【一覧表】特養と養護老人ホームの特徴の違い
特養と養護老人ホームの大きな違いは、特養は介護を行う施設であるのに対して、養護老人ホームは社会復帰の支援を行う施設という点です。
まずは以下の表で、2つの施設の違いを確認しておきましょう。
特別養護老人ホーム | 養護老人ホーム | |
---|---|---|
施設の目的 | 要介護者が身体介護や生活支援を受ける施設 | 生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し、社会復帰を促す施設 |
入居条件 | 要介護3以上 | 経済的な事情などで困窮している高齢者 |
サービス | 内容身体介護など | 食事の提供や、健康管理を含む自立支援 |
月額利用料 | 10万~14.4万円 | 0円~14万円 |
入居一時金 | なし | なし |
入居 | 難易度入居待機者が多く数ヵ月以上待つこともある | 市区町村が対象者を調査して入居を決定 |
居室 | 4種類あり | (原則4人以下)個室 |
特養は入居者の介護を行う施設
特養は、要介護状態の高齢者が在宅で介護を受けられないときに、介護サービスを受けながら生活するための施設です。
1963年に制定された老人福祉法に基づいて「老人ホーム」が規定された際、養護老人ホームの一種としてつくられました。
2000年からは、介護保険制度に基づいて高齢者に介護を提供する介護保険施設となり、現在に至ります。
施設としての目的は高齢者を“介護”することで、寝たきりなど介護度が高い人でも入居することができます。
また、終身利用を視野にいれた長期入居もできる施設です。
月々の利用料は一定額発生しますが、民間の有料老人ホームなどに比べると料金が安いのが特徴です。
特養の詳細は以下の記事で解説しています。
養護老人ホームは高齢者の「社会復帰」を支援
養護老人ホームは、生活環境や経済的な理由で困窮している高齢者が、自立した日常生活を送りながら、社会参加できるようにする施設です。
老人福祉法によって規定された施設である点では特養と同じですが、基本的に介護保険法に基づく介護サービスは提供されません。
なお、養護老人ホームは長期的な利用ができる施設ではありません。
施設としての目的は、高齢者を“養護”することで、入居者の在宅復帰や社会復帰の支援を行っています。
そのため、施設を出てからも生活できるよう、支援員が財政面に関するアドバイスを入居者に対して何度も繰り返し行います。
基本的に介護サービスを受けることができないため、入居中に介護が必要になった場合は、他の施設への転居が必要になることもあります。
養護老人ホームの詳細は以下の記事で解説しています。
特養と養護老人ホームの入居条件
名称の似ている特別養護老人ホームと養護老人ホームですが、入居対象は異なります。それぞれの違いについて説明します。
特養は要介護度3以上が原則
特養の入居基準には大きく分けて以下の3項目があり、いずれかを満たしている必要があります。
- 要介護3以上の認定を受けた65歳以上で、感染症などによる医療的措置を必要としない方
- 特定16疾病と認められた40~64歳までの方で、要介護3以上の認定を受けている方
- 特例によって入居が認められた要介護1、要介護2の認定を受けている方
特定16疾病とは、末期のがん、 関節リウマチ、初老期における認知症、早老症、脳血管疾患など、制度上特定されている疾病のことです。
【介護保険】特定疾病とは?16種類一覧と診断基準、覚え方(第2号被保険者も対象に)
特例で入居が認められる場合もある
特養は原則要介護3以上が入居条件ですが、要介護1〜2でも特例が認められると入居できます。
認知症や精神障害・知的障害により、日常生活に支障が出るほどの症状や行動、意思疎通の困難が頻繁に見られ、在宅生活が難しい場合です。
また、深刻な虐待を受け、心身の安全を確保できないこと、家族からの支援が難しい、同居する家族が高齢など、地域の介護サービスの供給が不十分であることなども含まれます。
一人暮らしの方、一緒に生活をする家族が病弱な場合も特例の対象となります。
養護老人ホームの入居には行政の措置判断が必要
養護老人ホームの入居対象者は、現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも問題がある65歳以上の高齢者です。
また、養護老人ホームへの入居にあたっては、市区町村による審査を受けなければなりません。
審査では主治医意見書や誓約書などの提出書類の内容が精査され、「入居条件を満たすだけの生活・環境状況に置かれているか」を、地域包括支援センターや医療機関、福祉施設などで構成される入所判定委員会が判定します。
特養と養護老人ホームのサービス
両施設はそれぞれ目的が違うため、施設で受けることができるサービスは全く違います。
以下で解説していきます。
