老人ホームは何歳から入るべきかは目的によって異なる
老人ホームは、人生の目的に合わせて何歳から入るのが良いか、いくつかのケースに分かれます。
一般的に、老人ホームへの入居する目的として、「有意義なセカンドライフを送りたい場合」と「介護を受けたい場合」のふたつに分けられます。
以下では、介護施設に入る目的によって何歳から利用すれば良いかを解説していきます。
有意義なセカンドライフを送りたい場合
老人ホームへ入居する目的として挙げられるのが「高齢者がセカンドライフを送るため」です。
この場合、老人ホームに要介護状態となってから入居するのではなく、元気なうちから入居します。
有意義なセカンドライフを送りたい場合は、老人ホームへ入居可能な年齢である60歳~65歳で施設を検討し始めることをおすすめします。
自立した生活を送れる元気な高齢者を入居対象とした老人ホームでは、多様なアクティビティを用意し、趣味やイベントなどが盛んに開催されているのが一般的です。
例えば、オペラの鑑賞会や、豪華なお食事会を定期的に開いている施設などもあります。
どのようなサービスや設備が用意されているかは施設によって異なるため、入居を考えている方は事前に情報収集をして、自分の希望にあった老人ホームを探しましょう。
希望条件から施設を探す介護を受けたい場合
老人ホームへ入居する目的でもう一つ挙げられるものが、「日常生活における介護を受けるため」です。
一人暮らしをしている場合、要介護度が高くなってくると独居での生活が難しくなってきます。
また、在宅で家族から介護を受けている場合でも、要介護度が上がるにつれて、介護負担が大きくなった場合、負担解消のために老人ホームへの入居を選択するというケースが多く見受けられます。
もし、要介護認定の判定を受けたら、すぐに施設の検討を始めましょう。
注意点として、公的施設である特別養護老人ホームなどはリーズナブルな費用で手厚い介護が受けられますが、順番待ちが多く地域によっては入所まで何ヵ月も待つこともあります。
一方で、介護付き有料老人ホームのような民間施設は施設数が多く、比較的すぐに入居することが可能です。
施設選びをすぐにスタートすれば、それだけ早く家族の負担を解消することが可能です。
老人ホームへの入居を検討するきっかけ
続いて、老人ホームへの入居を検討するきっかけについて解説していきます。
在宅介護を続けるのが難しいとき
在宅で介護を行っていくと、家族の負担が非常に大きくなります。
最近では、「介護疲れ」という言葉が幅広く認知されるようになりました。
特に、介護者である家族が仕事をしている場合には、仕事と介護の板挟みとなり、介護うつになったり、虐待をしてしまったりする危険性があります。
そんな状況に陥ってしまいそうなときには、老人ホームへ入居することが有効な選択肢のひとつです。
とはいえ、限界を感じてから老人ホーム探しを始めても入居するまでに時間がかかることがあります。
あらかじめ在宅での介護が厳しくなるケースを想定してご家族と話し合い、早めの入居準備をおすすめします。
身体状況別に入れる施設を探す「病院から退院」あるいは「老健から退所」するとき
大きな病気や怪我により入院した場合、退院したとしても介護や継続的な医療ケアが必要になる場合があります。
その場合、まず介護老人保健施設(老健)に入ることもできますが、老健は入居期間は原則3ヵ月です。
老健を退去しなければいけなくなった場合在宅で家族が介護をするケースが多いですが、なかなかうまくいかず、厳しい状況に直面する家庭が多数あります。
そのため、病院や介護老人保健施設から直接老人ホームへ入居する方法も選択肢に入れ、入院中から家族や親族で話し合うようにしましょう。
「周囲に迷惑をかけたくない」と感じ始めたとき
家族や親族に迷惑をかけたくない、自分のことは自分で決めたいと考える高齢者の方が増えています。
そのため、高齢になり家族から心配され始めたのをきっかけに、自分や家族が安心できる方法として老人ホームへの入居を決めるケースも増えてきています。
身体状況が悪化しないうちであれば施設の選択肢が広がりますし、見学などを含め自分で施設を選べるため、早いタイミングで施設探しを始めるのはおすすめです。
希望条件から施設を探す老人ホームは平均何歳から入るのが一般的か
老人ホームに入る目的別に、入居するタイミングを解説して来ましたが、ここでは老人ホームの平均入居年齢について解説していきます。
入居時の平均年齢は80歳前後
「みんなの介護」調べでの、施設に入居した時点での平均的な年齢は、80歳前後です。
有料老人ホームなどは、入居条件を60歳以上と定めていることが多く、特別養護老人ホーム・グループホームなどの施設では、原則として65歳以上と定められています。
