニーズに応じて、越谷市では自宅生活者への生活サポートを充実させるとともに、高齢者が健康に自立した生活が送れるよう、さまざまな介護予防を実施しています。
健康相談だけでなく、健康体操である「楽唱体操」や、ロコモ予防チャレンジ教室、「65歳からのいきいき元気教室」などを開催。ここでは筋力の低下を防ぎ、転倒を予防する「楽唱体操」は、歌に合わせて楽しく運動することができます。
また、病気になると介護度が上がる人が多いため、病気の早期発見・早期治療を目的とした、高齢者向けの健康診断やがん検診などを推奨。予防接種も普及させています。
介護予防のためには積極的な社会参加が大切ですが、老人福祉センターでは、楽しく運動ができる講座や、埼玉県立大学や立教大学を中心としたシルバーカレッジを開催し、高齢者が生涯学習できるようにしています。
さらに、高齢者同士がコミュニケーションを楽しみながら活動を行う、老人クラブなどへの資金助成や、シルバー人材センターなどでの就労支援、認知症サポーターの育成なども行っています。
高齢者の孤立化を防ぐためにも、高齢者が気軽に立ち寄れる交流所「ふらっと」を商店街の空き店舗に設置。子どもと触れ合えるイベントなどを開催しています。
地域包括ケア促進に向けて災害時の避難支援も充実
越谷市では、高齢者が快適に暮らせるよう、地域包括ケアシステムを構築中です。
埼玉県が策定した「埼玉県高齢者支援計画」や「埼玉県地域保険医療計画」などと矛盾しないよう整合性を図りながら、国の介護保険法や老人福祉法に基づき、さまざまな高齢者向けのサービスを提供しています。
越谷市の地域包括ケアシステムでは、地域包括支援センターを中心とした介護サポート、訪問診療など医療機関による医療サポート、居宅サービスや施設サービスといった介護保険サービスの普及に努めています。
支援が必要な一人暮らしの高齢者が増えており、居宅サービスや生活サポートの需要が高いため、越谷市は高齢者の自立支援も含め、生活相談などのサポートを行っています。
また、認知症対策や軽費老人ホームの助成、サービス付き高齢者向け住宅の整備などによる住まいの確保、介護予防サービスの充実などを推進。認知症高齢者が増加していることを受け、認知症の講座や相談会なども開催しています。
居場所づくりのためにも、高齢者の就労支援やボランティア活動のサポートなども実施。老人クラブやNPO団体などによる、生きがいづくり活動の支援も行っています。
さらには、災害時にも高齢者が取り残されないよう、災害時要支援者避難支援制度を制定。1人では逃げられそうにない人は、地域包括支援センターなどに相談しておくと良いでしょう。
越谷市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
越谷市では、福祉部の地域包括ケア推進課や地域包括総合支援センターが、高齢者の総合相談窓口となっています。
特に地域包括支援センターは市内各地に設置されており、保健師や社会福祉士などの専門的なスタッフも在籍。相談内容に応じた援助などを行っています。
相談できる内容は広範囲で、高齢者だけでなく家族や介護者、近隣住民も気軽に相談できるシステム。高齢者虐待や悪質な訪問販売、振り込め詐欺などの相談にも対応し、高齢者の権利擁護をサポートしています。
地域包括総合支援センターでは、災害など緊急時の不安などについて相談可能で、認知症徘徊高齢者の家族支援サービスも実施し相談にも対応しています。
また保健センターでは、さまざまな健康に関する相談に対応。高齢者向けのインフルエンザ予防接種や、高齢者肺炎球菌予防接種に関しても、わからないことがあれば相談できます。
ゆりのき荘・くすのき荘などでは、理学療法士などのプロによる「リハビリなんでも相談」を実施しており、リハビリに不安がある人は気軽に相談できます。
そのほかにもリサイクルプラザでは、ゴミ出しが困難な人のために、ゴミの訪問収集を実施していますし、福祉サービス利用援助事業「あんしんサポートねっと」では、知的障がいのある高齢者などを定期訪問し、相談に乗っています。