親が施設に入りたくない場合の対応方法
親に施設に入りたくないと言われたときの対応方法を解説していきます。
老人ホームに入居する際は、本人と家族の双方ともに納得していることが大事です。
親の話をしっかり聴く
話を聞く側が自分の価値観に基づいて話の内容を判断し、評価をするような態度を取ると「話しても理解してくれない」と考え心を閉ざすようになってしまいます。
本人の話を聞く場合、まずは自分の態度を見直すことから始めましょう。その態度によって、本人の正直な気持ちや言葉を引き出せるかどうかが決まります。
アメリカの心理学者であるE.H.ポーターは、「話を聴くうえでの5つの態度」をまとめています。
- 評価的態度
- 相手の発言に対して、善と悪、正しいか正しくないか、適切か不適切か、有効か無効かなどの判断を示す。
- 解釈的態度
- 相手の発言に対して、教えたり知らせたりする。
- 調査的態度
- 相手の人についてもっと知識や情報を知りたいといった対応をする。
- 支持的態度
- 相手に「大丈夫ですよ。」と保証したり、「あなただけではない。」と慰めたりして、相手の不安を和らげて落ち着かせてあげようとする。
- 理解的態度
- 相手の言葉や感情をありのままに受け取り、正しく理解しようと、相手に寄り添い「受容」と「共感」をしようとする。
E.H.ポーターの態度類型でいえば、相手の言葉をありのまま受け入れ、寄り添おうとする「理解的態度」を取ることが大事になってきます。
なぜ施設へ入りたくないか原因を探ることが大切です。
医師やケアマネージャーに相談する
自分だけでは老人ホームへの入居を本人に納得してもらえそうにない場合は、医師やケアマネージャーに相談してみましょう。
専門家に口添えしてもらうことで話の説得力が増し、状況が改善することがあります。
なお、相談相手は専門家でなくてもかまいません。友人などに協力してもらい、第三者の立場から意見を言ってもらうことも有効です。
体験入居をしてみる
体験入居やショートステイを利用し、少しずつ慣れてもらうのも方法の一つです。
いきなり施設を利用することが大変なら、まずは見学からでも構いません。見学でどのような場所なのかを見てもらっておけば、体験入居などもしやすくなるでしょう。
ショートステイ可能な施設を探す家族の愛情を伝える
老人ホームに入居することは家族から見捨てられることと同じと思い込み、強い不安感や寂しさを感じて入居を拒むケースがあります。
そのような誤解を解くには、介護が必要な状態であることを納得してもらうあるいは自宅以外にも居場所をつくろうと諭すなどの対応方法が考えられます。
また、老人ホームに入居後であってもいつでも会えることを伝え、家族の愛情が続くことを理解してもらいましょう。
それでも納得してくれないときは
老人ホーム入居は双方が納得するのが一番ですが、それでも納得してくれないときは家族自身が入居しても良いと思えるような施設を見つけるのも一つの手です。
もし良い施設があれば、納得させられなかった経緯を施設に相談してみましょう。
施設のスタッフは介護の大変さを理解し、入居する方の気持ちに寄り添って環境変化のストレスに一緒に向き合ってくれます。
みんなの介護では施設の口コミや評判を掲載しています。ぜひ施設探しの参考にしてみてください。
口コミ・評判ありの施設を探す親が施設入居を拒む理由
施設入居を拒む理由は人によってさまざまです。
ここでは、入居を拒む理由別にどのような対応をすれば良いか解説していきます。
介護は家族でやるべきという思いがある
老人ホームに入りたくない理由はさまざまですが、「介護は家族が行うべき」とする従来型の価値観で入居を拒否していることもあります。
現在日本政府は、高齢者を社会全体で包括的にケアしようとする考えを推し進めているため、介護は家族が行うべきという考えは今の時代にそぐわないといえます。
しかし、そのような価値観を持つ人にとっては老人ホームで家族以外に介護されることに抵抗感を感じているかもしれません。
在宅介護と施設介護の割合
重度の要介護度の方を中心に、老後は老人ホームに入居するという選択肢も一般的になってきましたが、まだまだ在宅介護の数が多いのが現状です。
2017年時点での厚生労働省のデータによると、介護保険サービスを利用している方のうち、在宅介護の数が343万人なのに対して、施設介護の数が137万人とまだまだ差があります。
近年では、施設入居の需要が増えてきた影響で、病院と連携していたり、温泉や図書館が設置されていたりとさまざまなサービスを提供している施設が増えています。
今後はさらに施設介護の割合は増えていくと予想できます。
見捨てられるという思いがある
「一度施設に入居すると、そのまま家族に見捨てられるのではないか」といった不安から施設入居を拒否している場合もあります。
その場合はまず、親の気持ちに心を配りながら、施設でプロの手厚い介護を受けることが本人にとってもベストの選択だと伝え、納得してもらうことが大切です。
自宅を離れたくない
自宅を離れたくないというのは、老人ホームへの入居拒否の理由として多いです。住み慣れた自宅に愛着を持ち、離れたくないと思う気持ちは、誰しも理解できるでしょう。
このような場合、老人ホームという新しい環境を知ってもらうことが重要になってきます。
例えば、老人ホームによってはショートステイなども行われているため、これを利用することで施設内の雰囲気を体感できるでしょう。
また、普段食べている食事の試食会や、レクリエーションへの体験参加を行っている場合もあるので、「同年代の人がいて楽しいから」と伝えて利用を勧めてみるのも一つの方法です。
