みんなの介護アンケート
【アンケート結果】ストレスの解消方法トップ3
休む時間の少ない在宅介護に、ストレスを感じる家族は少なくありません。介護ストレスは一般的なストレスと同様に「介護うつ」といった状態に発展するおそれがあります。
また「家族崩壊」といった事態を招く可能性もあります。そうならないためにも、適度にストレスを解消することが大切です。
では実際に介護者の多くはどのように日々のストレスを発散しているのでしょうか?
みんなの介護が、介護者を対象に実施した「在宅介護ストレスの解消」に関するアンケート結果を例に見ていきましょう。
1. 食べること
ストレス発散方法最も多かったものが「食べること」でした。好きなものを食べると、気持ちが楽になる場合があります。以下はストレスを和らげる効果があるとされる栄養素や食材の一例です。
- カルシウム、ビタミン類、タンパク質
- チョコレート、ガム
- 緑黄色野菜、魚介類
上記のほかにも、トマトやきのこ類などに含まれる抗ストレス効果のあるGABAもおすすめです。
ただし、過食・自己嘔吐には注意しましょう。
2. 友人と話す
次に多かったストレス発散方法は「友人と話すこと」でした。友人と悩みを共有したり、苦労した思い出を話したりすると「イライラや不安が吹き飛んでスッキリした」といった経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
人と話すことは脳の活性化につながり、ストレス解消や軽減につながります。
多くの人は会話をするとき、頭のなかで事柄を整理しながら話します。その結果、イライラの原因や解決方法、ストレスの感じ方などを客観的に捉えることができます。
3. 音楽を聴く
音楽はリラックス効果があり、ストレス解消に音楽を聴く人は多くいます。
自分の好きな音楽を聴くだけでも気持ちは楽になりますが、今の気分や感情に合わせて音楽ジャンルを選ぶこともおすすめです。
イライラを発散したいときは、激しい曲がおすすめです。一方、気分が沈んでいるときはクラシックなどのゆったりした曲が良いでしょう。
少しずつアップテンポな曲や元気な曲に切り替えると、気持ちも明るくなりストレスを解消できます。
家族の介護をする際のストレス解消方法
自宅で簡単にできる介護ストレスの解消法を紹介しました。
この項目からはアンケート結果には挙がらなかったものの、介護ストレスの解消・軽減に効果的な方法3つを解説します。
- 高齢者支援サービス
- 専門家への相談窓口
- 介護スキルの習得
介護サービスを利用して介護負担を減らしたり、専門家からアドバイスをもらったりするなど、必要に応じた方法で活用しましょう。
高齢者支援サービスの活用する
高齢者支援サービスを用いることで、在宅介護の負担を大きく軽減できます。
例えば、認知症介護で多く見られる「薬の拒否」「飲み忘れ」は介護者にとってストレスを感じやすい出来事の一つです。
そういったときは「訪問薬剤管理指導サービス」や「服薬ボックス」、「お薬カレンダー」などを利用することで、ストレス原因を少なくすることができます。
そのほかに、身体的負担がある入浴介助などは「訪問入浴介護サービス」を利用しましょう。身体的疲労を和らげるだけでなく、サービスを利用している間に介護者は休息を取ることができます。
以下でどのようなサービスがあるのか見ていきましょう。
介護保険サービス
介護保険で利用できるサービスとしては主に以下の7つがあります。
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
- 居宅介護支援
- 介護保険施設
- 介護予防サービス
- 地域密着型介護予防サービス
- 介護予防支援
このうち冒頭で紹介した「訪問入浴介護サービス」は居宅サービスに該当します。
また、介護の小休憩(レスパイトケア)として活用したいのが「ショートステイ」です。一時的に要介護者を介護施設に入居させることができます。
そのほかの介護サービスについて興味がある方は以下の記事で詳しく解説しています。あわせて確認してみてください。
介護保険外サービス
介護保険外サービスとは、名称からもわかる通り介護保険の適用外のサービスです。そのため、かかった費用は全額を自己負担で賄います。
介護保険サービスと違い、要介護認定を受けていない方でも利用できる点が大きなメリットと言えるでしょう。
また、「入院中の世話」「認知症の方の見守り」といったサービスの幅広さも魅力です。
自治体独自の介護サービス
介護保険サービスとは別に、自治体独自の高齢者支援サービスを提供しているケースとして以下があります。
- 配食サービス
- 有償家事援助
- 送迎・移送サービス
- 火災報知器の給付
- 緊急通報システムの貸与
- 紙おむつ助成
「紙おむつ助成」は多くの自治体で実施されており、利用することで経済的負担を軽減できます。