特養はどこでも同じ水準の介護サービスが受けられる
特養では提供するサービスが法令で定められているので、どこの特養に入居しても基本的に同じ水準のサービスを受けられます。
特養で提供されるサービスは以下の通りです。
- 食事サービス
- 入浴、排泄介助
- リハビリ
- 24時間体制の介護サービス
- 医師や看護職員による健康管理
- 看取り対応
- 緊急時の対応
基本的なサービスを以下で解説していきます。
食事サービスは身体状況に合わせてくれる
特養の食事サービスは、基本的に毎日同じ時間に提供されることになります。
しかし、体調に合わせて時間変更のお願いもできますし、食べやすいよう介護食なども用意してもらえるので、嚥下(えんげ)に不安のある要介護状態の方でも安心です。
入浴は最低週2回
入浴は制度上、最低週2回行われ、入居者の状態に合わせ、職員がしっかりと介助してくれます。
施設によって、入浴回数は変わるため、事前に確認しておきましょう。
排泄は便意や尿意を感じにくくなっている人でも安心
排泄についても本人の体の状態に合わせた介助サービスを受けることができるので、自力で排泄できない方でも心配はいりません。
尿意や便意を感じにくくなっている方は、定期的に排泄の有無を確認してもらえるサービスが利用できます。
リハビリを行うことも可能
リハビリについては、施設によってどのように行っているか異なります。
養護老人ホームは介護サービスを提供しない
養護老人ホームは入居者の社会復帰を目指すことが施設の目的なので、そのためのサポートやアドバイスを受けられます。
養護老人ホームで提供されるサービスは以下の通りです。
- 食事の提供
- 支援員による健康チェック
- 経済面のアドバイス
- 社会復帰に向けての自立サポート
- 地域との交流など
一方、介護や看護を目的とした施設ではないので、職員による介護サービスの提供は行われません。
日々の食事や入浴、清掃など基本的な家事サービスを受けることができます。
さらに日々の健康チェックや、必要に応じて機能訓練などに取り組むことは可能です。
外部の介護サービスが利用可能
養護老人ホームは、2005年の介護保険法改正により「外部サービス利用型特定生活入居者生活介護」の指定を受けています。
そのため、入居者の要介護状態に合わせ、施設が契約する外部事業者の介護サービスの依頼が可能です。
特養と養護老人ホームの費用
特養と養護老人ホームの費用の目安は以下の通りです。
2つの施設を比べてみると、その費用面でも大きな違いがあるのがわかります。
入居金はどちらの施設も0円
特養と養護老人ホームは、どちらとも社会福祉法人や自治体などが運営する公的施設になります。そのため入居時にかかる費用は0円です。
月額利用料の違い
月額利用料は毎月施設へ支払う費用のことです。特養と養護老人ホームの月額利用料の内訳や費用の決定方法は異なります。それぞれの違いを紹介します。
特養は月額約8~約14万円
特養の月々の平均費用は、ユニット型個室の場合は約14万円、相部屋の多床室の場合は約8万円です。
毎月必要となる主な費用の内訳としては、通常の賃貸物件の家賃にあたる居住費、1日3食分が計算される食費、医療費や理美容代、レクリエーションにかかる経費などが挙げられます。
居住費は国が定めた基準費用額に基づいて設定されており、数種類の居室タイプによって居住費が異なります。
特養の居住費の目安は以下の通りです。
項目 | 基準費用額 |
---|---|
多床室 | 855円 |
従来型個室 | 1,171円 |
ユニット型個室 | 1,668円 |
ユニット型個室的多床室 | 2,006円 |
なお、おむつ代やクリーニングを必要としない私物の洗濯は、施設側の負担とされます。
養護老人ホームの費用は前年度の収入で決まる
養護老人ホームの月額費用は、0~14万円ほど。
前年度の収入によって変わり、実際の金額をさまざまな規定・基準で決めています。
また、養護老人ホームの費用は、入居者本人の年収だけではなく、扶養義務者の年収から判定されることもあります。
そのため、毎月かかる費用は人によってまちまちとなりますが、基本的に経済的困窮者を対象としているので、高い場合でも月額15万円未満に収まります。
特養と養護老人ホームのメリットとデメリット
特別養護老人ホーム
メリット:費用が定額制
公的な施設である特養のメリットは、費用が安いことです。
また、終身利用が可能で、長期間入居できることも嬉しいポイント。
公的な施設であることから倒産の心配も少なく、看取りまでの期間を安心して過ごせます。
さらに、見逃しがちなのが医療費控除を受けられるという点です。
特養の施設サービス(日常生活費・特別な費用を除く)にかかった自己負担額の2分の1相当の金額を所得から控除できます。
収入として認められる金額を大幅に減らすことが可能になり、収入に伴って支払う税金負担が少なくなります。
