親を施設に入れるタイミング
要介護度が上がるにつれ介護にかかる時間は増え、施設入居をするべきタイミングが訪れます。
事前に親を施設に入れるタイミングを知っておけば、スムーズに施設入居をすることができます。
もし、タイミングを逃すと、本人にとっても家族にとっても不幸な事態を招きかねません。
ぜひ、今のうちから家族同士で話し合う場を設けるようにしましょう。
希望条件に合う施設を探すすぐに入居を決断すべきタイミング
介護によるストレスや疲労の度合いは人によって異なりますが、以下のようなケースの場合はすぐに施設入居を決断しましょう。
- 四六時中、介護のことが頭を離れないとき
- 生きているのがつらく、希望が見えないとき
- 介護者の年齢が50~60代であるとき
これらが当てはまる状況の時にはすぐに入居を決断すべきタイミングです。
施設入居の決断を、あれこれ考え込んで先延ばしにしないことが、被介護者にとっても介護者にとっても大切です。
入居に向けて動き出すべきタイミング
施設に入居するといっても、介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホームなど、希望するサービスの内容や入居条件などによって選択肢はいくつも考えられます。
日々の介護に追われていると、サービスや入居条件について調べることさえも億劫になってしまい、いつの間にか状況がどんどん悪化しているというケースも珍しくありません。
入居に向けて早めに動き出すべきタイミングとして、以下の4つを目安にしましょう。
- なんとなく私生活がつらいとき
- 身体介護で腰が痛いとき
- 疲れが回復しないとき
- イライラや不安など、気持ちに余裕がなくなることが増えたとき
施設選びのタイミングでは、介護者の精神的・身体的余裕を軸にするのがポイントです。
入居を考え始めるタイミング
高齢になると、誰しも何らかの病気を抱えることが多く、歳を重ねるごとにその症状は進行していくものです。
また、年々体力が下降していくのは介護者も同じ。そのため、基本的に在宅介護の負担は少しずつ重くなっていきます。
「できるだけ在宅で介護したい」という家族も、次のような時期が来たら施設入居が考え始めてはいかがでしょうか。
- 日中も介護者が側にいないと危ないとき
- 介護の負担が最近特に増して、疲労が抜けにくいとき
- 認知症が進行してきて、将来が不安なとき
デイサービスなどをうまく利用していれば、まだ家族に余裕があるかもしれませんが、限界が訪れてから慌てるのではいざというときに困る可能性があります。余裕のある時期から動き始め、後悔しない施設選びをしましょう。
希望の地域から老人ホームを探す親を施設に入れる手順
親を施設に入れるタイミングがわかったところで、続いて親を施設に入れる手順について解説していきます。
1.施設を探す
施設への入居を決めたときは、まず施設探しからはじめましょう。
施設ごとに入居条件が決められているため、心身状態から施設を検索しましょう。
とくに要介護度や認知症の有無によって受け入れ対応が異なります。
また、本人や家族の希望、介護費用の予算などを含めた施設探しが大切です。
入所施設は種類や規模、数も多く、全国に点在しています。
担当のケアマネジャーやお住まいの地域包括支援センターをはじめ、オンラインで施設検索ができる「みんなの介護」をご利用ください。
みんなの介護から施設を探す希望条件をまとめておく
施設探しで大切なことは、「どのような施設に入居したいか」といった希望条件に沿って行うことです。
まず、本人の要介護状態や持病などで必要な介護サービスや医療的ケアをまとめるところから始めましょう。
とくに介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームといった民間の施設は施設数が多く、さまざまな設備やサービスを提供しています。
施設によっては娯楽設備が充実していて、シニアライフを満喫できる老人ホームもあります。
希望に合った施設と出会うためにも、予算や住みたい地域をまとめておきましょう。
認知症ケアを行う施設を選ぶポイント
入居先となる施設を選ぶ際、まず注目すべきなのは介護・医療体制です。
特に認知症が進行している場合、認知症の介護に理解のあるスタッフが十分に配置されていないと、質の高いケアは期待できません。また、入居する方が持病のある場合は、必要な医療サービスを受け続けられる施設を選択する必要があります。
2.資料請求をする
気になる施設を見つけたら、施設の公式ホームページや電話などを通して資料請求をしましょう。
施設から送られる資料には、施設の設備や料金プラン、サービスなどが詳しく記載されています。
外観や建物内の写真も掲載されているので、施設ごとの雰囲気がわかって施設探しの手助けになるでしょう。
また、施設によっては入居者の声を掲載していて、実際に入居している利用者の感想を読むことができます。
施設のおおよその特徴や雰囲気をつかむためにも、気になる施設があればぜひ資料請求をしてみてください。
3.見学
資料請求で届いた資料で良さそうな施設が見つかったら、積極的に見学をしていきましょう。
施設の雰囲気を実際に確かめるために、見学は重要なステップです。
見学日時を申し込んで当日訪れると、スタッフの案内付きで共有スペースや居室を一通り見て回ることができます。
