【一覧表】グループホームと特養の特徴の違い
グループホームと特養の違いは、費用や入居条件、介護サービスなどさまざまです。
グループホームとは認知症の方を入居対象とする施設です。入居後はほかの入居者と共同で家事などに取り組みながら、認知症の症状の緩和・改善を図ります。
一方、特養とは要介護状態の方が安心・安全に暮らせる場を提供している施設です。介護・看護体制が整い、入居後は手厚いケアを受けながら生活できます。
グループホームと特養の違いを表にまとめました。
グループホーム | 特養 | |
---|---|---|
目的 | 認知症の高齢者が共同生活を通じて、自立した生活を営めるようにするための施設 | 要介護者が、身体介護や生活支援を受けるための施設 |
認知症への対応 | 可能 | 可能 |
入居 | 費用0~16万円 | なし |
月額 | 費用8.3~13.8万円 | 10~14.4万円 |
運営 | 民間企業、社会福祉法人、医療法人など | 国や自治体 |
グループホームは認知症に特化した施設
グループホームは認知症ケアに特化した施設です。急速に高齢化が進み、認知症発症者も全国的に増加しつつある現在、認知症に対応した老人ホームとして注目を集めています。
入居後は、他の入居者と5~9人の少人数で「ユニット」を形成し、お互いに家事の分担などをしながら共同生活を送ります。
介護スタッフによる自立支援・ケアサービスもユニットごとに行われるため、大人数の入居者がいる老人ホームに比べて、個別ケアの質が高いという特徴があります。
ほかにも、認知症ケアに効果のあるリハビリやレクリエーションも多く実施され、症状の緩和・改善を図りやすい環境が整っています。
地域社会との交流にも力を入れている
グループホームは介護保険制度上、地域密着型サービスに分類されていることもあり、地域社会との交流にも力を入れています。地域のお祭り・イベントに入居者が積極的に参加している施設も多いです。
さらに、在宅介護の認知症の方とその家族、地域の方などとのコミュニケーションを取る「認知症カフェ」を実施するグループホームもあります。認知症カフェの目的は情報交換や交流の場です。
グループホームは家庭的な雰囲気の中で過ごし、入居者と地域の繋がりを大切にする施設です。
認知症に対する誤った情報や対応などについて、グループホームが培った認知症ケアのノウハウを地域住民に伝えたり、一緒に考えたりする取り組みを積極的にしています。また、認知症の進行を予防するレクリエーションやイベントなども行う施設もあります。
特養は要介護度が高い人向けの施設
特養は 老人ホームとして、日本で最も施設数・入居者数が多いのが特徴です。
要介護状態の方を入居対象とし、 介護・看護職員が常駐しているので入居後は必要なケアをしっかりと受けることができます。認知症の方への対応力が高い施設も多いです。
なお、特養は国や自治体から補助が出ており、特に居室タイプが多床室の施設は、入居費用が安めで人気です。
やや費用は高めではありますが、個室に入居できるユニット型の特養もあり、こちらも人気が高いです。
正式名称は「介護老人福祉施設」
なお、「特別養護老人ホーム」は老人福祉法に基づいた名称で、介護保険法が施行されてからは「介護老人福祉施設」と制度上名付けられています。しかし現在でも、特別養護老人ホーム・特養という名称が一般的です。
介護老人福祉施設とよく似た名前の施設として、老人福祉施設があります。老人福祉施設はあくまで複数施設の総称であり、特養を指す介護老人福祉施設とは異なるので、注意しましょう。
グループホームと特養の入居条件の違い
グループホームと特養の大きな違いの一つが入居条件です。
グループホームは 認知症ケアに特化した施設であるため、認知症の方のみが入居対象です。また、地域密着型サービスに分類される施設であることから、原則として施設と同じ市区町村に住んでいる人のみが入居できます。
一方、特養は介護老人保健施設、介護医療院などと並ぶ介護保険施設であり、入居対象となるのは要介護認定で「要介護3」以上の認定を受けている方です。
以下で、グループホームと特養の入所条件についてさらに詳しく見ていきましょう。
グループホームの入居条件は「認知症の診断を受けていること」
グループホームの入居条件はおもに以下の4つが挙げられます。
- 原則65歳以上
- 認知症の診断を受けている
- 「要支援2以上」に認定されている
- 施設と同じ市区町村に住民票がある
グループホームの入居条件として「認知症の診断を医師から受けていること」があります。
例外として、特定疾病を理由に、第2号被保険者となっている方(40歳~65歳未満)は、介護保険制度の利用・グループホームへの入居も可能です。
【介護保険】特定疾病とは?16種類一覧と診断基準、覚え方(第2号被保険者も対象に)
認知症が重度化した場合は退去になる場合もある
グループホームで入居対象として想定されているのは、認知症が軽度~中度の方です。
