老人ホームに体験入居する5つのメリット
老人ホームを選ぶとき、見学だけでは施設の雰囲気や1日の流れを把握することは困難と言っても過言ではありません。
そこで老人ホームを詳しく知る方法として、体験入居をおすすめします。
体験入居とは、実際に施設に入居して生活を送ることができるお試し体験のことを言います。有料老人ホームやグループホームなど、多くの施設で体験入居を実施しています。
体験入居をするメリットは主に以下の5つが挙げられます。
- 雰囲気やサービスを体験できる
- においや生活音を知ることができる
- 施設入居者とふれあえる
- 施設内の設備を体験できる
- 施設の立地を確認できる
スタッフの雰囲気や入居者の過ごし方、設備など見学だけでは掴めない部分も肌で感じることができるのは、体験入居の最大のメリットと言えます。
それぞれのメリットを以下で詳しく紹介します。
雰囲気やサービスを体験できる
パンフレットの内容だけではわからない「施設内での1日の流れ」や「スタッフ・入居者の様子」「施設の雰囲気」などを感じてみましょう。
特に、早朝や夜間は人員体制が整っているかどうかが顕著となる時間帯です。その時間に対応できるスタッフがいるか、希望するサービスが受けられるかも重要なチェックポイントです。
また認知症の方にとって、環境の変化は大きなストレスを生み、症状が悪化する可能性もあります。
そういった事態を未然に防ぐためにも、体験入居を通じて、徐々に新しい環境に慣らし、入居への不安を和らげることができます。
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においや生活音を知ることができる
共有スペースはほかの入居者も共同で使う場所です。
スタッフがこまめに清掃をしていなければ、食事やおやつの食べかすが散らかり、生活臭が強くなりがちです。においの状況から、清掃体制や衛生面への意識などが確認できます。
また、体験入居では館内の温度設定が適切かどうかも確認できます。寒すぎたり、暑すぎたりした場合は施設スタッフに相談し、温度設定を変更してもらえるか聞いてみると良いでしょう。
さらに、短期間とはいえ居室で生活することになるので「隣の部屋からの物音が大きくないか」「夜中に外から騒音が聞こえないか」も要チェックです。
施設入居者とふれあえる
体験入居をすると、ほかの入居者と一緒に食事をしたり、レクリエーションに参加したりできるのが一般的です。
その際、施設での生活のしやすさやスタッフの人柄、サービスの質を入居者から生の声を聞くことができます。また入居者の家族が付き添いで来ているときは、その家族からも情報を得られる可能性もあります。
もし自分から入居者の輪に入ることができない場合は、施設スタッフに相談してみてください。新しい環境に馴染めるようサポートしてくれるかも大切なチェックポイントです。
施設内の設備を体験できる
居室やトイレ、リハビリ設備など、入居後に実際に使う設備を使用できるのは体験入居の大きなメリットです。
本人の生活スタイルや心身状態、嗜好などに合うかどうかを確かめることができます。
またパンフレットの写真や情報と異なっていないかもチェックしたい項目の一つです。
施設の立地を確認できる
見学や体験入居のために施設に出かけるときは、家族の方も付き添うケースが一般的です。
その際、最寄り駅からのアクセスや道路の混雑具合、坂道の有無などを把握しておくと、家族も入居後に面会に行きやすいです。
体験入居でチェックすべき10のポイント
体験入居をすることの大切さを理解したところで、この項目では実際に体験入居をした際にチェックしたいポイントを10個紹介します。
老人ホームに入居する目的や、入居後の過ごし方をイメージしながら各項目を確認していきましょう。
1. 身体介助やリハビリの内容・質
排泄の介助は1日に何度も受けるサービスのため、そのサービスの良し悪しが生活の質に直結すると言っても過言ではありません。
数ある身体介助のなかでも排泄介助は、利用者の尊厳を大事にした対応が求められるサービスです。施設スタッフによる配慮の有無も重要なチェックポイントと言えます。
また体験入居では、施設で提供されているリハビリサービスを実際に受けることができます。
リハビリ設備は整っているか、専門スタッフからサポートを受けられるかなど、入居後に心身機能の維持や向上が期待できるかどうかも重要です。
リハビリが充実している施設を探す2. 入浴時の介助
入浴の介助を受けているときに怪我をしてしまい、施設側とトラブルに発展するというケースは少なくありません。
そのため、入浴介助を受ける際は安全への配慮が行き届いているかもしっかりと確認しましょう。
また、機械浴やリフト浴が備わっている場合は、どのような人を対象に設備が利用されているかも要チェックです。
