みんなの介護アンケート
高齢者が施設入所する理由
介護施設について考えるきっかけやタイミングは、ご家族やご本人によってさまざまです。
大きな病気や認知症をきっかけに施設を探したり、家族に迷惑をかけたくないという思いから元気なうちから探したりと、人によって違います。
実際に老人ホームなどの介護施設に入居を決めた方はどのようなことがきっかけで、高齢者施設への入居を決めたのでしょうか。
みんなの介護が実施したアンケート結果をもとに見ていきましょう。
要介護度が上がった
要介護度が上がると、負担が増えるのはご家族です。
介護に限界を感じたり、何らかの理由で介護ができなくなったりといったケースも珍しくありません。
なお、要介護度については以下の記事で詳しく解説しています。
【目安がわかる】要介護度とは?8段階の状態像と受けられる介護サービス
退院後に在宅介護が困難になった
加齢とともに、病気や怪我で入院するリスクは高まります。これまで一人暮らしを続けていた方も入院をきっかけに、介護が必要となることも少なくありません。
退院後に「介護してくれる人がいない」「介護できる住環境ではない」といった問題から、老人ホームへの入居を考える方が多いようです。
また、退院後も医療ケアが必要な場合は看護師が常駐している老人ホームや病院を併設している老人ホームへの入居がおすすめです。
24時間看護師常駐の施設を探す老後への備えとして
冒頭でも少しふれたように、元気なうちから老人ホームへの入居を検討する方もいます。
介護を必要としない方も多く、アクティブシニア向けの趣味やサークル活動に力を入れている施設に入居し、充実したセカンドライフを送っています。
これらのサービスは施設ごとで異なるため、元気なうちから施設見学を行い自分にあった施設を探しておくと、のちに必要になった場合も安心できるでしょう。
自立でも入居できる老人ホームを探す認知症の進行
認知症とは、脳の病気・障害などによって認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態です。
記憶障害や見当識障害といった初期症状から始まり、症状が進行するに連れてコミュニケーションが取りづらくなっていきます。
特に徘徊といった症状がみられる場合、外出時に事故に遭ってしまう危険性もあることから、長時間要介護者から目を離すことが難しいでしょう。
高齢者の施設入所のタイミング
この項目からは施設入居を考えるべきタイミングを3つ紹介します。
- 介護者の身体的負担が増えた
- 介護と仕事の両立が難しくなった
- 認知症が原因で徘徊するようになった
介護者の身体的負担が増えた
要介護度が上がるに連れて、必然的に介護に要する時間は増えます。
以下は要介護度を決める際の指標として用いられる「要介護認定基準時間」をまとめた表です。
区分 | 介護にかかる時間 |
---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
要介護3以降は1日1時間以上の介護を必要とします。そのため、介護者にかかる負担はより大きくなることが予想できます。
また、夜間帯におむつ介助があれば、十分な睡眠時間の確保も難しくなるでしょう。
介護と仕事の両立が難しくなった
介護者のなかには仕事と介護を両立している方もいます。
さまざまな介護サービスを利用しながら両立している方も少なくありませんが、介護に要する時間が増えると勤務時間の短縮・勤務日数を減らす必要が出てきます。
その場合、収入が減り経済的不安を抱えながら介護しなければなりません。また、場合によっては介護離職に発展することもあります。
そうならないためにも、介護と仕事の両立に不安を感じたら施設入居を検討しましょう。
認知症が原因で徘徊するようになった
認知症の徘徊は周辺症状(BPSD)の一つです。記憶障害や認知機能の低下に加え、家庭内でのけ者にされるなど介護者の不適切なかかわり方によって引き起こされるとされています。
徘徊は昼夜問わず、あらわれることから在宅介護の場合はリスクある一人歩きではなく、見守りのある安全な外出にするなど工夫が必要不可欠です。
徘徊を無理に止めることは難しく、介護者は目が離せないことから要介護者を一人に残しておくことも困難な状態です。
【専門医監修】認知症による徘徊への正しい対策方法と探し方(防止グッズも紹介)
タイミングを逃すと介護費用の負担が増える
在宅介護の場合は、自宅に住みながら介護を受けることができる「居宅サービス」を利用することがほとんどです。
しかし、好きなだけ介護サービスを利用できるわけではありません。区分支給限度額(上限)は要介護度に応じて決まっています
利用限度額 | 自己負担分(1割) | 自己負担分(2割) | 自己負担分(3割) | |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 5万 | 320 円5,032 | 円1万 | 64 円1万5,096 | 円
要支援2 | 10万5,310 | 円1万 | 531 円2万1,062 | 円3万1,593 | 円
要介護1 | 16万7,650 | 円1万6,765 | 円3万3,530 | 円5万 | 295 円
要介護2 | 19万7,050 | 円1万9,705 | 円3万9,410 | 円5万9,115 | 円
要介護3 | 27万480 | 円2万7,048 | 円5万4,096 | 円8万1,144 | 円
要介護4 | 30万9,380 | 円3万 | 938 円6万1,876 | 円9万2,814 | 円
