住宅型有料老人ホームの費用相場(入居一時金・月額利用料)
住宅型有料老人ホームは自立した高齢者から介護・医療ケアが必要な高齢者まで、多様なニーズに対応した施設があります。
住宅型有料老人ホームの費用にかかる項目は、大きく分けると以下の2つです。
- 入居時に支払う入居一時金
- 毎月負担していく月額利用料
上記に加えて、入居後に要介護状態になった場合は介護サービス費が発生します。
詳細は以下で解説していますので、一つひとつ確認していきましょう。
入居一時金
以下の表は入居一時金の費用相場をまとめたものです。
平均値 | 中央値 |
---|---|
71.1万円 | 5.6万円 |
入居一時金は入居期間に応じて毎月均等償却が行われ、償却期間が終了する前に退去した場合、未償却分が返還されます。
償却については別項目にて、事例を挙げながら紹介していますので、合わせて確認してみましょう。
月額利用料
以下の表は月額利用料の費用相場をまとめたものです。
平均値 | 中央値 |
---|---|
13.9万円 | 12.3万円 |
月額利用料とは、1ヵ月にかかる金額の総額のことです。
住宅型有料老人ホームの入居一時金
まずは入居一時金について確認していきます。
以下は住宅型と介護付き有料老人ホームの費用相場(入居一時金)を比較した表です。
住宅型有料老人ホーム | 介護付き有料老人ホーム |
---|---|
5.6万円 | 30万円 |
入居一時金の償却
入居一時金の大まかな費用がわかったところで、次は退去時に入居一時金が返ってくるのかを確認していきましょう。
まず前提として、入居一時金(前払金)は入居後、施設が定めた想定居住期間内において、毎月賃料に充当(償却)されていくことになります。
想定居住期間(前払金の償却期間)は施設ごとに異なり、3年以内にすべて償却される場合もあれば、10年以上かけて償却される場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
90日以内であればクーリングオフが可能
入居一時金・前払金は「老人福祉法」において入居後90日以内に退去する場合は、経費を除く全額を返還することが定められています。
この制度を「クーリングオフ(短期解約特例)」といいます。
何らかの理由によって退去することになった場合、入居日から90日以内であれば、「入居一時金(前払金)」が返ってきます。
入居一時金の償却の計算例
以下は住宅型有料老人ホームに支払った入居一時金が、どのように償却されていくのかを表した図です。
契約時の確認事項
施設側は入居一時金について、返還額の算定方法や入居時に支払ったお金の保全方法などを、契約者に明示する義務があります。
具体的な確認事項は以下にて解説していますので、チェックしてみましょう。
住宅型有料老人ホームの支払い方式
全額前払い方式と月額払い方式を比較
次は、入居一時金の支払い方法について見ていきましょう。
まずはじめに、有料老人ホームの利用料の支払い方法には以下の4つが存在します。
- 全額前払い式
- 入居一時金で一部前払い式
- 月払い式
- 選択式
全額前払い方式とは
全額前払い方式とは、入居時に想定される居住期間の家賃相当額をすべて支払う方式です。
家賃は入居時に全て支払うので、入居後は家賃以外の管理費や食費などの月額利用料のみを負担します。
前払い方式では月額利用料を大幅に軽減できますが、入居時にまとまったお金が必要なので、その点はハードルが高いです。
月払い方式
月払い方式とは、入居時に家賃の前払い金を支払わず、入居後は本来の家賃額を毎月負担していく方式です。
ただし、入居時のハードルが低くなる一方で、月額利用料は高くなるため、入居中に「毎月の支払ができなくなった」という事態が起こらないように注意が必要です。
入居一時金0円の施設もある
月払い方式を選択することで、入居一時金をかけずに施設入所することが可能です。
上の項目で紹介したように月払い方式を選択した場合は、入居期間中はずっと賃料を支払い続ける必要があることから、入居予定の期間を想定して判断すると良いでしょう。
ここまでは入居一時金について解説してきました。続いて「住宅型有料老人ホームの月額利用料」について確認していきましょう。
入居一時金0円の施設を探す住宅型有料老人ホームの月額費用の内訳
月額利用料の内訳
月額利用料の主な内訳は、以下の5つです。
- 賃料
- 管理費・水道光熱費
- 食費
- 介護費
- そのほかの費用
このうち、賃料・管理費・食費は毎月の固定費となるので、入居前に計算しやすい費用です。
固定費については、施設側もパンフレットやホームページなどで明示している場合がほとんどなので、確認してみましょう。
