東京からの車のアクセスは良好。他県からの移住も一考したい栃木県
2035年には、栃木県の人口のうち3分の1が高齢者になる、という予測が立てられています。
それに加え、老人ホームの空き室が少なく、入居待ちの高齢者が多数いるということも、栃木県が抱える深刻な問題。
そこで栃木県では、高齢者支援計画として「はつらつプラン21」を推進しています。
費用面を見てみると、同じ関東で隣接する東京都、埼玉県や茨城県より低額で利用できる老人ホームが多く見られます。
入居一時金は0~数十万円、月額利用料が10~15万円ほど。
高額のところでも入居一時金は350万円ほど、月額利用料も15~20万円ほどとなっており、利用のしやすさという点では関東随一と言えるでしょう。
ちなみに、東京の練馬インターチェンジから東北自動車道の栃木インターチェンジまでは車で1時間半ほど、浅草や新宿などから直通特急や新幹線が出ているなどアクセスも良いため、東京在住の人でも利用を考えるのはひとつの手かもしれません。
栃木県はしばしば、「日本一影が薄い県」とも言われるほど、全国的にはマイナーな県。
しかし同時に、のどかな関東平野や渡良瀬川・鬼怒川などの恵まれた自然があり、かつ鬼怒川温泉や、那須温泉郷、塩原温泉郷などの温泉は有名です。
さらに東照宮などの世界遺産、中禅寺湖や那須岳、那須高原といった観光地もあり、栃木県経済同友会では「来てみれば住みたくなった栃木県」というキャッチフレーズでアピールしているほどです。
住みやすさという点でも関東随一と言えるため、他県から移住しての老人ホームの利用も頭に入れてみてはいかがでしょうか。
高齢者人口は年々増加
栃木県の高齢者人口は、介護保険制度がスタートした2000年当時は34万4,364人。
その後、2006年には40万人を突破し40万1,755人を記録。2010年に43万8,339人と増加を続け、2014年に49万6,486人となっています。
2023年には57万365人となり、60万人を超えるのも時間の問題です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
特に、第一次ベビーブーム(1947~49年)の時に誕生した「団塊の世代」が65歳になり始めた2012年頃から高齢者人口は急増。
それまでは毎年数千人~1万人前後増えているという状況でしたが、2012年から2013年にかけては約2万人、2013年から2014年にかけて1万8,000人近く増加しています。2025年には「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、ますます高齢化が進むことが予想されます。
栃木県の高齢化率は、2000年当時は17.2%だったものが、2007年には20%を超えて20.3%となり、その後も上昇し続け2014年に24.8%、2023年には29.6%となっています。
全国平均が29.0%のため、比較してもやや高い水準です。
右肩上がりの状況が続いています。
こちらも団塊の世代が高齢者世代となった2012年頃から上昇の度合いが上がり、急速に高齢化が進みました。
地域密着サービスが10年弱で4倍に増加
栃木県の介護保険サービスの月当たりの利用者数の推移を見ると、介護保険制度が始まった2000年4月時点での利用者数は、在宅サービスが1万5,136人、施設サービスが7,992人の合計2万3,128人。
その後は年々急速に増加していき、2003年4月では在宅サービスで2万5,862人、施設サービスが9,862人、地域密着型サービスが始まった2006年4月では在宅サービスが3万3,783人、施設サービスが1万857人、地域密着型サービスが1,361人。
2024年の利用者数は居宅サービス5万5,405人、施設サービス1万4,026人、地域密着型サービスが1万2,698人で、合計して8万2,129人となっています。
2000年から2024年の24年で居宅サービス利用者が約3.7倍、施設介護サービス利用者は約1.4倍となっています。
地域密着型サービスの利用者数については、サービスが開始された2006年4月から2024年にかけて約9.3倍増加しています。
介護保険の要介護認定の認定者数も年々増加。
2000年は2万8,656人でしたが、2010年では6万5,061人、2014年には7万8,099人、2023年には9万3,493人まで増加しています。
要介護認定者数の内訳を見てみると、2023年で最も認定者が多いのは「要介護1」の1万8,393人。
次に多いのは「要介護2」の1万5,869人。
以下、「要支援2」の1万4,111人、「要介護4」の1万3,136人、「要介護3」の1万2,526人と続きます。
口腔ケアや認知症予防教室は各市町村単位で実施される