また、自治体によっては認知症高齢者見守りサービスや徘徊高齢者緊急ネットワークなど、認知症介護に絞ったサービスを提供しているところもあります。
専門家への相談窓口を活用する
在宅介護をするにあたって大切なことは一人で抱え込まないことです。専門家や同じ悩みを抱える人とのつながりを持つようにしましょう。
例えば、現在の介護状況を理解するもっとも身近な存在のケアマネージャーに相談したり、地域包括支援センターや各自治体の高齢者福祉課を訪ねたりするのも良いでしょう。同じ悩みを抱える人たちが集まる「介護家族の会」への参加も検討しましょう。
認知症介護なら一番の相談相手は主治医です。心身の状況を最も理解してくれる専門家に悩みを聞いたうえで、適切なアドバイスをしてくれます。
以下でそれぞれの概要を解説していますので、参考にしてみてください。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは介護や福祉など全般を相談できる総合窓口です。高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるように、専門職員が様々な相談に応じます。
例えば、紙おむつの支給・助成、高額介護サービス費、高額医療費などの費用緩和制度の相談ができます。
相談だけでなく、介護保険の申請窓口としての対応も可能です。
【相談事例あり】地域包括支援センターとは?4つの役割と利用対象者などをわかりやすく解説
ケアマネージャー
要介護者の状況によって、利用すべき介護保険サービスも変わってきます。
そのため、ケアプランはケアマネージャーにお願いして定期的に見直してもらいましょう。
ケアプランは要介護者だけでなく、介護者のために作成するものです。ストレス状況に応じて、レスパイトケアを取り入れるなど、介護者自身の負担軽減を目的にするのも大切です。
主治医
病気や怪我のことを主治医に相談した場合、介護方法や介護サービスの見直しが適用されることがあります。
また、主治医はケアマネージャーと連携を取っています。定期的に主治医と面談を実施し、介護・医療の情報を集めてケアプラン作成に加えます。
そのため、病気以外にも日常生活で困っていることがあれば、主治医に相談してケアマネージャーに伝えてもらいましょう。主治医の意見が介護サービスに反映される可能性もあります。
介護者の会
在宅介護は孤立しやすく、ストレスが溜まっても吐き出せる場所が見つけにくいです。
そのようなときは、介護者の会に参加してみましょう。介護者の会は家族を介護している方が集まり、お互いの悩みや体験談などを語り合う場です。
介護ストレス解消のアドバイスをもらえるため、気持ちが落ち着くでしょう。
また、自治会などにもできるだけ参加しましょう。認知症による徘徊があった際に助けてくれます。
介護の専門知識を身につける
介護者自身が介護の知識や技術を身につけることで、ストレスを減らすことができます。
入浴介助や排泄介助、おむつ交換などは要介護者にとってもストレスを感じる出来事の一つです。
そのため、スムーズに行うことができれば要介護者との関係が良くなり、介護全般がうまくいきやすくなるでしょう。
ご家族向けの介護セミナーや介護教室の情報は各自治体が把握しています。ホームページで案内していることもあるのでチェックしてみましょう。
家族を悩ませる介護ストレスの原因
介護疲れは介護者であれば、誰でもが感じやすいものです。特に在宅で自ら介護をしている方は人一倍疲れを感じやすいでしょう。
少しでもストレスを和らげるためにも、自身が感じている「ストレスの原因」を把握することが大切です。以下でどれが自分にとって負担に感じているのかをチェックしていきましょう。
精神的な疲れ
在宅介護は一日の大半を介護に費やすため、介護者は自分の時間を取りにくい状態にあります。
また、一緒に介護する家族や介護スタッフとの関係性がうまく築けず、一人で悩みを抱え込むこともあるでしょう。
要介護者との関係は、良かれと思ってしたことが伝わらずにイライラしたり怒ったりするなど、自己嫌悪に陥るケースも多く見られます。
身体的な疲れ
在宅介護は1日に何度も要介護者を持ち上げたり支えたりするため、身体的負担は計り知れません。
身体的介護のほかに、毎日の散歩や通院の付き添いなどもあり、休む暇がなく疲労は蓄積されます。
さらに、夜中のおむつ交換やトイレ介助などがあると、介護する家族は十分な睡眠時間を確保できません。毎日同じことを繰り返すので、介護者の身体的なストレスは溜まる一方と言えます。
経済的な疲れ
訪問介護や通所介護などは介護保険を適用することで、サービスの利用にかかった費用を軽減できます。しかし、紙おむつや介護食品などの介護用品は原則自己負担となるため、費用の負担が大きいです。
さらに介護を理由に時短勤務に切り替えた場合、その分収入の減少にもつながります。こうした経済的な負担を感じながら生活することは、介護者にとってストレスに直結するでしょう。
