【一覧表】有料老人ホームの費用相場
まずは以下の項目で、有料老人ホームにかかる費用(入居一時金・月額利用料)の相場を見ていきましょう。
入居一時金
施設種別 | 費用相場 |
---|---|
介護付き有料老人ホーム | 30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 5.8万円 |
健康型有料老人ホーム | 0~1億円 |
入居一時金に関する詳細は別項目で紹介しているので、合わせて確認してみましょう。
月額利用料
月額利用料とは毎月施設側に支払っていくお金のことで、食費や管理費、介護保険サービス費(自己負担分)などが含まれます。
以下の表は、有料老人ホームに分類される3つの施設の月額利用料(相場)をまとめたものになります。
施設種別 | 平均値 |
---|---|
介護付き有料老人ホーム | 15.7~28.6万円 |
住宅型有料老人ホーム | 9.6~16.3万円 |
健康型有料老人ホーム | 12~40万円 |
その理由や月額利用料の内訳、支払い方法については別項目で紹介しているので、合わせて確認してみましょう。
有料老人ホームの入居一時金
冒頭で紹介した「入居一時金」について詳しくみていきましょう。
入居一時金は、平均余命などを参考に一定の入居者が住み続けるであろう「想定居住期間」を設定し、その期間の賃料や介護費などを前払いする仕組みを償却と言います。
多くの施設では、入居一時金の30%程度を「初期償却」として扱い、残額を一定の期間内で償却しています。
初期費用については、老人福祉法によって以下の4つが義務付けられています。
- 算定の根拠
- 短期解約特例
- 返還金の計算式の明示
- 返還金の保全
償却と返還金について以下で詳しく見ていきましょう。
入居一時金の償却
入居一時金は、入居時に一定割合が償却され(初期償却)、その後は想定居住期間内に毎月均等に償却されます。
もしも償却期間内に入居者が途中退居した場合(死亡時も含む)、未償却分が返還されます(返還金)。
なお、初期償却がない場合の償却方法は下記の通りです。
- 入居一時金をすべて毎月均等に償却
- 入居期間に応じて入居一時金を月数で割った額を毎月契約した月に償却
- 年単位で段階ごとに償却
退去する時に入居一時金を使い切っていない場合は、未償却の残高が返還されます。
クーリングオフ(短期解約特例)とは
老人福祉法に定められている「短期解約特例」について解説します。
返還金の金額の算定方法について「3ヵ月日ルール」と呼ばれるものがあります。
ただし、それまでの利用料と原状復帰の費用などが引かれるため、全額返還されるわけでなく、日割り計算で返還金が計算されることになります。
入居一時金の返還金の計算例
ここまで紹介してきた返還金の特徴を踏まえ、返還金の事例を見ていきましょう。
次の項目では入居一時金のメリット・デメリットを紹介します。
入居一時金のメリット・デメリット
入居 | 一時金メリット | デメリット |
---|---|---|
あり | 月額利用料が安くなる | ・入居時に資金が必要 ・返還金を巡るトラブルが考えられる |
なし | 入居時の資金が少ない | 月額利用料が高い |
入居一時金は家賃の前払いすることでなります。この点は、入居一時金のメリットと言えるでしょう。
一方、デメリットとして大きいのは、入居時に支払う金額が大きくなりやすい点や、返還金の扱いについて施設側とのトラブルが想定されます。
トラブルに発展しないためにも、入居時にしっかりと返還金について把握しておきましょう。
入居一時金が0円の施設もある?