それぞれの項目については以下で紹介しています。
賃料
賃料は施設の立地場所、居室の広さ、設備の充実度によって変わってきます。
とくに立地場所については、地価の高い都市部に立地する施設だと賃料は高くなるのが一般的です。
一方、地価の安い郊外地域に立地する施設だと賃料は安くなりますが、車・公共交通機関でのアクセスに時間がかかるなどの難点があります。
管理費
管理費は施設を管理し、維持していくために発生する費用です。
施設によっては水道光熱費も含んでいるケースもあるので、入居前に確認すると良いでしょう。
食費
食費については、1日あたりの食費を定額で設定している施設もあれば、1食ごとにかかった食費を日々細かく設定し、請求する施設もあります。
老人ホームではおやつの時間は毎日あるので、月単位でみるとそれなりの金額になります。
その他費用
そのほかにかかる費用は以下の通りです。
- 日用品
- 個人で使う歯ブラシ、タオル、服、お菓子などの日用品は自己負担です。
- 住宅型など民間施設が運営する有料老人ホームでは、おむつ代も自己負担となります。ただし、介護保険施設にあたる特別養護老人ホームなどはおむつ代の支払いはありません。
- 医療費
- 診察費、薬代、通院費は自己負担です。
- また、施設に常駐する医師や嘱託医から外部で医療受診が必要と判断された場合の診察費なども自己負担となります。
- 通院するときに利用する介護タクシーなどの通院介助は、自己負担がかからない場合があります。
- 介護保険対象外のサービス費
- 介護保険の対象外となる買い物や理美容、レクリエーション費は自己負担となります。
上乗せ介護費
上乗せ介護費用は、「特定施設入居者生活介護」のサービスを提供している介護付き有料老人ホームなどの施設で、制度上の基準以上の手厚い人員体制で介護サービスを受けた場合に負担する費用です。
サービス加算
サービス加算は、外部の介護サービスを利用した際に発生する介護サービス費用です。
サービス加算は施設ごとに実施するサービスや設備、人員体制の強化に応じた費用です。
介護保険サービスの自己負担額
介護保険サービスの自己負担額の上限は以下の通りです。
区分 | 利用限度額 | 自己負担額 |
---|---|---|
要支援1 | 5万320円 | 5,032円 |
要支援2 | 10万5,310円 | 1万531円 |
要介護1 | 16万7,650円 | 1万6,765円 |
要介護2 | 19万7,050円 | 1万9,705円 |
要介護3 | 27万480円 | 2万7,048円 |
要介護4 | 30万9,380円 | 3万938円 |
要介護5 | 36万2,170円 | 3万6,217円 |
介護保険サービス費については以下で確認していきましょう。
介護保険サービス費
住宅型有料老人ホームは「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていないので、毎月定額で介護サービスを提供することはできません。
そのため、介護サービスを利用するためには入居者が外部の事業者と個別に契約し、ケアプランに沿って訪問介護や通所介護(デイサービス)を利用していくことになります。
具体的な介護サービスの種類については、以下で確認していきましょう。
入居しながら利用できる介護サービス一覧
住宅型有料老人ホームでは、入居中に以下の介護サービスを利用できます。
- 訪問介護サービス
- 訪問看護サービス
- 訪問入浴介護
- 通所介護サービス(デイサービス)
- 通所リハビリ(デイケア)
- 小規模多機能型居宅介護
以下でそれぞれのサービスについて解説しています。
訪問介護サービス
訪問介護サービスとは、ホームヘルパーが食事や入浴、排泄介助などをサポートしてくれるサービスのことです。
なお利用料金は介護度や利用時間によって変わり、使えば使うほど費用は高くなるので注意が必要です。
訪問看護サービス
訪問看護サービスとは、医療的な処置や診断の補助、健康チェックなどが受けられる医療サービスのことです。
入院するほどではないものの、定期的に看護を必要とする方が利用できるのが特徴です。
なお利用には事前に医師の承諾が必要です。
訪問リハビリ
訪問リハビリとは、自立した日常生活を送る上で必要となる心身機能の維持・回復を目的としたサービスです。
具体的には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門員によるリハビリテーションを受けることができます。
訪問入浴介護
訪問入浴介護とは専用の入浴カーが訪問し、入浴サービスを提供してくれることです。
