高齢化率は関西で1番…でも、老人ホーム・介護施設が少ないのがネック
和歌山県南部の北山村やすさみ町などは高齢化率が40%、古座川町は50%を超えている超高齢社会ですが、一方で、老人ホームの数は人口10万人あたり44.7と指標値の48.6を割る結果となっており、高齢者にとって決して好ましい状況ではありません。
こうした状況の中、和歌山県では「わかやま長寿プラン2024」が進行中です。
これは、老人福祉計画と介護保険事業支援計画という2つのポイントを軸にして、医療との連携の強化、介護サービスの充実、高齢者の住まいの確保といった生活支援に取り組むもの。
「わかやま長寿プラン2021」から引き継ぐ形となっており、着々と整備している途中ということになるため、今後の体制強化が期待されています。
現状の老人ホームに目を向けてみましょう。
費用面では、大阪や神戸など関西の大都市と比べると低額で、お隣の奈良県と平均的に同じ価格帯のところが多いようです。
月額利用料を見ても、数万円~15万円以内というところがほとんど。
これは、蓄財に励み、合理的な考えでお金にシビアという県民性に依るところが大きいのかもしれません。
場所別に見てみると、やはり県庁所在地であり、県内でも最も人口が多い和歌山市に集中しています。
県内においては交通網も発達している地域だけに、当然とも言えるでしょう。
しかし逆に、その他の地域では本当に数が少なく、入居待ちをしている高齢者の方がかなりいます。
そのため、和歌山県での老人ホームへの入居を考えるのであれば、和歌山市内が第一選択肢ということになるでしょう。
和歌山県は、県の東側は山に囲まれ、西側は海に面しています。
みかんをはじめ、はっさくや柿、梅といった果樹の生産高が全国一であることからも、自然の恵みが豊かであることがわかります。
夏の暑さは厳しいですが、冬は比較的暖かく、過ごしやすさは関西圏でも随一でしょう。
老後は都会の喧噪から離れてゆっくり暮らしたいという方は是非、和歌山県の老人ホームの資料請求・施設見学をしてみてください。
高齢者人口は2024年では30万人に
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
和歌山県の総人口は2014年時点で101万2,236人。
2023年には総人口92万4,469人と年々減少、2014年からの9年で約9万人が減少しています。
総人口が次第に減少していく中、高齢者人口は緩やかに増加。
高齢者人口は2014年には28万9,076人、2023年には30万8,271人と推移、こちらは9年で約2万人増加しています。
団塊の世代が65歳以上となり始める2012年からは2015年にかけて高齢者人口の増加幅が大きくなりましたが、さらに2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるためより一層高齢化が進みます。
高齢者人口のうち年々増加しつつあるのが一人暮らしの高齢者。
2014年では5万8,739人、2023年には6万4,404人と着実に増えつつあります。
全世帯数に対し、高齢者のみの世帯割合は約30%となっています。
高齢化率の推移に着目すると、和歌山県の2014年には28.6%、2023年には33.3%と年々上昇。
高齢化が着実に進行しています。
2023年の日本全体の高齢化率は29.0%となっており、和歌山県はやや高い水準となっています。
2040年までには高齢化率が40%を超える見込みのため早急な対策が必要です。
介護施設サービスの受給者数は増加傾向にある
和歌山県の介護サービス受給者数をみると、2010年度が4万8,488人、2024年には5万8,588人と推移。
2010年からの14年間で、約1万人の受給者数増が見られます。
2006年度から始まった地域密着型サービスの受給者数は、2008年度が1949人、2010年度が2,419人、2013年度が3,142人、2024年度には8,774人と推移し、受給者数そのものは居宅サービスに比べると少ないですが、2008年度から2024年度にかけての増加幅は約4.5倍で居宅サービスを上回ります。
施設サービスの受給者数も緩やかながら増加。
2008年度は8,661人、2010年度は8,693人、2013年度は9,389人、2024年度は9,278人となり、緩やかながら増加しています。
施設サービスの受給者数は、都道府県によっては横ばいあるいは介護療養型医療施設の病床数減の影響等で減少することもあるのですが、和歌山県では増加幅こそ小さいものの年々増え続けています。
各サービスの構成比率をみると、2013年度では居宅サービスが62.0%、地域密着型サービスが4.8%、施設サービス受給者数が14.4%、2024年には居宅サービスが69.2%、地域密着型サービスが15.0%、施設サービス受給者数が15.8%となっています。
