意外と過ごしやすい気候は、高齢者の住まいとして最適

福島県の老人ホームは、基本的に特別養護老人ホームが中心ですが、病院が母体となって運営する介護老人保健施設も数多くあります。
介護だけでなく看護・医療的観点からも十分なサービスが受けられるケースが多く、ニーズに合わせた施設選びが可能となっています。
福島は、農業・漁業の盛んな県。農業では盆地の特性を生かして桃や梨、リンゴなどの果物が、また漁業では黒潮と親潮がぶつかる恵まれた漁場でカツオやヒラメ、タコなどの水揚げが豊富です。
また、自然に恵まれた県であり、同時に気候も安定しています。特に浜通り地方は、夏は涼しく冬は暖かい典型的な海洋性気候で過ごしやすいのが特徴です。
場所によっては茨城県や千葉県よりも過ごしやすいところもある福島。自然、そして気候面を考えても高齢者にとって優しい土地であるのは間違いなく、今後の復旧を待って、他県から移住するというのも一案と言えるかもしれません。
福島県では総人口に対して高齢者数が急速に増えている
福島県の高齢者人口の推移を見ると、戦後間もない1950年は9万4,391人でしたが、日本の高度経済成長と共に年々増加し、1975年には18万356人、1985年には24万7,947人、1995年には37万1,572人、2005年には47万4,860人、2015年には54万2,384人、2023年には58万8,320人となっています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
さらに、後期高齢者(75歳以上)に絞って人口の推移を見てみると、2015年当時は28万6,803人だったものが2023年では49万2,062人となっており、2015年から2023年にかけて約1.9倍もの増加となっています。
一方、福島県の総人口については1950年で206万2,394人、1985年で208万304人、2005年で209万1,319人と、戦後復興期である高度経済成長期においても大きな増減は見られていません。
つまり、総人口数はほとんど増減がないのに対し、高齢者人口だけが急速に増加してきたということになります。
さらに、2005年を境に総人口数は減少を始め、2015年には192万6,762人、2023年には181万8,581人となっていますが、高齢者人口の方は2005年以降も増加し続けています。
こうした総人口と高齢者人口の増減差は、福島県の高齢化率に如実に表れており、1950年時点での高齢化率はわずか4.6%でしたが、1980年には10.5%、2000年には20.3%、2010年には25%と増加していき、2023年には32.4%まで増加しています。
また、総人口に占める後期高齢者の人口割合は1950年では1.1%に過ぎませんでしたが、1995年に6.6%、2005年に11.1%、2015年には15.0%、2023年には27.1%と年々増加しています。
施設サービスの利用者は約25年で3倍近くに増加
福島県の介護保険サービスの利用者数は、介護保険制度がスタートした2000年の10月では居宅サービスが2万4,290人、施設サービスが9,445人で合計3万3,735人でした。
その後利用者は年々増えていき、2005年10月にはそれぞれ4万5,581人と1万3,397人で合計5万8,978人、2014年10月にはそれぞれ7万630人と1万6,961人で合計8万7,591人、2024年には居宅サービス6万6,348人、施設サービス1万9,231人、地域密着型サービス1万6,182人の合計10万1,761人となっており、2000年から2024年の約24年にかけて6万8,026人増加、約3倍も増加していることが分かります。

利用者数増に合わせて、介護給付費も増大しています。2000年度における給付額は、居宅サービスが188億1,551万円、施設サービスが310億3,847万円、給付額合計498億5,392万円でしたが、2013年度ではそれぞれ848億9,690万円と605億3,169万円で合計1,454億2,858万円、2019年には合計1,690億2,001万円となりました。
居宅サービスと施設サービスの給付額は、共に年々増加していますが、介護保険制度が始まった2000年度当時は施設サービスの給付額の方がはるかに多くなっていました。
しかし両者は2005年度に逆転。その後居宅サービスの給付額がどんどん伸び、2013年度においては、居宅サービスの給付額は施設サービスよりも250億円ほど多い状況となっています。
「運動」「栄養相談」「口の健康」などについて教室が開かれる福島県
福島県内では、各市町村が中心となってさまざまな介護予防事業が展開されています。
主なものとしては、転倒や骨折予防のための筋力、体力アップの運動を行う「運動教室」、食生活の改善を通じて心身機能、生活機能の向上を図る「栄養相談教室」、閉じこもりによる生活機能の低下を防ぐ「閉じこもり予防・支援」、認知症に関する知識を提供しその予防に取り組んでもらう「認知症予防・支援」、精神面の健康状態に関する相談、サポートを行う「うつ予防・支援」、口腔内を清潔に保つことにより誤嚥性肺炎を予防する「口の健康教室」などが挙げられます。

