認知症とは
認知症とは、脳の病気・障害などの原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態を指します。病名ではなく、特有の症状や状態を総称する言葉です。
認知症の症状とは
認知症の初期症状は「もの忘れ」や「理解力・判断力の低下」などです。
加齢によるもの忘れは自覚症状があるのに対して、認知症はもの忘れへの自覚症状がなくなります。
認知症は完治させることは難しいため、早期発見が重要といわれています。
健常と認知症の間の状態である「軽度認知障害」の段階で早期治療をすることにより、症状が改善することがあります。
早期発見は周りの人が異変に気づくことが大切です。周りの人が注意して見守るようにしましょう。
認知症の初期症状チェックリスト
ここでは、アメリカのアルツハイマー病協会が公表している「認知症の初期症状のチェックリスト」を紹介します。
思い当たる症状があった方は、認知症の診断を受けることをおすすめします。
カテゴリ | 項目 | 影響が 出ている |
日常生活に | 支障があるどのくらい前から | 起きているか
---|---|---|---|---|
記憶力・ | 精神力の問題新しい情報を覚えるのが難しく、 | 最近の出来事や人の名前を忘れてしまう|||
適切な言葉を探すのに苦労する | ||||
距離を判断するのが難しかったり、 | 他の物と見間違うことがある||||
判断に迷ったり、不注意な判断や | 危険な判断をする||||
時間や日付がわからなくなる | ||||
同じ質問・フレーズを繰り返す | ||||
いつもと違う場所に物を置く | ||||
日常生活上の | 活動の問題請求書の支払いや、計画を立てること、 | 買い物などに苦労している|||
十分な睡眠がとれない | ||||
見慣れた場所で迷子になる | ||||
気分・ 行動障害 |
動揺しやすい、イライラしやすい、 | 攻撃的になりやすい|||
悲観、絶望といったうつの兆候がみられる | ||||
心配や不安などの症状がある | ||||
今まで楽しめていたことが | 楽しめなくなった||||
不適切な行動や | 常識外の行動をとるようになった||||
落ち着きがなく歩き回ることがある |
「認知症」と「加齢によるもの忘れ」の違い
認知症でも、もの忘れの症状がみられますが、加齢によるもの忘れが体験の一部だけを忘れるのに対して、認知症によるもの忘れは体験全体を忘れるという特徴があります。
例えば、加齢によるもの忘れは「昨日食べた夕食のおかずを忘れる」という状態で、認知症のもの忘れは「夕食を食べたこと自体を思い出せなくなる」状態です。
中核症状と周辺症状に分けられる
認知症を発症することで現れる症状には、「中核症状」と、「周辺症状(行動・心理症状)」の2種類があります。
中核症状とは、記憶障害や見当識障害(時間や場所が分からなくなる)など、脳の働きが低下することで現れる症状を指します。
そして周辺症状(行動・心理症状)とは、生活環境や本人の気質、体験などが影響して現れる症状のことをいいます。そのため、表れる症状には個人差があります。
認知症の症状はどう進行する?