ここまでは入居一時金がある前提で紹介していきましたが、施設によっては入居一時金が0円の施設も多く存在しています。
また、賃料を前払方式で取らない方法を選択することのできる施設が多くなっています(このような施設でも敷金が必要となる場合もあります)。
有料老人ホームの権利形態
この項目では入居時に結ぶ「権利形態」と「利用料の支払い方法」について解説していきます。
まず、老人ホームの権利形態には次の3種類があります。
- 利用権方式
- 建物賃貸借方式
- 終身建物賃貸借方式
それぞれ以下で詳しくご紹介しましょう。
利用権方式
入居一時金を支払うことで、施設内にある居室と共有スペースを利用する権利と、施設で提供される各種サービスを受ける権利を得ることができます。
介護付き有料老人ホームでは約8割の施設が利用権方式です。介護・生活支援などのサービスが一体化・パッケージ化されていて、終身利用できる点が大きな特徴。追加で費用がかかることも少ないです。
建物賃貸借方式
賃貸物件と同様に、有料老人ホームの家賃にあたる額を毎月負担することで居住権を得ることができます。
介護サービスを利用する場合は、入居者は自分で外部のサービス提供事業者と契約する必要があります。
なお、入居者が亡くなった場合でも、家賃を支払っている限りは居住権の維持が可能です。
終身建物賃貸借方式
基本的に建物賃貸借方式と同じですが、違うのは利用者が亡くなった場合に契約が終了する点です。なお、終身まで契約でき、その場合は契約更新料の支払いが発生しません。
なお、終身建物賃貸借方式を採用できるのは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて、都道府県知事から認可を受けている施設のみです。
有料老人ホームの利用料の支払い方法
有料老人ホームの利用料の支払い方法は4つのタイプがあるので、利用する老人ホームがどの支払い方法なのかを確認しておくことが大切です。
- 全額前払い式
- 入居一時金で一部前払い式
- 月払い式
- 選択式
以下でそれぞれの支払い方式について、詳しくご紹介しましょう。
全額前払い式
全額前払い式とは、入居中に発生する家賃費用を入居時に全額支払う方式のことです。
入居時に家賃を支払うので、毎月発生する費用は家賃以外の食費や管理費のみです。
入居一時金で一部前払い式
想定される居住期間の家賃合計額の一部について、入居時に前払いする方式です。
全額前払い方式よりも入居時に支払うお金は少なくて済みますが、毎月一定額の家賃の支払いが発生します。家賃の一部は入居一時金として支払っているので、本来の家賃よりも安いです。
月払い式
月払い式は、入居時に家賃の前払いを一切行わず、本来の家賃を毎月支払っていく方式です。
入居時にまとまったお金を用意する必要がないので、入居時のハードルは下がります。
しかし毎月発生する家賃が大きくなるので、経済的な理由により、施設利用の継続が難しくなる可能性もあるため注意が必要です。
選択式
選択式は、全額前払い式・一部支払い式・月払い式の中から、好きな方式を選択できます。
次の項目では月々にかかる費用をみていきましょう。
有料老人ホームの月額利用料の内訳
毎月かかる費目一覧
まずはじめに、毎月の利用料に含まれる費用項目は主に以下の通りです。
- 賃料
- 管理費・水道光熱費
- 食費
- その他の費用
- 上乗せ介護費
- 横出しサービス費
続いて、それぞれの特徴を確認していきましょう。
(1)賃料
家賃は施設の立地場所や入居する部屋タイプ、設備の充実度によって変わってきます。
以下の表から、地域ごとの費用相場を確認できるので、希望する地域がどのくらいかかるのか参考にしてみましょう。
都道府県 | 平均値 | 中央値 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
入居一時金 | 月額利用料 | 入居一時金 | 月額利用料 | |||||
北海道 | 50.3万円 | 13.9万円 | 10.0万円 | 12.6万円 | ||||
青森県 | 1.2万円 | 11.1万円 | 0万円 | 9.6万円 | ||||
岩手県 | 65.6万円 | 14.9万円 | 0万円 | 13.6万円 | ||||
宮城県 | 3.1万円 | 10.4万円 | 0万円 | 10.0万円 | ||||
秋田県 | 1.4万円 | 9.5万円 | 0万円 | 9.0万円 | ||||
山形県 | 6.8万円 | 11.6万円 | 0万円 | 10.5万円 | ||||