このように基本的に老人ホームの入居条件は60歳~65歳以上と定められているため、それ以下の年齢の人は基本的に入居対象外となるのです(特定疾患を除く)。
なお介護付き有料老人ホームのなかには、「介護専門型」と呼ばれる施設があり、要介護認定を受けた方だけが入居対象となっています。この場合も、入居できる人の年齢は原則として65歳以上です。
入居者の平均年齢は80代~90代
各施設に聞いてみると、老人ホームで生活している方の平均年齢は80代~90代というケースが多いです。
このことから、心身がまだ元気な60代~70代のうちは自宅で生活し、体の衰えが目立ってくる70代後半~80代になってから老人ホームに入居する人が多いと考えられます。
しかし、老人ホームに入居するすべての方が、心身の衰えが進んでから、あるいは要介護状態になってから入居するわけではありません。
例えば、過去に自分が親の介護を経験し、とても苦労したという方の場合、「自分の子ども達には同じ思いをさせたくない」と考え、元気なうちから老人ホームに入ることもあります。
自分の体が老いにより衰弱する前、または要介護状態になる前に、老人ホームにあらかじめ入居しておくというわけです。
老人ホームを探す目安は60代後半
自分で老人ホームを探す場合には、体力と判断力が必要です。自立した生活ができているときから先を見据えて始めましょう。
施設見学は1施設につき、平均で1~1.5時間はかかります。
そのため、多くの施設を見学するのにはかなりの体力と気力を要します。
また、契約時には、重要事項説明書や契約書の内容をしっかり理解することが求められます。
初期費用や月額料金、そのほかにかかる費用などをどうやって支払っていくかも、自分自身の人生設計を考えながら早め早めに計画を練らなければいけません。
早くから施設入居を検討しておくことが大切
2018年に厚生労働省が発表したところによると、2016年の日本の健康寿命(介護の必要なく日常生活を自立した状態で送れる期間)は男性が72.14歳、女性が74.79歳です。
ほとんどの施設が60~65歳以上を対象年齢としていることを考えると、60代後半から75歳程度までが、老人ホームを探すのにふさわしいといえます。
また、「可能な限り自宅で過ごして、介護が必要になったらホームに入る」という考え方であれば、75歳での入居を目指し、70歳ぐらいからホーム探しに着手すると、焦らずに納得のいく施設探しができるでしょう。
介護が必要になってからでは負担が増える
在宅介護生活が始まってしまうと、ほとんどの場合、精神的・肉体的な余裕がなくなっていきます。
余裕がない状況で施設探しをしてしまうと、譲れないはずだった条件を妥協してしまったり、見学の時間を確保することが難しくなったりします。
結果的に老人ホームに入っても馴染めなかったり、介護度が重くなってしまい住み替えざるを得ない方もしばしばみられます。
介護される側だけでなく、する側のことも考えて、介護度が重くなる前に候補となる施設をピックアップしておくようにしましょう。
希望の条件から施設を探す老人ホームの入居条件
老人ホームには基本的に入居条件が定められています。
種類別でまとめると以下の通りです。
施設種別 | 年齢 | 介護度 | ||
---|---|---|---|---|
自立 | 要支援 | 要介護 | ||
介護付き | 有料老人ホーム60歳※1 | 以上|||
住宅型 | 有料老人ホーム||||
サービス付き | 高齢者向け住宅||||
軽費老人ホーム | ・ケアハウス60歳 | 以上※2 | ||
グループホーム | 65歳 | 以上※3 | ||
特別養護 | 老人ホーム※4 | |||
介護老人 | 保健施設||||
介護療養型※5 | 医療施設
【一覧表でわかる】老人ホーム8種類の違いと特徴(介護度別・認知症対応)
入居年齢は60歳もしくは65歳以上
入居条件として、65歳以上と定められている施設をよく見かけますが、住宅型有料老人ホームのようにアクティブなシニアライフを送る目的で入居する施設では60歳以上としている場合があります。
また、入居条件には入居時の年齢のほかに、要介護度によって受け入れるかどうか決まっているケースがほとんどです。
特養であれば原則として要介護3以上の高齢者が入居できます。
なお、グループホームや特養、老健や介護療養型といった介護サービスの提供を前提としている介護施設では、基本的に65歳以上の年齢制限が設けられています。
受け入れ条件の「おおむね・原則」の違い
老人ホームの受け入れ年齢制限は60歳もしくは65歳ですが、どちらの場合も「おおむね」もしくは「原則」と規定されています。
「おおむね」は、入居条件を60歳以上とすることが多い住宅型有料老人ホームでも、施設によっては65歳以上の年齢制限を設けているケースがあります。
