介護が必要になる原因
高齢者が要介護になる原因
高齢者が要介護となる原因はさまざま。
まずは厚生労働省が発表したデータから、特に多い原因をみてみましょう。
介護が必要な状態になる原因として多いのは、認知症や脳卒中、運動器の障害などです。
ほかにも、糖尿病や心臓病など、メタボリックシンドロームと関係の深い病気にも注意しなければなりません。
こうした病気は、発症すると後遺症が残りやすく、症状が重い場合は寝たきりになることもあります。
また、病気や怪我以外に、加齢とともに心身機能が衰弱して、その結果介護が必要になることも少なくありません。
経済産業省の『将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書』によると、85歳以上の高齢者の過半数が、要支援または要介護認定を受けています。
男女でも差があるので要注意
介護が必要になる原因は、男女間で差があります。
内閣府の資料によると、要介護状態になる原因として最も多いのは、男性の場合「脳血管疾患(脳卒中)」が全体の23.0%を占めているのに対し、女性の場合は「認知症」が全体の20.5%を占めています。
女性の場合、脳血管疾患(脳卒中)で要介護状態になった人の割合は11.2%だけで、男性の半分以下の割合となっています。
男性と比較して、女性が要介護状態になる割合が増えるのは、「骨折・転倒」です。
女性の場合は「骨折・転倒」が全体の15.2%を占めているのに対し、男性の場合は7.1%しか占めていません。
ただ、これらはあくまで平均的なデータであって、実際にどんな病気や怪我で要介護状態になるかは千差万別です。
それでは、それぞれの原因について、詳しく説明していきますね。
第1位 認知症
認知症の患者数
65歳以上の認知症高齢者数は将来的にどんどん増加していくと予想されています。
「平成29年版高齢社会白書」の推計によると、2015年時点で517~525万人、2020年では602~631万人、団塊の世代が75歳以上となる2025年には675~730万人にまで増加。
2025年時点で、高齢者の約5人に1人が認知症になる見込みです。
さらにその後も増え続け、2050年頃には1,000万人に達し、2060年には高齢者の約3人に1人が発症するとの推計もあります。
認知症とは、脳細胞の死滅や機能低下によって記憶力や判断力に障害が起こり、日常生活を送るうえで支障が出るようになった状態のことです。
認知症には原因となる疾患がありますが、認知症有症者の約6割がアルツハイマー病を原因とする「アルツハイマー型認知症」を発症しています。
そのほかにも脳卒中などに起因する「脳血管性認知症」やレビー小体病によって生じる「レビー小体型認知症」の有症者も多いです。
認知症の症状
認知症における典型的な症状の1つが「記憶障害」です。
「うっかり忘れた」といった加齢によるもの忘れとは異なり、認知症による記憶障害は体験そのものを喪失するようになります。
例えば、「昨日食べた夕食の内容を忘れた」というのは加齢によるもの忘れであるのに対し、「昨日に夕食を食べたこと自体を思い出せないでいる」のが認知症の記憶障害にみられるもの忘れです。
記憶障害以外にも時間や場所がわからなくなる「見当識障害」や、段取りを立てて物事を行えなくなる「実行機能障害」、さらには筋道を立てた思考ができなくなる「判断力障害」などが生じることもあります。
これらの症状に、発症者本人の性格をはじめ、生活環境や人間関係などの要因が加わって、徘徊や暴言、さらには妄想や抑うつなどの症状が出ることもあります。
こうした症状が進行していくと、歩行障害や嚥下(えんげ。飲み込むこと)障害など、身体面にもさまざまな症状が現れるようになります。
認知症の治療・リハビリ
現在のところ 、認知症を根治する治療法はありません。
ただ、早期に発見し早い段階から適切な治療を行っていけば、症状を軽くし、進行を遅らせることができます。