福島県 | 23.8万円 | 13.9万円 | 0万円 | 13.1万円 | ||||
茨城県 | 52.0万円 | 13.2万円 | 11.8万円 | 11.8万円 | ||||
栃木県 | 18.1万円 | 14.5万円 | 4.9万円 | 14.0万円 | ||||
群馬県 | 3.7万円 | 12.3万円 | 0万円 | 12.4万円 | ||||
埼玉県 | 11.1万円 | 15.6万円 | 10.3万円 | 14.6万円 | ||||
千葉県 | 13.3万円 | 13.3万円 | 11.1万円 | 13.0万円 | ||||
東京都 | 446.5万円 | 28.9万円 | 118.1万円 | 22.5万円 | ||||
神奈川県 | 20.0万円 | 13.5万円 | 12.9万円 | 13.4万円 | ||||
新潟県 | 22.4万円 | 15.8万円 | 11.0万円 | 16.0万円 | ||||
富山県 | 7.4万円 | 15.7万円 | 6.3万円 | 14.1万円 | ||||
石川県 | 11.6万円 | 12.4万円 | 10.0万円 | 11.3万円 | ||||
福井県 | 16.9万円 | 12.8万円 | 5.0万円 | 12.0万円 | ||||
山梨県 | 25.3万円 | 14.5万円 | 10.0万円 | 14.2万円 | ||||
長野県 | 34.2万円 | 13.8万円 | 15.1万円 | 13.1万円 | ||||
岐阜県 | 8.6万円 | 12.4万円 | 9.4万円 | 12.3万円 | ||||
静岡県 | 52.0万円 | 16.0万円 | 0万円 | 14.2万円 | ||||
愛知県 | 43.2万円 | 18.4万円 | 13.0万円 | 16.1万円 | ||||
三重県 | 5.2万円 | 11.2万円 | 2.5万円 | 11.3万円 | ||||
滋賀県 | 4.7万円 | 15.4万円 | 0万円 | 16.3万円 | ||||
京都府 | 167.3万円 | 19.4万円 | 16.3万円 | 16.5万円 | ||||
大阪府 | 6.1万円 | 12.5万円 | 5.0万円 | 12.1万円 | ||||
兵庫県 | 22.8万円 | 15.1万円 | 6.0万円 | 13.8万円 | ||||
奈良県 | 38.7万円 | 14.0万円 | 8.0万円 | 12.6万円 | ||||
和歌山県 | 11.2万円 | 11.8万円 | 11.1万円 | 10.4万円 | ||||
鳥取県 | 18.4万円 | 13.5万円 | 10.6万円 | 13.5万円 | ||||
島根県 | 11.9万円 | 13.7万円 | 0万円 | 14.1万円 | ||||
岡山県 | 7.4万円 | 12.1万円 | 8.0万円 | 11.3万円 | ||||
広島県 | 8.1万円 | 12.4万円 | 1.5万円 | 12.5万円 | ||||
山口県 | 8.9万円 | 13.0万円 | 9.2万円 | 13.3万円 | ||||
徳島県 | 1.5万円 | 10.5万円 | 0万円 | 10.2万円 | ||||
香川県 | 6.1万円 | 13.8万円 | 0万円 | 13.0万円 | ||||
愛媛県 | 2.2万円 | 10.2万円 | 0万円 | 9.4万円 | ||||
高知県 | 3.1万円 | 11.4万円 | 0万円 | 9.3万円 | ||||
福岡県 | 4.1万円 | 9.9万円 | 0万円 | 9.6万円 | ||||
佐賀県 | 2.3万円 | 10.9万円 | 0万円 | 10.2万円 | ||||
長崎県 | 5.9万円 | 12.1万円 | 0万円 | 11.5万円 | ||||
熊本県 | 9.4万円 | 11.5万円 | 8.1万円 | 11.1万円 | ||||
大分県 | 5.7万円 | 10.0万円 | 0万円 | 8.5万円 | ||||
宮崎県 | 1.6万円 | 7.9万円 | 0万円 | 7.3万円 | ||||
鹿児島県 | 0.6万円 | 8.3万円 | 0万円 | 7.7万円 | ||||
沖縄県 | 3.0万円 | 9.9万円 | 0万円 | 9.3万円 |
(2)管理費・水道光熱費
施設を管理・維持するためにかかる費用です。
また施設によっては、管理費に水道光熱費や電話代が含まれている場合もあるので、契約時に確認しておきましょう。
(3)食費
1日3食にかかる飲食代です。