介護予防のための「わかやまシニアエクササイズ」を実施
和歌山県では高齢者が要介護状態になるのを防ぐべく、さまざまな介護予防事業が計画、実施されています。
まず挙げられるのは、県と和歌山大学が共同で開発した高齢者向けの運動プログラム「わかやまシニアエクササイズ」の普及活動。
ストレッチ運動、自宅で行えるステップ運動、筋力トレーニング、筋トレウォーク、といった項目からなり、高齢者が集まって実践し方法も学べる「わかやまシニアエクササイズ教室」(市町村が実施)への支援を行っています。
和歌山大学との連携は認知症予防の取り組みにおいても行われ、高齢者用の「わかやま型認知症予防」の方法を共同で開発。
市町村レベルの介護予防事業で実践してもらうべく支援を行っています。
また口腔機能の向上及び栄養改善のためのプログラムの開発も行われています。
県の歯科医師会と歯科衛生士会と栄養士会とが連携し、口腔機能の向上と栄養改善とを組み合わせた介護予防法を立案。
実践する市町村に対して、歯科衛生士や歯科医師、栄養士の派遣を行っています。
さらにロコモティブシンドロームの予防のため、和歌山県立医科大学の協力のもと「わかやま型」の腰痛予防及びその改善のプログラムを開発。
こちらも市町村レベルで実践してもらうべく県が支援を実施しています。
県内の各大学と連携し、専門的な知見を基にした科学的な介護予防プログラムを開発していくというのは、和歌山県における介護予防の取り組みの大きな特徴だと言えるでしょう。
認知症高齢者へのサポートを強化した地域包括ケアシステム
和歌山県では現在、地域に住む高齢者に対して、地域内の多様な主体が連携して一体的にケアの実践、サービスの提供を行っていく「地域包括ケアシステム」づくりに力を入れています。
主に①医療面、②介護面、③介護予防・生活支援面、④認知症対策面、⑤住まい面それぞれにおいてサービス提供者の機能拡充、連携強化が進められ、地域内の高齢者を支える社会づくりが進められています。
①医療面では、在宅診療医(かかりつけ医)の確保、終末期の支援体制の整備、在宅介護世帯への支援の充実化、と介護分野(ケアマネージャー、訪問看護)の連携、等が進められています。
②介護面では、介護保険サービスのクオリティ向上を目指すべく、事業者への指導・監督体制の整備、介護サービスに関する情報の公開とサービスに対する評価体制の整備、介護給付の適正化、要介護認定の円滑化、医療分野との連携強化などが行われています。
③介護予防・生活支援面では、高齢者への見守りネットワーク作り、介護予防事業の充実化、地域の社会活動への高齢者の参加の推進、NPO・ボランティア団体への支援、生涯学習の促進、シルバー人材センターの機能の強化、有償ボランティア活動の充実化等が実施されています。
④認知症対策面では、認知症サポーターの育成と認知症に関する知識の普及・啓発、地域医療による支援体制の整備、認知症高齢者を介護する家族への支援、徘徊等を防ぐための地域による見守り・サポート体制づくりなどが取り組まれています。
⑤住まい面では、高齢者人口増に対応した施設整備、介護基盤施設の確保、民間事業者による高齢者施設の拡充、高齢者が住みやすいまちづくり(防犯、防災、防火対策の推進等)などが行われています。
和歌山県福祉サービス運営適正化委員会とは?
事業者によって提供される福祉サービスに対して不満、疑問を抱いたとき、苦情の申し出先の選択肢は2つあります。
1つ目は福祉サービスを提供している事業者に直接訴えるという方法。
各事業には苦情を受け付ける専用の窓口があり、担当者に相談すると、申し出内容を確認した上で第三者委員(地域の民生委員等で構成)を交えた話し合いの場を設けてくれます。
しかし利用者の側が、事業者との話し合いの結果に納得がいかない場合もあります。
また悪質な事業者だと「そもそも苦情にまともに取り合ってくれない」といったことも起こりますし、人によっては「事業者に直接苦情を言うと、今後同じ事業者のサービス利用において不利益を被るのでは」と考え、事業者側に直接言いにくいと考える人もいるでしょう。
そのような場合は2つ目の選択肢である「和歌山県福祉サービス運営適正化委員会」に苦情を訴えることになります。
委員会では窓口で事務局員が相談に対応し、必要に応じて委員会内に設置されている「苦情解決合議体」(弁護士、社会福祉士などの専門家から構成)が相談、助言を行い、問題の解決に協力してくれます。
もし事業者側によって虐待や法に反する行為が行われていた場合、県知事に連絡の上、行政による然るべき措置が執られます。
運営適正化委員会の事務局は和歌山県社会福祉協議会(県民交流プラザ和歌山ビック愛7階)にあります。
相談は電話、ファックス、メールで受け付けているほか、事務局に来て直接相談することもできます(来所の場合は事前に電話予約が必要)。