認知症への治療法として現在行われているのは、主に薬物療法とリハビリテーションです。
薬物療法では飲み薬のほか、近年は貼り薬も用いられるようになっています。
貼り薬は介護者が1日1回貼り替えるだけで済み、服薬管理がしやすいという点で重宝されているようです。
リハビリテーションには、回想法や作業療法、さらには園芸療法や書き取り、計算問題への取り組みなど、さまざまな方法があります。
認知症の介護は負担が大きく、家族の介護だけではストレスが蓄積し、介護する側が倒れるということも起こりかねません。
介護保険の要介護認定を受けて介護サービスを利用し、介護負担を減らすことが重要になります。
介護の専門家が在宅介護をサポートしてくれることで生活にリズムが生じ、認知症の症状が軽くなったというケースも多いようです。
番外編 認知症と間違えやすい老人性うつ
ここでは近年増加傾向にあり、認知症と間違われやすいので注意が必要な「老人性うつ」について説明します。
老人性うつは正式な病名ではなく、65歳以上の人が発症するうつ病を総称した言い方になります。
老人性うつの人に多い「終日ぼんやりとしている」「元気をなくしている」といった症状は、認知症の初期症状にもよくみられるので、認知症と誤解されることも少なくありません。
うつ病は早期治療によって治せる病気ですが、認知症と区別しにくいために、周囲の人も本人も気づかないうちに症状が急に悪化することも多いです。
同居している高齢者の様子が何となくおかしいと感じたら、認知症などと決めつけず、老人性うつの発症も疑ってみることが重要と言えます。
老人性うつを発症した人は、頭痛やめまいをはじめ、食欲不振や吐き気など身体面の不調も訴えることが多いです。
地域内にある複数の内科や外科の病院で診てもらっても異常が見つからず、家族は直接的な原因を明らかにできずに悩み続ける…ということも少なくありません。
老人性うつは進行するとどんどん悪化していくため、早い段階で発症を疑い、精神科医などの専門医の診察を受けるようにしましょう。
老人性うつと認知症を間違わないように注意
老人性うつであることを早い段階で認識し、適切な治療を行うためには、認知症との相違点を理解しておくことが大事です。
老人性うつと認知症との間にはどのような違いがあるのでしょうか。
両者の違いのひとつが、症状の進行速度の違いです。
認知症の進行速度はゆるやかなので、発症していること自体に気づかないこともあります。
一方、老人性うつは短期間のうちにさまざまな症状が現れるので、周りの人が「近頃、様子がおかしい」と気づきやすいです。
また、記憶障害は老人性うつと認知症の両方にみられる症状ですが、発症の仕方に違いがあります。
認知症は、最初は軽度の段階からはじまり、次第に重度化していくという推移がみられることが多いですが、老人性うつでは「あるとき突然」に何日か前の出来事を思い出せなくなる、といった症状が現れるのです。
さらに、認知症だと自身の認知機能が低下していることを自覚しづらい面があるのに対して、老人性うつの人は、自身の認知機能が低下していることを明確に自覚できています。
そのため、自分の認知力が下がっていることに対して不安を感じているケースも多いです。
ほかにも、老人性うつでは、抑うつ気分が強く自責の念が強いのに対して、認知症では症状が重度化するにつれて自分のことに無関心になりやすいという傾向があります。
また、何か質問をされたとき、認知症の方は見当はずれのことを答えがちなのに対して、老人性うつの人は考えるものの結局何も答えられない、といった反応になりがちです。
老人性うつ | 認知症 | |
---|---|---|
初期 | 症状抑うつ症状や心気症 | 記憶障害、性格の変化、妄想 |
症状の | 進行活動的でなくなっていく | ゆっくり認知症症状が進む |
時間帯 症状の 変化 |