認知症の初期症状として、脳内の細胞がダメージを受けることなどが原因で記憶力が低下したり、簡単な計算ができなくなったりする中核症状が現れます。
進行すると、日常生活を単独で送ることが難しくなります。
日常生活で今までできていたことが突然できなくなってしまうため、認知症に気づくというケースも少なくありません。
その症状が進行していくと、多くの場合で周辺症状が現れます。
周辺症状には、本人のライフスタイルや人間関係などが複雑に絡み合うため、症状の現れ方は本当にさまざま。
介護者としても、ケアの方法はそれぞれ、ということになります。
さらに進行して重度の状態になると、身体に障害が現れることもあります。
例えば、いくつか種類がある認知症のなかでもレビー小体型認知症の場合、パーキンソン病に似た症状が出ることがあり、筋肉がこわばって歩行困難になるといったことが起こるようになります。
認知症の症状の進行段階
ここでは、ニューヨーク大学のバリー・ライスバーグ博士が考案したアルツハイマー病の7段階を紹介します。
段階1:認知機能の障害なし(通常の機能)
段階1は、認知機能に問題がありません。専門家や医師の問診を受けても問題がみられません。
段階2:非常に軽度の認知機能の低下
段階2は加齢の影響による変化やアルツハイマー病の最初期の兆候の段階です。
この段階では、若干のもの忘れの症状がでてきます。慣れているはずの言葉や名前が出てこなかったり、物の置き場所などを忘れてしまいます。
しかし、診断や、周りの家族からみてもはっきりとわからない場合が多いです。
段階3:軽度の認知機能の低下
段階3は軽度の認知機能の低下の段階です。
この段階になると、一部の人が初期段階のアルツハイマー病と診断されます。周りの家族や友人も、変化に気付くようになります。
診断でも、記憶や集中力における部分で計測が可能になります。一般的には以下の症状がみられます。
- 家族や友人が、言葉や名前が思い出せないのに気づく
- 新しく知り合いになった人の名前を覚えられなくなる
- 家族、友人、あるいは同僚が、社会的あるいは職場における任務遂行能力の低下に気づく
- 文章を読んでもほとんど覚えることができない
- 価値のある物品を失くしたり、置き忘れる
- 計画を立てたり整理することが難しくなる
段階4:中等度の認知機能の低下
段階4は軽度あるいは初期段階のアルツハイマー病の段階です。
この段階になると、明かな障害が発見されます。主な症状は以下の通りです。
- 最近の出来事についての知識の低下
- 難しい暗算(例:100から7ずつ引いていく)を解くのが難しくなる
- 複雑な作業(友人を招いての夕食の計画、清算、支払いの管理など)の実行能力が低下する
- 自身の生い立ちについて記憶が薄くなる
- 社交的な場や精神的に困難な状況になると、引っ込み思案になる
段階5:やや重度の認知機能の低下
段階5は軽度あるいは中等度あるいは中期段階のアルツハイマー病の段階です。
この段階になると、記憶障害や認知障害がみられ、日常生活においてサポートが必要です。主な症状は以下になります。
- 問診で、現住所、電話番号、卒業した大学や高校名といった情報を思い出せない
- 場所、日付、曜日、季節などが混乱する
- より簡単な暗算を解くことが困難である(例:20から3ずつ引く、あるいは50から5ずつ引くなど)
- 季節や状況に合わせた服装を選ぶのが難しい
- 通常時には自分自身についての知識や、近親者の名前は覚えている
- 通常時は食事やトイレの際に手助けを必要としない
段階6:重度の認知機能の低下
段階6は、やや重度あるいは中期段階のアルツハイマー病の段階です。
この段階になると、記憶障害が進行し、人格が変わったり、日常生活で大幅な助けを必要とするようになります。主な症状は以下になります。
- 最近の経験や出来事、周囲の環境についてほぼ認識できない
- 自分の生い立ちは完全に思い出せないが、通常時は自分の名前は覚えている
- 配偶者や主要な介護者の名前を時々忘れるが、通常時は知り合いと知らない人の顔を見分けることができる
- 着替えに介助が必要で、介護なしでは、日中用の洋服の上に寝巻きを重ねたり、靴を誤って履くことがある
- 通常の睡眠や起床サイクルが乱れることがある
- トイレの使用に手助けが必要(用を足した後に水を流す、ティッシュの適切な使用など)