ただし、住宅型有料老人ホームでは介助入浴設備が整っていることが多く、その場合は訪問介護の入浴介助でも対応できるので、訪問入浴介護を利用する必要がない場合が多いでしょう。
通所介護サービス(デイサービス)
通所介護サービス(デイサービス)とは、日帰りデイサービス事業所に通い、食事や入浴、レクリエーションといった各種サービスを受けられる在宅介護サービスです。
一般的な利用頻度は週に1回~数回で、利用料金は、介護度・利用時間・施設の規模によって異なります。
デイサービスではほかの利用者の方やスタッフ、地域の方などと交流できるので、ある程度お元気なうちから介護予防として利用する方も少なくありません。
通所リハビリ(デイケア)
デイケアとは、デイサービスと同じく「通い」で介護保険サービスを利用しますが、リハビリテーションを目的として利用する点が大きく異なります。
医師の指導のもとで、理学療法士や作業療法士などによる専門的なリハビリを受けられます。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護とは、本来は別々に利用手続きを行う必要がある「通所」「訪問」「宿泊」のサービスを、24時間体制で提供しています。
事業所によっては、住宅型有料老人ホームに併設されている場合もあります。
次の項目では住宅型有料老人ホームを、「サービス付き高齢者向け住宅」と「介護付き有料老人ホーム」と比較しながら、どのような方におすすめの施設かを解説しています。
住宅型有料老人ホームを検討している方におすすめの施設
まずはじめに、それぞれの施設の費用の違いについて以下の表で見ていきましょう。
施設種別 | 入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|---|
住宅型有料老人ホーム | 5.6万円 | 12.3万円 |
サービス付き | 高齢者向け住宅10.6万円 | 15.1万円 |
介護付き有料老人ホーム | 30万円 | 20.1万円 |
以下で施設ごとの特徴を見ていきましょう。
レクやイベントを楽しみたい方は「住宅型」がおすすめ
住宅型有料老人ホームは、要介護度に基づく入居条件の制度上の制限がないため、自立の方や要介護度が低い方でも入居先を見つけやすいです。
また、生活相談員が常駐しているので、初めて老人ホーム暮らしを考えている方は、困ったことがあってもすぐに相談できます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す一人暮らしに不安がある方は「サ高住」がおすすめ
サービス付き高齢者向け住宅では、一般的に外出を自由としているケースが多く、自宅に居た頃と変わらない生活を送ることができます。
そのため、自宅に居た頃と変わらない生活を送りたい方や一人暮らしに不安を抱えている方向けの施設です。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す介護サービスの利用頻度が高い方は「介護付き」がおすすめ
介護付き有料老人ホームは「住宅型」や「サ高住」とは違い、あらかじめ利用料に「介護サービス費」が含まれています。
そのため、費用は高くなる傾向にありますが、追加費用を気にせずに介護サービスを受けることができます。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す次の項目では、費用を抑えるうえで知っておきたい制度について解説します。
住宅型有料老人ホームの費用軽減制度
高額介護サービス費
住宅型有料老人ホームに入居後、毎月負担する介護サービスの自己負担額が大きくなった場合、「高額介護サービス費制度」を利用することができます。
高額介護サービス費制度とは、介護サービスの自己負担1~3割の合計金額が一定額(月額)を超えた場合、超えた分のお金が戻ってくるという制度です。
以下で所得別に、高額介護サービス費の上限額を紹介していますので見ていきましょう。
高額介護サービス費の負担限度額
課税所得(区分) | 上限額 |
---|---|
生活保護受給者など | 1万5,000円 (世帯) |
世帯全員が市区町村民税非課税、 前年合計所得金額+公的年金収入額 80万円以下 |
2万4,600円 (世帯) |
1万5,000円 (個人) | |
世帯全員が市区町村民税非課税 | 2万4,600円 (世帯) |
市町村民税課税~課税所得380万円 | (年収約770万円)未満4万4,400円 (世帯) |
課税所得380万~690万円 | (年収約770万~1,160万円)未満9万3,000円 (世帯) |
課税所得690万円 | (年収約1,160万円)以上14万100円 (世帯) |
