老人ホーム・介護施設は政令指定都市である新潟市に多く

全国に誇る米どころとして有名な新潟県は、それ故に農業に従事する人も大勢います。
昔から農業が盛んで、明治時代には全国一の人口を誇っていました。
また、政令指定都市としての一面もあることから、やはり老人ホームの数が多くなるのは県内で最も人口の多い新潟市。
次いで長岡市、上越市、三条市などに多く、逆に上越などの地方部では数が少なくなっています。
それでも老人ホームへの入居を望む人が新潟市などの都市部へ移住することから、都市部と地方部での人口格差が広がるという循環が起こっているという現状です。
施設としては特別養護老人ホームが圧倒的に多く、障がい者や認知症患者の入所がメインとなっています。
逆に言えば、日常生活を普通に送れる高齢者が余生を安心して暮らしたいと思っても、老人ホームに入ることがままならないという状況もあります。
健康な高齢者の方で老人ホームへの入居を考えるのであれば、早めに行動に移した方が良いでしょう。
新潟県では、高齢者の健康の維持・増進、社会参加、そして生きがいを持てる生活づくりのために、福祉の総合的なイベント「にいがたねんりんピック」が毎年開催されています。
行われているのは、卓球やテニス、ゲートボール、太極拳、ソフトバレーボール、剣道、ゴルフなどの12種目で、ふれあいと活力のある長寿社会の実現を目指しています。
こうしたイベントに積極的に参加して、楽しく、そして健康的な生活を目指してみてはいかがでしょうか。
総人口の減少に反して増える新潟県の高齢者人口
新潟県は、1997年前後をピークに人口は減少傾向にあり、2023年時点で約216万人にまで人口が減少しています。
それに相反するように高齢者の人口は増加。2010年に約62.1万人だったのが、2023年には71.9万人にまで増加しています。
年齢別に見ると、65歳以上の高齢者は33.3%と全国平均の29.1%を約4%も上回っています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
人口が200万人を超える大きな自治体で高齢化問題も深刻ですが、それ以上に顕著なのが若年層の流出です。
特に生産者人口である18~24歳までの若者は進学や就職を理由に他県へ流出しており、大幅な人口減になっています。
新潟県では、減少の一途をたどる人口の回復政策に最重要課題として取り組んでいます。
地域別に見てみると、県内の約40%の人が生活する新潟市も高齢化率約33.3%と、全国平均より高い高齢化率になっています。
生産者人口は全国平均を下回っており、政令指定都市としては厳しい数字です。
また、町村部や佐渡島は少子高齢化が進み、年少人口は軒並み10%を割り込んで、高齢化率は40%を超えています。
そして、下越地方の人口減少が目立ちますが、特に東北地方に隣接している地域の人口減少が顕著です。
高齢化に伴って深刻になりつつあるのが「高齢者の孤立化問題」です。
2020年のデータでは、全世帯の約23%が独居高齢者か高齢者の夫婦世帯となっており、孤立化や老老介護の問題が浮き彫りになっています。
新潟県は、65歳以上の実に50%以上が75歳以上の後期高齢者であり、全国でも屈指の平均年齢の高さです。
自治体を上げて高齢者をフォローしていく態勢が、今後ますます求められていくものと思われます。
介護給付費は2000年からの約15年で2.5倍に
新潟県では、65歳以上の高齢者のうち約20%にあたる約13万人の方が要支援、要介護の認定を受けています。
この数字は、全国平均と比べて高齢者率が著しく高い県にしては、全国平均を1%程度上回っているにすぎませんが、人口は200万人を超える都市のため、数としては大変多くなっています。
そして65歳以上の第一号被保険者は、年間1万人以上のペースで増え続けています。

実際にサービスを受給している方の数も同様に増加傾向にあり、2010年に
9万7,438人でしたが2024年には12万2,723人にまで増加。
また、全国的にここ数年で顕著な傾向として出ているのは、居宅型サービスの増加です。
グル―プホームなどの地域密着型サービスも年々増加傾向にあり、住み慣れた町で地域の援助を受けながら過ごされる高齢者の方が増えています。
しかし、新潟県においては施設型サービスの需要も根強く残っており、給付額の割合が全国でも4番目に高い比率となっています。
もちろん給付額からすれば居宅型サービスの方が上回っていますが、施設型サービスの需要も高いことが伺え、居宅型と施設型のバランスが取れていると言っていいでしょう。
新潟県の介護予防は各市が主体性を持って実施
新潟県では、65歳以上の高齢者の方が、重度な要介護認定を受けずにすむことを目的に、介護予防事業を行っています。
まずは自分の身体の変化に気付いてもらうことを目的に、啓発の為のチラシを作っています。
例えば、「体重が減ってきた」「外出するのが億劫になった」「よくむせる」などの症状が出てきたら、地域の包括支援センターに相談してくださいと誘導しています。
介護予防の講演会や教室は県内全域に広がっており、医師やリハビリを担当する理学療法士、食生活のアドバイスを送る栄養士などが、定期的に教育・相談を行っています。

