非課税の介護サービス
基本的に消費税は非課税
介護保険サービスは、原則として消費税は非課税になります。それは消費税法により、本来なら課税対象になる取引でも、一定の条件下で非課税となるものが決まっており、介護保険サービスがそれに該当するからです。
その条件とは、課税対象になじまないもの、社会政策的な配慮から課税することが適切でないもの。具体的には、社会保険医療の給付、学校教育や助産などが該当します。
介護保険サービスの中で具体的に見ていくと、訪問介護などの居宅サービス、特養などの施設サービス、グループホームなどの地域密着型サービスなどが該当し、自己負担額に消費税はかかりません。
介護施設で利用できる、定額のサービス「特定施設入居者生活介護」も、非課税になります。
また、ケアマネージャーにケアプランを作ってもらう費用も、全額が介護保険が適用となっているうえ、消費税は非課税です。
詳しくは以下の表にまとめたので、気になる項目を確認してみてくださいね。
種目 | 介護サービス |
---|---|
ケアプラン | 作成居宅介護支援/介護予防支援 |
訪問系 | サービス訪問介護・入浴・看護・リハビリ/定期巡回・随時対応型訪問介護看護/夜間対応型訪問介護 |
通所系 | サービス通所介護・リハビリ/認知症対応型通所介護/地域密着型通所介護 |
短期入所系 | サービス短期入所生活介護・入所療養介護 |
施設系 | サービス特定施設入居者生活介護/介護福祉施設サービス(特養)/介護保健施設サービス(老健)/認知症対応型共同生活介護(グループホーム)/介護療養施設サービス(療養病床) |
複合系 | サービス小規模多機能型居宅介護 |
介護予防の場合は 対象外になるもの |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護/夜間対応型訪問介護/地域密着型通所介護/介護療養施設サービス(療養病床) |
「日常生活に要する費用」は非課税に
食事介助や排泄介助などの介護保険サービス費用だけでなく、それらと同時に提供されるサービスについても、「日常生活に要する費用」として非課税の扱いになります。
例えば、デイサービスやデイケアなどの通所系サービスを利用すると食事代やおむつ代がかかりますが、これらの支払いに消費税は課税されません。
また、特別養護老人ホームやグループホームなどの施設サービスにおいても、入居後に支払う必要のある食事代や居住費用、理美容代などが非課税とされています。
ただし、民間の施設である有料老人ホームの食事費用などは課税対象となるので注意が必要です。
また、サービス提供とともに必ずしも発生するわけではないと考えられる費用も同様です。例えば、訪問系サービスにおける「利用者の希望により発生した交通費」、通所系サービスにおける「利用者の希望により発生した送迎費」などは課税対象になります。
限度額を超えて利用したときはどうなるの?
在宅介護で利用される居宅サービスでは、要介護度別に介護給付の支給限度額が定められています。
もし、その額を超えて介護サービスを利用した場合は、介護保険給付の対象外とされ、全額が利用者負担となるわけです。
消費税法上では、このように支給限度額を超えて全額利用者が負担した分については「非課税」とされています。
保険給付が適用されていない分についても、居宅サービスや施設サービスとして利用者に提供されるサービスであれば消費税はかからないのです。
加えて、上記で説明した、介護保険サービスと同時に提供されることが想定される「日常生活に要する費用」もすべて非課税とされます。
課税される介護サービス
介護保険サービスにおいて「利用者の選定によるサービス」は消費税が課税に
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などを利用するとき、ほかの入居者と同等の居室を利用するのならば非課税対象とされます。しかし、要介護者自身の判断によって、施設内にある特別な居室の利用を希望した場合には、その室料は課税対象となります。
また同様に、要介護者が自分で、特別な食事の提供を希望した場合も課税対象です。
こうした「利用者の選定」によって、豪華な食事や特別な個室などのサービスを利用した場合は、消費税が課税されることになります。
ほかに、訪問入浴介護において、炭酸温泉などの特別な浴槽水を希望して利用した場合も、消費税が課されます。
