【10項目で施設を比較】良い老人ホームの見分け方
老人ホーム入居後に「やっぱり違った」と後悔しないためにも、しっかりと施設を比較・検討しておくことが大切です。
そこで、このページでは良い老人ホームの見分け方を10項目に分けて紹介しています。
- 料金・費用は「償却期間」に注意
- 設備は「身体状態・入居目的」と照らし合わせる
- 介護体制は「将来」を見据えて考える
- 医療体制は「看護師の配置状況」が大切
- リハビリ体制は「種類と特徴」が重要
- 立地条件は「ライフスタイル」で考える
- スタッフ対応は「雰囲気」がポイント
- 入居者の「表情」も要チェック
- 食事は「献立や食堂の清潔さ」で比較
- 経営状況は「入居率」を確認
老人ホームでの理想の過ごし方をイメージしながら、それぞれのポイントを確認していきましょう。
1. 料金・費用は「償却期間」に注意
老人ホームにかかる費用のポイントから、みていきましょう。
以下に、費用に関する注意点をまとめています。
- 入居一時金と月額利用料は無理なく支払える範囲か
- 別途かかる金額は把握できているか
- 介護保険料は把握できているか
- 返還金制度は確認できているか
- 入居一時金の保全措置は確認できているか
- クーリングオフに関して確認できているか
施設に入居すると、いろいろな費用が発生します。
その大部分を占めるのが「入居一時金」と「月額利用料」です。
月額利用料は、施設の立地条件や設備、医療・看護体制によって異なります。
入居一時金には、一般に償却期間が設けられています。償却期間とは一時金としてまとめて支払ったお金を消費していく期間のことを指します。
そのため、償却期間中に退去した場合には、決められた計算方式に従って返還金があります。
ただし、償却が済んでいる場合には、退去時に返還金はありません。
Q.老人ホームの入居金が返還されるのはどのような場合ですか?
施設の雰囲気に馴染めなかったり、長期の入院が必要になったりしてやむなく退去する場合もあるので、償却期間は入居前にしっかり確認しておきましょう。
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高額な老人ホーム=良い老人ホーム?
老人ホーム入居時に必要となる費用は、家賃設定や利用するサービスによって変わってきます。
そのほかに費用が異なりやすい点としては、運営会社による違いです。
費用の安い老人ホームは、NPO団体などが地域のニーズに合わせて設立することが多くあります。そのため、補助金などの優遇措置などを受けることができ、月額利用料が定額になる傾向があります。
また、設備状況の違いによる影響も大きいです。
高額な老人ホームは、最新の介護器具や娯楽設備、医療体制などが充実しており、満足度の高い生活が送れる体制が整っています。
入居後にどのような生活を送りたいのかをイメージし、施設を探すことが大切です。
高級な施設への入居をご希望の方は以下のボタンからお探しください。
2. 設備は「身体状態・入居目的」と照らし合わせる
有料老人ホームの設備は施設によって、大きく異なります。
そのため、入居者の身体状況や入居目的に合わせて施設を選ばないと、期待していた生活を送ることができず、入居者にストレスが溜まったり、転居したりする可能性があるので注意しましょう。
また施設見学の際は、以下の点をチェックすると良いでしょう。
- 随所に手すりが設置されているか
- 廊下や共有スペースは車椅子でもスムーズに通れる広さがあるか
- 機械浴の設備が整っているか
- 居室の広さや雰囲気
- 居室内のトイレやお風呂の有無
毎日過ごす場所だからこそ、日常的に利用する場所は特に注意して確認したいポイントです。
また万が一のときのことを考えて、居室に緊急通報装置が設置されているかどうか、という点も確認すると良いでしょう。
3. 介護体制は「将来」を見据えて考える
入居時はそこまで介護サービスを必要としていなくても、入居後に介護が必要となるケースは少なくありません。
もし入居している施設で対応が難しかった場合は退去を余儀なくされることも考えられます。そうならないためにも、あらかじめ介護体制を確認しておくことは大切です。
以下に、介護体制に関する注意点をまとめています。
- 介護スタッフが常駐する体制が整っているか
- 常駐する職員は資格を持っているか(ヘルパー・介護福祉士など)