認知症が重度化して寝たきりに近い状態の方、周囲の人への暴言・暴力などの症状が出ている場合は、入居が難しくなってきます。
また、要介護認定において「要支援2以上」の認定を受けていることも必要です。
施設と同じ市区町村に住民票がないと入居できない
さらにグループホームは介護保険制度上、地域密着型サービスに分類されているため、入居対象となるのは施設と同じ市区町村に住民票がある方です。自宅の遠方にある施設に入居することは原則できませんので、注意しましょう。
グループホームを探す特別養護老人ホームの入居条件は「要介護3以上」
特養の入居条件はおもに以下の2つが挙げられます。
- 65歳以上
- 「要介護3以上」に認定されている
特養の入居条件は、65歳以上の方で要介護3以上の認定を受けている方です。グループホームと同じく、認知症ケアに対応しています。
要介護度が重い人のみ入居ができる
特養の入居条件を考える場合、ポイントとなるのは要介護度の重い方のみを入居対象としているという点です。
例えば、介護付き有料老人ホームなどでは自立して生活できる状態で入居し、将来的に要介護状態になっても、そのまま同じ施設で生活を継続することが可能です。
しかし特養の場合、入所時点で要介護状態である方が入居対象です。要介護3以上の認定を受けていない方は特養への入居ができないので、注意しましょう。
グループホームと特養の人員体制
続いて、グループホームと特養の人員体制を解説していきます。
グループホームは認知症ケアに特化した人員配置
グループホームの人員配置は日中と夜間で異なります。日中では、利用者3人に対して1人の常勤の介護職員の配置が義務付けられています。夜間の場合は、ユニットごとに1人の職員の配置となります。
日中は介護職員が多く常駐しているため、入居者の方は安心して生活できます。 しかし、夜間は介護職員が手薄になる施設が多いです。
特養は医師が勤務している
特養の人員配置は入所者3人に対し、介護職員もしくは看護職員1人の配置です。この配置基準は常勤であるため、夜間の職員の数が少なくなる施設もあります。医師の配置は、入所者3人当たりに対して1人または看護師3人です。
特養は入浴や排泄、食事などの日常生活の介護、機能訓練、療養上の世話などを行う施設と定めています。要介護3以上が対象で、重度の介護を必要とする方が多く、介護ケアが重点的に置かれているため、老健や介護療養型医療施設よりも医師や看護師の数は少ないです。
そのため、病院と同様の医療処置はできません。
グループホームと特養のサービスの違い
グループホーム・特養で利用できるサービスについてご紹介しましょう。
グループホームは認知症ケアを専門とする施設であるため、 認知症の症状を緩和・改善する効果を期待できる各種療法、レクリエーションを利用できます。
一方、特養は介護・看護体制が整い、手厚いケアを受けられる施設です。医師もいるので、持病のある方も安心して生活できます。
それぞれの施設のサービス内容をさらに詳しく見ていきましょう。
グループホームは認知症ケアに効果のあるサービスが提供される
グループホームでは、 認知症の抑制・改善に効果のあるサービスが多く提供されています。
例えば、手芸など手先を細かく動かすレクリエーションもその一つです。手を動かすことで脳を活性化させることができ、認知症の対策として効果が期待できます。
他にも、音楽を通して認知症の症状改善を図る音楽療法、動物と触れ合って脳に刺激を与えるアニマルセラピー、敷地内での土いじりを通して認知症ケアを行う園芸療法なども行われています。
認知症を発症し、症状の進行を抑えたい、症状を少しでも改善させたいと考えている方にとって、グループホームはおすすめの施設です。
基本的な生活は入居者同士で行う
グループホームは共同生活を送るため、買い物や食事、掃除などは入居者自身で行います。家事全般を他の入居者と分担をしながら生活を過ごす中で、認知症の症状を緩やかにしていくことを期待しています。
そのため施設入居後、食事や掃除、洗濯などの生活支援サービスを希望する方にはおすすめできません。
生活支援サービスを希望する方は、介護・医療体制も整っている介護付き有料老人ホームなどを検討しましょう。
特別養護老人ホームは介護体制が整っている
特養では食事・入浴・排せつの介助を中心とする身体介護サービスが充実し、要介護の方が必要とするケアをしっかりと受けることができます。
また、心身状態に合わせたリハビリテーション、健康管理を行い、体調が急変したなど緊急時の対応力も高いです。レクリエーションやイベントも頻繁に実施されています。
看取りに対応している施設もある
近年では、看取りができる施設が増えてきました。長く生活し、友人も多い施設で最期のときを迎えられるように、医師や看護師など、看取りに必要な人員体制を整えている施設は多いです。
グループホームと特養の費用の違い
グループホームと特養の違いを費用面から見ていきます。グループホームは民間施設、特養は公的施設であることから、両者の費用の仕組みには大きな違いがあります。
