お金にシビアな県民性からか、低額で入居可能な施設がたくさん!
滋賀県は全国的に見て若い県で、それに伴って老人ホームの数も少ないという特徴があります。
首都圏以外で人口が増加している、地方では珍しい県なのですが、人口10万人あたりの老人ホームの数が36.6と極端に少なく、関西圏では京都府に次いで、老人ホームへの入居待ちをしている高齢者が多い県となっています。
施設の種類に目を向けてみましょう。
圧倒的に多いのが特別養護老人ホームで、次いで介護療養型医療施設、介護老人保健施設となっており、要介護認定を受けた高齢者の方にとっての環境が整っていると言えます。
その半面、住宅型有料老人ホームや高齢者住宅、サービス付き高齢者向け住宅はほとんどなく、介護を必要としない高齢者の方は、なかなか入居できないというのが現状です。
続いて、費用面を見ていきましょう。
隣接する京都府や、同じ関西圏の大阪府、兵庫県より低額で利用できる老人ホームの多さが目につきます。
入居一時金が数百万円、月額利用料も14万円台~という施設が多いのです。
これは、昔から“近江商人”という言葉もあるくらい滋賀県民が商才に長けており、同時にお金にシビアだという県民性も影響しているかもしれません。
老人ホームが集中しているのは、大阪府や京都府のベッドタウンとして発展を遂げてきた、人口の多い大津市などの南部です。
新興の住宅地が広がり、駅前にはマンションが建つ洗練されており、なおかつ交通の便も良いために、街として賑わいを見せています。
その一方で、北部は過疎化、そして高齢化が進んでおり、老人ホームの数は少ないという格差が起こっています。
北部や西部は牧歌的な田園風景が拡がっており、のんびりと過ごすにはうってつけではありますが、現状、高齢者が老人ホームに入居するにあたっての選択肢としては、県南部ということになるのでしょう。
高齢者人口は2030年には40万人になる見込み
滋賀県の総人口は年々増加し続けていましたが、2015年に142万人を記録してから減少に転じ、2023年には141万3,989人となり、年々減っていくと予想されています。
総人口が減っていく中、年々増加し続けているのが高齢者人口。
1995年当時は18万1,000人でしたが、2000年に21万6,000人、2005年には24万9,000人、2010年に28万8,000人と増え続け、2015年には34万4,000人となっています。
2023年には37万5,572人となっており、今後も増加傾向は続き、2030年には約40万人、2040年には約44万人になると見込まれています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
中でも今後急激に増加していくと見られているのが、後期高齢者(75歳以上)人口。
1995年には7万人2,000人だったものが、2010年にはその約2倍の14万人、2015年には16万2,000人と増え続けています。
2023年には20万939人まで増加。
この増加傾向は団塊の世代が後期高齢者となる2025年頃まで続くと見られ、ピーク時は24万人程に達すると予想されています。
滋賀県の高齢化率の推移を見ると、1995年時点では14.1%でしたが、2000年に16.1%、2005年に18.0%、2010年に20.5%、2015年に24.2%と年々上昇。2023年には26.6%となりました。
今後も増加していく見通しです。
ただ、日本全体の高齢化率は2010年で23.0%、2015年で26.7%、2023年にが29.0%ですから、全国平均よりも2.0ポイント以上低い値で推移していることになります。
滋賀県は大都市を含む県ではありませんが、高齢化の進展度合いは比較的緩やかな県だと言えるでしょう。
介護サービス利用増加に向けて着々と整備が進む
滋賀県の介護保険サービスの2010年には総数4万1,017人、居宅介護サービス3万548人、施設介護サービス7,381人、地域密着型サービス3,088人でした。
2024年には総数6万6,113人、居宅介護サービス4万4,500人、施設介護サービス9,646人、地域密着型サービス1万1,967人まで増加。
14年で約2万人増加しています。
地域密着型サービスは2006年から導入されたサービス形態で、2010年時点では事業所数がまだ少ないこともあり利用者が少ない状況でした。
滋賀県の要介護認定者数は6万8,426人でした。
内訳を見てみると、要介護1が最も多く1万4,939人、次いで要介護2の1万2,467人でした。
要介護認定者数も年々増加していく見込みですが、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降にはさらに高齢化が進む見込みです。
介護予防のたに口腔機能向上を目指す「健口体操」プログラムを開発