- 尿失禁や弁失禁の頻度が増える
- 性格が大きく変化し、疑心や妄想(例:介護者を泥棒だと信じ込む)、幻覚(現実にはない物/音を見たり聞いたりする)、気を揉んだり、ティッシュペーパーを引きちぎるなどの強迫的または反復的な行動などの行動的症状が表れる
- 徘徊によって迷子になることが多くなる
段階7:非常に重度な認知機能の低下
段階7は重度あるいは後期段階のアルツハイマー病の段階です。
この段階になると、アルツハイマー病の最終段階になります。
この段階になると、環境に反応したり会話をしたり、最後には体の動きを制御する力を失います。しかし、単語や文章は口にすることもあります。
なお、食事やトイレを含んだ全ての日常生活の動作に介護が必要になります。ほほ笑むことや、介護なしで座ったり、頭を正面に向けたままにすることもできなくなる場合もあります。
ほかにも異常な反射反応をとったり、筋肉が硬直したりし、嚥下にも障害が出ます。
認知症の中核症状
認知症の中核症状について解説していきます。
中核症状とは
認知症によって引き起こされる中核症状とは、脳が受けたダメージによる直接的な症状ともいえます。
そのため、ダメージを受けた部位とダメージの強さによって、症状の現れ方と強さが異なってきます。
例えば、食事について、スーパーでハムを見つけて、自宅にある卵を使ってハムエッグを作ろうと考えたとします。
健康な人では、ハムだけを買って帰りますが、認知症の人では自宅に卵があることすら忘れているため、卵もよけいに買ってしまいます。
また、帰宅して袋を開けると、なぜハムを買ってきたのかも忘れてしまうことも。
ほかにも、セールスマンの口車に乗って高価な買い物をしてしまうなど、日常生活でさまざまな弊害が出るようになります。
中核症状の種類
主な中核症状の種類は以下の通りです。
- 記憶障害
- 物事を記憶する力が低下し、特に、最近の出来事について覚えていられなくなる
- 見当識障害
- 見当識(いつ・どこ)が低下し、日時がわからなくなったり、迷子になったりする
- 実行機能障害
- 段取りよく行動するための実行機能が低下し、計画を立てたり、手順を考えたりすることができなくなる
- 理解・判断能力障害
- 理解・判断能力が低下し、寒いときに厚着するなど、暑くても冷房をつけることを思いつけないなど、場に応じた臨機応変な対応ができなくなる
- 計算能力障害
- 計算能力が低下し、簡単な計算ができなくなり、買い物ができなくなったりする
さらに詳しく以下の項目で解説していきます。
記憶障害
記憶障害は、脳内で記憶を司る部位と言われる「海馬」が萎縮することで起こる症状です。
海馬は、脳に記憶を貯め込む役割を担っており、萎縮することで新しい情報を詰め込むことが困難になります。
つまり、今まで貯めてきた記憶はそのままで、新しい情報を貯められなくなるため、直近の出来事を覚えておくことができなくなるのです。
また、記憶障害が進行すると、古い記憶も失われていく場合があります。
見当識障害
見当識とは、「いつ」「どこ」などの基本的な状況把握を指します。
そこに障害が出るということは、今現在の時間や日時、居場所について理解できなくなるということになります。
最初にわからなくなるのが時間の感覚。
予定していたことができなくなったり、待ち合わせの時間を覚えていられなくなったりと、直近の時間の感覚が薄れていきます。
次いで日時、季節についての感覚が低下していき、今日が何日なのかがわからなくなったり、季節に応じた話題に対応できなくなったり、はたまた冬場に半袖を着るなど服装もわからなくなったりします。
さらに「どこ」がわからなくなると、外出したまま迷子になって、自宅に帰ってこられなくなるケースも珍しくありません。
また、自宅や施設の中でも迷うなど、距離感や広さに関係なく、自分の居場所について理解できなくなります。
実行機能障害
私たちは日常生活を送るうえで、物事の手順を踏んで実行に移しています。
例えば、料理をするときには材料を切り、焼き、盛り付けをする、といったように、計画的に順序よく行っているのです。
しかし、認知症になると計画性をもって実行に移すことが難しくなることがあり、その状態を実行機能障害と呼びます。
また、通常の場合では予定外の事態が発生しても、それに合わせて適宜、計画を変更することができるのですが、実行機能障害になると臨機応変に対応することが難しくなります。