による寝起き時は体調が優れず、時間が立つにつれて良くなる | 特になし |
忘れ方 | 短期記憶(例:メニューは覚えてないが食事は取った) | 記憶そのものがない(例:食事したこと自体覚えていない) |
攻撃性 | 特になし | 攻撃的になりやすい |
老人性うつの対処方法
老人性うつの治療方法
老人性うつを診断されたら、通常のうつ病と同じく、医師から抗うつ剤などが処方されるので、それを服用して治療を行っていくことになります。
ただし、抗うつ剤には血圧を上げる、あるいは尿が出づらくなるなどの副作用を持つものが多いので、処方を受ける際には医師や薬剤師にその点の説明をしっかり聞いておくことが大事です。
本人の持病や身体状態によっては服用できない抗うつ剤もあるので、健康状態に合った薬を服用しなければなりません。
薬物による治療も大事ですが、生活環境の状況も老人性うつの大きな原因となるので、患者が元気や活力を回復できるような環境を整備してあげることも大切です。
生活環境を整えるには家族によるサポートが欠かせませんが、症状が進んでしまったら、状況に応じて病院への入院も考えるべきでしょう。
さらに、周囲の人の接し方も重要です。
「頑張れ」と安易に励ましの言葉をかけることは、かえって本人を落ち込ませ、病気を悪化させることもあるので注意しましょう。
接し方で気を付けるべきことは、本人の病状や性格によって変わってくるので、専門医と相談しながら決めていく必要があります。
うつ症状がやや治ってきたら、社会との接点を少しずつ持ってもらうと、改善につながりやすいです。
ほかの利用者と交流できるデイサービスを利用するのもひとつの方法ですよ。
老人性うつの予防法
老人性うつを予防するためには、新たなことに挑戦する気持ちを持つこと、人と積極的に交流することなど、本人の心を前向きにすることが大事です。
定年後に習い事を始める、あるいは現役時代とはまったく異なる仕事に取り組むなど、何か新しいことを始ようとする意欲が予防につながります。
もし本人が自発的にそのような行動を取らないなら、社会とのかかわりを持てるように、周囲の家族が気にかけてあげると良いでしょう。
また、栄養バランスの取れた食事をすることも予防には重要になります。
特に1人暮らしの人や身体的な理由で自炊が難しい人は、普段の食事で栄養をしっかり摂れていないことも多いです。
ビタミンやミネラルの種類と効能を理解し、各栄養をまんべんなく摂取するよう心がけましょう。
高齢の親が離れて暮らしているときは、食事の宅配サービスを利用するのもひとつの方法です。
さらに、うつ病の発症には心を落ちつかせる作用のある神経伝達物質、「セロトニン」の分泌量が大きく影響していると言われています。
太陽の光を体に浴びることでセロトニンの分泌を促進させることができるので、晴れた日には外に出るようにしましょう。
散歩など適度な運動を行うことで、効果はさらに高まります。
第2位 脳血管疾患(脳卒中)
次は、患者数が多く、発病すると命にかかわることも多い脳卒中についてみていきましょう。
脳⾎管疾患(脳卒中)の患者数
脳卒中は、なんとか一命を取りとめた場合でも、片麻痺や言語障害などの重い後遺症が残ることがあります。
高齢男性が要介護状態になる最大の原因で、発症後に寝たきりになる人も少なくありません。
脳卒中は、主に以下の3種類に分けられます。
- 脳の血管に血液の塊である血栓が詰まる「脳梗塞」
- 脳の血管が破れて脳内に出血が起こる「脳出血」
- 動脈にできたコブである動脈瘤が破れ、脳と脳を包むクモ膜の間に出血する「クモ膜下出血」
脳卒中の原因には、高血圧や脂質異常症、さらには糖尿病といった生活習慣病が大きく影響しており、お酒の飲み過ぎや塩分の摂り過ぎといった生活習慣が大きくかかわっています。
脳⾎管疾患(脳卒中)の症状
脳梗塞は対応が遅れると命にかかわる事態になりかねませんし、片麻痺や寝たきりなど重い後遺症を残すリスクも高まります。
