山口市をはじめ県内全域にまんべんなく老人ホームが

山口県は、高齢者が入居するための老人ホームの数が、絶対的に多い県です。
そのため、施設の種類、費用面でもさまざまなタイプがあり、利用者のニーズに合わせて幅広い選択肢があるという特徴があります。
そもそも山口県は、「全国と比べて10年は高齢化が早く進んでいる」と言われてきました。
この状況に対応すべく、「やまぐち高齢者プラン」を策定。
「だれもが生涯にわたり、住み慣れた地域や家庭で、安心していきいきと暮らせる社会づくり」の実現に向け、早い段階から高齢者福祉と医療との連携を図り、来るべき超高齢社会への対策をしっかり取ってきたのです。
その結果として、山口県の老人ホーム施設の特徴には、介護療養型医療施設が多いという点が挙げられます。
介護療養型医療施設とは、療養病床など設置している病院、または診療所であり、常に医療サービスが必要な高齢者が利用する施設です。
寝たきりや認知症など、高齢者が介護・看護が必要となっても安らかに生活を送れるよう、社会全体で支えていく体制が整っていると言えるでしょう。
介護療養型医療施設への入所は、入居一時金は必要ありませんが、月額利用料としてベースとなる賃料や食費などの他に医療費がかかってくるため、介護付有料老人ホームや介護老人保健施設などよりも高額になる場合がほとんどです。
介護療養型医療施設への入居を考える際には、同時に個人の経済状況も鑑みる必要があるので注意しておきましょう。
介護付有料老人ホームや介護老人保健施設の料金の相場は、中国地方一帯と比べても大差ありません。
入居一時金が0~数十万円、月額利用料が10万円前後のところがほとんどで、利用しやすくなっているのは嬉しい限りです。
山口県内にはまんべんなく老人ホームが分布しているのも大きな特徴です。
県庁所在地の山口市をはじめ、下関市、萩市、岩国市、宇部市、防府市…と、県内全域に老人ホームがあるため、現状の住まいの近くで入居できる可能性も高くあります。
「住み慣れた土地で余生を過ごすのが一番」と考える高齢者にとっては、何より大きな特徴であり、メリットと言えるでしょう。
急速な超高齢社会の背景には女性人口の低さがある
山口県の総人口は1985年の約160万人をピークに年々減少しており、2005年には150万人を割り込み、2015年には140万人、2023年には132万人と推移しています。
とくに年少人口の減少が著しく、1970年頃は40万人前後の規模でしたが、2014年以降は20万人を切っています。
そうした総人口の傾向に反して、年々人口増となっているのが高齢者人口。
1970年には20万人に満たない数でしたが、2010年には40万人近い人口数となり、2023年には約46万人に。現在も増加し続けています。
高齢化率で見てみると、山口県は全国平均よりも10年早く高齢化が進んでいるとも言われ、1990年時点でWHO(世界保健機構)の定義における「高齢社会」の目安となる14%を超え、2000年には「超高齢社会」の21%を超えています。
2023年には34.8%を記録し、同時期の全国平均が29.1%ですから、山口県は6ポイント以上高い値となっています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
急速な高齢化率上昇の背景には、若者が県外へ流出が進み、20歳~39歳の女性人口の割合が全国平均よりも低くなっている、という現状があります。
全国的にもこの年代の女性人口は減っていて、1980年における総人口に占める20歳~39歳の女性人口の割合は、15.7%。
2010年には14.6%となり、2060年には8.5%になると見られています。
一方、山口県で同じ指標を見ると、1980年では14.6%、2010年では10.6%で、2060年には8.2%になると予測されています。
1980年から2010年までの20年の間に、全国との格差は大きくなっています。
山口県の出生率は全国平均よりも高い水準となっているので、ポイントになるのは若い女性の県外への流出を防ぎ、出生者数そのものを増やしていくということ。
それが山口県の高齢化率の上昇を抑えることにつながると考えられています。
介護保険サービスでは訪問介護と通所サービスの利用者が多い
山口県の要介護認定者数は2010年に7万3,519人でしたが、2015年には8万8,095人、2020年には8万9,751人、2024年に8万9,013人と推移。

一方、要介護認定を申請して「要支援」の認定を受けた人は、地域包括支援センターで介護予防支援サービスを受けケアプランを作成することになります。
山口県の居宅介護支援サービスの利用状況を見ると、2024年の介護サービス利用者数は7万7,819人であり、うち居宅サービスを利用した人が66.3%と最多。次いで地域密着型サービスの17.7%、施設サービスの16.0%と続きます。
介護保険サービスを利用するには、ケアマネージャーによる居宅介護支援サービスを受けてケアプランを作る、というプロセスが必要になってきます。
そのためこれら居宅介護支援サービスの利用者数の推移は、そのまま介護保険サービス利用の増加傾向を浮き彫りにしているとも言えます。
がんの早期発見に積極的
山口県内の市町では現在「介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)」の整備が進められており、2017年度末までに、従来の「予防給付+1次予防事業+2次予防事業」という体制から、「予防給付+総合事業」の体制へと移行されます。
両者の大きな違いは、これまで介護保険の予防給付の対象だった訪問型、通所型の介護予防サービスが、自治体の監督の下で行われるということ。
総合事業の下では、「要支援」の認定を受けた人(及び、各市町が用意している基本チェックリストで対象者とみなされた人)は「介護予防・生活支援サービス事業」を利用し、要支援認定を受けていない65歳以上の人は「一般介護予防事業」を利用するという形になっています。