理解・判断能力障害
認知症になると、実行機能と同様に、理解・判断能力も低下します。
理解・判断能力とは、わかりやすく言うと「考えるスピードが遅くなる」「同時に2つ以上の物事を考えられなくなる」「些細な変化に対応できなくなる」ということです。
理解・判断能力が下がると、詐欺などに気付けず騙されてしまうこともあるので注意しましょう。
計算能力障害
認知症かどうかを診断する「長谷川式簡易知能評価スケール」と呼ばれるテストに、「100から順に7を引いていってください」というものがあります。
健康な人なら、「93、86、79…」と答えられますが、認知症になるとそれができなくなります。
失認・失行・失語
失認は、目に見える対象を認識できない状態です。
そして失行は、手足の麻痺がないのにもかかわらず、簡単な日常生活の動作ができなくなります。例として、ペットボトルのふたを開けられないなどが当てはまります。
失語は、言葉を忘れたり言葉の理解が難しくなったりします。また、自分の思っていることを言葉で表現することも難しくなります。
認知症の中核症状の詳細は以下の記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
認知症の周辺症状(行動・心理症状)
続いて、認知症の周辺症状について解説していきます。
認知症の周辺症状(行動・心理症状)とは
認知症になると、中核症状に本人のそれまでのライフスタイルや人間関係などの要素が絡まって、さまざまな症状が現れるようになります。
これが、周辺症状です。
周辺症状(行動・心理症状)の種類
認知症による周辺症状の例を以下にまとめました。
- 徘徊
- 記憶障害や見当識障害により症状が出る
- 不安・焦り
- 失敗や周囲への迷惑を気にして出現する
- うつ
- ふさぎ込むなど、うつ病のような症状が出る
- 暴言・暴力
- 不安や戸惑い、記憶力の低下によってストレスが溜まって暴言を発したり、暴力を振るったりする
- 睡眠障害
- 環境の変化への対応が難しくなり、昼夜逆転などによって睡眠障害が起こる
- 幻視・幻聴
- 現実にない人や物が見えたり、また会話が聞こえたりする
さらに詳しく、以下で解説していきます。
徘徊
徘徊は、目的を持たずにただ歩き続けているわけではありません。
認知症の方は、目的を持って外出したものの、道が分からなくなったり途中で目的を忘れてしまい、歩き続けてしまうことがあります。
足取りがしっかりしていたり、電車やバスを使う方もいるため、周りの人が気づかないことも少なくありません。
ただ、徘徊によって行方不明になってしまう方も年間1万5千人以上もいるため、家族が適切な対応をすることが大切です。
うつ
認知症となり、それまでできていなかったことができなくなると、誰でも落ち込むものです。
そのことに悲観してばかりいると、やがてうつ状態になってしまいます。
典型的な事例としては、ふさぎ込み、閉じこもりがちになるというもの。
認知症に対する不安や戸惑いといった感情が増大することによる、顕著な事例と言えるでしょう。
暴力や暴言
認知症の周辺症状のひとつに、暴言と暴力があります。
その原因は大きくわけて2つ。
ひとつは、記憶力の低下です。実は認知症の人は、以前に言われたことは忘れている場合が多いのですが、自分にとって嫌なことや不快なことは覚えているケースが多くあります。
例えば、介護者が毎日のように注意すると、「うるさく言われる」というストレスだけは記憶に残っていることも。
そのイライラが臨界点に達すると、「うるさい!」という暴言や暴力に発展してしまうことがあるのです。
もうひとつは、うつと同じく不安や戸惑いです。
これは、自立心やプライドが強い人にみられがちな症状で、その思いが強ければ強いほど、「できなくなってしまった自分」に腹が立ち、自分の中でその気持ちを処理できずに周囲にあたってしまうのです。
幻視・幻聴
幻視や幻聴が表れる原因は、脳の後ろ側にある視覚を司る後頭葉がダメージを受けることと関係していると考えられています。
そのため、介護者は本人の苦しみに対して充分な理解が必要ですし、場合によっては薬物療法によって症状を抑制するのがベターな対策となります。
認知症の種類のなかでも、レビー小体型認知症の方に表れやすい症状です。