施設によってはおやつ代を別途請求するケースもあるので、食費の内訳についても確認が必要です。
(4)その他の費用
有料老人ホームでは、月額利用料のほかに、以下のような雑費がかかります。
- 歯ブラシや石鹸、おむつといった日用品
- 嗜好品にかかる日常生活費
- レクリエーション参加費
- 理美容代
- 医療費
- 介護保険外のサービスの利用料
上記はあくまで一例です。
必要となる雑費は、入居される方の生活により変動するので、どのくらいかかるのか、およその金額を計算しておくと安心です。
(5)上乗せ介護費
有料老人ホームによっては、介護ケアをよりきめ細やかに提供するために、介護保険制度で定められた「要介護者3人に対して1人の介護職員」よりも、手厚い人員配置をしている施設があります。
このようなサービスを受けるために発生するのが「上乗せ介護サービス(上乗せ介護費)」です。
(6)横出しサービス費
横出しサービスとは、「買い物代行」「規定回数以上の通院付き添い」など、利用する方にとっては必要とされているものの、介護保険の対象外となっているサービスのことです。
横出しサービスは利用者の全額負担になるため、どのようなサービスが該当するのかは施設側が情報を開示しています。
ここまでは一律でかかる費用項目について紹介してきました。次の項目では介護保険サービスの自己負担額や適応サービスについて紹介していきます。
介護保険サービス費
要支援・要介護認定を受けている方で、介護保険サービスを利用した場合、介護サービス費の支払いが必要です。
住宅型有料老人ホームであれば、自宅で利用する場合と同じく、訪問介護や通所介護などを利用した分だけの支払いです。
1ヵ月あたりの自己負担額(目安)
介護付き有料老人ホームに入居した場合、毎月かかる介護サービス費(特定施設入居者生活介護)は以下の通りです。
限度額 | (単位)自己負担額 | (30日)|
---|---|---|
要支援1 | 5,490 | 5,490円 |
要支援2 | 9,390 | 9,390円 |
要介護1 | 1万6,260 | 1万6,260円 |
要介護2 | 1万8,270 | 1万8,270円 |
要介護3 | 2万370 | 2万370円 |
要介護4 | 2万2,320 | 2万2,320円 |
要介護5 | 2万4,390 | 2万4,390円 |
介護保険の適用対象について
有料老人ホームで受けるサービスには、介護保険の適用となるサービスと、適用にならないサービスがあります。
どのようなサービスが保険適用または保険適用外となるのか、以下で見ていきましょう。
適用となるサービス
- 掃除や洗濯などの生活援助
- 食事介助
- 排せつ介助
- 入浴介助
上記項目の特徴として、基本的な身体介護については、介護保険適用内のサービスとなります。
適用外となるサービス
- 趣味を目的とした外出の介助
- 買い物の代行
- 金銭の管理
- 契約書などの書類作成支援
- 来客に対するお茶や菓子、食事サービス
- 床のワックスがけなど普段行わない大掃除
次の項目では有料老人ホームに分類される施設のうち、介護付きと住宅型の2つに焦点をあてて紹介していきます。
費用差だけでなく、どのような方におすすめの施設かも合わせて解説していますので、施設選びの参考にしてみてください。
介護付きと住宅型から自分に合った施設を選ぶ方法
まずはじめに、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いを確認していきましょう。
施設種別 | 入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 30万円 | 20.1万円 |
住宅型有料老人ホーム | 5.8万円 | 12.3万円 |
費用差が生じている理由は以下で見ていきましょう。
住宅型有料老人ホームがおすすめな人
「住宅型」と「介護付き」のどちらを選ぶべきかを考える上で、1つ大きなポイントになるのが毎月かかる介護サービス費(自己負担額)の金額です。
「介護付き」で受ける介護サービスはすべて「特定施設入居者生活介護」となり、毎月定額でサービスを受けることができます。
一方、「住宅型」は、訪問介護や訪問看護などのサービスを利用した分のみ介護サービス費を支払います。
そのため、もし毎月かかる居宅介護サービス費が、特定施設入居者生活介護の定額を下回る場合は住宅型がおすすめと言えます。
住宅型有料老人ホームの介護サービス利用料
住宅型有料老人ホーム入居する上で注意したいのが、介護スタッフが常駐していないことです。