- 訪問介護・訪問医療を利用できるか
食事や入浴、着替えなど要介護者に合った介護サービスを受けられるかどうか。また、そのほかに受けられる介護サービスを確認しましょう。
4. 医療体制は「看護師の配置状況」が大切
介護職員は、原則としてインスリン注射や点滴の管理などの医療行為を行うことができません。
そのため医療ケアが必要になると、看護師の配置状況にも注意が必要です。
施設によって医療体制にはかなり差があり、医療体制が不十分な施設に入ってしまうと、必然的に医療費が高くなり、退去や住み替えなどを検討しないといけなくなることもあります。
病院や医療施設を持つ法人が経営する老人ホームなど、医療体制が整っている場所も多くあります。
必要に応じて、事前に以下のポイントをチェックするようにしましょう。
- 服薬の管理がしっかりできているか
- 傷や怪我ができた際の処置は適切か
- 在宅酸素の使用はできるか
- 血圧測定・検温を定期的に行っているか
- 喀痰吸引(たんの吸引)、経管栄養を行うことができる介護福祉士がいるか
【施設の種類で比較】老人ホームで受けられる医療行為の一覧(インスリン・透析・胃ろう)
医療機関との協力体制
老人ホームでは医療機関と提携し、入居者に対して健康面での多様なサポートを行っています。
しかし、医療面での支援体制は施設によって異なるので注意が必要です。
「訪問診療の有無」や「緊急時の対応」「退去の必要のある疾患」などは、入居前に必ず確かめておきましょう。
病院・クリニック併設の施設を探す5. リハビリ体制は「種類と特徴」が重要
老人ホームでは寝たきり予防や筋力維持を目的として、個別のリハビリに力を入れている施設が増えています。
理学療法士や作業療法士を常駐させている施設も多いので、入居先選びの際はチェックしておきましょう。
老人ホームでは、主に4つのリハビリを受けることができます。以下でそれぞれの特徴や具体的なリハビリの内容をご紹介しましょう。
理学療法士(PT)によるリハビリ
理学療法士(PT)とは、運動機能の回復を目的としたリハビリの専門家です。
理学療法士が行うリハビリは、運動療法と物理療法の2種類です。
運動療法では、機能低下がみられる身体部位を正常な状態に回復する訓練、「立ち上がる」「座る」「起き上がる」といった基本的な動作の訓練を行います。
物理療法ではマッサージをはじめ、電気治療や温熱治療を行います。痛みの緩和、運動機能の向上のために行うリハビリです。
作業療法士(OT)によるリハビリ
業療法士(OT)は、食事やトイレなど日常的な動作ができる能力の回復を目的としたリハビリの専門家です。
理学療法士は運藤機能の回復を目的としたリハビリを担当しますが、作業療法士はより応用的な動作を行えるようになるためのリハビリを担当します。
運動機能の回復が完全ではない状態であっても、作業療法士は残存機能を活かして日常的な動作を行えるよう、リハビリによって導きます。
例えば、病気や怪我の後遺症で足が不自由となった方が「自分の足で歩きたい」と望む場合、杖など補助具を使ったリハビリを実施してそれを実現するのが、作業療法士の役割です。
言語聴覚士(ST)によるリハビリ
言語聴覚士(ST)は、言語を通したコミュニケーション能力および摂食・嚥下機能の改善・維持を目的とするリハビリの専門家です。
リハビリでは利用者のニーズに合わせて、言語による意思疎通の訓練や、食べ物を噛む・飲み込むという食事に不可欠な動作の訓練など行います。
高齢者を対象とするリハビリだと、言語聴覚士は嚥下訓練を担当することが多いです。凍ったスポンジで喉を刺激する「アイスマッサージ」がその一例です。
生活リハビリ
生活リハビリとは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行うリハビリとは異なり、日常生活の中で行う動作自体をリハビリの一環として捉え、それを支援することを指します。例えば、食事やトイレ、入浴、着替えといった動作を自分で行えるように生活の中で訓練・支援することは、生活リハビリの一種です。
特別なプログラムに沿って実施されるわけではありませんが、日常生活を送るための身体機能の改善・維持を図る上では重要なリハビリと言えます。
リハビリが受けられる施設を探す6. 立地条件は「ライフスタイル」で考える
老人ホームを検討するときには、希望するライフスタイルに合った環境かどうかを確認してみましょう。