不潔行為
不潔行為は、下着やおむつに自分の手を入れて便を触ったり取り出したりする弄便、尿を撒き散らしたりしてしまう行為などを指します。
不潔行為の原因は、排泄の行動が上手くできないためです。認知症にみられる排泄の行動は、トイレの場所がわからなくなる、失禁を繰り返す、排泄行為そのものがわからないなどです。
そのような行動が見られた場合、自分でトイレに行くことが困難となるため、介護者が付き添いをしてトイレに誘導するのが大切です。
妄想(物盗られ妄想や嫉妬妄想)
妄想の多くは、本人が被害を受けたと思い込む被害妄想です。
原因は認知機能の低下や症状に対する苦しみ、疎外感、自尊心を傷つけられた悲しみなど、さまざまな感情が複雑に合わさり、妄想が現れます。
その妄想を引き起こすきっかけとなるのが、家族など周りの人の発言だと研究結果で明らかにされています。
訴えられた側は嫌な気持ちになりますが、本人にとって被害妄想は真実であるため悪意はなく、気持ちをぶつけているだけなのです。
認知症の周辺症状の詳細は以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
認知症の種類別の症状
続いて認知症の種類別に特徴的な症状を解説していきます。
アルツハイマー型認知症の症状
アルツハイマー型認知症の初期症状には記憶障害が見られ、もの忘れや新しいことを覚えられなくなるという特徴があります。
その他に判断力の低下、今日の日付がわからないなどの見当識障害、失認・失語・失行などの中核症状、徘徊や妄想、うつなどの周辺症状(BPSD)などが表れることがあります。
中期になれば金銭管理ができないなど、記憶障害が進行し、末期は、記憶障害が目立ちにくくなり、意欲の低下から物事への関心がなくなります。
レビー小体型認知症の症状
レビー小体型認知症の症状の特徴として、神経細胞に障害が起こることから、幻視があります。
幻視とは見えないものが見える症状であり、もの忘れの症状がほとんどないレビー小体型認知症は幻視のことを覚えているため、そこからパニック状態に陥ってしまう場合もあります。
その他の症状は嗅覚の低下、睡眠中に大声で叫んだり暴れたりする睡眠時の異常行動などです。
また、手足の震えや筋肉のこわばりなどのパーキンソン症状も見られます。
血管性認知症の症状
血管性認知症の症状は、計画通りに行動することが難しい実行機能障害、もの忘れ、意欲低下などが見られますが、判断力は保たれているのが特徴です。
さらに、原因である脳梗塞や脳出血にあるような歩行障害、言語障害、嚥下障害なども出る場合があります。
なお、血管性認知症は、突然症状が出たり落ち着いたりするのを繰り返します。この作業はできるが、それ以外は何もできない「まだら認知」も血管性認知症の特徴です。
前頭側頭型認知症(ピック病を含む)の症状
前頭側頭型認知症はもの忘れよりも、人格や行動の変化が目立つのが特徴的です。また、抑制が効かなくなり暴言や暴力など感情的になる傾向にあります。
その他にも同じことを繰り返す、万引きや身だしなみを気にしなくなるなどの社会性の欠如、言葉の意味を理解できなくなる、言語が話せなくなるなどの症状も見られます。
前頭側頭型認知症が進行すると、精神状態は不安定になったり寝たきりになってしまう可能性があります。
認知症の症状に合わせて老人ホームの入居も検討する
在宅介護中に、認知症の症状が悪化すると介護者の負担は増え、介護者自身が倒れてしまうこともあります。
そのため、限界を超える前に、老人ホームの入居を検討しておきましょう。以下では、おすすめの老人ホームを紹介していきます。
グループホーム
認知症に特化した施設であるグループホームは、認知症の方が安心して過ごせるよう少人数制で共同生活を過ごします。
住民票がある地域の方が入居対象のため、住み慣れた地域で生活し続けることができます。
さらに、認知症に効果的なリハビリやレクリエーションも多く行われており、認知症の症状を緩和することが期待できます。
スタッフは認知症の対応だけでなく精神的なケアも可能なので、本人も家族も安心して任せられます。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す住宅型有料老人ホーム
