ユニット型特養とは
ユニット型特養とは、個別ケア(利用者一人ひとりの個性や生活のリズムを尊重したケア)を実現するための手法である「ユニットケア」を行っている特養のことです。
特別養護老人ホームは老人福祉法における名称で、2000年度から施行されている介護保険法では「介護老人福祉施設」が正式名称とされています。
しかし、一般的には特別養護老人ホーム、略して「特養」と呼ばれることが多くなっています。
ユニットケアの発祥は福祉先進国であるスウェーデンで、日本でも2001年度以降、その整備が推進されてきました。
厚生労働省は2025年度の特養入所定員数の70%以上をユニット型にすることを目標としており、平成29年度では、全特養の43.6%(定員数)を占めています。
少人数ごとのユニットケアを行う
ユニット型特養は、在宅に近い居住環境で、利用者一人ひとりの個性や生活のリズムに沿い、他人との人間関係を築きながら日常生活を営めるように介護を行うことが特徴です。
そのため、10名前後の少人数グループごとに、個性や生活のリズムを保つための個室と、ほかの利用者や地域との関係を築くためのリビングやパブリックスペースを1つの「ユニット」としています。
在宅に近い居住環境で、利用者一人ひとりの個性や生活のリズムに沿い、他人との人間関係を築きながら日常生活を営めるように職員がケアを提供してくれます。
小規模な居住空間において、家庭的な雰囲気の中でケアを行うため、認知症高齢者にも有効です。
特養には、ユニット型以外に従来型の多床室や個室などもありますから、ユニットケアが自分に合うかどうか、ショートステイを利用して確認してみるのもよいでしょう。
従来型との違いは全室個室であること
特別養護老人ホームには、主に「従来型」と「ユニット型」の2つのタイプがあります。
2つの最も大きな違いは、従来型は4人部屋が主流である一方、ユニット型は全室個室となっているという点です。
従来型とユニット型の違いについて以下の表にまとめました。
ユニット型 | 従来型 | |
---|---|---|
入所者の | 介護度要介護3以上 | |
居室構成 | 個室 | 多床室が中心 |
介護 | サービス費793円※ | 712円※ |
介護職員の | シフト体制ユニット単位 | 施設全体 |
なお、厚生労働省が2018年9月に出した通知により、ユニット型個室タイプの特養の居室面積がそれまでの13.2㎡から、従来型の個室と同様の10.65㎡へと見直されています。
ユニット型は、プライバシーも確保された居室で生活できるため、従来型と比べて費用はやや高めです。
従来型個室とは
それでは以下で従来型とユニット型の個室を、イラストでみてみましょう。
従来型は4人部屋が主流であり、上記のような間取りとなっています。
ユニット型個室とは
従来型に対して、ユニット型は全室個室で上記のような間取りとなります。
ユニット型特養の入居条件
ユニット型特養の入居条件は従来型と変わらず、以下の3つです。
- 要介護3以上の65歳以上の方で、感染症などの医療的処置を必要としない方
- 特定疾病が認められた方で、要介護3以上で40歳~64歳までの方
- 特例による入居が求められた要介護1~2の方。
- 認知症により、日常生活に支障が生じるような症状や行動、意思疎通の難しさなどが頻繁にみられる場合。
- 知的障害、精神障害などにより、日常生活に支障が生じるような症状や行動、意思疎通の難しさなどが頻繁にみられる場合。
- 家族による重大な虐待が疑われ、心身の安全と安心の確保が難しい場合。
- 単身世帯、もしくは同居の家族が高齢もしくは病弱であるため、家族などからの支援が望めず、かつ地域で提供されている介護サービス、生活支援の量が不十分である場合。
待機者が多く入居まで待つこともある
ユニット型特養も従来型と同じように、条件に適していても入居まで時間がかかることが多いです。
厚生労働省の発表によると、2019年4月時点で特養の待機者数は約29万人。そのうち、自宅で介護を受けている人は約11万人、病院などほかの施設で特養入居待ちの人は約17万人です。
ユニット型特養の人員配置基準
厚生労働省が指定している特養の人員配置基準では、看護職員もしくは介護職員を入所者3人に対して最低1人(常勤の場合)配置することが求められています。
以下は、特別養護老人ホームにおける主な人員配置基準です。
配置基準 | 専従or兼務 | |
---|---|---|
管理者 | 1人※1 | 専従。 | 管理上支障がなければ、 条件に基づき兼務可能。
医師 | 必要数 | - |
介護職員・ | 看護職員入居者との比率が | 3:1以上。専従。 | 入所者への対応に支障がなければ、 条件により兼務可能。 従来型・ユニット型を併設する場合は 専従。
生活相談員 | 入居者との比率が | 100:1以上。※1|