体験入居の時点では必要がなくても、入居後にそういった設備を利用する可能性も大いにあります。このように体験入居では、将来のことも見据えてチェックすることが大切です。
週3回以上入浴できる老人ホームを探す3. 生活支援
体験入居では、施設スタッフによる居室内の清掃といった生活支援サービスを受けることができます。
居室の清掃をどのくらい丁寧に行うかは衛生面の管理状況にもかかわるので、ホコリが溜まっていないかなども要チェックです。
また、要介護状態の方が多く入居している施設では洗濯のサービスは不可欠です。
サービスの充実度を確かめ、洗濯後の衣服から異臭がしないか、たたみ方に問題ないか、といった点も大切なポイントです。
4. レクリエーション
体験入居期間中にレクリエーションが開催されていたら、体調が許す限り積極的に参加することをおすすめします。
レクリエーションを通じて利用者それぞれの人柄や介護スタッフの対応、施設全体の雰囲気をつかむことができます。
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また、それぞれのレクリエーションに追加の費用がどのくらいかかるのかも確認しておくと安心です。
レクリエーションが充実している施設を探す5. 衛生面
体験入居では、部屋やトイレの衛生状態をチェックし、仮に入居者が汚してしまったとしても、すぐにスタッフが対応してくれるかどうかも確認すべき点です。
もし清掃専属のスタッフがいない場合は、介護スタッフがどのくらいトイレの衛生状態に配慮しているのかがわかります。
清掃を徹底して行っている施設は、集団感染の防止に積極的に取り組んでいる好評価な施設といえます。
6. 安全への配慮
体験入居は夜の様子をチェックできるので、入居者がきちんと門限を守っているのか、24時間体制でスタッフが常駐しているのかを確かめることができます。
老人ホームへの施設選びでは、セキュリティ面も大切な確認項目です。入居者はもちろん、家族にとっても安心と納得できるセキュリティか否か見極めましょう。
また、災害が起こったときの避難経路が確保されているのかなど、入居者の安全を守る体制も重要な確認事項です。
7. 雰囲気
目では見えない「雰囲気」も、短期間とはいえ実際にその施設に入居することで感じることができます。
入居者とスタッフとの間に信頼関係が築けているのか、そして入居者同士で良好な関係がつくられているかチェックしてみてください。
特に、入居者のなかにどのような方がいるかをチェックできるのは、体験入居の大きな利点です。入居後に心地良い生活を送れるかどうかは、人間関係も大きく影響します。
8. 食事
食事の味付けや献立、食事形態はその時の状況によって変更可能なのか確認しましょう。
栄養バランスやアレルギーに配慮した献立なのかどうかも要チェックです。
また食事を楽しめる工夫の有無も、入居後の生活を左右するポイントです。
9. 設備・居室の広さ
施設への入居を検討する際に、気になるポイントのひとつが居室環境です。以下の5つは入居後の暮らしを左右する大切な要素です。
- 高齢者向けのバリアフリー設備であること
- 暮らしやすい広さであること
- プライバシーが守られていること
- 荷物を収納するスペースが充分でること
- 防災対策がしっかりとられていること
介護施設では入居者の暮らしの質を確保するために、居室面積などの基準が国によって定められています。
全国にある施設の平均的な居室の広さや設備、基準などを施設選びの参考にしてみてください。
老人ホームの居室面積・設備の基準
老人ホームの具体的な居室面積の基準を紹介します。以下は老人ホームの種類別に居室面積をまとめた表です。
施設種別 | 居室面積 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 10.65㎡ |
グループホーム | 7.43㎡以上 |
介護付き有料老人ホーム | 13㎡以上 |
サービス付き | 高齢者向け住宅25㎡以上※1 |
上記の表にあるように、居室の広さは施設によって異なります。
一般的に特別養護老人ホームや住宅型有料老人ホームなどの介護施設よりも、サービス付き高齢者向け住宅などの高齢者向け住宅の方が、自立した暮らしを想定した広めの基準となっています。
居室が広い老人ホームを探す10. 施設周辺の環境
施設の周辺環境も体験入居時にチェックできます。
施設周辺の交通機関の充実度や安全に散歩できるところはあるか、地域コミュニティーとのつながりがあるかなどを確認しておくことが大事です。
外出のしやすさは入居者が自立であり続けたい、という気持ちを持ち続けるうえでも重要です。