住宅有料老人ホームは、入居者が必要な分だけ介護サービスを利用できます。そのため、在宅介護で使用していたサービスも施設内で引き続き利用できるため、安心した生活を過ごせます。
看護職員の配置義務はありませんが、外部の訪問看護を利用することで、看護ケアが受けられます。
また、レクリエーションやイベントが豊富であり、認知症の進行を緩やかにすることが期待できます。
住宅型は他の施設と比べて施設数が多いため、ライフスタイルや予算、サービス内容に合わせた施設選びができます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、毎月介護度に応じて定額で介護サービスが受けられます。そのため、多くの介護サービスを利用する人も、料金は一律のため安心してサービスを利用できます。
その他に介護付きは24時間体制でスタッフが常駐しており、食事や排泄、入浴などの介護サービスを受けられます。
さらに施設によっては、入居中に認知症が悪化しても施設を変える必要がなく、看取りまで対応してくれるところもあります。
寝たきりや看取りにも対応する施設も多くあるため、介護度が重くなっても安心できる介護サービスを受けたい人におすすめです。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す認知症介護のポイント
最後に、認知症の方を介護するうえで重要なポイントを解説していきます。
認知症を理解することから始める
認知症の人と接するうえで大切なのは、まず、「認知症の人が形成している世界を理解する」ということです。
認知症を発症して悪化すると、直前に起こったことを忘れてしまうほか、今いる場所や親しい人の顔を思い出せなくなってきます。
「もし自分がそのような状態になったら…」ということを想像し、認知症の人が直面している大変さや苦しさに配慮することが大事です。
また、なるべく生活環境に変化を与えないようにし、生活習慣を認知症の人にリズムを合わせることが求められます。
さらに、本人のプライドを傷つけないようにし、話している内容を否定するようなことはせず、周辺症状として現れてくる行動や態度に対して叱るようなことは控えるようにしましょう。
認知症の人の話に共感し、傾聴する姿勢で対応することを心がけてくださいね。
無理をしないことが大切
介護をするうえで大切なのは、負担を一人で抱え込まずに、周囲の助けを借りること。
家族介護者は認知症介護の専門家ではないわけですから、一人で対応しきれないことが起こるのは、むしろ当然です。
同居しているほかの家族や親せきなどに積極的に相談しましょう。
また、介護サービスを上手に活用することも重要です。
例えばショートステイを利用すれば介護者は一時的にでも介護から解放され、休養をとることができます。
ほかにも「訪問」と「通い」、「宿泊」のサービスをひとつの事業所が行う「小規模多機能型居宅介護」も、介護者の負担を軽減できる介護サービスです。
さらに、社会の中にあるさまざまな相談窓口を活用することも大事です。
地域包括支援センターや保険センター、あるいは在宅介護支援センターでは、介護に関する相談を常時受け付けています。
他の人はこちらも質問
認知症の初期症状は何ですか?
認知症の初期段階によく見られる症状は、もの忘れと激しい感情の起伏です。
もの忘れは誰でも起こるようなもの忘れではなく、直前の会話を記憶できなくなったり、同じ会話を何度も繰り返したりします。感情の起伏は急に怒り出したり、急に黙り込んだりします。
認知症の始まりはどんな感じ?
認知症はまず、直近の出来事を覚えられなくなる記憶障害、簡単な計算ができなくなる計算能力障害などが出ます。
進行すると、時間や場所がわからない見当識障害、抑うつ、睡眠障害などが見られます。
認知症が進行するとどうなる?
認知症が末期まで進行すると、今までできていたテレビのリモコン操作などの行動ができなくなります。
身体機能も著しく低下し、無気力となって寝たきりになり、常時介護を必要とするケースも少なくありません。
認知症は何歳が多い?
認知症を発症する多くは65歳以上です。
アルツハイマー型認知症は原因となる物質が、発症の約20年前から蓄積されると言われています。70代で発症した場合、50代から原因の物質が溜まり出しているのです。また40代〜50代の若い世代が発症する若年性認知症の割合も高くなっています。