事業区域外の事業所を利用したときの送迎費用
介護保険サービスでは、事業者がサービスを提供する区域は定められています。
もし、希望により事業区域外の事業者を利用したときは、サービス提供のために必要となった交通費と送迎費用については、利用者が負担しなければなりません。
そのため、その際の交通費や送迎費用部分に発生する消費税については、利用者に課税されることになります。
遠方に事業所がある訪問介護や訪問看護、あるいは通所介護などを利用する際は、注意する必要があるでしょう。
福祉用具貸与・購入
福祉用具の貸与・購入は、特定の福祉用具について自己負担1~3割でレンタルもしくは購入できる介護保険サービスですが、利用の際には消費税が課税されます。
要介護者に直接提供されるタイプの介護サービスとは異なり、たとえレンタル・購入に必要な費用の一部が介護保険適用となった場合でも、レンタル・購入後に一般の人が使用することも想定できるからです。
そのため、レンタルや購入の契約を結ぶときには、支払い金額に消費税が上乗せされることを考慮しておくと良いでしょう。
特に、介護ベッドを始め複数の福祉用具をレンタルし続ける場合、毎月の消費税も相当額になるので注意が必要です。
借りる際は消費税分を含めた費用計算をしておかないと、後々家計を圧迫することにもなりかねません。
住宅改修
介護保険が適用される住宅改修は、最大20万円を限度にその費用の1~3割のみ自己負担すればよいサービスです。
介護保険の給付は多くの自治体で、利用者側がいったん工事費のすべてを支払い、後日に改めて給付申請を行って支給を受けるという「償還払い方式」が取られています。
この住宅改修は、非課税の扱いにはなりません。消費税法上、「非課税となる介護保険に係る資産の譲渡等」として定められているものに該当しないと判断されているからです。
住宅改修の工事費は相当な額になるのが一般的。その費用分の消費税となると、それだけでかなりの高額になることも予想できますよね。
施工業者から工事の見積もりを出された際は、消費税分も含め、最終的にどのくらいの費用を負担することになるのか、事前にきちんと計算しておくことが大事です。
介護保険外サービス
介護事業者が行うサービスであっても、介護保険の適用範囲外のサービスについては、一般のサービス利用とみなされ、消費税の課税対象となります。
例えば訪問介護だと、利用者の家族に対する家事支援など利用者本人への生活援助とはみなされないサービスや、家の中の大掃除など日常の生活範囲を超えたサービスなどが、保険対象外となり消費税の課税対象となるのです。
消費税と介護報酬の関係
介護事業者が消費税を負担している?
消費税については、一般の事業者には「仕入れ消費税控除」というものが認められています。これは、消費者が負担する消費税が、生産や流通の過程で各事業者から二重、三重に納税されることを避けるためのものです。
例えば、工場Aで生産された900円の商品Xを販売店Bが購入し、それを1,000円で消費者Cに売ったとします。
このケースで消費税が10%の場合、販売店Bが工場Aに支払った消費税は90円、消費者Cが販売店Bに支払った消費税は100円になります。
工場Aは販売店Bから受け取った80円を消費税として税務署に納税します。販売店Bも同様に、消費者から受け取った消費税を税務署に収める義務がありますが、この場合は100円をそのまま納税するわけではありません。
なぜなら、既に工場Aが、商品Xに対して90円を消費税として収めているからです。
このように、さまざまな事業者によって消費税が多重に納税されることを防ぐために「仕入れ消費控除」があるのです。
この事例の場合、販売店Bは100円と90円の差額である、10円を納税すれば良いことになります。しかし、介護サービス事業者は「仕入れ消費税控除」を受けることができないような仕組みになっています。
原則として介護サービスは消費税が非課税となっているため、要介護者やその家族から、消費税を受け取ることができないからです。
介護事業者は消費税を受け取ることができない一方で、利用者にサービスを提供するための物品、水道光熱費、施設の賃料などの消費税を、各取引先に支払っています。
つまり、消費者が非課税になっている分、ほかの事業者であれば控除されるはずの消費税を、介護事業者がすべて負担しなければならないのです。
消費税が変わると介護報酬にも影響が?