その後、スタッフから施設の特徴や入居条件や入居までの流れの説明があります。
気になったこと、もっと詳しく知りたいことがあれば、気軽に質問することが大切です。
また、施設を見学した際はスタッフの教育体制について質問してみましょう。スタッフへの研修の頻度や内容の良し悪しによってサービスの質は変わってくるため、教育がしっかりと行われている施設を選ぶのが望ましいです。
見学の際はもし可能なら、入居者の表情も見ておきましょう。表情が穏やかな人が多ければ、毎日落ち着いた生活ができている良質な施設といえます。
4.契約~入居
入居する施設が決まったら、必要書類を準備しましょう。
その後、スタッフとの面談、入居審査といった流れで審査の結果を待ちます。
審査に通ったら、正式に入居決定です。
契約時に必要なものは、施設見学のときに説明があるので確認しておきましょう。
わからないことは、施設に問い合わせて不備のないように準備することが大切です。
このほか、入居後に必要な日用品も確認して、入居までに揃えておきましょう。
なお「みんなの介護入居相談センター」では、施設探しから施設見学の日程調整まで無料で行っています。是非ご利用ください。
親を施設に入れるメリット
施設入居を検討している人のなかには「施設に入れて本当に大丈夫なのか」「症状が悪化することもあるのかもしれない」と心配している方もいるかもしれません。
ここでは親を施設に入れるメリットについて解説していきます。
手厚いケアを受けることができる
施設に入居すると、介護のプロから日常生活全般で手厚いサポートが受けられます。
入所施設には介護福祉士や看護師をはじめ、さまざまな職種の介護職員や医療従事者が働いていて、チームで介護や医療に取り組んでいます。
質が高い介護を提供している施設なら、入居者本人も安心した生活を送ることができます。
家族以外からケアを受けることで、本人にとっても有意義な刺激につながるでしょう。
施設だからできる認知症ケア
施設での認知症ケアは、知識と経験を豊富に持つスタッフが生活を支えてくれます。
在宅介護では、ベテランスタッフほどのケアスキルを持つ方がいるケースは少ないでしょう。
施設であれば、症状の進行を防ぐための適切なケアや生活上のサポートを24時間体制で行ってくれます。
また、レクリエーションやイベントが充実していることも、在宅介護にはないメリットです。
レクリエーションは症状の進行を抑えたり、症状の改善につながる効果があるといわれています。
在宅介護の場合、デイサービスに行かないとできないことが、施設であれば居室の近くにある共有スペースで毎日実施されます。
希望条件に合う施設を探す介護者の負担が減る
外部の介護サービスを利用した場合でも、家族中心の介護は介護者の負担が大きいものです。
重度の介護状態の場合、24時間つきっきりで介護をしなければならない場合もあります。
仕事を辞めて介護をする「介護離職」のように、家族の生き方も変えてしまうのが介護の難しいポイントです。
そこで施設への入居が実現すれば、介護者である家族はプライベートな時間が確保できます。
身体的にも精神的にも大幅な負担が軽減することができます。
おすすめの施設
ここからはおすすめの施設とその施設の特徴を解説していきます。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、設備やサービスが充実しています。
施設によっては娯楽室やプール、スポーツジムなどがあったり、イベントやレクリエーションが盛んで入居者同士の交流が盛んなことが特徴です。
入居者は、自立や要支援など比較的、身体状況が元気な方が多くシニアライフを満喫できます。
介護サービスを利用する場合は、必要に応じて外部の介護事業者と個別で契約して利用します。
そのため、在宅介護で利用していた介護サービスを入居後もそのまま使えるので安心です。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、民間施設の代表的な老人ホームで、24時間体制の手厚い介護サービスを利用できます。
要介護度の軽い方から重い方、認知症の症状がある方も受け入れている施設も多いです。
なかには看取りまで対応していて「終の棲家」に選ぶ方も少なくありません。
病気や加齢によって要介護度が高くなっても、転居の心配をせず利用できます。
また、介護サービス費は月額利用料に含まれ、定額なので予算を立てやすいことも特徴です。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探すグループホーム
グループホームは、認知症の方を入居対象にしている入居施設です。
少人数のユニットで共同生活を送り、認知症ケアに精通したスタッフのサポートを受けながら、入居者の心身状態に合わせて家事を分担しています。
いわゆる「生活リハビリ」を中心に認知症の症状の進行緩和を目指していきます。
主な入居条件は、認知症と診断されていることのほか、要支援2以上の認定を受けていること、施設の所在地に住民票があることです。
住み慣れた地域を離れることなく、アットホームな雰囲気で認知症のケアが受けられます。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す施設入居を嫌がられたときの説得方法
家族が施設入居の話を出しただけで、嫌がる方も少なくありません。