グループホームと特養の費用面での特徴について、それぞれの施設の費用相場も含めて、さらに詳しくみていきましょう。
グループホームの費用
グループホームの費用は、大きく「初期費用」と「月額費用」に分けることができます。それぞれの費用の相場は以下の通りです。
入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|
0~16万円 | 8.3~13.8万円 |
入居の際には入居一時金を支払う
初期費用は入居する際に必要となる費用で、入居一時金や保証金などを指します。
入居一時金とはその施設を利用できる権利を取得するために支払う費用で、入居後はいわゆる前払い家賃と同じように、毎月の居住費に支払額が償却されていきます。
保証金は賃貸契約における敷金に該当し、 退去時の清掃・修繕代や、家賃が滞ったときの支払いなどに利用される費用です。退去する際に残金があれば返却されます。
月額利用料の平均は約10~14.3万円
グループホームの月額利用料の相場は10~14.3万円です。
月々にかかる費用のうち賃料は、部屋の面積や立地などで大きく違います。一般的に、普通の賃貸住宅と同様、郊外より都市部の方が居住費は高めです。
まずは、月額利用料に含まれる費用を確認しましょう。
- 賃料
- 管理費共益費
- 光熱費
- 食費
- おむつなどの介護用品代
- 医療費
- 日用品代
介護サービス費は介護保険適用で、要介護度別に毎月定額を支払います。また、この費用は所得に応じて1〜3割負担が実際に支払う金額です。
また、サービス加算も月額利用料に含まれます。
サービス加算は 専門的なサービスや充実した設備などの追加で請求される費用を指します。このサービス加算は施設ごとで異なるため、事前に施設に確認をしておきましょう。
特別養護老人ホームの費用
続いて、特別養護老人ホームの費用を解説していきます。特養の費用の目安は以下の通りです。
入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|
なし | 10~14.4万円 |
入居の際の費用は無料
特養は公的施設のため、初期費用や入居一時金といった入居時の費用は一切かかりません。
介護サービス費や生活費などの月額利用料のみかかります。
月額利用料は居室タイプによって異なる
特養の月額費用の相場は10~14.4万円です。
月額費用の内訳は以下の通りです。
- 居住費
- 食費
- 日常生活費
- 施設介護サービス費
- サービス加算
居住費は入居者の所得状況に応じて変わってきます。低所得の場合はその分だけ毎月の支払額が少ないです。
食費は1日3食分の料金が原則として請求され、外泊して夕食を食べなかった場合でも1日分が請求されます。入院などでしばらく施設から出る場合は、1日単位で食費をストップすることは可能です。
日常生活費は理美容代、日用品や嗜好品の費用、医療費、通院時の交通費、レクリエーションやイベントにかかる費用などが該当します。
施設介護サービス費は、要介護度別に毎月定額の支払いが必要です。
負担額は所得状況によって1~3割負担とされ、入居する部屋の形態によっても料金が変わってくるので注意しましょう。
サービス加算は、施設の人員配置・設備の状況によって変わってきます。
グループホームと特養のメリット・デメリット
続いてグループホームと特養に入居するメリット・デメリットについてご紹介します。
グループホームを選ぶメリット・デメリット
グループホームを選ぶメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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メリット:認知症のケアが手厚い
グループホームのメリットとしては、まず親しみやすさと優れた認知症ケアを挙げられます。
5~9人の少人数単位で共同生活を送るので、ほかの入居者と顔なじみになりやすく、アットホームな雰囲気の中で生活できます。また、認知症ケアのスキル・知識のあるスタッフが常駐しているので、認知症の緩和・改善に向けたレクリエーションなどのサービスを受けることが可能です。
また、グループホームの入居対象となるのは自宅と同じ地域に立地する施設で、住み慣れた地域から離れずに生活できる点も大きなメリットといえます。
デメリット:重度の認知症になった場合は退去になる
グループホームのデメリットは、認知症の状態が悪化すると退去の可能性があることです。
グループホームは看護師の配置義務がなく、重度の認知症に対するケアが整っていません。そのため、継続的な医療ケアが必要になった場合なども退去になる可能性があります。
持病がある方は適切な医療ケアが受けられるのか、医療体制について事前に確認しておきましょう。
特別養護老人ホームを選ぶメリット・デメリット