脳梗塞と思われる症状や前兆などがみられた場合、早急に専門病院で治療を受ける必要があります。
特に、以下のような場合は、脳梗塞の前兆の恐れがあります。
直ちに救急車を呼びましょう。
- 急にひどいめまいがする
- フラフラして立てなくなる
- 半身が麻痺する
- 視野の半分が欠ける
- ものが二重に見える
- 急に言葉が出なくなる
- ろれつが回らなくなる
脳⾎管疾患(脳卒中)の治療・リハビリ
脳梗塞になると血流が止まった部位の脳細胞が壊死するので、血管に詰まっている血栓を取り除かなければなりません。
治療法としては、血栓を溶かす薬である「t-PA」という薬の点滴や、カテーテルという管を血管に挿入して血栓を直接取り除くといった方法があります。
一般的に、t-PAは脳梗塞の症状が出てから4時間半以内に投与を始め、カテーテル治療については8時間以内に行わなければならないとされており、後遺症のリスクを避けるためにも、できるだけ早く治療を開始することが大切です。
脳梗塞によって片麻痺や言語障害といった後遺症が残った場合は、リハビリに取り組んで機能回復を図る必要があります。
総合病院のリハビリテーション科やリハビリ専門病院などの医療機関のほか、介護施設でもリハビリが行われています。
また、脳梗塞は再発率の高い病気です。
再発を防ぐには、医師の処方した薬を服用し続けるとともに、生活習慣を見直していくことが重要になります。
第3位 高齢による衰弱
「衰弱」とは、字の通り体などが衰えて弱ることです。
「衰弱」の判断は、以下の5つの症状のうち、3つ以上が該当することと定義づけられています。
- 筋力の衰え
- 歩行速度の低下
- 活動量の低下
- 疲労
- 体重の減少
高齢による衰弱とは?
衰弱の要因としては、慢性的な疾患に加え低栄養や、骨格筋(姿勢を保ち、体を動かす筋肉)の不使用などが指摘されることが多いですが、詳細なメカニズムについては完全に解明されているわけではありません。
「筋力の衰え」は腰痛や膝の痛みと深くかかわり、骨格筋量の低下が主な要因です。
また、「歩行速度」は運動機能の状態を知るうえでのバロメーターにもなり、その低下は生活機能障害の発生や死亡率の上昇と関係しています。
さらに「活動量」は高齢者の健康状態と関係し、低下し始めると食欲減退などの症状が現れることが多いです。
「疲労」や「体重減少」は、なんらかの病気に起因して起こっていることも考えられるので、もし著しい症状がみられる場合は医師に相談して原因を調べることも必要になります。
第4位 骨折・転倒
高齢者は、加齢とともに身体機能が衰えてくるため転びやすくなります。
また、高齢者の場合、転倒すると大腿骨骨折のような大きな怪我になりやすく、そのまま要介護状態に陥ることも少なくありません。
以下のグラフは、高齢者が股関節を骨折した原因を表しています。
高齢者の転倒・骨折の状況は?
しかも、高齢者の数が増加するにつれ、大腿骨骨折の発生数は年々増えています。
転倒を予防することは、健康寿命を延ばし、生活の質を維持し向上するうえでも重要です。
内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、高齢者は家の中での転倒事故が多く、75歳以上になると特に「骨折」を起こす割合が増えてきます。
転倒によって骨折が生じやすいのは、大腿骨頚部(けいぶ)と呼ばれる太ももの付け根や腕の付け根、さらには手首や脊椎などです。
特に太ももの付け根は歩行機能に大きくかかわる場所なので、骨折をきっかけに寝たきりになるリスクが高まります。
骨折は、65歳以上の人が要介護状態になる要因の第4位。
男性よりも女性の方が、骨折によって介護が必要になる人の割合は高くなっています。
なぜなら、加齢による骨密度の低下は、ホルモンの影響で男性よりも女性の方に顕著に起こりやすくなっているからです。
高齢者の転倒・骨折の原因は?