もし施設への入居をうまく説得できない場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
介護が必要だと認めたくない場合
「自分はまだまだ元気」「他人の世話にはなりたくない」など、プライドを保つため介護が必要である事実を認めたくない方もいます。
また、老人ホームに否定的なイメージを持っている場合も多いようです。
こうした場合、まずは本人の気持ちをしっかりと聞いてあげましょう。
そして、相手を理解していきながら、医師やケアマネジャーに相談する、家族の愛情は変わらないことを伝える、といった方法も使いながら、丁寧に説得する姿勢が大切です。
自宅で暮らしたい場合
施設入居を嫌がるケースとして、「自宅を離れたくない」といった声は多く聞かれます。
とくに長年暮らしている自宅には家族の思い出が詰まっていて愛着があるため、ほかの環境へ移る必要性を感じないようです。
こうしたケースでは、まず老人ホームや介護サービスを実際に体験してもらうところからはじめましょう。
いきなりの施設入居はハードルが高いため、定期的にショートステイの利用からはじめてみる、見学や体験入居をして雰囲気をわかってもらうといった方法があります。
また、施設によっては同じ施設内にデイサービスやショートステイを併設しているところもあります。
施設の入居者が定期的にデイサービスなどを利用しているケースも多いので、デイサービスの利用を通してまずは入居者との仲を深めてもらうのもおすすめです。
みんなの老人ホーム入居事例
被介護者の60歳女性Aさん「何をやるかわからない状態になってしまった」
認知症が進み、片時も目が離せない状態になってしまったというAさん。
もともと本人は施設に入るつもりがなく、家族もそのつもりで在宅介護を続けてきましたが、少し目を離した際に怪我をしてしまいました。
幸い怪我はなく大事には至りませんでしたが、家族も限界を感じ、本格的に老人ホーム探しを始めました。Aさんは頑として首を縦に振らなかったそうですが、ケアマネジャーも協力して説得。
本人が気に入りそうな施設をいくつか回ってようやく入居が決まりました。
在宅介護中はいつ何をするかわからない状態だったため、食事をつくるのも、掃除をするのもままならなかったそうですが、現在は家族にプライベートな時間ができて、心に余裕が生まれたそうです。
介護者の65歳女性Bさん「両親2人の介護は限界があった」
義理の両親の介護を長年続けてきたというBさん。
主治医から「お義父さんはレビー小体型なので在宅の方が良いが、お義母さんだけでも入居を」と提案されて施設探しを始めたそうです。
いろいろと見て回ってもなかなかお義母さんに合いそうな施設を見つけられなかったようですが、有料老人ホームの体験入居を思い切って申し込んでみました。
すると、意外とすんなり入居が決まったそうです。
「限界が来るまで」と覚悟を決めていた2人同時の介護ですが、主治医のアドバイスが後押しになったとか。
今はお義父さんの介護だけに集中できるので、心身ともに楽になったそうです。
老人ホームに入居させることに罪悪感を持つ必要はない
在宅介護の場合はどうしても家族への負担が重くなってしまい、仕事との両立がうまくいかず、介護離職を余儀なくされることもあります。
状況を良くするためにしたはずの介護離職が引き金となり、双方の人生を不幸にしてしまっていることもあるのが現実です
無理をせず、ときには「できる範囲でやれば良い」と気持ちを切り替えることも大切です。
もし、在宅から施設へと切り替えることにあたって、「見捨ててしまった」という罪悪感から抜け出せないという場合は、1人で抱え込まずに、ケアマネジャーや施設職員に相談することをおすすめします。
介護を受ける本人の状態なども踏まえながら、施設介護に切り替えたメリットをわかりやすく説明してくれるはずです。
介護をプロにまかせることはけっして悪いことではありません。きっと双方にとって良い未来が待っています。
親を施設に入れた後に家族ができること
在宅介護から施設介護へと切り替えたからといって、当然ながらすべてを丸投げするのはよくありません。
より質の高い介護を行うために、家族と施設で協力する意識を持つことが大切です。
面会は週に1回が目安
老人ホームへの入居後も、定期的に面会に訪れましょう。
親との心のつながりを維持するためには、実際に顔を見て話すことがとても大切です。
面会を通して、家族のぬくもりを折に触れて感じることができるので、本人も安心して施設での生活を送ることができます。
最近はオンラインで面会できる施設もあるので、施設に確認しておきましょう。
Q. 老人ホームへの面会頻度はどれくらいが良い?面会時の6つのポイントを解説
身体状況を把握しておく
普段から身体状況を確認しておくことが大切です。
もし身体状況に変化があった場合は、すぐにケアマネジャーに確認しましょう。
加齢や病気のため、高齢になるほど心身状態の変化が起きやすく、要介護度の見直しが必要になる場合もあります。
要介護度によっては介護保険の支給限度額や利用できる介護サービスが変わってくるケースも多い点を覚えておいてください。
ほかにも、施設の対応で不安な点や不満な点があれば施設側にきちんと伝えるようにしましょう。
「みんなの介護入居相談センター」では、老人ホーム入居に関する相談を受け付けています。是非お気軽にご利用ください。