以下は、在宅介護サービスを受ける場合の自己負担額をまとめた表です。
区分 | 自己負担額 |
---|---|
要支援1 | 5,032円 |
要支援2 | 1万531円 |
要介護1 | 1万6,765円 |
要介護2 | 1万9,705円 |
要介護3 | 2万7,048円 |
要介護4 | 3万938円 |
要介護5 | 3万6,217円 |
実際の住宅型有料老人ホームは以下のボタンから検索できますので、ぜひご確認ください。
住宅型有料老人ホームを探すまた、「みんなの介護」の入居相談センターでは、無料でプロの相談員に相談することができます。こちらもお気軽にご利用ください。
介護付き有料老人ホームがおすすめな人
介護付きの場合は住宅型とは反対に、居宅介護サービス費が、特定施設入居者生活介護の定額を上回る方におすすめと言えます。
例えば、介護度の高い方で頻繁に訪問介護、訪問看護などのサービスを利用される方は、どれだけ介護サービスを受けても介護サービス費が変わらない「介護付き」の方が、費用面で有利になりやすいです。
介護付き有料老人ホームの費用例
上記でも紹介したように、『特定施設入居者生活介護』の指定を受けている介護付き有料老人ホームでは、介護スタッフが常駐しているため、施設の中で介護サービスを受けることが可能です。
この場合、入居者は定額の自己負担分を支払うことになります。
介護付き有料老人ホームは以下のボタンから確認できますので、チェックしてみましょう。
介護付き有料老人ホームを探す費用差で生じるサービスの違い
ここからは老人ホームの費用が異なることで、サービス面にどのような違いが生じるかを「高級な老人ホーム」と「安い老人ホーム」に分けて、確認していきましょう。
人員体制・設備ともに充実している高級老人ホーム
高級な老人ホームの最大の特徴は、なんといっても施設の充実度。
高級な老人ホームでは本格的なリハビリテーションルームを設置している施設もあります。
そして、設備の豪華さだけでなく上乗せ介護費にも注目しておきたいところです。
通常は入居者3人に対して介護スタッフ1人が基本ですが、規定より人数を増やすことで、より手厚い介護体制を設けているケースがほとんどです。
安い老人ホームは立地に注意
続いて、安い老人ホームについて確認していきましょう。
安さを実現できる大きな理由の一つに、月額利用料における賃料の割合を抑えられることが挙げられます。
居室面積のほか、施設自体がもともとホテルや社員寮などを買い取ったケースでは賃料が安くなる傾向にあります。
食費に関しても、スタッフが調理するのか、委託会社からスタッフを派遣、あるいは調理されたものを運ぶのかなどで値段が変動します。
また、運営会社がNPOで、補助金などの優遇を受けていて、比較的安い費用を実現できている施設もあります。
有料老人ホームの費用軽減制度
少しでも費用を抑えて老人ホームに入居できるよう、ここでは費用軽減につながる制度について紹介していきます。
高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、毎月かかる介護保険費用のうち、所得に応じて設定された上限を超えた分が、介護保険から支給されるという制度です。
この制度の利用には市区町村への申請が必要ですが、こうした公的サポートを受けることで、介護施設に入居した場合も一定以上の負担を負わないで済むようになっています。
しかし、軽減されるのはあくまで介護保険内の自己負担分であるということには注意が必要ですね。
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準額を超えた場合に、その超過分を支給する制度です。
基準額は基本的に年間56万円ですが、年収や年齢、介護サービスを利用している人の人数などによって異なってきます。
支給申請は、毎年7月31日に、加入している医療保険(国民健康保険や後期高齢者医療制度など)の保険者に対して行います。
扶養控除
扶養控除は、扶養親族の年齢によって変わります。
70歳以上であれば同居をしていない場合でも「老人扶養親族」として上限48万円が控除されます。
また、23歳以上70歳未満であったとしても、「一般の控除対象扶養親族」として38万円の控除が受けられます。
これは、老人ホームに入居していたとしても、利用料金を支払っている場合なら適用されます。
有料老人ホーム費用のモデルケース
老人ホームへの入居を検討している方の中には、「最期を迎えるまで入居したい」とお考えの方も多いはず。