それでは、高齢者の転倒の原因について、もう少し詳しくみていきましょう。
高齢者が転倒しやすい理由は、体や感覚の衰えといった「身体的要因」と、生活環境にかかわる「環境的要因」の2つがあります。
身体的要因としてまず挙げられるのは、加齢とともに 視覚と聴力が衰えてしまい、周囲の状況が把握しづらくなるということです。
高齢になると視力が低下するだけでなく、目の調節能力も衰え、明暗の変化に慣れるまで時間がかかるようになります。
白内障や緑内障になると視野も狭くなるため、物にぶつかりやすくなり、段差の認識力が弱まり転倒しやすくなるのです。
また、高齢になると平衡感覚が鈍くなるほか、歩行速度が落ち歩幅が狭くなります。
そうなると歩くときのリズムが崩れやすくなってしまい、転倒につながることも多いです。
さらに骨がもろくなってしまう骨粗しょう症や筋力の低下、薬の副作用によるふらつきやめまいなどで転倒することも少なくありません。
認知症をはじめ、起立性低血圧や関節リウマチなども転倒の原因になることがあります。
一方、環境的要因としては、まず生活環境や設備状況などが挙げられるでしょう。
家の中に「滑りやすい床」や「小さな段差」などが多いと、転倒のリスクは高まります。
脱げやすいスリッパや、滑り止めのついていない厚手の靴下などを普段から履いている場合も危険です。
要介護状態の場合は、体と大きさの合わない車椅子や補助具を使っていることも、転倒を引き起こす原因になります。
また、ペットを飼っている場合は、歩行時や離床時に足元にじゃれついて、そのせいで転倒するというケースも多いので注意が必要です。
生活環境以外にも、天候や時間によっても転倒のリスクが増します。
雨の日や雪の日は、足元を滑らせて転びやすくなるので危険です。
特に、「時間に追われて急いでいた」など、通常とは異なる心理状態のときは、より転びやすくなるので注意しましょう。
第5位 関節疾患
高齢者の関節疾患の状況
関節疾患とは関節が変形したり壊れたりすることで生じる病気のことです。
発症数が多いのが「膝関節」で、厚生労働省が発表した『平成25年我が国の保健統計』によると、レントゲン診断による患者数は国内だけで約2,500万人に上ります。
その次に症例が多いのは「股関節」で、発症すると日常生活が大きく制限されます。
関節疾患は体中どこの関節にも起こりますが、障害の度合いという点では、膝関節と股関節における疾患の影響度は大きいと言えます。
初期の段階では、立ち上がりや歩き出しの時に痛みを感じる程 度ですが、進行するにつれて、階段を上り下りするときや歩いている途中に痛むようになっていきます。
関節が変形する変形性関節症の場合、関節の動く範囲が減少するようにもなります。
そのほかの要介護となる要因
心疾患(心臓病)
心疾患にはいくつかの種類がありますが、代表的なものが「心筋梗塞」と「狭心症」です。主な原因は、どちらも加齢による血管の老化、いわゆる動脈硬化だとされていますが、そのほかにも糖尿病や脂質異常症、高血圧、肥満などの生活習慣病が原因で発症する場合もあります。
ストレス過多や喫煙習慣がある人も要注意です。心疾患は日本人の死因第2位で、突然死や要介護に至るケースが多い疾患です。日々の生活習慣を見直して、予防に努めましょう。
パーキンソン病
パーキンソン病とは、運動の調節をしている機能がうまく働かなくなり、身体の動きに障害が現れる疾患です。私たちが思った通りに身体を動かせるのは、脳の奥にある神経伝達物質「ドパミン」の作用によるもの。このドパミンが減少したり、十分に作られなくなったりすることで、パーキンソン病が発症します。
パーキンソン病になると、幻覚や抑うつの症状を伴うことがあり、高齢になってさらに症状が進むと、認知症を発症するケースもみられます。
糖尿病
60歳以上の15%以上が有病者だとされる糖尿病は、もはや“国民病”とも言えるほどの規模になっています。初期症状がほとんどないため、頻尿や喉の渇き、手足のしびれなどの自覚症状が出てくる頃には、病気はかなり進行しています。