自宅での介護を希望しているのは約4割
介護が必要となった場合、介護を受けたい場所として「自宅」を挙げる人の割合は約4割に上ります。
高齢者にとって自宅は長年住み慣れた場所です。加齢による心身機能の低下などもあるため、高齢になってから生活環境を大きく変えることに抵抗を感じる人は多いと考えられます。
最期を自宅で迎えたいと回答したのは半数以上
厚生労働省が作成した「平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」によると、自宅で最期を迎えたい理由として「住み慣れた場所で最後まで過ごしたい」「最後まで自分らしく生きたい」といった意見が多いようです。
かつては病院で看取られるのが一般的でしたが、現在では終末期も含めて自宅で過ごせる環境が整いつつあり、そのことも自宅で最期を迎えたいと考える人が増える要因になっていると考えられます。
住み慣れた自宅で人生の最期まで暮らしたいという思いで、老人ホームへの入居を嫌がるケースは多く見られます。
楽しい思い出に囲まれながら、人生の終わりを迎えたい方にとって、自宅を離れることは抵抗があるでしょう。
介護が必要だと認めたくない
本当は生活上の支援や見守りが必要な状態であるのに、それを認めると自尊心が傷つくため、その状態を認められないという方もいます。
特に認知症の方に多く、「自分は認知症など発症していない」「介護など必要ないのに、家族が勝手に手伝っている」とご本人が主張するケースは珍しくありません。
こうした介護が必要な自分の状態を受容できない場合、老人ホームへの入居を拒否することが多いです。
受容とは、自分の今の状態をありのまま認めることを指します。自らの心身状態を受容しないことによって、自尊心を保とうとしているわけです。
自尊心を傷つけないように今の状況を理解してもらうことが大切です。
老人ホームに否定的なイメージがある
老人ホームに対して否定的なイメージを固定観念として持つ人も少なくはありません。
入居後は集団生活を強いられる、自由がない、行動範囲が狭くなるなどのイメージを持ち、それが理由で入居を拒もうとするケースもあります。
しかし現在の特別養護老人ホームでは、入居者全員に個室が与えられ、共同生活の中で個別ケアを実施していく「ユニットケア」の導入が進められています。
有料老人ホームだと全室個室で、ホテルのような明るく開放的な雰囲気を持つ施設もたくさんあります。老人ホームに対して悪い先入観がある場合は、施設の紹介ページを見たり、実際に施設見学に行ってみたりと、現在の姿を伝えてあげることが大切です。
無理やり入居させるリスク
無理やり親を施設に入居させてしまうと、急な環境の変化によるストレスで心身状態が悪化する恐れがあります。
一時的な落ち込みやうつ状態など精神面での影響はもちろん、認知症の方は特に症状が進行する可能性もあるので注意が必要です。
また、親子間の信頼関係にひびが入る心配もあります。
家族介護が難しい段階になっていると、親の気持ちを考えるより施設入居させることに目がいってしまうこともあります。
親の人生をより良いものにするためにも、丁寧な説明を通して納得したうえで入居してもらうことが大切です。
希望の条件から施設を探す在宅から施設への入居事例
老人ホームへの入居をためらう人は多くいます。その一方で、ためらっていた人が施設に入ることになったケースも多いです。
入居拒否から入居まで至った具体例を紹介します。
老老介護が3年続いた後に老人ホームへ
要介護者の年齢 | 85歳 |
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介護者の年齢 | 63歳 |
介護期間 | 3年 |
状態 | 要介護度が上がりつつあり、離床時間が減少 |
要介護者は85歳(父)で、介護者が63歳(息子)のケースです。
地方在住で、介護者は定年退職してからすぐに父親の介護を始めました。施設入居の決め手となったのは、「要介護度が上がったこと」と「介護者の負担が増えたため」です。
最初のうちは「自宅が良い」と言っていた要介護者も、介護者の負担が増えて悩んでいる様子を見るうちに、施設への入居を決めたそうです。
自宅にこだわった父親が認知症になって入居を決意
要介護者の年齢 | 72歳 |
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介護者の年齢 | 49歳 |
介護期間 | 2年 |
状態 | 認知症が進行し、介護者の顔も分からなくなっている |
要介護者が72歳(父)、介護者は49歳(娘)であるケースです。
要介護者と介護者はともに都内在住ですが住居は別々で、近距離介護を行っていました。要介護者の配偶者は数年前に他界し、その後は少しずつ認知症が進行しました。
1年前に介護者が施設入居を勧めましたが、「ホームヘルパーに来てもらうから」と言って拒否。介護者が久しぶりに要介護者に会ったときは、認知症の進行により介護者の顔も分からなくなっていたそうです。
その後すぐに施設の職員の協力もあり入居が決定しました。
入居拒否は決して特別なことではない
老人ホームへの入居拒否は決して珍しいことではありません。
長年住んできた家を離れたくないパターンや、新しい環境に抵抗を感じている場合など施設入居を拒否する理由はさまざまです。
在宅介護に限界を感じている場合だと、入居してもらうことは重要な選択肢となってくるでしょう。本人の希望もしっかり聞いて、双方が納得した施設入居をすることが大切です。
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