要介護5 | 36万2,170 | 円3万6,217 | 円7万2,434 | 円10万8,651 | 円
例えば、要介護3・自己負担割合1割の方の場合、27万480円までは1割負担で利用可能ですが、27万481円からは10割負担です。
そのため、この限度額を超えて介護サービスを利用した場合は経済的負担が大きくのしかかります。
介護者の状態や経済状況なども考慮して、施設入居を検討すると良いでしょう。
入居待ちが発生する可能性も
老人ホームによっては入居までに時間を要する場合が多くあります。
例えば、公的施設に該当する特別養護老人ホームは待機者数が全国で約29万2,000人(2019年時点)を記録。入居待ちが常態化しています。
希望する施設が満室の場合は別の施設への入居を検討することも考えておきましょう。
身体状況にあったおすすめの老人ホーム
老人ホームの種類によって入居条件が異なります。
そこで、この項目では身体状況ごとにおすすめの老人ホームを紹介します。
介護を必要としない方は「サ高住」
サービス付き高齢者向け住宅は自立から入居できる施設です。
好きな時間に入浴や外出ができ、限りなく自宅に近しい環境で過ごせる点が魅力です。
また施設内はバリアフリー環境が整っているので、足腰に不安を感じている方も転倒のリスクを軽減しながら、快適な暮らしを楽しめるでしょう。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す一人暮らしが不安な方は「住宅型」
住宅型有料老人ホームは、食事や掃除などの生活支援サービスや見守りを受けられる施設です。
施設内で介護サービスの提供はなく、在宅介護と同じように外部の介護サービスを必要に応じて利用します。
レクやイベントが充実しており、入居者同士のふれあいも楽しめます。一人暮らしに寂しさや不安を感じている方におすすめです。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す寝たきりの方は「介護付き」
介護付き有料老人ホームは定額で介護サービスの利用ができます。
居宅サービスのように上限を気にすることなく、介護サービスを利用できる点も魅力と言えるでしょう。
また24時間体制の介護職員、日中は看護職員をそれぞれ常駐しており、充実した介護・医療ケアを受けられます。
そのため、寝たきりの方や日常生活で医療ケアを必要とする方におすすめの施設です。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す特養の入居待ちとして利用できる
特養と同等の介護サービスを受けられることから、特養の入居待ちの間だけ介護付き有料老人ホームに入居する方も少なくありません。
介護付きは施設数も多く、待機者が少ないため比較的入居しやすいでしょう。
認知症ケアを重視する方は「グループホーム」
グループホームは認知症の方を対象とした少人数単位の共同住居で支援を受けることができます。
認知症ケア専門スタッフのサポートを受けながら、自力で日常生活を送ります。自立した生活は脳が活性化されて認知症の進行を緩やかする効果が期待できます。
また、認知症の効果的な脳トレ音楽療法などのレク・イベントが盛んに行われています。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す高齢者の施設入所の選び方
同じ種類の老人ホームであっても、特徴は異なります。そのため、入居前の施設見学はとても大切です。
入居を急ぐあまり、事前の見学や検討をしっかりとしないまま契約をしてしまい、後で「最初の印象と違う」と不満を持つことも少なくありません。
地域や施設のグレードなどでも変わってきますが、人気の老人ホームはすぐに定員に達する傾向が強いため、ご家族も慌てて契約をしてしまいがちです。
可能ならば、入居するご本人も一緒になって事前の検討をすることが望ましいでしょう。
そこで以下では老人ホームの選び方について解説します。費用
老人ホームでは毎月費用が発生するため、入居前に施設側による収入状況の確認・審査が必ず行われます。
入居後は長期間にわたって払い続けることになるため、収入に見合った費用の施設を選ぶことが大事です。
入居条件
老人ホームへの入居申請を行う場合、事前に入居条件を確かめておく必要があります。
主な入居条件は以下の4つです。
- 年齢制限
- 要介護度
- 医療依存度
- 保証人・身元引受人
年齢制限
介護保険適用での入居となる特養や老健などに入居できるのは、原則65歳以上です。
これは、介護保険法によって要介護認定を受けたうえで介護保険サービスを受けることができる年齢が65歳と定められているためです。
ただし、民間施設では60歳からでも入居できる施設はあります。例えば、軽費老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の方が入居対象です。
60歳未満でも老人ホームに入居できる
健康型有料老人ホームなどの場合、60歳未満でも入居できるケースがあります。対象施設は限られますが、50代のうちから老人ホームでの生活を始めることも可能です。
ただし、60歳未満で入居する場合は追加金が発生する施設もあるため、事前に確認する必要があります。
また、老人ホームではありませんが「高齢者向けの分譲マンション」は60歳未満でも入居できます。
60歳未満で老人ホームの入居をお考えの方は、入居年齢について相談可能な老人ホームを以下のボタンからお探しできます。