機能訓練指導員 | 1人以上 | 同じ施設内の他の職務と兼務可能。 |
ケアマネージャー | 1人以上 | 専従。 | 入居者への対応に支障がなければ、 同じ施設の他の職務と兼務可能。
栄養士 | 1人以上※2 | - |
ユニットリーダー | ユニットごと | - |
従来型と違う人員配置基準
ユニット型特養の場合、従来型の特養の人員配置に加えて、以下の基準が設けられています。
- 昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員または看護職員を配置
- 夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員を配置
- ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
従来型と異なる点は、ユニット型特養には専任スタッフが必ず1人以上配置されていることです。そのため質を下げることなく、1人ひとりに適した介護サービスの提供ができます。
ユニット型特養のサービス
ユニット型特養のサービス内容は基本的に従来型の特養と変わりなく、生活支援や介護、医療ケアを提供しています。
従来型の特養のサービス内容について、一般的なサービス内容を紹介します。
- 居室の提供
- 食事介助や入浴介助、排泄介助などの日常生活支援
- 認知症行動・心理症状緊急対応
- 機能訓練指導(リハビリ)
- 医師や看護師による健康管理
- 退去時や退去後の訪問相談
- 理容・美容サービスの提供
以下でユニット型特養のサービスについて詳しく解説していきます。
リハビリ
ユニット型特養でも従来型と同様、リハビリが行われています。レクリエーションを通じてリハビリを行う施設が多く、楽しみながらリハビリに励みます。
食事や着替えなどの動作を自力でしてもらう、日常生活の中にあるリハビリを取り入れた施設もあります。自力での動作が難しいときは、職員が支援をします。
さらに、作業療法士や理学療法士による本格的なリハビリを実施する施設もあるため、施設見学で確認しておきましょう。
日常生活の支援
ユニット型特養の、居室や共有スペースの清掃は、施設の職員または外部委託した業者が担当します。
洗濯についても施設にお願いできますが、クリーニングは別途クリーニング費が発生するので注意が必要です。
1人で買い物に行くことが難しい入居者のために、職員による買い物代行を実施。また、移動販売をする事業もあり、取り入れる施設が増えています。自分の手で取って実際に確かめる、買い物の醍醐味を味わえるとして人気が集まっています。
健康管理
ユニット型特養には看護職員も常駐しています。そのため毎日の血圧、体温、脈拍を測定し、健康管理をします。必要な方に対して胃ろうや吸引などの医療行為も実施するので、医療を必要とする方も安心です。
理容・美容サービス
施設によって異なりますが、理容・美容サービスを提供している施設もあります。外部の事業に依頼して行うので、資格を所持した専門のスタッフが対応をします。
中には介護の資格を併せ持つスタッフもおり、入居者のニーズに沿ったサービスが行われます。ヘアカットはもちろんですが、カラーの対応もする事業もあります。
サービスは施設によってさまざま。有料老人ホームは民間の施設のため、入居者が充実した生活を送れるようにさまざまなサービスを提供しています。 希望の条件に合わせた施設は以下からお探しいただけます。
ユニット型特養の費用
ユニット型特養は全室個室になるため、従来型と比べると費用は高い傾向にあります。以下でユニット型の費用について詳しく紹介していきます。
入居一時金は0円
ユニット型特養の入居一時金は不要です。特別養護老人ホームと同じ、社会福祉施設や自治体が運営する公的施設なため、初期費用はかかりません。
月額利用料の費用内訳
費用の内訳は従来型とほとんど変わりません。ユニット型特養の費用の内訳を詳しくみていきましょう。
介護サービス費
介護サービス費は、介護を受けるために必要な費用です。
居室のタイプや要介護度によりますが、個室で要介護度が高いほど費用も上がります。
食費
ユニット型特養での食費は1日3食分かかります。昼間に外出をして施設で食事をしなかったとしても、3食分の費用がかかるため注意しましょう。
外泊や入院などで、長期的に食事が不要な場合、事前に施設に伝えていれば食費を停止できます。
その他の費用
その他の費用として、電気代や水道代がかかります。完全個室のユニット型の方が従来型よりも料金は少し高めです。
また歯ブラシや石鹸などの日常生活費、被服費、嗜好品の費用なども必要となります。
ユニット型特養のメリット・デメリット
ユニット型の費用についてわかったところで、続いてユニット型特養に入居するメリット・デメリットについて解説していきます。
メリット
個別ケアが実現できる
