東海3県の中では比較的低額で入居可能な施設がたくさん
三重県の老人ホームの特徴をひとことで言うとすれば、“まんべんなく”ということになるでしょう。
そもそも三重県は、平成の大合併によって全国各地に人口10万人単位の市町村が生まれる前から、県庁所在地の津市をはじめ松阪市、四日市市、伊勢市など6つの市で10万人を超えているため、各地で独自に発展を遂げてきたという背景があります。
老人ホームも各地にまんべんなくあり、地元民に寄り添った展開をしていると言って良いでしょう。
ただし、絶対的な数は多くはありません。
入居待ちをしている高齢者も数多く、施設の整備が望まれているというのが現状です。
施設の種類もまんべんなく、住宅型有料老人ホームをはじめ介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどひと通りの施設は各地にあります。
しかし、グループホームや高齢者住宅といった施設はほとんどないので、そういった施設への入居を考えている高齢者や家族の方は、お隣の愛知県、特に名古屋市で探すのも一案です。
費用面では、東海3県の中では比較的低額で利用できるところが多くあります。
名古屋のように入居一時金が1,000万円を超えるようなところはなく、10万円以内、月額利用料も13万円程度の老人ホームがほとんどです。
資料請求や現地の見学なども、気軽に行ってみてくださいね。
三重県は四日市コンビナートをはじめとした工業で有名な県ですが、同時に、昔から観光を主な産業としてきた稀有な県でもあります。
伊勢神宮や熊野神社といった寺社をはじめ、鈴鹿サーキット、ナガシマスパーランド、志摩スペイン村、なばなの里…と、東海圏や関西圏からの観光客が数多く訪れるのです。
観光客を迎え入れるために県民の“おもてなし”の心も厚く、心理面での高齢者の暮らしやすさという点も特筆ものです。
さらに三重県では「みえ高齢者・元気かがやきプラン」や「三重県高齢者居住安定確保計画」といった、公共の高齢者対策も推進されています。
高齢者が安心して生活できる住居の確保とともに、高齢者福祉の施策を連携させることによって、高齢者のさまざまなニーズに対応したサービスを選択できるような社会の整備を進めているのです。
もともと、特に沿岸部は典型的な太平洋型気候で過ごしやすく安定した気候ですから、高齢者が余生を過ごすための環境が整ったら、まさに“鬼に金棒”ということになるでしょう。
高齢者人口は年々増加し50万人を超えた
三重県の高齢者人口の推移を見ると、2010年に45万人、2013年に47万7,000人、2015年に50万6,000人と年々増加。2023年には53万1,373人まで増加しました。
ただ団塊の世代(第一次ベビーブームの1947年~1949年生まれ)が一通り高齢者世代となる2015年以降は増加率が緩やかになり、2020年から2025年にかけては横ばいの状態になると見込まれています。
その一方、2015年から急増が予想されるのが後期高齢者(75歳以上)人口。
特に、2025年以降は団塊の世代が75歳以上となるため、一気に後期高齢者が増加する見込みです。
高齢化率で見てみると、2010年時点が24.3%、2023年には30.0%まで増加しました。
高齢化率今後はさらに上昇し、2030年で32.7%、2040年で37.2%に上昇すると考えられています。
2025年までは高齢化の進展度合いはそれまでよりは緩やかになると予想されていますが、2025年以降は急激に加速する見込みです。
団塊世代の後期高齢者人口が2025年にかけて急速に増加していく県内の高齢化事情が見えてきます。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
同じ時期の日本の高齢化率は2010年で23.0%、2023年で29.0%ですから、日本の平均よりも1.0ポイント強高い値で推移していることになります。
2023年時点における地域別の人口構成を見てみると、高齢化率が最も高いのは南伊勢町の54.6%でした。
次に高いのは大紀町の51.6%でした。この2つの街は既に2人に1人が高齢者という状況です。
介護サービス利用は14年で約2万人増加
三重県の介護保険サービスの利用者数は年々増加傾向にあります。
介護保険サービスの利用条件となる要介護認定者数の推移を見ると、2014年度において9万2,748人、2015年度で9万6,559人、2017年度で10万4,120人と年々増加。
2023年には10万2,348人でした。
2023年度の要介護認定の段階ごとの人数を見てみると、最も認定者が多いのは「要介護1」の2万3,588人、続いて多いのが「要介護2」の1万5,918人。
以下、「要支援2」の1万3,036人、「要介護4」の1万3,542人、「要介護3」の1万3,510人と続きます。
今後もさらに要介護認定者数は増加すると考えられ2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)を迎えることから、その影響が少なからずあると考えられます。
介護保険サービスのうち、施設・居住系サービス利用者状況を見ると、2010年には総数6万4,947人でしたが2024年には9万1,878人まで増加しました。
内訳としては、居宅介護サービス6万1,878人、施設介護サービス1万5,799人、地域密着型サービス1万2,314人となっています。
