人口あたりの老人ホーム数は多く、高齢者の住まいが充実している県
九州第三の都市であり、政令指定都市でもある熊本市を県庁所在地とする熊本県。
その高齢化率は年々高くなっていますが、熊本市以外では老人ホームの開設は進んでいないというのが現状です。
熊本県は、人口10万人あたりの老人ホームの数は63.3カ所となっており、全国でも有数の、老人ホームが充実している県です。
しかし、その多くは熊本市に集中しており、熊本市の次に人口が多い八代市や天草市、玉名市といった5万人以上の人口がいる地域では、高齢者人口に対して充分な数の老人ホームがあるかと言えば、そうではないのです。
熊本県で老人ホームへの入居を考える際は、現時点では熊本市で探すのがスムーズと言えます。
その他の地域での入居を考える際は、入居待ちも覚悟の上で、資料請求など早めに行動に移すと良いでしょう。
また、熊本市内は公共交通機関が発達しています。
特に市電とバス。
市電は日中は4分ほどの間隔で運行され、バスは路線が豊富に張り巡らされており、生活はもちろん面会などに行く際にも車がなくても不自由はありません。
熊本市以外は交通手段が発達していないので、移動には車が必要になることを頭に入れておいてください。
ともあれ熊本県は、高齢者が住むのに非常に過ごしやすい県と言えます。
名水100選に県内で4カ所が選ばれていたり(熊本市でも水道水がすべて地下水でまかなわれている!)、盛んな農業を支えるのどかな田園風景が広がっていたりと、のんびりと暮らすのに最適。
おだやかに、そして安心して暮らすための環境は、九州随一と言っても良いかもしれません。
熊本市の75歳以上の女性は80%が単身
熊本県の総人口は2023年時点で173万7,946人であり、高齢者人口は55万2,867人。
人口は近年、若干の減少傾向にあり、今後も緩やかながら減少していくと見られています。
その一方、65歳以上の高齢者の割合は2023年で31.8%。
今後の高齢化率の上昇も急激で、2025年には34.5%、2040年には36.4%にまでなると予想されています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
なお、熊本県の世帯状況を確認すると、2020年段階で高齢者のみの世帯が25.9%。一人暮らしの方や高齢夫婦世帯のみの方が増加傾向にあるようです。
居宅型サービスの利用者が大幅に増加している
高齢者数の増加に合わせるように、要介護認定者数も上昇の一途。
2014年に10万人の大台を突破し、2024年には10万9,043人に。
11万人突破も間近に迫っています。
介護サービスの利用状況を見てみると、在宅介護が大幅に増えていることが読み取れます。
2024年時点では、訪問介護・看護、デイサービスなどの通所型サービスを含む居宅型サービスの利用者が全体の約68%を占めています。
一方で特別養護老人ホームなどの施設入居型サービスは全体の約15.5%に過ぎず、毎年減少傾向にあります。
また地域密着型サービスの中で施設入居に当たるグループホームや有料老人ホームの利用者を除くと、在宅介護用のサービスの利用者は80%以上になります。
「いきいき百歳体操」ではリハビリ専門職による指導を推進
熊本市では要支援、要介護の認定者が全国平均を2%ほど上回っています。
そのために認定前の段階での予防や要支援の方が要介護認定に進行するのを食い止めることが急務です。
熊本市の介護予防を中心を担うのが「くまもと元気くらぶ」です。
「くまもと元気くらぶ」は、住み慣れた地域でいつまでも自立した生活を送る目的で設立されました。
地域ごとに高齢者が定期的に集まり、「運動」を取り入れた活動を継続していくことを義務付けています。
概ね週1回以上の会合と、市が推奨する重りを使った運動である「いきいき百歳体操」が行われており、その効果の検証も行われています。
参加者の条件は地域に住民票があるということだけなので原則年齢制限はありません。
しかしクラブのメンバーの半数以上が65歳以上の方と決まっているので、人員構成上の関係で断られる可能性はあります。
また年に6回以内ですが、リハビリの専門職の方がクラブを訪問して、運動のやり方を指導してくれたり、効果の測定を行ってくれます。
これは市がクラブに対して資金援助をして行っていることであり、熊本市の積極的な姿勢がここにも見られます。
高齢者の社会参加と孤立させない体制作りを強化
熊本市が考える地域包括ケアシステムは5つの軸を一体型にしていくというものです。
①住宅を提供した上で安心や健康を担保すること②介護保険の対象にならないサービスの提供③介護保険サービス④介護予防サービス⑤医療保険サービスの5つが軸になります。
2017年5月に発表された計画によると、近年在宅介護の需要の高まりと共に増加傾向にある医療との連携に力を注いでいることがうかがえます。
病院での入院看護から自宅療養への切り替えを円滑に行うための早期退院支援や、医師会との連携を図り自宅療養に対応できる医者の確保に努めています。
2016年には人生の最期に向けた医療についてのパンフレットを市民に配布して、受けたい医療について考える機会を設けています。
また認知症患者に対する地域での見守り対応も着実に進行しています。
2015年に「認知症初期支援集中チーム」が立ち上がり、認知症疾患医療センターが指定されたり、地域の医療従事者に対して認知症対応への研修会なども行っています。
また認知症サポートキャラバンの拡大や、認知症カフェの増設、徘徊者を早期に発見するための模擬訓練なども行われています。
更には減少しつつある「老人クラブ」の再興に向けての取り組みや、シルバー人材センターへの仕事の依頼を増やす為の活動を行い、高齢者の社会参加と孤立させない体制作りを行っています。
またこちらも減少傾向にある施設型の介護保険サービスについては、ようやく増設が叶い、グループホームや特養に200床前後の増設が見られました。
熊本県福祉サービス運営適正化委員会とは?
熊本市にお住いの高齢者の方で何かお困りの方はまず高齢者支援センターの「ささえりあ」に相談して下さい。
ささえりあは市内27カ所に設置されており、地域のケアマネージャー、社会福祉士、看護師が常駐して高齢者の方の相談に当たっています。
介護や医療の相談、権利譲渡や成年後見制度の相談、虐待防止などの相談に乗っています。
また要支援認定の方には介護予防のケアプランを作成して、介護保険サービスへの申請なども合わせて行っています。
また2015年に開設された「熊本市福祉相談支援センター(生活自立支援センター)」はささえりあ同様で、とにかく誰にどこで相談して良いのか分からない場合はまずここに相談してみて下さい。
相談内容に応じて各部門との連携を図りながら解決に向けた施策を進めてくれます。
特に生活に困窮しており生活の自立に対して支援を必要としている方は、真っ先に訪れましょう。
更には認知症の方やその家族の方を対象とした相談窓口もあります。
ささえりあでも相談に乗ってくれますが、「認知症ホットコール」や「認知症の人と家族の会熊本県支部」では相談はもちろんのこと、定期的な家族交流集会や介護経験者が面接を行ってくれたりもするので、相談に留まらず今後のフォローまでしてくれます。
その他、総合的に管理出来ているのは各区役所の福祉課の高齢者係になりますので、確認すると相談窓口や施設を案内してくれると思いますので問い合わせてみて下さい。