そのため、「おおむね60歳以上」となっているのです。
一方、「原則」は、グループホームなど介護利用を前提とした施設で用いられる傾向があります。
この場合、利用対象となるのは介護サービスを利用できる65歳以上が基本です。
しかし、単身世帯でデイサービスの利用が難しいような人は、入居できる場合があるため「原則」とされています。
60歳未満でも入れる施設はある
制度上定められている「特定疾患」がある方で、介護保険の要介護認定を受けている方であれば、40歳~64歳であっても有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、グループホームに入居できます。
特定疾病でない、50歳以上60歳未満の方で施設入居を検討している方は、サ高住や有料老人ホームが主な選択肢になります。
最近ではフィットネスジムやプールが併設されている施設など、サークル活動や趣味を楽しめる施設もあり、より理想的で健康的な老後を過ごせるでしょう。
身の回りのことを自分でできる健康な高齢者の受け入れを前提としていますが、介護が必要な状態でも相談すれば入居できる場合があります。
株式会社が運営する老人ホームの場合、空室があれば交渉次第で融通を利かせてくれるはずです。
サ高住・有料老人ホームを探す老人ホーム入居の検討ポイント
ここからは、老人ホームへの入居を検討する際に知っておきたいポイントを3つに分けてご紹介します。自分が理想とする施設を選んでいるイメージを頭に描きながら、以下の項目をチェックしていきましょう。
身体状況を確認する
施設を探す前に、現在の身体状況を振り返っておくことが大切です。老人ホームは種類のよって利用する目的が異なります。
施設の種類は、住宅型有料老人ホームのように元気にシニアライフを満喫するための施設がある一方で、重度の要介護状態の方が24時間の介護体制のもとで暮らせる介護付き有料老人ホームや特養などさまざまです。
したがって、すでに手厚い介護サービスが必要な方なら、身体状況や必要な介護に合わせて施設選びをする必要があります。
施設によって、要介護度によって受け入れが変わるところもあるため、希望する施設がある場合は確認しましょう。
住みたい地域を決める
老人ホームは多彩な種類の施設が全国に点在しています。そのため、住みたい地域をイメージしてから探していくとよいでしょう。
一般的に、老人ホームの費用は都市部に近づくほど高く、地方に行くほど安くなる傾向があります。
ただし、住み慣れた地域にある老人ホームを選ぶのか、家族や親戚が暮らしている地域を選ぶのか、といった視点も大切です。
家族が遠方で暮らしている場合、面会しやすい地域を選ぶのもおすすめです。
入居後の生活をイメージする
老人ホームへ入居してから、どのような生活を送りたいかイメージすることも大切です。
たとえば、住宅型有料老人ホームは、シニアライフを満喫するための設備やサービスが特徴です。
施設内にスポーツジムや映画館、温泉やプールがあったり、イベントやサークル活動が盛んだったりなど、娯楽やレジャーが充実している施設もあります。
また、「終の棲家」として入所したい場合は、介護付き有料老人ホームがよく選ばれます。
要介護度が高くなっても退所しなくて良い、医療的ケアや看取りに対応している施設を選ぶと住み替えの心配がなく安心です。
介護付き有料老人ホームを探す【身体状況別】おすすめの施設
ここでは身体状況別におすすめの施設を紹介していきます。
60歳以上で「自立~要介護2」の場合
自立した日常生活が送れる方や、「生活の一部で介助や見守りは必要だが、今のところ24時間の介護は必要ない」という方におすすめの施設を紹介します。
住宅型有料老人ホーム
「自立~要介護2」の方は、住宅型有料老人ホームがおすすめです。
住宅型有料老人ホームはイベントやレクリエーションが多く、充実したシニアライフが送れます。
生活の自由度が高く、個室でプライバシーも確保できるので、自宅で暮らしていたのと近い感覚で共同生活を送ることができます。
掃除や洗濯などの生活援助や生活相談は、入居者のニーズに応じて組み合わせて利用します。
また、介護サービスを利用したいときは外部の介護事業者と契約する点も住宅型有料老人ホームの特徴です。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探すサービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、一般的な不動産物件と同じく、賃貸借契約にて入居する高齢者向けの住居です。バリアフリーが完備されており、足腰が弱ってきた方でも安心です。