先ほど、介護事業者は消費税を負担していると述べましたが、現行の制度では消費税の課税支出に応じて介護報酬に上乗せをするという形で、必ずしも完全ではないものの、その負担部分の手当てが行われています。
消費税の負担分を、介護報酬で補ってもらうというわけです。
実際、2014年に消費税が5%から8%に上がったときは、引き上げに伴う影響を補うことを目的に、プラス0.63%の介護報酬への上乗せ対応が実施されました。
既に、消費税は8%から10%に増税することが決定していますが、介護保険サービス・社会福祉サービスを提供する事業者の負担増を考慮したうえで、再び介護報酬の改定が行われると考えられます。
食事に軽減税率が適用される施設
軽減税率とは?
軽減税率とは、消費税率アップによってほとんどの物とサービスの値段が上昇する中、特定の商品に関して消費税率を低くとどめることです。
軽減税率の導入の目的は、低所得者へ経済的な配慮をするということになっています。
一気にすべての商品を消費税10%に上げてしまうと、買い控えが起こり、経済が停滞してしまうので、生活するうえで必要な食料品については消費税8%のままになります。
では、老人ホームの食事はどちらに分類されるでしょうか。次項で詳しく見ていきましょう
軽減税率の対象となる施設
軽減税率の対象となる施設は、「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」です。
有料老人ホームで提供される食事の飲食料品が軽減税率の対象になるには、定められた金額より安い料金にする必要があります。
軽減税率の対象となる飲食料金は、1食あたり640円以下(税抜)、1日あたり1,920円以下(税抜)という2つの限度額が設定されています。
有料老人ホームの軽減税率は、入居者に対して飲食料品を提供する場合に適用されます。
例えば、有料老人ホームが飲食料品の提供を事業者に委託していた場合、有料老人ホームと調理受託業者の取引については、標準税率である10%が適用されます。
なお、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、グループホームなどはもともと食費が非課税なので軽減税率の対象にはなりません。
こちらもあわせて覚えておくと良いでしょう。
適用される価格の条件は?
先述のとおり、有料老人ホームなどで提供される食事で軽減税率8%の対象になるのは「1食640円以下かつ1日の累計額が1,920円以下の飲食料品」です。
上のグラフを元に、軽減税率の8%が適応されるケースと適応されないケースを紹介しましょう。
食費のすべてが軽減税率8%の対象になるのは、朝食640円、昼食640円、夕食640円で合計1日1,920円となる例1の場合です。です。
例2は、800円の夕食が軽減税率の対象とならず、10%の消費税がかかります。
例3は、1日の累計額は1,920円以下ですが、夕食が640円を超えているため、消費税10%となります。
もし、3食とも600円なら、1日の累計額は同じく1,800円ですが、軽減税率の対象となる、消費税は8%で済みます。
例4は、逆に3食とも640円より高い値段設定がされているケースです。
この場合は、3食とも軽減税率の対象にはなりません。
ちなみに、間食としてのおやつも食費に含まれます。
間食は、「施設が間食を軽減税率の対象にするかどうかを、書面で定めている」ことで、計算方法が変わってきます。
食事の値段を三食まとめて「1日○○円」と決めてあるより、「朝食○○円(軽減税率)、昼食○○円(軽減税率)、おやつ○○円(標準税率)、夕食○○円(軽減税率)」と定めて書面にしてあると、わかりやすいですね。
入所前に食事の金額や軽減税率もあわせてチェックしましょう。
ちなみに、2019年10月1日からの消費税改定に伴い、軽減税率が介護の現場でどのような議論を呼んでいるかについては「第740回 介護現場は「軽減税率」で混乱必至!老人ホームの食事には一日1,920円の限度額がつく|ニッポンの介護学」をぜひご覧ください。わからない点は専門家に相談しよう
介護サービスには、消費税がかかるところと、かからないところが混在しています。
例えば、介護保険のサービスは消費税がかかりません。
しかし、福祉用具の利用や住宅改修費用など、消費税が課税される部分もあります。
消費税が課税されるか、されないかについては担当のケアマネージャーなどの専門家に相談や確認をしましょう。