医療を支える病院が多数。高齢者にとっての安心が約束された県
徳島県は、老人ホームの数という面では恵まれている県。
その背景のひとつに、医師数の多さが挙げられます。
徳島県には、医学部のある徳島大学があり、出身者が地元で開業するケースが多く見られます。
人口10万人あたりの医師数は約304人で、これは埼玉県の約2倍にあたる数字です。
病院と提携した老人ホームが多いということは、介護老人保健施設の多さでも見て取れます。
介護老人保健施設の定員は4,025人で、65歳以上人口100人に対して1.94人と、全国1位の数字を誇っているのです。
そしてもうひとつ、県が推進している「とくしま高齢者いきいきプラン2012-2014」の存在も、老人ホームが充実している大きな理由。
「高齢者の笑顔の花咲く徳島」を目指し、介護サービスの充実や施設の定員総数の増加などを進めているのです。
医師数の多さと合わせて考えれば、介護や看護が必要な高齢者にとっては非常に心強いデータであり、現状だと言えるでしょう。
介護老人保健施設以外にも、特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設をはじめグループホームやサービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類の老人ホームがあります。
しかし、豊富な選択肢の中から選べるのは、現状では徳島市内だけと考えて良いでしょう。
徳島県は、徳島市を中心に北に鳴門市、南に小松島市や阿南市、西に吉野川市・美馬市などが広がる県ですが、徳島市以外では特別養護老人ホームと介護老人福祉施設が中心となっているので、それら以外の施設への入居を考える際には、徳島市を第一候補として考えてみてください。
県内全域で老人ホームを探すことはできますが、公共交通機関が発達していないため、自動車での移動が基本になるということは念頭においておきましょう。
徳島県は、全国47都道府県の中で、まったく鉄道の電化区間がない唯一の県(県民は「列車」または「汽車」と呼ぶ)。
車イスが必要な高齢者のためには、車イスに対応するワゴンタイプなどの車が必要になってくるので注意しておきましょう。
そうした交通アクセスの悪さを鑑みても、徳島県は自然の恵みに、そして人の魅力にあふれた土地です。
四国山地を源流とする吉野川や那賀川は、県内を通って瀬戸内海や紀伊水道、太平洋へと流れ出ていきます。
その風景はなんとも優雅で、散歩や気分転換に訪れる人もたくさん。
また、四国88ヵ所巡り(通称:お遍路さん)に来る人に対するおもてなしの心を至上とする人が多く、至って大らかで、のどかな県民性を有しています。
高齢者が、その余生をゆっくりのんびりと過ごすには、最適な土地柄と言えるでしょう。
高齢者人口は2030年頃がピークの見込み
徳島県の総人口は1995年以降年々減少。
2010年には80万人を割り込み、2025年には70万人、2040年には60万人を割り込んでいくと見られています。
2023年時点での人口は約71万人で、高齢化率は34.0%。
2040年には5万3,000ほどの規模になると予測されています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
そんな中で高齢者人口は増加傾向が続いています。
1985年には10万人を突破して11万921人となり、2000年には18万637人、2005年には19万7,313人、2010年には20万9,926人、2015年には23万6,000人、2023年には24万4,000人を突破しました。
高齢者人口のうち、後期高齢者人口(75歳以上)に焦点を当てると、1985年当時は4万4,273人でしたが、20年後の2005年には2倍以上となる9万7,619人にまで増加。
団塊世代が後期高齢者となる2025年には14万6,000人、2030年には15万3,000人となる見込みです。
ただ2035年以降は減少に転じ、2040年には14万3,000人となり、その後は次第に減っていくものと考えられています。
高齢化率の推移を見ると、1985年当時は13.3%でしたが、25年後の2010年には27.0%、2025年では37.7%となっており、徳島県は全国平均よりも3~4ポイントほど高い値で推移していることになります。
特養の利用者数が増加中
徳島県の介護保険サービスの利用状況に目を移すと、サービス利用対象者となる要介護(要支援含む)認定者の数は、現行の介護保険制度が開始された2000年度では2万5,588人でしたが、10年後の2010年度には4万4,794人、2024年度には4万9,728人となっています。
2024年度時点において、高齢者人口に占める要介護認定者の割合は20.3%。
また要介護認定者を段階別に見た場合、県内で最も認定者が多いのは「要介護1」の9,950人、続いて多いのが「要介護2」の8,859人、以下「要支援2」の7,603人、「要介護4」の6,535人、「要支援1」の5,380人、「要介護5」の4,239人と続きます。
なお、介護サービスの利用者数の割合を見ると、居宅サービスを利用している方が最も多く68.7%。次いで施設サービスの17.9%、地域密着型サービスの13.4%となっています。