そこで、老人ホームで最期を迎えた場合の総額を試算してみましょう。
項目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
月額利用料 | 22万8,000円 | 平均値 |
介護保険の | 自己負担額1万6,000円 | 要介護1の場合 |
横出し | サービス2万円 | ・買い物代行 ・通院付き添いなど |
日常生活費 | 3万円 | ・日用品 ・レク参加費 ・趣味の費用など |
通信費 | 5,000円 | スマートフォンなど |
医療費 | 1万円 | - |
理美容代 | 2,000円 | |
月額合計 | 31万1,000円 | |
年間合計 | 373万2,000円 |
老人ホーム入居のための資金捻出方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
有料老人ホームに入るための資金計画
老人ホームに入居するうえで重要なのは、初期費用や月額利用料をどのようにまかなうかということです。
貯蓄と経営などの収入、持ち家などの不動産の売却益などでまかなおうとするのが一般的な方法と言えます。
資金面で不安がある場合は、自宅をはじめとした不動産の売却や、「マイホーム借り上げ制度」、「長期生活支援資金制度」などを使うことで収入を増やす方法が考えられます。
老人ホームのための資金を調達する際には、要介護状態になってからの平均余命だけでなく、入居によって健康管理が徹底され、長生きして入居期間が延びることも想定しておきましょう。
老人ホームの資金計画については以下の記事で紹介しています。
万一のときに備えるための費用
老人ホームでの出費として、万一の場合にかかる費用についても想定しておきましょう。
容体の急変や病気、怪我などで入院や手術が必要となった場合は、月額利用料以外にコストがかかってしまうことになります。
老人ホームの契約特記事項について
入居前に、おおよそどのくらいの費用が必要となるのかを確認するためにも、契約書に記載されている特記事項について把握しておくことも大切です。
そこで、ここの項目では特記事項について紹介します。
現在、有料老人ホームを巡る消費者トラブルが増加傾向にあるといわれており、なかでも多いのが契約と解約に関するものです。
無用のトラブルを避けるために、契約書や重要事項説明書を契約の際によく確認しておきましょう。
【契約時に確認すべき10項目】老人ホームの重要事項説明書とは?
前払金について
有料老人ホームでは、賃料や敷金、サービス料以外の金品を受領することが老人福祉法で禁じられています。
さらに前払金についても、同法によって支払いの算定根拠や返還金の計算式の明示、返還金の保全措置、上記の90日ルールなどが義務付けられています。
とはいえ、施設によって初期償却や償却期間などが違うため、契約の際には念のためその点も確認しておくと良いでしょう。
原状回復費用について
90日ルールにおいて、返還される金額から引かれることの多いのが、原状復帰の費用です。
有料老人ホームを巡るトラブルは、この原状回復費用を原因とするものが多くなっています。
もしトラブルになった場合、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』をもとに協議することとされています。
無用のトラブルに巻き込まれないために、入居前に原状回復費用についても確認しておきましょう。
有料老人ホーム費用にまつわるQ&A
入居一時金の返還金を受け取ったら?
老人ホームに入居した本人が主契約者で入居一時金を負担していた場合、本人が死亡したことにより戻ってきた返還金は相続財産であると考えられています。
ただし、入居一時金の性質をどうとらえるのかが難しいので、実は異なる考え方もあります。
例えば、「返還金の受取人が事前に指定されていれば、それは生前贈与財産である」とも考えられます。
返還金を受け取った者に対する相続税の課税対象と判断した判例もありますが、このようなケースでは課税対象となると考えておいた方が良いでしょう。
夫婦のどちらかが入居一時金を負担したら?
例えば、妻が老人ホームに入居する際の入居一時金や月額利用料を夫が負担した場合、夫から妻への贈与があったと考えることもできます。
また、夫婦で老人ホームに入居する際に、別々の部屋で暮らすのならもちろんですが、同じ部屋でも夫婦で各々の費用がかかることがあります。
この費用の全額をどちらか一方が支払った場合も同様に、贈与と考えられなくもありません。
このようなとき、果たして税金がかかるのでしょうか?