提供されるサービスとしては「生活相談サービス」と「見守りサービス」があり、もし何かトラブルがあった際などはサポートを受けることができます。
基本的に介護サービスを提供していないので、入居後に要介護状態となったら、外部の介護事業所を利用する必要があります。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す60歳以上で「要介護3以上」の場合
本格的な介護が必要となる要介護3以上になると介護者の負担は大きいといわれています。
ここでは、要介護3以上でも入居できる「介護付き有料老人ホーム」を紹介します。
介護付き有料老人ホーム
要介護3以上の方は、食事や入浴、排泄などの日常生活動作で手厚い介護サービスを受けられる介護付き有料老人ホームがおすすめです。
24時間体制で介護サービスを提供しているので、重度の要介護度の方でも快適に生活が送れます。
また、看護職員が常駐しているため、服薬管理やたんの吸引といった医療ケアも充実していて安心です。
民間施設の老人ホームなので施設数が多く、希望に合った施設を探しやすいのも介護付き有料老人ホームのメリットといえます。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す老人ホーム入居前に知りたいポイント
身体状況に合った施設に入居する
元気なうちに老人ホームを探す場合は、要介護者向けの老人ホームは避けた方が良いでしょう。
介護度が重い入居者が多い施設の場合、食事中やレクのときに話をしたくても、意思疎通を図ることが難しかったり、話が噛みあわなかったりして、思い描いている生活を送れない可能性があります。
入居後に後悔しないように、要介護度が高い方や認知症の方がどれぐらいいるのかだけではなく、平均年齢も事前にきちんと理解しておきましょう。
要介護度が上がると退去の場合もある
元気な方・自立の方を受け入れている老人ホームの中には、娯楽設備や行事、サークル活動などを熱心に行っている一方で、介護・医療体制が十分ではない施設も多いです。
そうした施設では、もし入居後に心身状態が悪化して要介護状態となったとき、退去しなければならない場合があります。
もし、老人ホームを「終の棲家」にしたいと考えているなら、その施設が要介護状態になっても入居し続けられるか事前に確かめることが大事です。
住み替えを前提として入居する場合は、新たな入居先を探す際にサポートをしてくれるかどうか確認しておきましょう。
費用が高めになる可能性もある
入居費用が安い特別養護老人ホームなどの公的施設は、基本的にどこも要介護状態の方が入居対象です。
そのため元気な方は、自立者向けの有料老人ホームまたはサービス付き高齢者向け住宅を入居先として選ぶ必要があります。
自立者向けの施設の中には、年齢が若い人ほど入居時に支払う一時金が高額になるケースもありますが、その分生活設備が充実している場合が多いです。
早めの資金計画が大切
豊かな老後を送るためには、自分が満足できる老人ホームに入居するための費用を貯めておく、または家族が貯めておく必要があります。
基本的な介護費用は、入居者本人の資産から支払うことになるため、きちんとした資金計画が大切です。
手持ちの資産を計算する
現在、どれだけの資産があるか計算し、そのうえで何歳までにいくら必要なのか計算しましょう。
手持ちの資産としては、預貯金だけではなく、マンションや土地などの不動産、株式などの有価証券、保険の解約金、家具などが挙げられます。
それから、5年後10年後の身体状況も考慮しながら、入居条件に当てはまる老人ホームをピックアップし、入居一時金や毎月の利用料をチェックしてください。
60代で施設に入居する場合は30年以上、70代であれば20年以上は入居先の施設で生活すると考えておく必要があります。その間、月額費用をずっと負担し続けることができるのか、事前に見通しを立てておきましょう。
また、急病による治療費や冠婚葬祭費用など、突発的に発生する費用は、特に余裕を持って用意しておくことをおすすめします。
今後の人生計画を立てておく
老人ホームに入居するためには、事前に人生計画を立てておくことも大切です。
「その老人ホームに入居することで、自分らしい生き方ができるのか」という視点からも考えましょう。
例えば、施設の雰囲気やほかの入居者や職員との相性、実施されているレクリエーションの内容などが、自分に合っているのかどうかを見学や体験入居で事前に確認しておきましょう。
どのような老後を過ごすのかイメージしておくことで理想の生活を送ることができるでしょう。
【負担軽減制度の一覧あり】老人ホーム入居のための資金計画を解説
希望予算に合う老人ホームを探す
この条件を満たしていればいつでも入居することができます。