糖尿病になって血糖値が高い状態が続くと、血管がもろくなって血液が詰まりやすくなります。このような状態が長く続くと、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こし、突然死のリスクが高まります。
また、たとえ命が助かったとしても、要介護となるケースも少なくありません。
呼吸器疾患
高齢になると身体を動かす機会が減り、少しずつ体力が衰えていきます。散歩や買い物に出かけてもすぐに疲れたり、息切れを起こしたりするので、家のなかに引きこもりがちになる高齢者も少なくありません。
そうなるとますます身体が弱まり、次第に呼吸をする力までも衰えていきます。場合によっては、呼吸器疾患に陥ることもあるのです。
呼吸器疾患には、慢性気管支炎や慢性閉塞性肺疾患、肺炎、肺気腫などがあり、症状が進むと寝たきりになる可能性もあります。
肺炎
肺炎にはウイルス性肺炎や細菌性肺炎など様々ありますが、高齢者の場合は誤嚥性肺炎が多く見られます。
誤嚥性肺炎は、食物や液体が誤って気管に入り、肺に達することで発生します。
嚥下機能の低下や認知機能の低下が原因となります。
悪性新生物(がん)
一昔前までは、「がん」といえば不治の病というイメージがありました。しかし最近は、検査や治療の精度が高まったことで、延命できるケースが多くなっています。
さらに入院期間が短くなり、治療に伴う副作用が少なくなったことによって、在宅で療養・介護を行うこなうことも少なくありません。医療機関をはじめ、かかりつけ医や看護師などの医療従事者、在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションなどが連携することで、在宅でも切れ目のないケアを行うことができるのです。
脊髄損傷
高齢になると骨がもろくなるため、転倒などで骨折のリスクが高まることはよく知られています。ただ、65歳以上の脊髄損傷者の60~70%は骨折ではなく、頸椎変形によることが多いとされています。
脊髄損傷の介護では、排尿管理、褥瘡(じょくそう)予防、排便管理の3つが中心になります。特に褥瘡になると合併症を引き起こす可能性が高くなるので、特に注意が必要です。
褥瘡予防のエアマットや介助用ベッドなどの福祉用具をうまく活用しましょう。
視覚・聴覚障害
視覚障害には、「視力が低下する」「光がまぶしい」「色がわからない」「視野が狭くなる」など様さまざまな症状があります。そのため、介護者はできるだけ具体的な表現を使ったり、視覚以外の感覚を利用したりする必要があります。
また、聴覚障害者の介護では、コミュニケーションの際に口元がわかる位置に立ち、口の形がはっきり認識できるように、ゆっくり話すなどの気配りが必要です。手話や指文字の基本を学ぶ必要もあるでしょう。
どちらの介護においても、本人の状態や希望に合わせた対応をとることが大切です。
まとめ
年をとるにつれ、身体機能だけではなく認知機能も衰えてきます。
ただし、かかりやすい病気や、適切な対応方法・予防方法を知っておくことで、健康に過ごすことのできる時間を長くすることは十分可能です。
ぜひこの記事を参考に、自身の健康寿命を延ばして、要介護状態にならない生活習慣を身に付けてください。
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高齢者が病気になりやすいのは免疫力の低下です。
免疫機能は60歳以上になると、20代の半分まで減ってしまいます。そのため、さまざまな病気や感染症などを発症しやすくなるのです。
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身体機能の低下の原因は生活習慣、社会的背景などですが、加齢から身体や免疫など、さまざまな機能が弱まり、病気の発症・急変しやすくなります。