実際、過去の判例では異なる結果が存在します。
非課税財産としてみなされたケース
日常生活においても、家族の生活費に充てるために必要であると認められるお金を贈与しても、それは贈与税の非課税財産となります(相続税法第21条の3)。
これと同じく、配偶者(夫)が負担した入居一時金などの費用は、介護が必要な者(妻)の生活費として通常必要と認められると判断されました。
贈与税の課税対象となったケース
同じように配偶者(夫)が、介護を必要とする者(妻)のために負担した入居一時金などであっても、それが非課税財産に該当せず、贈与税の課税対象となった判例もあります。
この理由は、「社会通念上、通常必要と認められる水準」を超えていたと考えられます。
税金の話はややこしいですが、贈与税や相続税は、意外と大きな金額です。
だからこそ、しっかりとクリアにし、不安な場合は税理士などに相談しておきましょう。
住み替える時の注意点は?
いったん施設に入居しても、サービスへの不満や病状の悪化、他の入居者とのトラブルなどが原因で住み替えたくなる可能性もあります。
老人ホームを退去する時は、金銭面を確認しておくことが重要。
例えば、入居一時金がどこまで返還されるのかやクーリングオフ制度の利用条件、原状回復費用の支払い義務など、入居時に説明された項目をもう一度確認しておきましょう。
住み替える施設の入居方法は、初めて老人ホームに入居したときと同じです。
新しい老人ホームを探すときは、住み替えをすることになった問題を解決できる施設を選ぶことがポイント。
新たに費用がかかる住み替えは、本人だけでなく家族の負担にもなる決断。
さらに住み替える心配がないように、理想の条件を明確にして、最適な老人ホームを見つけましょう。
そのために十分に見学をしたり、体験入所などを利用したりすることが大切です。
体験入居の際の確認すべきポイントは以下の記事で紹介しています。
年金だけで費用を支払っていくことは可能?
老人ホームの費用を100%年金でまかなうことは難しいのが現状です。
厚生年金を受け取っている方であれば可能かもしれませんが、自営業などで国民年金(基礎年金)しか受け取っていない場合は、とても難易度が高くなります。
しかし、地方によっては費用が安い施設もありますし、特別養護老人ホームや軽費老人ホーム・ケアハウスをはじめ、有料老人ホーム以外にも選択肢はあるので、年金だけでまかなえるかもしれません。
生活保護でも老人ホームに入居できる?
生活保護受給者でも、有料老人ホームに入ることは可能です。
ただしそれは、賃料が生活保護の「住宅扶助」、生活費が生活保護の「生活扶助」の範囲内に収まることが前提です。
生活保護で入居相談が可能な老人ホームを探す他の人はこちらも質問
老人ホームに入るのにはいくらかかるのか?
有料老人ホームの月額費用の平均は介護付きで22万8,000円、住宅型は13万5,000円です。入居一時金の平均額は介護付き350万円、住宅型76万円です。
住宅型有料老人ホームって何ですか?
住宅型有料老人ホームは、完備されたバリアフリーな施設で、入居者が求める生活支援、外部の介護サービスを自由に組み合わせられます。またレクリエーションやイベントが盛んに行われており、ほかの入居者とのコミュニケーションも取りやすいです。
高齢者のおむつ代は月いくら?
1ヵ月にかかるおむつ代の相場は、6,000円〜9,000円ほどです。1日で交換するおむつの回数は4回〜5回ほどと言われています。
有料老人ホームは何種類?
有料老人ホームは介護付き、住宅型、健康型の3種類あります。
介護付きは介護・医療体制が充実した施設、住宅型は自立度の高い方が入居し、必要に応じて外部の介護サービスを利用できます。健康型は、介護不要な一人暮らしに不安を感じている方が入居する施設です。
- 有料老人ホームには、主に「入居一時金」と「月額利用料」の2つの費用がある
- 介護保険は月額利用料に含まれることが多い
- 初期費用0円の施設は、月額利用料が高くなる傾向にある
- 不動産の売却や制度の活用で入居資金を調達することができる
- 老人ホームの入居はクーリングオフができる
- 生活保護を受けている場合は、担当のケアワーカーに相談する