例えば、「都会的な雰囲気がある」「自然が多い」「住み慣れている」「家族の住まいが近い」「スーパーなど商業施設が近い」…など、希望は人によってもさまざまです。
安心して長く暮らすことができる施設を選ぶためにも、入居直後というより、5年後、10年後のライフスタイルを想像すると良いでしょう。
また、重要な立地条件としては「家族にとって面会がしやすいか」「いざというときに駆け付けやすい立地であるか」といった点があります。
そのため、「公共交通機関の駅が近い」「高速道路のインターが近い」など、アクセス面も考慮すると良いでしょう。
7. スタッフ対応は「雰囲気」がポイント
施設長をはじめ、スタッフ一人ひとりの人柄や笑顔が、施設全体の雰囲気をつくるといっても過言ではありません。
以下はスタッフ対応についてチェックしたいポイントをまとめました。
- スタッフの態度・雰囲気に好感を持てるか
- スタッフは質問に誠実に答えたか
- 施設長の人柄はどうか
- 本人の趣味趣向に合うか
スタッフのコミュニケーション力が高ければ、入居者が求めるケアにもいち早く気づき、適切な対応をしてくれます。
介護サービスの質にも関わるので、複数の施設で見学や体験入居を行い、スタッフのコミュニケーションの取り方をチェックしましょう。
また施設長の人柄や介護への考え方、入居者への接し方などはそのままスタッフに影響します。
見学や体験入居の際は、できるだけ施設長本人とお話しすることをおすすめします。
8. 入居者の「表情」も要チェック
施設で楽しく生活するには、一緒に生活するほかの入居者の雰囲気も大切なポイントです。
先に入居されている利用者の方の表情は穏やかであるかなど、施設見学や体験入居のときには他の入居者の表情を見ておきましょう。
表情を見分けるポイントは以下の通りです。
- 入居者の表情はいきいきとしているか
- 入居者の表情に安心感はあるか
- スタッフと入居者との関係性はどうか
- 館内は賑やかな雰囲気か
入居者の表情が暗いと自然と館内も閑散とした雰囲気が漂いがちです。
反対に、入居者とスタッフの間で関係が築かれている施設は会話も多く、賑やかな印象を感じることができるでしょう。
9. 食事は「献立や食堂の清潔さ」で比較
老人ホームでは栄養士によって、きっちりと栄養価を考えた献立が立てられていますが、それだけでは利用者が本当に満足できる食事とは言えません。
見た目や味、雰囲気を両立させようとしてくれる施設が良い施設と言えます。
例えば、ご飯や味噌汁がしっかりと美味しい温度で出てくるか。認知症の方や介助が必要な方に対して、料理がどういうものかを説明しながら介助してくれるかなどがチェックポイントとなるでしょう。
また、ミキサー食やきざみ食、とろみ食などの介護食、あるいは療養食にも対応が可能か、その場合は追加で料金が発生するのかも事前に確認しましょう。
食事以外にも、食堂のテーブルや椅子が清潔に保たれ、床に食べかすが落ちていないかなども見ておきましょう。
10. 経営状況は「入居率」を確認
長期間に渡って安心して施設で暮らすためには、運営会社の経営状況も大切な確認事項のひとつです。
民間が運営する施設などでは、倒産の危機に直面していることも少なくありません。
特に入居率は重要なチェックポイントで、入居開始から1年以上経っているにもかかわらず50%を切っているようだと、経営がうまくいっていないと考えることもできるので要注意です。
可能であれば財務諸表などを見せてもらい、以下のような点から経営状況を確認しておくと良いでしょう。
- 経営母体は信用できるか
- 入居率は何%か
また、財務諸表は運営会社のホームページのIR情報に掲載されていることもあります。
施設見学時のポイント5つ
ここまでは施設のパンフレットやホームページといった「情報」から、良い老人ホームを見分けるポイントを解説してきました。
この項目からは、実際に施設見学に訪れた際にチェックしたいポイントを5つご紹介します。
- 11:30の施設の様子をチェック
- 見学者のペースに合わせてくれるかチェック
- 理念と実情が乖離していないかチェック
- 車椅子が汚れていないかチェック
- 食器と観葉植物をチェック
見学をする場合、内装や設備のみに目が行きがちですが、スタッフの対応方法や館内の雰囲気なども細かくチェックすること大切です。