また、県内の自治体が配布している「基本チェックリスト」に取り組むことで、自分の体の状態、機能を確認することもできます。
「基本チェックリスト」は、「バスや電車で、一人で外出していますか」(生活機能の低下の有無を調べる質問)、「15分位続けて歩いていますか」(運動機能低下の有無を調べる質問)、などの25の質問項目から構成されており、結果によってどのような介護予防事業に取り組むべきか、最寄りの地域包括支援センターにて相談できます。
「基本チェックリスト」は、県内の各種公的機関・医療機関で配布されていて、県・市町村のホームページでも閲覧可能です。
基本、介護予防事業への参加は無料で、参加の受付は住んでいる自治体の役所の「介護予防担当窓口」、または「地域包括支援センター」にて行っています。
福島県の地域包括ケアシステムで目指すのは”自分らしい余生”
福島県では、地域包括ケアシステムの構築、すなわち「県内に住む高齢者が自分らしい生活を余生ずっと遅れるように、医療サービス、生活支援・介護予防サービス、認知症対策のサービスを行政、地域内の各種団体、医療機関などが連携して提供できる体制づくり」を進めています。

- 医療サービス面での体制づくり……医療機関と介護事業者における多職種の連携体制を作ることを目的とし、医療機関とケアマネージャーの間での退院時の調整ルール作りとその運用、総合確保基金による各種機関の取り組みの支援、多職種の連携構築のための人材育成・研修会の実施などが行われています。
- 生活支援・介護予防サービス面での体制づくり……地域内の多様な主体が参加することによる生活支援・介護予防サービスの提供を目的とし、圏域別に域内の各種団体の意見交換会や勉強会の開催、「高齢者支え合いコミュニティ支援事業」の遂行、生活支援コーディネーターの養成、研修などが行われています。
- 認知症対策のサービス面の体制作り……認知症を患った高齢者及びその家族をサポートする地域社会の構築を目的とし、認知症キャラバンメイトの養成、研修、認知症初期集中支援チームの設立、認知症専門職の認知症の高齢者への対応能力を高めるための研修、認知症サポート医、推進員、チーム員の研修及び派遣などが行われています。
「福島県運営適正化委員会」が虐待や老人ホーム職員の接し方などについての相談窓口
もしも介護保険サービスを利用して、サービス内容や対応に問題があると感じた場合は、まずは直接サービスを受けている事業所に訴え出るのが望ましいでしょう。

しかし、利用者からの苦情に対して事業所がきちんと答えてくれない、相談しても全く解決の糸口がつかめないということも少なからず起こっています。
近年多いのは、老人ホームにおける問題です。入居者への職員の接し方、虐待の有無、生活環境の問題などを巡って、入居者側と施設側が話し合いをしても決着がつかないということが起こっています。
福島県では、福祉サービスを利用した人からの苦情や不満を受け付ける機関として、「福島県運営適正化委員会」が設置されています。介護サービス事業者や老人ホームとの話し合いがうまくいかない、直接事業所・施設に苦情が言いにくいという場合、運営適正化委員会に訴え出ることで、問題の解決を図ることができます。
委員会では、相談を受け付けると、速やかに実態の調査を行い、必要に応じて介護サービス事業所、老人ホームへの助言と同時に、利用者が引き続き安心してサービス利用ができるよう斡旋も行います。
相談窓口は、介護保険の苦情・相談の受付先である「福島県国民健康保険団体連合会」、高齢者福祉に関する総合相談窓口である「県高齢者総合相談センター」になります。