県としては、それら市町の取り組みをサポートしつつ、県全体として目指すべき介護予防のあり方の指針を提示しています。
ひとつ目の指針としては、生活習慣病の予防及び重症化を防ぐための取り組みがあります。
県では第2期山口県がん対策推進計画に基づいて、市町・医療機関と連携して精密検査の普及活動、健診の実施日、実施時間の拡充化を図るなど、受診率向上を促進しています。
ふたつ目としては、ロコモティブシンドロームを防ぐため、壮年期から介護予防への取り組みをするように啓発活動を行う活動が挙げられます。
「生涯を現役で過ごすための10の取組」、「やまぐちシニアはつらつチェック」などを開発し、介護予防運動の啓発を行っています。
そして最後に、高齢者の健康を支えるための社会環境を整える活動。
イベント活動や「健康やまぐちサポートステーション」(ホームページ)の開設、県民の介護予防の取組をサポートする事業所を登録した「やまぐち健康応援団」の機能強化、県健康づくりセンターの充実化などに取り組んでいます。
山口県の地域包括ケアシステムは関連機関の連携強化に力を入れている

山口県では、高齢者が地域の中で元気に安心して生活していけるように、医療面、介護面、介護予防面、住まい面、生活支援面のサービスを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の整備を進めています。
柱となっている政策は以下の4点。
①地域内の各種サービス間の連携……地域内の介護、医療、生活支援、介護予防、住まいに関するサービスを適切に提供できるように、関係機関の連携、職員間の連携、情報共有化を推進することで、各分野が連携して切れ目のないサービス提供を目指しています。
特に高齢者のケアプランを考えるケアマネージャーの役割が大きく、各関係機関・職員の調整役となれるように、専門知識・技術に関する研修会を実施するなど、その能力向上を支援しています。
②地域包括支援センターの充実化……センターに常駐する主任介護支援専門員、保健師などの育成に力を入れています。
また同センターが果たしている役割を県民に周知していくこと、市町との連携を密にして地域の実情に応じた体制づくりを進めること、も行われています。
③地域包括ケア会議の機能の強化……地域内の行政職員、ケアマネージャー、介護事業者、民生委員、地域住民の代表者、医師などが集まり、地域内の高齢者が直面している個別課題の解決のあり方について議論を行い、情報を共有する場です。
県では市町では呼ぶのが難しい、リハビリ専門職や大学教員などを各地の地域ケア会議の場に派遣し、会議の充実化を図っています。
④地域に住む住民との連携強化……地域内で作られている自主的なコミュニティを重視し、地域に住む人で地域内の高齢者の生活支援を行える体制作りを進めています。
啓発活動をホームページや広報誌の作成を通して行うこと、市町や社会福祉協議会の住民参加の取り組みを支援すること、などが行われています。
山口県福祉サービス運営適正化委員会とは?
現行の社会福祉法第82条では、福祉サービスの提供事業者は、サービスに関して利用者から不満、苦情の訴えがあった場合、解決のために努力しなければならない、と規定されています。
それを受けて山口県内の各事業者は、施設内に苦情処理専門の窓口を設け、また公平な立場から判断を下せる「第三者委員」を設置して、問題の解決に当たっています。

しかし、それら事業者との話し合いによって問題が解決するとは限りません。
双方の主張が平行線をたどることもありますし、そもそも利用者の側が「事業者に直接苦情を言うと、その後のサービス利用で不利な扱いを受ける恐れがある」と感じれば、苦情を訴えることそのものが困難にもなるでしょう。
そのような場合の苦情の申し出先として、山口県では福祉サービス運営適正化委員会が設置されています。
福祉サービスを利用している県民の苦情を直接受付、必要に応じて調査、あっせんを行います。
委員は医療、介護の専門家を始め、弁護士や大学の教員、民生委員、など知識、経験豊かな識者が選ばれており、高度な問題解決力を有しています。
山口県社会福祉会館の3階に事務局があり、直接出向いて相談できますし(事前に要連絡)、電話にての相談も受け付けています。
また介護保険サービスに関しては、各市町の高齢者福祉の窓口、または運営適正化委員会とは別に山口県国民健康保険団体連合会の苦情相談窓口に苦情を訴えることもできます。