なお、見学は複数の施設に対して行うことが重要です。最低でも3~4施設は見学することで、施設間の違いをより明確に把握できます。
11:30の施設の様子をチェック
職員の入居者に対する対応力を確かめるうえでおすすめなのが、おおよそ午前11時半に見学すること。
この時間に訪問すると、昼食時の風景を見学できるからです。
その際、自分で箸・スプーンを取って食べられない人に対してどのような介助を行っているかをチェックすると、職員の介護スキルを見極めることができます。
職員が横につき、きちんと口にご飯をもっていくのが食事介護の基本ですが、それがしっかりとできている施設ならば安心です。
見学者のペースに合わせてくれるかチェック
優良施設の場合、施設側のペースではなく、こちら側のペースで施設内を見学させてくれます。
良心的な施設なら、見学時間に縛りを設けることはなく、最低でも1時間以上、見学者側の要望があれば3時間以上でも対応してくれることもあります。
そのような施設は、見学者が見たい設備があると伝えた場合に極力その希望に応えようとし、特定の場所を見せないなどの制限を設けることは少ないです。
なお施設によっては見学を実施していなかったり、見学に時間制限を設けていたりする場合があります。
そういった時はぜひ『みんなの介護入居相談センター』をご利用ください。あなたに代わり、無料で見学予約やパンフレット請求などを行っています。
理念と実情が乖離していないかチェック
老人ホームのパンフレットやホームページに書いてある、理念などの謳い文句をそのまま信じることはオススメできません。
経営理念として立派なビジョンを掲げている施設でも、「具体的にどのような設備・サービス体制を取っているのか」という視点を忘れずに持ち、しっかりと設備やサービス内容を確認しましょう。
車椅子が汚れていないかチェック
見学時、車椅子の汚れ具合をチェックしましょう。
車椅子に食べ物のシミや食べかすが付いていないか、ホコリが付いていないかを確かめることで、福祉器具に対する職員の意識の高さがわかります。
またタイヤに空気がしっかり入っているかも要チェックです。
ケアが行き届いている施設であれば、入居者に心地よく福祉器具を使ってもらえるように、メンテナンスには最善の注意を払っています。
食器と観葉植物をチェック
施設のなかには、食器をすべて陶器・磁器にしているところもあります。
これらは割れやすい食器で、もし割れた場合は職員が片づけをせねばなりません。
しかし、美しくて触感のよい陶器・磁器を使って食事することができれば、利用者としても満足感を得ることができます。
利用者の生活を第一に考えている施設の姿勢は、こうした食器の選び方からも知ることができます。
施設内の清潔度を測る方法としては、観葉植物の葉に触ってみると良いでしょう。
もし葉にホコリが積もっていなければ、普段から職員による清掃が行き届いている証拠です。
老人ホームに見学に行った際は、「食器」と「観葉植物」は要チェック事項と言えます。
施設職員に聞いておきたい5つの質問
施設を見学した際は、職員に対する質問時間が設けられるのが一般的です。その際は、恥ずかしがらずに、積極的に質問しましょう。
この項目では質問しておくべきポイントを5つ紹介します。
- 老人ホームに私物は持ち込める?
- 職員の定着率と入居率は?
- 老人ホームの退去条件はなんですか?
- どんなイベントが開催されていますか?
- 急変時の対応はどうなっていますか?
入居者にとってはもちろんのこと、入居者の家族も確認しておくべきポイントでもあるので、一つひとつ見ていきましょう。
老人ホームに私物は持ち込める?
入所する際「思い出の品を持ち込みたい」と考える人も多いでしょう。
老人ホームなどの施設では、スペースの確保ができないものや、倫理的・法律的に問題のあるものでなければ、私物の持ち込みは問題がない場合がほとんどです。
とはいえ、盗難や紛失の際に大きな問題となりやすい多額の現金、あるいは貴金属の持ち込みを禁止している施設は多くあります。
また、大半の施設ではペットなどの動物を連れてくることも禁止事項のひとつです。
大事な私物に囲まれて暮らせるかどうか、施設との相談などを事前に行っておきましょう。
職員の定着率と入居率は?
施設を検討する上で確認したいのは、職員の定着率と入居率です。
これを確認するときに役立つのが、「重要事項説明書」です。
【契約時に確認すべき10項目】老人ホームの重要事項説明書とは?