滋賀県では、具体的な介護予防事業については市町レベルで行われる介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)が担いますが、介護予防の普及・啓発活動、市町村への総合事業推進に必要な情報提供など様々な取り組みが行われています。
介護予防の普及・啓発活動としては、介護予防に関する知識を県民に提供すべく様々なリーフレットを作成し、県内各地の公的施設、医療機関などで配布しています(県のホームページでもダウンロードできます)。
例えば「介護予防ではつらつ生活」というリーフレットでは、普段の生活や健康状態のチェックをしてもらった上で、状態に応じて筋力アップの方法、口内の健康維持の方法、閉じこもりやうつ病の予防法、認知症の予防法、栄養の改善方法などを紹介。
高齢者が普段の生活で取り組める介護予防法が分かりやすく紹介されています。
また口腔機能の向上に関しては、「健口体操」というプログラムを開発し、こちらもリーフレットで方法を紹介しています。
市町レベルの介護予防事業の支援としては、「介護予防市町支援委員会」を通して、各市町の介護予防事業の取り組み状況の把握及び、より効果的な運用に向けての検討を行っています。
これまで各市町で取り組まれた口腔機能向上に関する事業、運動器機能向上事業の事例集も資料としてまとめられ、市町・県民の間で情報の共有化が行われています(こちらもホームページ上で閲覧できます)。
地域包括ケアシステム構築に向けてシルバーハウジングやサ高住の増設が進行
滋賀県では、後期高齢者人口が急増する2025年に向けて「地域包括ケアシステム」を構築すべく、様々な施策が進められています。
地域の高齢者を支える体制を強化することは、高齢者本人のみならず、高齢者の家族・介護者の負担を軽減することにもつながります。
介護離職者を減らすためにも、地域包括ケアシステムの実現は急務となっています。
地域包括ケアシステムに向けた滋賀県の施策のポイントは以下の5つ。
- 在宅医療と介護の連携強化に向けた拠点作り、介護側の拠点である地域包括支援センターと医療側の拠点である地域医師会などの関係団体との連携を強め、両者をつなぐ拠点づくりの推進を行っています。
- 地域包括支援センターの質の向上、介護と医療の連携の橋渡し役となるのに加えて、認知症施策の拠点、地域ケア会議の運営支援の拠点、介護予防の拠点として、さらなる機能強化を図っています。
- 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の充実化、県として、市町が取り組む総合事業を支援し、様々な地域の組織・団体(NPO、ボランティア、民間企業等)がサービス提供に関与できるよう整備を進めています。
- 高齢者向けの住まいの確保、公営住宅のバリアフリー化の推進、安否確認や緊急時対応、生活相談等のサービスを受けられるシルバーハウジング、サービス付き高齢者向け住宅の増設を進めています。
- 地域のコミュニティにおける支え合い体制の整備、自治体や住民組織、福祉サービス事業者の連携を支援すべく、活動拠点の確保、高齢者が社会で活躍できる居場所づくりの取り組みを推進しています。
滋賀県のあんしん・なっとく委員会とは?
介護保険サービスを利用していて、「契約時に聞いていたサービス内容と実際に提供されているものが異なる」「介護施設の職員の態度が悪い」といった不満を感じた場合、まず苦情の訴え先としては、サービスを提供している事業者・施設の相談窓口があります。
ある程度の規模の事業者は「第三者委員」という民生委員等からなる委員会を設置しており、公平な視点から問題解決にあたってくれます。
しかし事業者・施設側がこちら側の苦情や言い分を全く受け入れないという場合、あるいは「直接苦情を訴えると、後々嫌な思いをするかもしれない」といった懸念がある場合、滋賀県が設置している「運営適正化委員会」内の「あんしん・なっとく委員会」に相談するという方法があります。
まず窓口となっている職員が、来訪(事前連絡が望ましい)、電話、ファックス、Eメール、手紙等にて相談を受け付け、その後苦情内容を委員会(委員は医師、弁護士、大学の教員、保健師、社会福祉士等で構成)で検討し、状況に応じて助言や調査、あっせんなどを行います。
虐待、法令違反等が疑われる場合は、県知事に通告の上、行政による指導や監督が本格的に行われます。
相談は平日の月曜~金曜の午前9時~午後5時まで(祝日を除く)随時可能で、気軽に問い合わせることができます。
事務局は滋賀県社会福祉協議会(県立長寿社会福祉センター内)にあります。
また介護保険サービスの場合、運営適正化委員会の他に、国保連(滋賀県国民健康保険団体連合会)でも苦情を受け付けています。
こちらは配布されている「苦情申立書」という書類に苦情内容を記載し、それを国保連の事務局に提出するという形で行います。