デメリット:入居希望者が多く待機期間が長い
2015年に行われた介護保険制度改正により、特養の入居基準が改められましたが、それでもなお30万人近くの待機者がいるという状況です。
待機者の中には、入居までの期間を入居がしやすい有料老人ホームで過ごす「住み替え」をする方が多くなっています。
即入居可能な施設を探す養護老人ホーム
メリット:経済的支援を受けられる
養護老人ホームは、身体的な虐待を受けた方や身寄りのない高齢者など、さまざまな方が入所しますが、一般的には経済的に困窮している高齢者が多めです。
サービス費用に関しても、前年度の所得によって決められるので、生活が困窮している場合は少ない費用で日常生活の支援を受けられるのが大きなメリットです。
さらに、自立支援を目的としている養護老人ホームでは、経済面でのアドバイスも受けられます。
施設の入居中だけでなく、社会復帰した後も安心して生活できるよう支援してくれるのは、養護老人ホームならではの特徴です。
デメリット:施設からの介護サービスは提供されない
養護老人ホームの入居条件は「自立状態の高齢者」のため、介護が必要な高齢者は入居できません。
また、入居後に要介護状態となった場合でも、訪問介護や通所介護が利用できるとはいえ、特養に比べると介護面の体制が整っていません。
また、養護老人ホームに入居するときに考えなければならないのは、「経済的に困っているからといって、即入居できるわけではない」という点です。
特養と養護老人ホームを検討している方におすすめの施設
特養と養護老人ホームを紹介してきましたが、それぞれの施設について理解は深まったでしょうか。
特養は人気の施設のため、入居まで最短でも2~3ヵ月以内、長いときだと数年待つことがあります。
そのため、その待期期間に他の施設へ入居し、ベットが空くのを待つ方もいます。
特養と養護老人ホームを検討している方におすすめの施設を紹介します。
24時間の手厚いサービスなら:介護付き有料老人ホーム
介護付きは定額で介護サービスを利用できるため、どれだけ使用しても料金はそのまま。手厚いサービスを受けられるので、介護サービスを重視する方におすすめです。
日中は看護師も常勤しており、健康管理や褥瘡、怪我などによる医療行為も受けられます。さらにレクリエーションやイベントなども盛んに実施しています。充実した介護を受けながら生活を楽しむこともできます。
低価格でプライバシーも確保できる:ケアハウス
ケアハウスは一般型と介護型があり、一般型は自立した方を対象に生活支援サービスを受けられます。
一般型で介護サービスを利用したい場合は、訪問介護やデイサービスなど外部のサービスを利用します。利用した分だけ費用が発生するため、費用を最小限に抑えられます。
介護型は介護サービスが提供され、介護度が上がっても対応可能です。介護度が重たくなっても退去はほとんどありません。
最大の魅力は一般型、介護型ともに費用が安いことです。所得次第で事務費が軽減され、月々の費用を抑えられるため、低所得の方も入居しやすいです。
みんなの介護入居相談センターでは、一人ひとりの希望条件にあった施設を紹介しています。
以下のボタンから是非ご利用ください。
- 身体介護など介護サービスをメインに提供している特養は、終身利用ができる
- 困窮している高齢者を支援する養護老人ホームは、社会復帰を目指す場所
- 入居条件は、特養が「要介護3以上」、養護老人ホームは「自立して生活できる人」
- 養護老人ホームは市区町村による措置判断が出た場合のみ入居できる
- どちらも入居一時金不要で費用が安い
- 特養では介護サービスを受けられるが、養護老人ホームは介護サービスを提供していない
特養と養護老人ホームに関するQ&A
特別養護老人ホームって何?
特別養護老人ホームとは、介護を必要とした要介護3以上の方に対して、24時間365日介護サービスを提供する施設です。
食事、入浴、排泄など、さまざまな支援を行い、イベントも実施されます。また、寝たきりの方も受け入れ、終身まで利用が可能です。
老健と特養どっちにしようか?
老健は介護サービスやリハビリなどを受けて、在宅復帰を目指す施設で、特養は介護サービスを受けながら、長期的に暮らす施設です。
老健は原則3ヵ月の入居ですが、特養は終身の利用ができます。
特養と老人ホームの違いは何?
特養は介護の必要な方に24時間、介護を提供する公的施設です。要介護3以上が対象で、身体介護を中心とした生活支援を受けられます。また看取り対応が可能で、一度入居すれば退去することはありません。養護老人ホームは経済的困難な方を対象に住まいを提供し、食事や健康管理を行いながら社会復帰を目指す施設です。
特別養護老人ホーム安いのはなぜ?
特別養護老人ホームは社会福祉法人や自治体が運営する公的施設です。そのため国から助成金が出るので、月額利用料を低価格で提供できます。