「重要事項説明書」は介護施設が作成し、都道府県に提出する義務のある書類で利用者が内容をチェックすることができます。
老人ホームの入居要件や職員の配置状況などあらゆる情報が記載されており、施設のことを知る上で貴重な情報源のひとつです。
なお重要事項説明書は施設見学の段階でも貰うことが可能なので、施設検討の段階で確認するようにしましょう。
老人ホームの退去条件はなんですか?
入居前に施設と結ぶ、契約書の中で特にチェックしたいのが退去条件です。
退去条件が曖昧な場合は、後々トラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。
特に、容体が悪化して寝たきりになったとき、認知症を発症して重度化したときなど、細かい状況を想定して施設側に退去の必要があるのかどうか確認してください。
優良施設であれば、退去条件のことや、寝たきりや認知症になったときのことを施設側に尋ねたときに、誠意をもって丁寧に説明してくれます。
こうした質問に対して曖昧な返答しかしない施設は、「永く住まえる家」としてはやや不安が残ります。
終身利用が可能な老人ホームを探すどんなイベントが開催されていますか?
入居する方にとって楽しみのひとつとなるのが、年中行事などのイベントやレクリエーションです。
イベントではお祭りなどの地域の人々との交流を行うものや、アウトドアでの食事会など、季節や地域性を重視した催しが行われます。
レクリエーションでは映画鑑賞や音楽会などを楽しむことができます。
日々の彩りとして、こうしたイベントが充実している施設に入りたい人も多いでしょう。
イベントは施設ごとに頻度に大きな差があり、入居している人の嗜好によっても異なります。
こうした部分も軽視せず、事前にチェックを行うことによって、後悔のないようにしましょう。
レクが充実している施設を探す急変時の対応はどうなっていますか?
夜間の対応や体調急変時、災害時といったあらゆる「もしも」に備えておくことは入居者・家族双方にとって大切なことです。
お互いが安心した生活を送るためにも、しっかりと緊急時の対応を確認しましょう。
夜間の対応
夜間は人員の配置が限られますが、一定の時間おきに巡回が行われます。
何時間おきに行われるのかは施設ごとに異なりますが、30分おき、60分おきなど、入居者の状態・必要性に応じて時間が定められる場合も多いです。
夜間に入居者の体調が急に変化したとき、どのような対応が行われるのか、入居前にしっかりと確認しておきましょう。
体調急変時の対応
万が一、入居者の体調が急変したとき、対応力が高いのは訪問診療を取り扱っている医療機関が運営する老人ホームです。
必要なときに、医師によるサポートをすみやかに受けることができます。また、施設の近くに24時間体制で対応できる訪問看護ステーションがあり、そこと契約を交わしている施設であれば、いざというときに安心です。
特に持病を抱えている人の場合、介護スタッフでは対応できない医療面での緊急事態に対して、医師や看護師が素早く対応できるシステムが構築されているかどうかは大事です。
災害時の対応
火災や地域などの災害発生時の対応も確認しておく必要があります。
消防署員の指導による避難訓練を行っているのか、災害時の行動マニュアルなどが整備されているのかといった点がチェックポイントです。
また、災害対策は人の対応力だけでなく、設備面での充実度も重要と言えます。入居前に、建物が避難誘導しやすい構造になっているのかどうかも確かめておきましょう。
入居者の身体状況と目的に合った良い老人ホームの選び方
ここまでは良い老人ホームの見分け方や見学時のチェックポイントを紹介してきました。
各項目でも説明があった通り、いかに設備やサービスが優れた施設であっても、入居者の心身状態・入居目的とマッチしていなければ、入居後に快適な生活を送ることはできません。
そこで、この項目では入居者の身体状況や目的別におすすめの老人ホームを4つご紹介します。
施設種別ごとの特徴を理解し、老人ホームを選ぶことが生活の質を高めることにもつながっていきます。
自宅と変わらない生活を送りたい方は「サ高住」がおすすめ
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認・生活相談サービスを受けながら生活できる施設です。
制度上の区分は賃貸住宅とされていますが、老人ホームと同じくバリアフリーが完備され、高齢者が安心して生活できる環境が整っています。
サ高住では個室がすべて居室で、各部屋にはキッチンも完備されているので、室内で自炊も可能です。
外出時の許可も必要なく、自宅と同様の生活を送ることができます。
