【一覧表で比較】特養3種類の特徴
特養(特別養護老人ホーム)の種類は、以下の3種類に分かれます。
- 地域密着型特養
- 地域サポート型特養
- 広域型特養
広域型特養
広域型特養は、後述するほかの特養と違って、入所要件に居住地の制限がありません。
つまり、施設の所在地と現在の居住地が異なる場合でも申込みができます。
一般的な「特養」とは、この広域型特養を指し、ほかの特養のタイプと同様に、医師や看護師、介護支援専門員や機能訓練指導員などが必ず配置されています。
地域密着型特養
地域密着型特養は、定員が29人以下、原則として施設がある市区町村に居住している要介護3以上の方のみに利用が限定された施設です。
要介護1~2の方は特例を除き入居できません。
2006年の介護保険法改正により設置された地域密着型特養は、可能な限り入所者が自立した生活を送れるように少人数制をとっています。
地域密着型特養は、少人数なので家庭的で明るい雰囲気であること、入所者の居住地を限定して地域や家族との結びつきを重視していることが特徴です。
さらに地域密着型特養は、施設の規模や人員配置基準などが異なる「サテライト型」と「単独型」の2種類に分けられます。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
サテライト型
サテライト型とは、郊外に立地する大規模な施設から同等の、サービス体制を同一地区の街中に移管した特養のこと。
利用者が長年住んで慣れ親しんだ地域で生活する機会を提供する目的で設置されました。
サテライト型はさらなる普及を目指し、通常の特養で定められている人員配置基準や設備基準が緩和されているのが特徴です。
例えば、医師や生活相談員、介護支援専門員など、通常の特養で配置しなければならない人員を置く義務がない、調理室の代わりに簡易調理設備設置で良いなどといったことがあります。
単独型
運営が定員30名以上の本体施設によって運営されるサテライト型に対し、単独型の地域密着型特養には本体施設がありません。
本体施設のない定員29名以下の単独施設であるため、一般的な特養とは大きく異なり、小規模・少人数でアットホームな雰囲気が特徴です。
介護サービスや設備面、入所要件などは一般的な特養と同様ですが、リビングルームと個室を備えた「ユニット型」の施設がほとんどです。
なお、少人数単位で介護を受けられる点も単独型の特徴です。
小規模な施設ですが、単独型の場合はショートステイでの受け入れが可能なところや、小規模多機能型介護、デイサービスを併設していることが多く、さまざまな活用方法があります。
地域サポート型特養
地域サポート型特養とは、在宅介護生活を送る地域高齢者の方々ができる限り長く在宅での自立した生活を送れるように、生活援助員が24時間・年中無休で見守りや援助を行う特養です。
サービス内容は、生活援助員による日中時間帯の訪問のほか、夜間の看護師による相談や、緊急時の対応などがあります。
地域サポート型特養によるサービスを受けたいときは、あらかじめ施設との契約が必要です。
見守りについては、施設によって対象地域が決まっていることがあるため、現在の住まいが対象地域に入っているかどうかを事前に確認する必要があります。
施設の数は少ない
特養を含む地域サポート型施設の数は全国的に少なく、さらに推進をする自治体も少ないのが現状です。
比較的、地域サポート型施設の設置に取り組む兵庫県でも、施設数は2018〜2020年時点で71施設となっています。
今後さらに高齢化が進み、在宅介護者が増加すると考えると、24時間の見守り機能を提供する地域サポート型特養の需要はさらに増えると予想されます。
【おさらい】特養の特徴
ここまで特養の種類についてみてきましたが、そもそも特養とはどんな介護施設なのかをおさらいをしていきましょう。
特別養護老人ホームは、日常的に介護を必要とする高齢者が終身にわたって介護と生活援助サービスを受けられる施設です。
特養は有料老人ホームやサ高住に比べると利用料金が安いため、費用を抑えたい方の第一候補になることが多く、申し込みをしてもなかなか入居できない可能性があります。
待機者の数は地域差が大きく、待機期間は短くて1~2ヵ月、長くて数年ほど。
最近は看取りに対応できる特養も増えてきており、サービスの充実によってさらに待機者が増えていくことが予想されます。
続いて、特養の居室タイプを解説していきます。
特養の居室タイプごとの特徴
特養の居室には4つのタイプがあり、以下の特徴の違いがあります。
- 従来型個室
- 1人で1部屋を使用する居室。従来は単に「個室」と呼ばれてたが、ユニット型個室の登場により、従来型個室へと名称が変更された
- 多床室
- 1部屋に複数のベッドが置かれている居室。一般的に4人部屋になっていることが多く、生活空間が仕切られていないことで生じるプライバシーの問題などから、ユニット型個室に変更する施設が増加傾向にある
- ユニット型個室
- 1ユニット10人以下で、1人1部屋を使用し、生活空間が仕切られている。ダイニングや簡易キッチン、浴室、トイレなどは共有で、ユニットごとで専任の施設スタッフが担当する