認知症介護の疲れ
認知症介護は介護のなかで、最も心身の疲れを感じやすくなります。
進行具合によっては、何度も徘徊したり失禁したりする場合があり、そのたびに対応しなければいけません。さらには暴言や暴力といった症状も見られます。
また、生活リズムが安定しないことが多く、夜中に活動して外に出るケースも見られます。
こうした認知症の方の行動一つひとつに付き合うと、介護者は疲れ果ててしまいます。
認知症の方を理解する
認知症介護は先が見えないため、家族が抱えるストレスや不安は通常の介護よりも大きくなります。
ここでは認知症と診断されてから、家族が介護に前向きになれるまでの4つの心理的ステップを紹介します。
- 第1段階
- はじめは、家族が認知症と診断されると誰もが戸惑い、「そんなはずはない」と否定しようとします。
認知症に関するさまざまな情報を集め、それでも否定することができないほど症状が進むと、次の段階に進みます。 - 第2段階
- 次々と現れる症状に混乱し、さらに変化する本人に対して怒りを覚える時期です。
周囲の声に耳を傾けず、自分一人で抱え込もうとして社会的なつながりを拒絶します。
相談できる相手や介護家族会などとつながり、介護に前向きになれると、次の段階に移ります。 - 第3段階
- 介護の負担はあるものの、認知症でも割り切って受け入れられるようになる時期です。
発症した本人や認知症そのものを受け入れ、ともに生きていこうとします。認知症になっても大切な家族だと感じ、今の状況を肯定できるようになれば次の段階に移行します。 - 第4段階
- 認知症になった本人はもとより、介護をしている自分自身を受け入れ、認知症そのものを受容する段階です。
認知症介護をしたからこそ出会えた人たちや、そのつながりに感謝し、いつか自分もなるかもしれないという思いに至り、今の状況を貴重な経験だと受け止めます。
介護ストレスが原因で起こる問題
介護ストレスを溜め込み続けると、様々なトラブルが起きる場合があります。この項目では介護ストレスの原因により起きやすい問題を紹介します。
介護うつ
在宅介護によるストレスから「介護うつ」になる方が少なくありません。
厚生労働省(2005年調べ)によると、介護者の4人に1人はうつ状態であるという調査報告もあります。
食欲不振や睡眠障害をはじめ、激しく動いたわけでもないのに倦怠感があったり、原因不明の焦燥感や苛立ちに襲われるなどの症状がみられます。
このような症状が一日中、さらに2週間以上続くと介護うつである可能性が高くなります。
また、「心の不調」は第三者からは分かりづらいものですが、介護者の口数が減ったり、悲観的なことばかり口走るようになったりしているときは要注意です。
メンタルクリニックなどへの受診も心身の健康を保つためには必要です。
介護うつになりやすい人の特徴
介護うつになりやすいのは、まじめな人だと言われています。まじめで几帳面な人ほど介護に対してひたむきに取り組み、すべてを完璧にこなそうとするからです。
理想的な介護を行うために自分の気持ちを押し殺し、自分のことよりも介護を優先してしまうことが多くなります。
そのため、大きなストレスを抱えてしまいます。また、まじめな人ほど他人に頼ることをせず、すべて自分でやろうとします。
少しくらい疲れを感じたり、体調が悪くなっても誰かに任せることなく介護を続け、結果的に自分自身を追い詰めてしまいます。
介護が長引けば長引くほど介護者の心に疲労が蓄積し、精神的な支障をきたして介護うつになってしまいます。
要介護者への虐待
介護ストレスが原因で要介護者に虐待する場合があります。在宅介護では、介護ストレスや介護うつが原因で虐待になったケースも多く見られます。
こうした背景には、一生懸命やっても誰にも認められない辛さ・イライラなど、介護者のストレスがあります。
介護者のストレスを減らすために、専門機関や身近な人に相談することが大切です。
介護ストレスの予防方法
介護ストレスを予防するためには、日頃からストレスを抱え込まないことが大切です。この項目では、介護ストレスを予防するための方法を5つ紹介します。
頑張りすぎない
家族の介護はやって当たり前という意識を持ち、毎日頑張ってしまう場合があります。
しかし、その頑張りを認められる機会は多くありません。介護者は周囲の理解を得られずに孤立したりイライラしたりし、ストレスを溜め込みやすくなります。
ストレスを溜め込む前に、家族や外部の介護サービスを利用して負担を減らしましょう。
自分の時間をつくる
時には介護から離れて自分の時間をつくりましょう。趣味に時間を使ったり美味しいものを食べたりするなど、好きなことをしながら過ごすとストレスが軽減できます。
また香水などのリフレッシュできる香りを嗅ぐのも方法の一つです。
自分の時間をつくるときは、介護する部屋から離れた場所で過ごすことが大切です。