また、サ高住には「一般型(自立支援型)」と「介護型」があります。
それぞれの特徴を以下にまとめています。
- 介護型
- 入居条件や費用形態、提供されるサービス内容は介護付き有料老人ホームとほぼ同じ。
要介護度が重い方が入居対象となる。 - 一般型
- 住宅型と同様に、介護費用は利用した分を負担する。
自立や要支援の方が入居対象となる。
なお介護型は全体的に施設数が少なく、サ高住の大半が一般型となっています。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す日常生活の一部で介護が必要な方は「住宅型」がおすすめ
住宅型有料老人ホームは、必要なサービスだけを選んで利用できる施設です。
介護サービス費は利用した分だけ発生します。介護付きだと毎月定額ですが、住宅型は利用した分の費用を支払います。
要介護度が軽度の方の場合、毎月定額を支払うよりも利用した分だけ支払った方が、介護費用は安くなることも多いです。そのため、住宅型は自立~軽度の方におすすめの施設と言えます。
入居後は家事をはじめとする各種生活支援サービスを受けることができるので、自宅で行っていた食事の調理や掃除、洗濯などの負担を大幅に軽減できます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す手厚い介護・医療ケアが必要な方は「介護付き」がおすすめ
介護付き有料老人ホームは、毎月定額で介護サービスを24時間体制で受けることができる施設です。
介護費用が追加で発生する心配が少なく、毎月の支払額を計算しやすい点が特徴と言えます。
要介護が重い方の場合、介護サービス費を利用量に応じて支払っていると、費用負担が高額になる可能性があります。 しかし、介護付きであれば、サービスの利用頻度に関係なく、費用は一定です。
また、医療機関との連携が制度上義務付けられているため、持病のある方は手厚い医療ケアを受けることが可能です。
さらに居室は全室個室なので、プライベートを確保しやすい点も大きな特徴と言えます。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す認知症ケアを重視している方は「グループホーム」がおすすめ
グループホームは認知症のケアに特化した施設であり、医師から認知症の診断を受けていなければ入居できない施設です。
入居者の定員は9名~18名のことが多く、他の施設に比べて定員数が少ないので、スタッフによる手厚いケアを受けることができます。民間施設の中では費用が安価である点も大きな特徴です。
入居後は他の入居者と共同生活を送り、できる範囲内で家事に取り組みながら、認知症の進行を食い止め、症状の改善を図ります。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す介護施設が提供するサービスの種類
以上で老人ホームの施設種別を紹介しました。この項目では老人ホームに入居した後に、受けることができるサービスについて解説します。
老人ホームや介護施設で提供されているサービスには大きく分けて以下の4つがあります。
- 介護サービス
- 生活支援サービス
- 健康管理サービス
- 入退院時のサポート
これらのサービスは「月額利用料」や「介護保険自己負担額」「入居一時金」の範囲内で提供されていることがほとんどです。
ただし、一定の規定回数を超えてしまった分に関しては追加料金となったり、最初から別料金として設定されていたりするサービスもあります。
老人ホームや介護施設の種類によっても、さまざまな料金設定のバリエーションがあるので、事前にご自身の利用したいサービスが全体でいくらかかるのかを確認しておくといいでしょう。
以下では、介護施設が提供している具体的なサービス内容を解説します。
介護サービス
入居する人の介護度に応じて必要な入浴・歩行・食事・排泄などの介助を提供している介護施設では、介護保険の適用範囲内で高齢者が安心して生活を営めるサービスを提供しています。
対応しているサービス内容などは介護施設によってさまざまですが、ここでひとつ注意したいのが、介護費用が定額制か利用回数に応じて設定される定量制かどうかというポイントです。
介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームのように、施設内で介護サービスを提供することにより、月々の介護費用が定額の介護施設であれば、毎月支払う額はほぼ固定額です。
一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などのように、在宅介護サービスを外部の事業所と別途契約して利用するタイプの老人ホームなどの場合、介護度によっては利用回数に応じて介護費用が変わってきます。