栃木県内の各市町村では「介護予防・日常生活支援総合事業」が実施されています。
この事業は、介護保険の「要支援」の認定者及び健康状態を確かめる「基本チェックリスト」で予防措置が必要と認められた人を対象とした「介護予防・生活支援サービス事業」と、65歳以上なら誰でも参加できる「一般介護予防事業」の2つの事業で構成されています。
介護予防・生活支援サービス事業では、要支援者等(基本チェックリストで予防措置が必要と認められた人も含む)の自宅に訪問し日常生活の支援を行う「訪問型サービス」、要支援者等に機能訓練の場、集いの場を提供する「通所型サービス」、要支援者等に配食サービスや見守りサービスを行う「生活支援サービス」、要支援者等に適切なサービスが提供されるように指導する「介護予防ケアマネジメント事業」などが行われています。
一方、一般介護予防事業では、支援が必要な高齢者を把握する「介護予防把握事業」、住民が中心となる介護予防活動をサポートする「地域介護予防活動支援事業」、介護予防の啓発及び普及活動を行う「介護予防普及啓発事業」、一般介護予防事業の評価を行う「一般介護予防事業評価事業」、リハビリの専門職を地域ケアの場に導入する「地域リハビリテーション活動支援事業」などが行われています。
一般介護予防事業は自治体の特色が出やすい介護予防で、各市町村がさまざまな運動教室、認知症予防教室、口腔ケア教室等を開催しています。
参加は基本無料です。
「とちぎで暮らし、長生きしてよかったと思える社会」を目指す栃木の地域包括ケアシステム
栃木県では、「とちぎで暮らし、長生きしてよかったと思える社会」の構築を目指し、「地域包括ケアシステム」作りに力を注いでいます。
栃木県の地域包括ケアシステムは、①生きがいづくり、②介護予防・日常生活支援、③介護、④医療、⑤認知症対策、⑥人材育成、⑦暮らしの安心・安全確保、⑧県民への啓発・普及活動、の8つの柱から成り立っています。
- ①高齢者の生きがいづくり……地域内で暮らす高齢者に対して、さまざまな社会活動への参加機会、就業機会、学習機会を提供する。
- ②介護予防・日常生活支援……高齢者だれでも参加できる介護予防事業の展開。
高齢者の日々の生活を支えるサービス(行政サービスから地域住民による声かけ、見守りも含む)の充実化。
- ③介護……ホームヘルプサービスやデイサービスなどの在宅サービス、特別養護老人ホーム等の施設サービスの運営、費用のあり方を見直し、適正化する。
- ④医療……在宅医療の充実化のための基盤整備。
入院生活から在宅生活への移行をスムーズにするため医療と介護の連携体制を構築する。
- ⑤認知症対策……県民の認知所に対する理解度を高める普及活動の実施、医療関係者と介護関係者の認知症対応力の向上、および両者の連携の強化。
- ⑥人材育成……地域包括ケアシステムにかかわる医療や介護、生活支援などの専門職の育成及び人材確保に努める。
- ⑦暮らしの安心・安全の確保……高齢者の権利擁護や虐待防止のための事業の推進。
また消費者被害や防災、交通面での安全対策にも取り組む。
- ⑧県民への啓発・普及活動……ここでは県民一人ひとりもさることながら、県内の企業、市民団体などにも地域包括ケアに関する知識を持ってもらい、その構築のための協力者を募ることも目的。
福祉サービスの苦情相談は「とちぎ福祉プラザ」で実施
栃木県では、福祉サービス利用者の苦情を受け付ける機関として「栃木県運営適正化委員会」が設置されています。
県内で居宅サービスや施設サービス、あるいは地域密着型サービスを利用したとき、「サービス内容が契約時に聞いていたものと異なる」「サービスを提供する職員の態度に問題がある」といった不満を抱いたときに、県の運営適正化委員会に相談を持ち掛けることができます。
本来であれば、サービス提供者に直接苦情を訴え出て解決を図るのが望ましいですが、利用者によっては「直接事業者側に談判するのは気が引ける」ということは十分にあり得ること。
また実際に話し合ったものの、納得のいく解決に至らない、ということも考えられます。
そうした事業者側との話し合いがうまく行かない場合に、第三者機関である運営適正化委員会に依頼することで、公正・公平な立場から問題の解決を図ってくれます。
運営適正化委員会の中で直接苦情の解決に取り組むのは、医療、法律、福祉の専門家からなる「苦情解決委員会」。
苦情や相談を受け付けると、事実確認を行った上で、相談者とサービス提供者への助言、あっせん等を行います。
苦情・相談の申し出方法は、宇都宮市にある「とちぎ福祉プラザ」内にある事務局に直接行くことでもできますし、電話、FAX、メールでも可能です。
訪問や電話の場合、相談時間は月曜から金曜日の午前9時から午後4時までとなっています。
もちろん利用は無料で、秘密も厳守されます。
匿名で相談することもできます。