交通アクセス良好の施設を探す体験入居の準備
体験入居時の確認事項に続き、この項目では体験入居の「体験入居の流れ」や「日数と費用」「必要なもの」を解説します。
短期間とはいえ施設に入居することから、事前準備は欠かせません。
体験入居の流れ
体験入居の申込みから、入居するまでは大きく分けて4つの行程に分かれています。
以下で流れを解説していますので、見ていきましょう。
1. 施設見学
体験入居をする前に、まずは希望の施設を探し、見学を行います。
体験入居は見学と違い、費用がかかるため、利用した分費用がかかってしまいます。無用な出費をおさえるためにも、体験入居する施設は厳選することをおすすめします。
2. 体験入居申込み
一般的に多くの老人ホームで体験入居は受け付けていますので、パンフレットやホームページに記載がない場合も一度相談してみることをおすすめします。
施設側から提出を求められた書類を用意した後、申込みます。なお、施設によっては申込金が必要になる場合があります。
3. 面談・入居審査
体験入居される方の健康面や日常生活についての面談を実施します。
このときに、体験入居期間中の過ごし方に関して要望があれば伝えましょう。
4. 体験入居
体験入居をするにあたって、必要な日用品(衣類や洗面用具)・健康保険証などを用意します。
体験入居期間中はスタッフの対応や、ほかの入居者の様子、希望したサービスの内容・質を確認します。
体験入居を終えて気に入った場合は本契約をします。
施設によっては複数回体験入居を受けられる場合もあるので、慎重に判断したい方は遠慮せず要望を伝えてみてください。
体験入居の日数と費用
体験入居できる日数や費用は、施設によって異なります。
1泊2日から1週間、さらには「最長3ヵ月可能」なところもあります。
体験入居は納得のいくまで滞在するのが良いですが、1週間ほどでもおおよその暮らしの流れや雰囲気などがわかり、疑問や不安に感じていることも解消できます。
体験入居の費用は提供されるサービスや施設などによって異なりますが、一般的に1泊当たり4,000円~1万5,000円程度かかります。
体験入居の途中であっても本人やご家族の希望で体験入居を中止することや、体験中の施設に入居することも可能です。
体験入居に必要なもの
以下は体験入居時に必要となるものをまとめた表です。
持参物 | 具体例 |
---|---|
着替え | 衣類(下着・パジャマ・おむつ) |
靴 | 外用と室内用の履物 |
口腔ケア用品 | 歯ブラシやコップ、入れ歯ケース |
入浴用品 |
|
薬・医療器具 |
|
これら持参物はわざわざ購入する必要はなく、日頃使用しているもので大丈夫です。
また施設によっては備わっている場合もあるので、あらかじめ確認してみてください。
体験入居するべき施設の種類の選び方
施設の特徴をよく理解しないまま体験入居をしてしまうと「思っていたイメージと全然違う」「体験入居を中止して、自宅に戻りたい」といった事態を招いてしまうことがあります。
そういったことにならないためにも、あらかじめ施設の特徴を把握しておくことは大切です。
この項目では入居者の身体状況・入居目的別におすすめの老人ホームを紹介します。
介護をほとんど必要としない場合は「サ高住」がおすすめ
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は自宅と同様の生活を送れる点が特徴の施設です。
例えば、外出の際は施設側の許可が必要ありません。
居室も広く、夫婦での入居が可能な施設では、より広い部屋が設けられています。
サ高住は物件数が年々増えており、様々な特色を持った施設も多く存在していることから、希望に合う施設を見つけやすいです。
体験入居では、設備やサービスが事前にイメージ通りかどうかチェックすることが大事です。パンフレットで紹介されている設備内容と相違がないか、実際に使って確かめましょう。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す日常生活の一部に介護が必要な場合は「住宅型」がおすすめ
住宅型有料老人ホーム(住宅型)は、必要なサービスを自分で選択して利用できる施設です。介護サービスも、利用した分だけ発生します。
住宅型の大きな特徴と言えるのが、イベント・レクリエーションが充実している点です。
体験入居の際はイベントにも積極的に参加し、自分が楽しめる内容かどうか、スタッフが必要なサポートをしてくれるかどうかをチェックしましょう。
他の入居者と交流できるので、どのような方が入居しているのかを確かめることもできます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す常に介護を必要している場合は「介護付き」がおすすめ