人員基準も介護サービスに関係している
介護サービスと切っても切り離せないのが、介護スタッフの人数です。
例えば、介護付き有料老人ホームでは介護スタッフの人数を「入居者3人に対して1人」と国によって定められています。
しかし、基準以上の「入居者2人に対して1人」といったように手厚い介護体制を整えている施設もあります。
そういった施設の場合、通常よりも手厚いケアを受けることができます。ただし「上乗せサービス費」として人件費が介護保険の自己負担額にプラスして必要となるので注意しましょう。
ご自身の介護度や夜間の排泄介助、24時間のサポートが必要かどうかなど、利用したい介護サービス内容をケアマネージャーと相談しながら検討しましょう。
生活支援サービス
老人ホームでは、介護のほかに日常生活を送るうえで必要となるさまざまなサービスを用意しています。
規定の回数までは月額利用料で利用できますが、規定の回数を超えて利用する場合は別料金です。
以下では多くの介護施設で提供している生活支援サービスの「月額利用料で利用できる回数の目安」をまとめています。
サービス名称 | 利用回数 |
---|---|
居室清掃 | 週1回 |
寝具の交換 | |
買い物代行 | |
入浴介助 | 週2回 |
洗濯 | |
役所手続き | 代行月1回 |
通院介助 | 一時金や月額利用料、 | 介護保険内で対応
入居する老人ホームや介護施設の利用料金や契約内容をよく確認し、規定回数の目安をもとに追加費用を計算して、月々の費用はいくらくらいになるのか試算しておきましょう。
健康管理サービス
介護施設に入居した場合、健康管理のための定期健康診断や健康相談などを受けることができます。
費用は利用料金に含まれる場合と、別途料金の場合があります。
高齢者の暮らす住まいだからこそ、日々の健康管理サポートを期待する方は多いでしょう。
主に介護施設や老人ホームで提供している健康管理サービスには以下のような内容があります。
- 定期的な健康診断や生活指導
- 生活リズムの記録
- 服薬サポート
訪問診療や健康診断など医療保険が適用されるサービスに関しては、老人ホームや介護施設が直接提供するのではなく、提携する医療機関から受けることが多くあります。
このため、利用料金とは別途で費用がかかるケースもあることを覚えておきましょう。
入退院時のサービス
長く介護施設や老人ホームで暮らしていれば、体調を崩し入院することも考えられます。
こうした入院時にスタッフが同行してくれたり、入院中の身の回りの買い物やお見舞いをしてくれたりする老人ホームがあります。
ただし、老人ホームによっては3ヵ月以上の入院となると、退居をしないといけないところもあるので、入院時にはどのような対応をしてくれるのか、事前に確認しておきましょう。
他の人はこちらも質問
老人ホームとはどんなところ?
老人ホームでは入居する高齢者に健康管理や食事、入浴、掃除などの生活支援サービスや介護サービスを行いつつ、イベントなど楽しい企画を用意し、充実した生活を過ごします。施設ごとで設備の充実度、医療体制、リハビリなどは異なるため、資料請求や施設見学で老人ホームの特色を把握することが大切です。
有料老人ホームは何種類?
有料老人ホームは介護付き、住宅型、健康型の3種類あります。
介護付きは充実した介護ケアを受けられる施設です。住宅型はレクリエーションやイベントが盛んに行われています。健康型はシニアライフをアクティブに過ごしたい方の施設です。
老人ホームは何をしている?
一般的な老人ホームの1日は起床後、健康チェックをします。朝食後はリハビリ体操、入浴(午前・午後あり)を済ませます。昼食後はレクリエーションや入居者同士の交流など、自由に過ごします。また入居者の多くが気になるおやつで、午後のティータイムを楽しみます。夕食後は口腔ケアや寝る用意をして就寝となります。
高齢者住宅は何歳から入居可能ですか?
サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどは、60歳以上が入居対象となります。介護付き有料老人ホーム、グループホーム、特別養護老人ホームなどは65歳以上です。
しかし、40〜64歳の方でも特定疾病のある要介護認定を受けていれば、入居可能な場合もあります。
- 入居者の身体状況・目的に合わせて施設を選ぶことが大切
- 老人ホーム入居後の生活を想定して施設を検討する
- 退去条件や緊急時など「もしものこと」に備える
- 見学時はスタッフや入居者の雰囲気も確認する
- 老人ホームの希望条件に優先順位をつける