また「世帯の全員が市区町村民税を課税されていない世帯」の場合では2万4,600円(うち、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が80万円以下の方は1万5,000円)、そして「生活保護を受給している方」の場合は1万5,000円(個人)になります。
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険の自己負担額の合計金額が一定額(年額)を超えていた場合に、超えた分のお金が戻ってくるという制度です。
8月1日から翌年7月末日までの1年間における医療・介護保険の自己負担金額合計が、所得ごとに設定された基準額(自己負担額)から500円を超えた場合に、払い戻しが行われます。
例えば70歳以上で「現役並みの所得者(住民税課税所得690万円以上)」の場合は、自己負担限度額は年間212万円、以後、所得区分が下がるにつれて、自己負担限度額は141万円、67万円、56万円、31万円、19万円となります。
もし高齢者のご夫婦で、どちらかが介護サービスを利用し、もう一方が入退院を繰り返している場合は、この高額医療・高額介護合算療養費制度を申請することでお金が戻ってくるかもしれません。
医療費控除
有料老人ホームの費用のなかには、医療費控除の対象になるものがあります。
主な医療費控除の対象は次の通りです。
- 診察料
- 薬代
- 入院中の食事・部屋代
- 保険適用外の医療費
- 介護サービス費の一部
医療費控除の主な非対象は以下となります。
- 介護サービス費
- 賃料や管理費
- 人間ドッグなどの健康診断の費用
医療費控除の詳細は以下から、確認できます。
住宅型有料老人ホームのメリット・デメリット
最後に、住宅型有料老人ホームの施設特徴(メリット・デメリット)について確認していきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
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メリット:介護付きよりも、費用を安く抑えられる
住宅型有料老人ホームのメリットは、何よりも介護付き有料老人ホームと比較して、施設の料金が安価に抑えられる場合が多いということです。
上で述べたように、提供するサービスやかかる費用も施設ごとの差があり、自分に合ったものが選べる利点もあります。
デメリット:要介護度が重くなると、転居が必要
住宅型有料老人ホームの多くは、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどのように、介護・医療体制は整っていません。
そのため、容体が悪化して介護度が上昇したときや、医療ニーズが高まったときは、住宅型有料老人ホームを退去して、介護・医療体制が整った施設に移らざるを得ない場合があります。
また、退去するほどではなかったとしても、居宅介護サービスの利用が増えることで、結果として費用が高額になってしまうことも考えられます。
住宅型有料老人ホームを探す以下で今回ご紹介した内容を簡潔にまとめていますので、復習も兼ねて確認してみましょう。
- 住宅型は設備やレクリエーションが充実している
- 要介護度が重くなれば退去を迫られることもある
- 住宅型に必要な費用は主に「入居一時金」と「月額利用料」の2つ
- 月額利用料の主な内訳は賃料・管理費・食費・水道光熱費
- 外部の介護サービスを受ける費用は自己負担となる
- 介護サービス費の自己負担が大きくなれば、高額介護サービス費制度の利用できる
他の人はこちらも質問
老人ホームに入るのにはいくらかかるのか?
住宅型有料老人ホームに必要な入居一時金の平均額は、74.3万円で、月額料金の平均は13.5万円ほどです。介護付き有料老人ホームの入居一時金は344.4万円、月額利用料は22.6万円となっています。
住宅型有料老人ホームって何ですか?
住宅型有料老人ホームは、バリアフリーなどの設備が充実した環境の中で、生活援助や外部の介護サービスを必要とする分だけ選べる特徴があります。
生活援助サービスは食事の提供、入浴、見守り、生活相談などです。
老人ホーム代は誰が払う?
老人ホームにかかる費用の負担は、基本的に入居する本人です。
年金など支払える額が少なくても、介護サービスを利用すれば負担を減らせる可能性が高いです。本人の支払いが難しい場合は、話し合いなどから家族が負担するケースも少なくありません。
介護は月にいくらかかる?
月々にかかる介護費は平均で7万8,000円です。
介護ベッドや自宅の改修などがかかる一時的な介護費は69万円です。介護期間の平均である4年7ヵ月で計算した場合、総額500万円近く必要となります。