要介護度
要介護度によって、入居できる老人ホームが異なります。
以下の表を参考に、どの施設に入居できるか参考にしてみましょう。
種類 | 運営 | 入居金相場 | 月額相場 | 自立 | 要支援 | 1~2要介護 | 1~2要介護 | 3~5認知症 | 認知症 | 重度看取り | 入居の しやすさ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
介護付き 有料老人ホーム |
民 | 間 施 設0~ 580万円 |
15.7~ 28.6万円 |
||||||||
住宅型 有料老人ホーム |
0~ 21万円 |
9.6~ 16.3万円 |
|||||||||
サービス付き 高齢者向け住宅 |
0~ 20.4万円 |
11.8~ 19.5万円 |
|||||||||
グループホーム | 0~ 15.8万円 |
10~ 14.3万円 |
※1 | ||||||||
ケアハウス | 公 | 的 施 設0~ 30万円 |
9.2~ 13.1万円 |
||||||||
特別養護 老人ホーム |
なし | 10~ 14.4万円 |
|||||||||
介護老人 保健施設 |
なし | 8.8~ 15.1万円 |
|||||||||
介護医療院 (介護療養型 医療施設) |
なし | 8.6~ 15.5万円 |
医療依存度
老人ホーム・介護施設は医療機関ではないため、看護師が常駐している場合であっても、病院ほどの医療的ケアを受けることはできません。
医療依存度が高い人の場合、病院を併設している施設などを検討しましょう。
保証人・身元引受人
老人ホームでは通常、入居の際に保証人や身元引受人が必要となります。もし該当する人がいない場合、入居を拒否されることがあります。
保証人、身元引受人になってくれる身内がいない場合、身元引受人代行を行っている民間企業のサービスを利用することでも対応できます。
身寄りのない高齢者の施設入所
保証人や身元引受人がいない場合でも、身元保証会社などを利用することで、老人ホームに入所できます。
身元保証会社は身元保証サービスのほか、生活支援や入居・退去手続き、入院時の連帯保証などのサービスも受けられます。
ただし、これらのサービス内容については法人ごとで異なるため、契約を結ぶ前にしっかり確認しましょう。
立地条件
施設から自宅までのアクセスは大きなポイントです。
ご家族は面会で施設に定期的に通いますし、緊急時はすぐに駆け付けられる場所であると入居者も安心です。
逆に自宅からの距離が遠いと、会いにいく時間がなかなか取れず、ご家族と入居者の間で信頼が失われ、問題になることもあります。
近年では医療機関が併設された有料老人ホームや、医療サービスが完備されたサービス付き高齢者向け住宅が増えています。
通院の負担を考えると一体型であれば入院が必要になったとき、手続きや移動、所有物や日用品の持ち運びがスムーズにできるなどのメリットがあります。
老人ホームの調べ方
インターネットを使って老人ホームの詳細を調べられます。その際は、ひとつの情報源に頼らずに、さまざまな角度から検討していくことが大切です。
医者やケアマネージャー任せにしていると、ご家族にあった選択ができず、不満を持つことにつながってしまいます。
取り寄せた施設の資料やWebサイトではわからない点は、見学に行き、納得がいくまで確認することをおすすめします。
なお、『みんなの介護 入居相談センター』では無料で希望条件にあった施設の紹介や資料請求、見学予約などを行っています。
入居者本人ともしっかり話し合う
まだ身体がしっかりしていて、自宅での生活に不自由がないうちは、施設探しといってもなかなか実感がわかないものです。
特に、自宅で今まで通りの生活を希望している場合、子どもが親に施設探しを勧めるのは簡単ではありません。
子どもが離れて暮らしていて、親の介護が難しい場合には、本格的に老人ホーム探しを始める前に、まず将来のことについて家族で相談することが大切です。
また、配偶者が先に亡くなった場合には「一人暮らしは続けられるのか」という問題も話し合っておく必要があります。
こうした老後の不安を解消するため、選択肢のひとつとして老人ホームでの生活に理解を示してもらうことも、入居を考えてもらううえでは重要です。
施設入所している高齢者の割合
続いて、どのくらいの方が施設で暮らしているのか紹介します。
核家族化や高齢化社会の影響もあり、施設入所している高齢者の割合は年々右肩上がりを続けています。
現に総務省統計局の調べによると、平成7年の入所率は4.2%でしたが、平成22年では5.7%と増えていることがわかります。
こうしたデータも踏まえ、施設入居は特別なことではないと本人に伝えることも大切です。
高齢者が施設入所を拒否した際の説得方法
老人ホームで生活した方が本人にとって望ましいと家族が判断しても、肝心の本人が入居を拒否することは十分に考えられます。
高齢になってから生活環境を大きく変えることは、誰しも不安です。「老人ホームに入りたくない」という気持ちを持つのは決して特別なことではありません。
家族は本人の心情を汲み取り、その気持ちを簡単に否定しないように注意しましょう。
そのうえで、老人ホームのどのような点に対して不安を抱いているのか、家族が積極的に傾聴することが大切です。
本人に入居を勧める際は、いきなり施設見学などをお願いするのではなく、まずは施設の資料などを見てもらうと良いでしょう。
希望条件にあう老人ホームを探す