「認知症への理解を深める」などの介護予防のテーマを毎年設定している
三重県では、県レベルにおいてさまざまな介護予防の取り組みが行われています。
大きく分けると、介護予防に対する啓発活動、人材育成、市町が取り組む介護予防事業への支援、の3つです。
介護予防に対する啓発活動としては、ロコモティブシンドロームを防ぐこと、普段の食事の栄誉バランスを考えること、口腔ケアに取り組むこと、特定健康診査への受診を訴える活動などに力を入れています。
三重県民の健康寿命の平均は、男性が77.4歳、女性が80.2歳となっていますが、これをさらに延伸し、介護が必要な高齢者の数を減らしていくというのが、三重県が掲げている介護予防の目標です。
これら普及活動には人材育成にも関係しており、例えば栄養面では、普及活動の中核を担う団体、管理栄養士、調理師等に研修を実施し、高齢者が日常的に食べている食事内容の改善を進めています。
口腔ケアについては、介護保険施設においても適切な口腔ケアへの認知度の向上及び適切なサービスが行われるように、歯科医や介護職に対する口腔ケアの研修、施設でのモデル事業の実施などが行われています。
また、運動器の向上をはじめ介護予防に取り組む地域の自主グループに対して、情報の共有化を始めさまざまな支援を行い、活動の活性化を促す取り組みも実施されています。
市町レベルで行われる「介護予防・日常生活支援総合事業」に対しての支援は、介護予防に携わる行政職員への研修、地域の現状把握及び関係機関の調整、市町への情報提供などがメイン。
研修については、市町介護予防事業担当者及び地域包括支援センターの職員等に対して、「運動機能向上への取り組み」(2013年度のテーマ)、「認知症への理解を深める」(2014年度テーマ)」など毎年度ごとにテーマを設定して綿密な研修が行われています。
地域包括ケアシステムでは家族介護者も支援
三重県では、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となるいわゆる「2025年問題」に備えて、地域の高齢者に総合的、一体的な各種サービスを提供する「地域包括ケアシステム」づくりを進めています。
介護保険サービス、介護保険外サービス、医療系サービス、住宅、福祉・権利擁護などの分野の充実化を目指し、関係団体・組織が相互に連携しながらサービス提供を行うというのがその目的です。
三重県型の地域包括ケアのポイントは3つあります。
要介護者への支援、家族介護者を含む要介護者以外への支援、地域包括支援センターの機能強化、です。
要介護者への支援について整備が進められているのが、医療系サービスと介護系サービスの連携。
かかりつけ医、在宅療養支援診療、訪問看護等のサービス充実化を目指し、ケアマネージャーを軸に要介護者の生活を支えていく体制の整備が進められています。
そして保険外サービス(見守り、声かけ、配食、買い物支援、緊急通報など)については、NPO、地域の住民組織、自治会等の力を活用し、サービス充実化が図られています。
さらに権利擁護の面ではケアマネージャーがその必要性を認識し、地域包括支援センターに支援要請できる体制が整備されつつあります。
家族介護者を含む要介護者以外への支援を意識するというのは、三重県の地域包括ケアの特徴と言えます。
介護保険サービスの充実化(介護保険事業計画策定委員会による検討)、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームの増設(民間事業者と行政の連携)を通して、家族介護者の負担を減らすことを目指しています。
地域包括支援センターの機能強化地域包括支援センターの機能強化については、地域包括ケアのコーディネーターとしての役割を担うべく、職員の資質向上、研修の実施、情報提供力の向上等が取り組まれています。
三重県の運営適正化委員会とは?
介護保険サービスを利用している人がサービス内容やサービスを提供するスタッフに対して不満や疑問を抱いたとき、その苦情の訴え先としては、そのサービスを提供している事業者、三重県国民健康保険団体連合会(国保連)、そして県が設置している三重県福祉サービス運営適正化委員会があります。
運営適正化委員会の特徴は、専用の相談窓口が用意され、比較的気軽に相談できるということ。
例えば、介護保険サービスについての苦情は、本来ならまずそれを提供する事業所に言うのが問題解決の早道ではあります。
しかし人によっては、「いつもお世話になっている事業所だから、直接苦情を言うと、後々しこりが残るかもしれない」と思い、苦情を訴えづらい面もあるでしょう。
そんな場合は、まず運営適正化委員会に連絡し、解決を目指すのが得策です。
受け付けた苦情は委員会で検討され、必要に応じて、助言、調査、あっせんなどが行われます。
相談方法は、三重県社会福祉会館にある事務局に来訪する(事前に要連絡)、電話する、ファックスを送る、Eメールを送ることでできます。
事務局は津市にあるため、県内の津市から離れた場所に住んでいる場合は、電話、ファックス、メールでまずは相談してみるとよいでしょう。
なお国保連については、三重県自治会館の2階に事務局があります。
こちらは専用電話による連絡をした上で、「苦情申立書」(ホームページでダウンロード可)に必要事項を記入して提出することで苦情を受理してくれます。