介護付き有料老人ホーム(介護付き)は、毎月定額の費用で介護サービスを24時間受けられる施設です。どれだけケアを受けても追加費用の心配が少ないので、常時介護を必要とする方も安心して利用できます。
医療機関との連携が義務付けられているなど、医療ケアが手厚い点は介護付きの大きな特徴です。医療依存度が高めの方にもおすすめの施設と言えます。
居室は全室個室なので、体験入居中の家族・知人との面会もしやすいです。介護サービスを必要とする方は、スタッフがきちんと対応してくれるかどうかも体験入居を通して確認しましょう。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す認知症ケアを重視する方は「グループホーム」がおすすめ
グループホームは医師から認知症の診断を受けた方しか入居できない施設です。
また、地域密着型サービスの施設なので、慣れ親しんだ環境で生活を継続できるように、施設と同一の市区町村に住民票がある方のみが入居対象となっています。
入居者は数人~9人でユニットを形成し、グループごとに共同生活を送ります。
入居後は家事などを担当することになるため、入居者として想定されているのは軽度~中度の認知症の方です。認知症が重度で共同生活が困難な場合は、入居が難しくなる場合もあります。
体験入居の際は、他の入居者の人柄や、環境に馴染めるようにスタッフがフォローしてくれるかどうかをチェックしましょう。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す老人ホーム体験入居に関するQ&A
最後に体験入居ついて多く寄せられる質問をいくつか紹介します。
入居者や家族が気をつけたい注意点も解説していますので、最後までしっかりと見ていきましょう。
体験入居の際に注意すべき点はなんですか?
入居後を想定して面会する
施設に本入居した後のことを想定し、入居者の家族は入居後に訪れる予定の時間帯・頻度で面会に行くことをおすすめします。
入居者にとっても、家族と毎日会えるわけではない状況を経験する機会でもあります。
お互いのためにも、できるだけ入居後に近い距離感で接すると良いでしょう。
ほかの入居者に配慮する
家族が訪問する際には、定められた訪問時間を守り、大声で話さないなど、配慮する必要があります。
特に昼寝の時間帯や夜間は、お休みになっている入居者もいるので、相部屋の場合はラウンジなど居室以外の場所で話すよう気を配りましょう。
また、ほかの入居者の居室を覗いたり、無断で入ったりすることは厳禁です。入居者のプライバシーを侵害することがないように注意してください。
施設のルールを守る
施設では、自宅にいたときのように自由な時間に食事をしたり、入浴したりすることができません。
体験入居のときでも、食事の時間帯や入浴の順番などのルールを守り、みんなが気持ちよく生活できるよう気配りは大切です。
その施設が本人や家族にとって、合う・合わないは、体験してみてはじめて感覚としてわかることも多いです。
本人や家族が受けた印象や感覚も大事にしましょう。
施設と医療機関が提携しているメリットはなんですか?
医療機関が提携している施設では、入居者に対して健康面での多様なサポートを行っています。
また持病があり、入居後も医療ケアを必要とする方の場合、医療機関による手厚いサポートを受けられることもメリットと言えます。
そのため、持病をお持ちの方は施設で受けられる医療行為もチェックすることをおすすめします。
施設見学と体験入居の違いはなんですか?
施設見学は老人ホームを比較検討することを目的に行うのに対し、体験入居は契約前の最終確認として利用するケースが一般的です。
そのため、体験入居では施設見学では確認しきれなかった雰囲気や設備、サービスなどを実際に体感し、入居するかしないか判断すると良いでしょう。
複数の施設で体験入居をする場合は、条件の優先順位を改めて確認します。
また、体験入居後も迷いが残っているときは老人ホームに詳しい専門家に相談することをおすすめします。
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見学予約や資料請求もまとめて対応していますので、お気軽に以下のボタンから相談してください。
- 体験入居では見学時にチェックできなかった点を重点的に確認する
- わからないことや疑問に思ったことはその都度、質問する
- ほかの入居者とのコミュニケーションを取り、人柄を確認する
- 体験入居には4,000~1万5,000円(1泊)が必要となる
- 見学時に入居したいと感じた施設のみ体験入居を行う
- 体験入居時は施設のルールを守り、他の入居者への配慮を忘れない