- ユニット型個室的多床室
- 多床室を改装・分割して作られた個室。完全な個室かどうかは施設ごとに異なるため事前に確認が必要
なお、特養の居室は、どれも1人あたりの床面積が10.65㎡以上と定められています。
入居条件は「要介護3」以上
特養の入居条件は原則65歳以上で、要介護3以上の認定を受けた人です。要介護1・2は入居対象外となるため、注意しましょう。
さらに、感染症を持っている場合や、集団生活を過ごすことが困難だと判断された場合も、入居できないケースが多いです。
なお、40〜64歳の人で、がんや初老期における認知症など、16種の特定疾病による要介護認定3以上を受けていれば、入居できる場合があります。
【介護保険】特定疾病とは?16種類一覧と診断基準、覚え方(第2号被保険者も対象に)
費用は他の施設と比べて安い
特養は国や自治体が運営する公的施設で、助成金・補助金が出るため、費用を抑えた提供が可能です。
そのため、特養は入居一時金が不要で、月額利用料のみ必要となります。
月額利用料には日常生活での介護やリハビリ、レクリエーションなどが含まれますが、そのほとんどが介護保険適用となり、自己負担額が軽減されます。
費用の安さから非常に人気を集める施設で、入居までに時間がかかる場合もあります。
【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)
居室タイプで値段が変わる
特養の月額利用料は、居室タイプで料金が大きく変わり、食費や日常生活費に関しても内容次第で変動します。
参考までに、特養の部屋タイプによる賃料をまとめたのでご覧ください。
部屋のタイプ | 費用 |
---|---|
ユニット型個室 | 6万180円 |
ユニット型個室的多床室 | 6万180円 |
従来型個室 | 3万5,130円 |
多床室 | 2万5,650円 |
地域包括ケアシステムにおける「終の棲家」としての特養
2025年には、1947~49年に生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、介護や医療のさらなる需要増が予想されます。
高齢化が進むなか、住み慣れた地域でできる限り長く暮らしを続けられるように、厚生労働省が住まいや医療、介護、介護予防、生活支援などを一体として提供するために「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。
特養は、そのような地域包括ケアシステム中の「住まい」の一端を担っています。
そのため、施設介護だけにとどまらず、在宅介護を受けている要介護者向けに特養の介護サービスやノウハウを提供する地域サポート型特養が新たに登場したことにより、特養が地域での相談拠点、支援拠点としての役割を担うことも期待されています。
ユニット型特養(新型特養)とは
続いて、ユニット型特養について解説していきます。
従来の特養では、個室のみの従来型個室、または2名以上で利用する多床室(相部屋)が主流でした。
しかし、近年では1人1部屋を使用する個室と、1ユニット10人以下で利用するダイニングや簡易キッチン、トイレなどの共有スペースを併せた「ユニット型個室」を採用する特養が増えています。
このユニット型を採用している「新型特養」について解説していきます。
ユニット型特養(新型特養)ができた背景
従来の特養で多かった多床室は、利用者のプライバシーが守られないという大きな問題を抱えていました。
そもそも特養は、基本的に長期入所を目的としている施設なので、長期間にわたって他人と一緒の部屋で過ごすことによるストレスは大きいものでした。
このようなプライバシー問題解消が、ユニット型の新型特養が増えてきた背景です。
従来型と比べて費用がやや高め
新型特養は、プライバシーを守りながら介護を受けられること、少人数のユニット制で一人ひとりにきめ細やかな介護を提供されることが特徴です。
そのため、2人以上の大部屋で介護を提供していた従来型と比べて、費用は高くなります。
なお、 介護職員はユニットごとに固定されていて、毎日同じ職員による介護を受けることができます。
特養を検討している方におすすめの施設
人気のある特養は、希望者が多くなかなか入居できません。
早めの入居を希望する方は、施設数が多くサービスが充実している介護付きがおすすめです。
手厚いサービスを重視する方なら:介護付き有料老人ホーム
介護付きの魅力は施設数が多く、希望するサービス提供や設備などから、自分に適した施設を見つけ出せることです。
また、基本的に介護職員が24時間常駐して介護サービスを受けられますが、看護職員も24時間常駐する施設もあります。そのため、夜中にトラブルが起きた場合でも、すぐに対応できるので安心して過ごせます。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
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