人口あたりの老人ホームが少なく、費用が高額になる傾向に
荒川を隔てて東京都と隣接する川口市は、いわゆる「埼玉都民」という言葉が生まれるほど、東京のベッドタウンとして発展を遂げてきました。
そんな川口市は、東京に近いという点からも地価が高く、必然的に老人ホームの利用料も高額になる傾向があります。
相場としては、東京都や神奈川県と同程度、北関東の栃木県や茨城県、群馬県より平均的に高くなっており、入居一時金が約100万円ほど、中には数千万円というところも珍しくありません。
駅周辺は商業施設や高層マンションなどが立ち並びますが、新郷や鳩ヶ谷といった東部地区には田畑もあり、牧歌的な風景の中でのんびりとした生活ができます。
また、最近になって東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が開始され、東京都内の池袋・渋谷経由で横浜方面まで乗り換えなしで行くことができるようになりました。
交通アクセスの良さは抜群で、他都県から移住して入居するというのも、現実的な案として考えて良く、費用面をクリアできれば、川口市は高齢者が不自由なく暮らせる住み心地の良い場所と言えるでしょう。
川口市の高齢者人口は2035年には15万人超に
川口市は、埼玉県の南東部を流れる荒川の北岸にある街。江戸時代から日光御成街道の宿場「川口宿」として賑わった場所で、現在は鋳物工業などが発達しており、大阪府の東大阪市などと同様に、工業都市として知られています。
交通アクセスも比較的発達した街で、JR東日本の京浜東北線や武蔵野線、埼玉高速鉄道などが通っています。
路線バスも国際興業バスやコミュニティバス「みんななかまバス」「ミニは~と」などが市内を走行。高速自動車国道や東京外環自動車道などの車道も整備されています。
川口市は、埼玉県の中ではさいたま市に次いで2番目に人口の多い中核市ですが、65歳以上の高齢者は徐々に増えており、高齢化率も上昇中です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2017年には高齢者人口が13万5,102人、高齢化率は22.6%でしたが、2023年には高齢者人口は13万9,185人、高齢化率は23.0%に達し、今後も増加していく予測です。
2023年の高齢化率の全国平均は29.0%なので、川口市はまだまだ高齢者の少ない街と言えますが、確実に増えているのが実情です。
市は高齢者福祉サービスの充実や高齢者対策などを急いでいます。75歳以上の後期高齢者は2017年には6万3,098人でしたが、2023年には7万7,848人まで増加し、65歳から74歳までの前期高齢者を上回りました。
今後さらに後期高齢者数は増加する見込みです。
川口市では通所介護サービスの利用が顕著
川口市における介護保険の要支援・要介護認定者数は、2016年以降2万人を超えており、2017年には2万1,070人、2024年には2万5,226人となりました。
今後も認定者は増加し続け、3万人に近づく見込みです。
特に要介護1・2の認定者数が増加しており、、軽度の人よりも重度の人が増えるため介護保険サービスの利用者も増える見込みです。
要介護認定者の利用内容をみると、要介護1~3の人は「通所介護(デイサービス)」が最も多く、要介護4と5の人は「福祉用具貸与」が多くなっています。
おおむね、介護度が高くなるにつれて「訪問介護」や「訪問入浴介護」、「訪問リハビリテーション」や「福祉用具貸与」の利用割合が高くなっているのが実情です。
そのため、川口市はショートステイや、24時間体制での訪問介護看護などを充実させようとしています。
文化活動への参加で介護予防を図っている
川口市では歳を重ねても健康に楽しく生活できるよう、介護予防活動を実施中です。
「運動器」機能低下の予防必要割合は65歳か74歳までは12.4%ですが、75歳以上は25.6%と倍増することがわかっています。そのため、75歳までの介護予防への取り組みが特に重要です。
例えば、川口市は独自の介護予防活動である「川口市介護予防ギフトボックス事業」を推進し、運動教室などに体験参加することで、きっかけづくりを行っています。