ユニット型特養のメリットのひとつが、個別ケアが実現できることです。
少人数ユニットごとの介護のため、一人ひとりの要望が通りやすく、それぞれに合ったケアがなされるといえます。また、スタッフが固定されているため、信頼関係が築きやすい傾向にあります。
さらに、同じユニット内の利用者との関係についても同様で、そのことが快適な暮らしにつながります。
細やかな個別ケアや人間関係の構築しやすさは、ユニット型ならではと言えるでしょう。
ほかの利用者とコミュニケーションが取りやすい
ユニット型特養の入居前に「個室での生活は寂しくないのか」と不安に思われるかもしれませんが、きちんとフォローがされている点がユニット型特養の特徴です。
ユニットごとに、それぞれの部屋に隣接して共有のリビングスペースが作られており、ほかの利用者とのコミュニケーションの取りやすいです。
日々ユニット単位で生活し、親しい人間関係を築けているからこそ、共有スペースに集まりやすく、寂しさを覚えることが少なくなります。
入居者が活動的になる
ユニット型特養の特徴として、入居者が活動的になるという特徴があります。
京都大学の外山義教授が、ある特養を6人部屋の従来型からユニット型へ建て替えた際に利用者に現れた変化を調査しました。
その結果、以下のような変化が見られました。
建て替え前 | 建て替え後 | |
---|---|---|
ベッド上の滞在率 | 67.7% | 40.2% |
リビングの滞在率 | 16.7% | 42.8% |
日中に占める睡眠時間 | 42.3% | 22.5% |
日中に占める食事時間 | 7.6% | 11.3% |
1人あたり食事量 | 1463Kcal | 1580Kcal |
介護スタッフにも変化がある
以下の調査では、従来型から特養へ施設を建て替えたことによる介護スタッフの変化を表しています。
建て替え前 | 建て替え後 | |
---|---|---|
居室の滞在率 | 39.2% | 18.0% |
廊下の滞在率 | 9.2% | 4.9% |
リビングの滞在率 | 9.4% | 37.5% |
直接介助の時間 | 46.2% | 33.1% |
余暇・交流の時間 | 20.3% | 24.1% |
デメリット
従来型と比べて利用料が高くなる
ユニット型はメリットばかりではありません。暮らしやすさは従来型に優りますが、それは費用の高さと比例するのです。
従来型の多床室の場合、月額利用料は約9万円ですが、ユニット型では約12万円。個室のため、居住費が高くなります。
ユニット型特養を検討している方におすすめの施設
介護付き有料老人ホーム
ユニット型特養は人気の施設のため、入居まで数年待つこともあります。そのため、早めに入居を希望している方は、ほかの施設も検討してみてはいかがでしょうか。介護付き有料老人ホームは、手厚い介護サービスや医療サービスを受けることができるため人気の施設です。
費用は要介護度別に定額
介護付き有料老人ホームは民間施設なため、入居一時金は施設ごとで違います。中には入居一時金0円の施設もあるので、初期費用を抑えたい方におすすめです。
介護サービス費は要介護度別に毎月一定で、介護度が低いほど負担は少なく済みます。定額なので、事前に費用の把握もできます。
ユニット型特養と比べて、レクリエーションやイベントが盛んに行われており、設備も充実しています。
充実した介護・医療サービスを受けることができる
介護付きは24時間の介護サービスを受けられます。
介護サービスは介護を必要な方に合わせた、食事や入浴、排泄、着替えなどです。また掃除や洗濯などの日常生活サポート、本人不在中の居室管理、買い物代行などの生活支援もあります。
ユニット型特養に関するQ&A
1ユニットは何人?
新型特養(ユニット型特養)は1ユニット10人程度から成り立ち、一人ひとりの生活リズムに合わせながら、家庭的な環境で過ごします。
入居者や職員が変わることもほとんどなく、馴染んだ方と生活していきます。
ユニット型特養は何人?
ユニット型特養は1ユニット10人前後です。
入居者3人に対して、介護職員や看護職員1人以上の配置が決められています。昼間は1ユニットごとに常勤1人以上の介護職員または看護職員、夜間は2ユニットごとに介護職員または看護職員の配置基準が設けられています。
特養は何型?
特養は従来型とユニット型の2つに分けられます。従来型は4人部屋を主流としており、入居者の人数は1フロア30人〜40人ほどです。ユニット型は全室個室で、入居者の人数は1ユニット10人前後の少人数制となっています。
特養って何ですか?
特別養護老人ホーム(特養)とは、常時介護を必要とした在宅の生活が難しい高齢者が入居して、24時間の介護サービスを提供する施設です。食事や排泄、入浴などの介助からリハビリ、レクリエーションなどと幅広いサービスを展開しています。