また、高齢者が高齢者をフォローするサポーター制度も採用されています。
例えば新潟市では、「にいがた市元気力アップサポーター制度」と題し、一定の条件を満たした方は、地域の老人ホームやグループホームで家事の手伝いや、レクリエーションの企画・指導などを行っています。
そのほか、同じく新潟市で「脳の健康運動」と称して「楽らく能力アップ塾」を開催しています。
簡単な読み書きや計算をすることで認知症を予防し、参加者とコミュニケーションを取ることで、引きこもり防止にも繋がっています。
「楽らく能力アップ塾」は、週1回60分のクラスを5ヵ月間継続するコースとなっています。
そして、長岡市では「暮らし元気アップ事業」として、地域の集いに顔を出すのが困難な方に向けて、週1回の送迎付きで介護予防運動や口腔機能改善に向けた介護予防教室を実施しています。
高齢者の方の引きこもり防止に大きく貢献していると評判の事業です。
高齢者が「住みなれた地域で人生の最期まで自分らしい生活」を送るための地域包括ケアシステム
新潟県では、高齢者の方が住みなれた地域で人生の最期まで自分らしく生活ができるよう、生活圏から移動時間30分以内の場所で介護、医療、介護予防などが受けられる環境を目指しています。

以前、県が行ったアンケートでは、高齢者の60%以上の方が、要介護状態になっても介護を受けながら自宅で暮らすことを希望しています。
これは全国的な流れでもありますが、新潟県では、比較的施設に入居して介護を受けている方の割合が高い自治体でもあります。
バランスが取れているとも言えますが、地域密着型の介護へのシフトを推進しているのは、この辺りに理由があると思われます。
新潟県は、小規模多機能型の居宅介護を地域包括ケアの要として考え推進しています。
さらに、そこに訪問看護を複合させ、今後需要が増えるであろう病気の自宅療養にも対応していく構えです。
この態勢は、小規模多機能型施設のケアマネージャーが一元で管理できるメリットがあり、より利用者のニーズにあった介護サービスが提供できるようになります。
その成果として、新潟県は小規模多機能サービスの利用者数が毎年全国でベスト10に入っています。
また、認知症の方を地域で見守る施策にも積極的に取り組んでいます。
2013年のデータでは、県内に6ヵ所の認知症疾患医療センターを設け、かかりつけ医などに認知症の対処法を教える「認知症サポート医」を24名配置しています。
また、徘徊者などの早期発見や、話し相手ボランティアの活動を行うサポートキャラバンは、県内に約10万人いるとされています。
医療・福祉の専門家で構成された「新潟県運営適正化委員会」
介護福祉サービスの利用にあたっては、急に要介護の認定を受け、準備が整わないまま入居してしまうなどの理由で、入居後に説明と違っていることや、思いもよらない扱いを受けることがあります。
そんな時はまず、利用者と事業者が話し合うのが前提ですが、なかなか折り合いがつかなかったり、直接苦情を申し立てることが困難な人もいます。
そんなときのために設置されているのが「新潟県福祉サービス運営適正化委員会」です。

「新潟県福祉サービス運営適正化委員会」は、法律、福祉、医療の専門家で構成されていますので、さまざまなケースの申し立てに対応が可能です。
話し合いが平行線をたどって結論が出ない場合や、直接事業所に持ち込めない苦情について相談することができます。
相談内容に基づいて、委員会が話し合いの仲介、事前調査結果を受けての助言、別業者のあっせんなどを行います。
その中で事業者側に虐待や不当行為が発覚した場合、県への通知を行うのも委員会の役目です。
また新潟県では、認知症の方などが自己判断で行う事が難しい福祉、介護サービスへの利用申請や手続きを支援する制度「日常生活自立支援事業」を行っています。
この事業では、利用者が自己管理できなくなっている金銭や重要書類の管理なども行うため、第三者的な厳しい目が必要になるのですが、その役割を担っているのが「新潟県福祉サービス運営適正化委員会」です。
事業の公平性、透明性を保つ為に定期的に調査を行い、アドバイスや時には勧告を行います。