特養の利用者数は2000年度時点では2,531人でしたから、13年ほどの間に900人近く利用者数が増加していることになります。
特定施設入居者生活介護の利用者数が少ないですが、もともと県内には特定施設の指定を受けた施設自体が少なめ。
特定施設の指定を受けていない住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間の施設は、県内に数多く立地しています。
介護予防を巡る制度は移行期
徳島県内の各自治体では、高齢者が要介護状態にならずに元気に生活し続けられるように、さまざまな介護予防事業を展開しています。
現在はちょうど介護予防を巡る制度の移行期に当たっており、市町村ごとに介護予防への取組状況はさまざま。
従来の自治体が行う介護予防事業のあり方は二次予防事業と一次予防事業とに分けられています。
二次予防事業とは、介護が必要な状態になる恐れがある高齢者に対して、通所型介護予防事業(口腔機能向上、運動機能向上、栄養改善のための取り組み等)、訪問型介護予防事業(閉じこもり予防、認知症予防への取り組み等)などが行われる事業。
一次予防事業は、地域に住むすべての高齢者に介護予防に取り組んでもらうための事業で、介護予防教室、ボランティア人材育成、自主グループ活動支援等が行われています。
ただ現在厚労省が推進している介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)では、それまで介護保険の要支援認定者向けに行われていたサービスの一部を自治体の事業へと移行。
それにともない、一次予防事業、二次予防事業という区分をなくし、要支援認定を受けた人及び基本チェックリストによって介護予防の取り組みが必要だと認められた人に対して行われる「介護予防・生活支援サービス事業」と、すべての高齢者が参加できる「一般介護予防事業」という区分へと変わることになります。
厚労省は、2025年に向けて総合事業に早期に移行することを市町村に要請。
徳島県内の自治体でも2015年~2017年4月にかけて既に移行しているところもあります。
介護予防に取り組む場合、最寄りの地域包括支援センターに連絡し、住んでいる自治体がどんな介護予防事業を行っているのか、自分が参加できるものは何か、相談してみると良いでしょう。
徳島県の地域包括ケアシステムは虐待防止と認知症対策に力を入れている
徳島県では、地域に住む高齢者に対して医療、介護、介護予防、権利擁護などさまざまなサービスを統合的に提供できる「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
地域包括ケアの体制ができれば高齢者は住み慣れた地域で自分らしく生活し続けることができ、特に団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、県を挙げてその実現に向けて取り組んでいます。
県で力が入れられているのは、医療と介護の連携、介護予防への取組、虐待の防止、認知症対策など。
介護と医療の連携という点では、在宅医療を担う医療機関と訪問介護、訪問看護事業所などとが連絡を密に取り合うことに力点が置かれ、そのためのコーディネーター役として、居宅介護支援事業所のケアマネージャー、地域包括支援センターの役割が重視され、その機能の強化、質の向上が進められています。
介護予防の点では、市町村レベルで行われている介護予防・日常生活支援総合事業をサポートするというのが県としての方針。
中でも地域包括支援センターは要支援認定者のケアプラン作成の責任を負っており、職員の能力向上(研修)など県側もできるだけのサポートを行っています。
権利擁護の点では虐待の早期発見及び防止が重要課題とされ、虐待防止のための見守りネットワークの構築づくりが進められています。
また成年後見制度、消費者被害防止などの普及啓発活動も行われています。
認知症対策としては、認知症に関する知識の普及啓発、及び介助方法を学べる認知症サポーター養成に力を入れる、といった取り組みがメイン。
県内でも今後認知症を発症する高齢者の数が急増していくと見られ、地域でケアする体制作りが急務となっています。
徳島県の福祉サービス運営適正化委員会とは?
福祉サービスを利用していて、サービス内容に不満があったり、サービス提供者の態度や姿勢に問題があると感じたりした場合、苦情を訴える先としてまずあるのはそのサービスを提供している事業者。
各事業者は利用者からの苦情に対応すべく相談窓口を設置しており、また公平な立場から問題解決にあたる第三者委員が設けられているのも通例。
しかし、もし事業者との話し合いで苦情内容の改善が見込めない場合、あるいは事業者に直接訴えるのは気が進まないという場合は、徳島県運営適正化委員会に申し出るという選択肢があります。
介護関連のサービスは、かつては措置制度が基本で、介護が必要な人に行政側が受けるべきサービスを決めていくということが行われていました。
しかし現行の介護保険制度では、利用者の側が必要なサービスを選択、契約して利用するという形がとられています。
契約という形をとるだけに、「契約時に聞いていたものとサービス内容が違う」、「こんなことなら契約するのではなかった」ということがどうしても起こってきます。
そうした利用者の声・苦情に対応すべく生まれたのが、都道府県単位に設置されている運営適正化委員会です。