睡眠時間を確保する
夜中も介護が必要だと、十分な睡眠時間の確保が難しくなります。さらに、認知症の方だと昼夜逆転し、夜中は活動的になる場合もあります。
睡眠不足は、イライラしたり疲れやすくなったりするなどの心身の不調が出てきます。
家族に介護を交代してもらったり介護サービスを利用したりするなど、短時間でも良質な睡眠を取りましょう。
一時的に介護から離れる
要介護者や家族、介護スタッフにイライラしたときは、その場から一旦離れましょう。
同じ部屋にいたままだと、いつまでもイライラは解消されません。物理的に離れることで、イライラした気持ちを落ち着かせることができます。
しかし、離れるときは部屋にいる人に声をかけましょう。一声なく離れると、周囲から誤解を生じるかもしれません。
自分にあったリフレッシュ方法を決める
趣味や好きなことなど、自分のリフレッシュ方法を決めておくと、精神的ストレスを和らげることができます。
例えばテレビを観る、香りの良いものを嗅ぐ、好きな曲を聴く、美味しいものを食べる、思い出の写真を振り返るなどです。
準備に時間がかからず、すぐに楽しめる趣味や好きなことを用意しておくのがおすすめです。
介護施設への入居も考える
施設に入居することで、介護ストレスや負担を大きく軽減できます。働く職員は専門知識・技術があるので、安心して任せられます。
施設には運営母体によって公的施設と民間施設があります。公的施設は費用を抑えられ、民間施設は充実したサービスを受けられます。
施設ごとに料金や設備・サービス内容は異なるため、希望する条件によりピッタリな施設を探しましょう。
希望条件にあう老人ホームを探す【身体状況別】おすすめの有料老人ホーム
この項目ではストレスに感じている原因に応じて、どのような施設が向いているのかを解説します。
ぜひ施設選びの参考にしてみましょう。
要介護度が高い場合は「介護付き」
介護付き有料老人ホームは24時間介護職員が常駐し、排泄や入浴などの介助サービスを受けられる施設です。
さらに日中は看護職員の常駐、医療機関と連携する施設もあり、持病を抱えている方も安心して入居できます。
入居条件は介護の軽い方から最も重い要介護5まで幅広く受け入れ、認知症の方や看取りにも対応する施設もあります。
介護負担が大きい方や医療ケアを必要としている方におすすめの施設と言えるでしょう。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す日常生活の一部で介護を必要とする場合は「住宅型」
住宅型は食事の提供や掃除、見守りサービスなどの生活支援を受けられる施設です。
施設で介護サービスの提供はなく、外部のサービスを利用します。必要な介護サービスを自分で選び利用できるので、利用頻度が少ない方は費用を抑えられます。
また、イベントやレクが充実しており、他の入居者とコミュニケーションを取りやすいです。
遠距離介護をしている方や、介護に協力してくれる人が居ない場合におすすめの施設です。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す自宅と同じような生活を送りたい場合は「サ高住」
サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住という)はバリアフリー環境が整っている賃貸住宅です。
要介護度の低い方や自立している方を対象としています。そのため介護認定を受けていない方も入居でき、早期入居を検討する方におすすめです。
サ高住の特徴は自由度が高いことです。有料老人ホームは外出する際に事前申請が必要ですが、サ高住は申請不要で好きなときに外出できます。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す認知症ケアが必要な場合は「グループホーム」
グループホームは認知症の方を対象とし、他の入居者と小人数での共同生活を送ります。
家事の役割分担やコミュニケーションを取るなど、共同生活を通して自立した生活を目指します。
また、グループホームで実施するレクは認知症に効果的な音楽療法、脳トレなどです。認知症の進行を緩やかにしたり、身体機能を向上させたりするなどの効果が期待できます。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す限界を感じはじめたらできるだけ早く相談する
「家族の介護はするものだから」と無理をしてはいけません。一人ですべてを背負い、ストレスから介護うつや高齢者虐待につながる場合があります。
限界を感じる前に、周囲に相談することが大切です。相談できる人がいないときは、地域包括支援センターや市町村の相談窓口などを活用しましょう。場合によっては、施設入居を検討するのも手段です。
介護者が在宅介護をするうえで、充実感を見出せる環境を整えましょう。