特養を選ぶメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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メリット:介護度が高くても入居ができる
特別養護老人ホームのメリットは、介護度が高くても入居でき、看取りまで見据えた終身利用ができる点です。
また、公的な施設であるため、入居費用が安めである点も大きなメリットです。
ほかの施設では初期費用として、入居一時金の支払いが必要となるケースが多いです。しかし特養では、そのような初期費用は一切発生しません。毎月の費用も高額にはならないため、費用を抑えて老人ホームを利用したい方に適した施設です。
デメリット:入居まで時間がかかる
特養のデメリットは入居待機者が多く、入居するのに時間がかかる点です。
2015年の制度改正によって、入居基準が要介護3以上と厳しくなりましたが、全国的に入居待機者の数は減っておらず、1ヵ月〜1年以上の入居待機期間を要する場合があります。
要介護度の高い方や身寄りがいない方など緊急性が高い方などは、優先的に入居を案内されるケースがあります。
また、要介護1〜2の方でも緊急性があると判断されれば、優先順位が上がるかもしれませんが、基本的には即入居は難しいことを頭に入れておきましょう。
即入居可の施設を探すグループホームと特養を検討している人におすすめの施設
ここまでグループホームと特養の違いについて解説してきましたが、理解できたでしょうか。
特養は、入居まで時間がかかる施設ですので、その間に住み替えを検討することもおすすめです。
特養とグループホームを検討している方におすすめの施設を紹介していきます。
軽度の認知症の方ならグループホーム
グループホームは認知症の方を対象とした施設です。そのため、認知症のスペシャリストである職員から適切なケアを受けることができます。グループホームでは、認知症の進行を遅らせる効果があるレクリエーションやイベントが盛んに行われています。
また、 1ユニット9人以下のグループで共同生活を送ることで、認知症の進行を緩やかにする効果が期待できます。入居者同士で家事を分担しながら生活を過ごすことで、脳が活性化され認知症の進行を緩和や改善するといわれています。
手厚いサービスを受けたいなら住宅型
住宅型は高齢者の方が安全に暮らすためのバリアフリー設計がされた館内で、自由な生活を送れます。
食事の提供や見守りなどの生活支援サービスを受けられ、一人暮らしの方も安心して生活できます。さらに、レクリエーションやイベントが多彩で、入居者同士でコミュニケーションを取ったり、趣味を楽しんだりするなど、充実した日々を過ごすことができます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
認知症が進行して来ているなら介護付き
介護付きは65歳以上の要介護1〜5の方を受け入れる施設で、認知症が進行している方の入居も可能です。原則、終身の利用となっているため、住み慣れた場所で最期を迎えられるのも介護付きの利点といえます。
24時間の介護サービスをはじめ、生活支援サービスや機能訓練など、手厚いサービスが提供されます。また日中は看護職員も常駐ししており、看護ケアも整っています。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
- グループホームは認知症ケアに特化している
- 特養は手厚い介護サービスを受けられる
- グループホームは施設と同じ市区町村に住民票がある方が対象
- 特養は公的施設であるため、費用を安めに抑えられる
- グループホームは5~9人の少人数の共同生活を送る
グループホームと特養に関するQ&A
グループホームと特養どっちがいい?
グループホームと特別養護老人ホーム(特養)は、サービス内容が違います。グループホームは認知症に特化した施設です。認知症に効果のあるリハビリなどをして、症状や進行を緩やかにします。特養は要介護3以上の介護を必要とした方が対象です。看取りの対応も可能で、介護・看護職員が常駐しています。
グループホームは何をする?
グループホームは1ユニット5〜9人で家事の分担をして家庭に近い環境で共同生活をし、自立した生活を目指します。
認知症の方が穏やかに過ごせるように、認知症の専門である職員が、自立支援やケアなど適切な方法で対応をするため、本人はもちろん家族も安心できます。
特別養護老人ホームは何?
特別養護老人ホーム(特養)は、介護の必要な方が24時間、介護サービスを受けられる施設です。終の棲家と言われており、看取りまで対応をするので一度入居すれば、終身まで生活ができます。サービスは食事や入浴、排泄、買い物などを受けられ、レクリエーションやイベントも充実しています。
グループホームにはいる人はどんな人?
グループホームの入居条件は65歳以上で、要支援2または要介護1以上の認定を受けた人です。
また医師から認知症の診断を受けており、施設と同じ住民票、集団生活を送ることに問題のない方も条件となります。