これは70歳から79歳の人を対象とした介護予防事業で、費用も格安なので参加しやすいと好評を得ているようです。
体験参加できる内容も豊富で、ウォーキングや体操、水泳、ダンスといった運動だけでなく、パソコンや絵手紙、音楽演奏、カラオケ、料理などの文化活動もあるのが魅力的。
また、ヨガ教室や健康体操教室、ロコモ予防教室などは長期体験も可能で、最長3ヵ月の月会費を川口市が補助します。
その他にも、65歳以上の人を対象とした「健康体操教室」や「“幸”齢者健康運動教室」「筋力トレーニング、転倒骨折予防教室」「ウォーキング教室」「認知症予防のための教室」などを実施し、生活機能の低下を予防。
介護予防運動管理士などを育成し、地域住民が自主的に介護予防活動を実施できる体制づくりも進めています。
さらに、外出や社会参加を支援することで閉じこもりを防止。各地の公民館や老人福祉センターでレクリエーションなどを開催し、高齢者の交流の場や通い場を提供しています。
地域包括ケアに向けて高齢者が「つながるしくみ」を強化
川口市では、高齢になっても安心して暮らせるよう、地域包括支援センターが高齢者とその家族、地域社会との「つなぎ役」となり、川口市全体で「つながるしくみ」をつくろうとしています。
2005年と2015年を比較してみると、総世帯数の増加率は14.0%なのに対し、高齢者のいる世帯は2万5,301世帯増加しており、増加率は41.8%にものぼるのです。
高齢者のいる世帯の中でも特に、一人暮らしの高齢者世帯や、高齢夫婦だけの世帯といった「高齢者だけの世帯」が増加中。それに伴って、生活支援の需要も高まっています。
さらに、在宅介護を受けながら暮らす高齢者も多く、介護する家族などのケアも川口市の重要な課題です。
高齢者向けのアンケート調査では、川口市が率先して取り組むべきことは「自宅での介護を支援するサービスの充実」と答えた人が44.4%と最も多く、次いで「介護する家族に対する支援」が37.8%でした。
やはり、在宅介護や生活支援が重要であるため、川口市では訪問介護やそれ相当の生活支援を実施しています。
また、「高齢者のための住宅整備、住宅改造の資金援助などの住宅に関する事業」の推進を希望している高齢者も多く、介護保険サービスの「住宅改修」などの改修支援や住宅相談などを実施。暮らしやすい環境づくりを進めています。
より深い介護と看護の連携や夜間の対応も求められており、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などの提供体制を整備。「看護小規模多機能型居宅介護」といった看護サービスも受けられる介護施設も増設を検討中です。
川口市の高齢者相談窓口は?
川口市では、色々な悩みを抱える高齢者のために、各種相談窓口を設置しています。
川口市社会福祉協議会では65歳以上の高齢者で一人暮らしをしている人を対象に、定期的にボランティアスタッフが電話をすることで健康状態や安否を確認する「さわやかコール事業」を実施。電話の際に話し相手になり、悩み相談なども行います。
川口市から老人福祉電話を貸与されている人に限りますが、電話以外にも年賀状などの送付も行うため、高齢者の孤独感も和らげているようです。
また、社会福祉協議会では、福祉サービスの手続き代行などを行っています。
家族や親族でも代行できない手続きなども、成年後見制度により、法的に代行できますので、認知症などで手続きや支払いが難しくなった人やその家族は、気軽に相談してみると良いでしょう。
そして、川口市の高齢者在宅サービスセンターでは認知症高齢者相談所も設置し、認知症の高齢者を支える家族の相談に対応しており、予約をすれば医師による専門的な相談も可能で、具体的なアドバイスがもらえるでしょう。
「介護保険サービスってどんなのがあるの?」「地域サロンに行ってみたい」「健康維持のためにも介護予防をしたい」といった、さまざまな相談や質問に対応。
地域住民の高齢者に関する相談も可能で、「近所のおじいちゃんの様子がおかしい」といった通報も匿名でできます。