みんなの介護アンケート
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あるし、実際にしてしまった(919件) | |
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わからない(888件) |
認知症の方への虐待
最近、ニュースなどで高齢者の虐待について取り上げられることがあります。報道を目にしても、介護が自分の身近にない限り、自分ごとに捉えることは難しいかもしれません。
しかし誰であれ、介護の当事者になっても不思議ではありません。
介護に向きあうことになったとき、心の準備や正しい知識がないと心身の疲弊からストレスが溜まり、要介護者への虐待に発展してしまう場合があります。
みんなの介護が実施したアンケート「認知症の方を虐待しそうになったことはあるか」に対し、「ある」「虐待してしまった」と回答した方は全体の7割にも及んでいます。
高齢者虐待は年々増加傾向にある
厚生労働省によると、2017年に発覚した65歳以上の高齢者に対する虐待の件数が、過去最多の1万7,588件あったことが明らかになりました。
被害者の7割が女性で、加害者はその息子(40.3%)が圧倒的に多くなっています。次に夫が21.1%、娘が17.4%と続いています。
こうした現状を踏まえ、このページでは認知症の虐待が起こる原因や種類、対策などを解説します。
認知症の方が入れる老人ホームを探す認知症の方への虐待の種類
以下は高齢者虐待の割合を種類別にまとめた表です。
身体的虐待が最も多く、次いで心理的虐待、ネグレクト(介護放棄)と続きます。
また東京都福祉局が公表した資料では、ケアマネージャーの目線から虐待が起こる要因を公表しています。以下は回答内容をまとめた表です。
虐待要因 | 虐待の種類 | |||
---|---|---|---|---|
身体的 | 経済的 | 心理的 | 介護・世話の放棄・放任 | |
1位 | 虐待者の介護疲れ | 虐待者の性格や人格 | 高齢者と虐待者の人間関係 | |
2位 | 虐待者の性格や人格 | 高齢者と虐待者の人間関係 | 虐待者の性格や人格 | |
3位 | 認知症による言動の混乱 | 経済的困窮 | 高齢者本人の性格や人格 | |
4位 | 高齢者と虐待者の人間関係 | 高齢者本人の性格や人格 | 虐待者の介護疲れ | 配偶者や家族・親族の無関心 |
5位 | 高齢者本人の性格や人格 | 経済的利害関係 | 認知症による言動の混乱 |
虐待の内訳として最も多かった身体的虐待について「虐待者の介護疲れ」が要因「虐待者の介護疲れ」が要因ではないかと考えるケアマネージャーが最も多い結果となっています。
以下で詳しく虐待の特徴についてみていきましょう。
身体的虐待
身体的虐待とは、暴力的な行為によって身体にアザや傷を与えたり、外出させないようにしたりするなど何かを強制することを指します。
認知症の方の介護をしている場合、日々のストレスや徘徊といった症状が原因で虐待をしてしまう傾向にあります。
心理的虐待
心理的虐待とは、相手を傷付ける態度で精神的に苦痛を与えることを言います。例えば、以下のような行動が該当します。
- 言葉での脅し
- 侮辱
- 無視
- 嘲笑
心理的虐待の場合、介護者が気づかずに虐待するケースも多くみられます。
介護者が無意識に発した言葉が要介護者を傷つけ、心理的虐待へと発展してしまいます。
介護・世話の放棄・放任
介護・世話の放棄に該当する行動としては以下があります。
- 必要な介護サービスを利用させない
- 食事や入浴などの世話を行わない
- 高齢者の生活環境や心身を悪化させる
身体的虐待のように表面上の変化があまりみられないため、周りが虐待に気づきにくいです。
なお、虐待が発覚するケースとしては「行政による訪問」「医療機関の受診時」に発覚するケースが多いです。
経済的虐待
経済的虐待とは、本人の同意なしに通帳や現金を取り上げて、本人が希望する金銭の使用以外に財産を不正に使うことです。
さらに、必要な金銭を本人に渡さない場合も同様です。認知症の方は記憶力や判断力が低下するので、比較的起こりやすい傾向にあります。
性的虐待
性的虐待とは、大小便失禁のお仕置きだと陰部に詰め物をしたり、下半身を裸のまましたりするような行為を指します。
また排泄ケアの際にプライバシーに配慮しないまま対応することも性的虐待に該当します。
認知症の方が入れる老人ホームを探す認知症の方を虐待してしまう原因
そもそも、どうして虐待が起こってしまうのでしょうか。この項目では虐待の原因について解説します。
介護者のストレス
介護者が虐待をしてしまう背景として、日々の介護ストレスがあります。
在宅介護の場合、要介護者の介護度に応じて介護にかかる負担は異なります。以下は介護にかかる時間を要介護度別にまとめた表です。
区分 | 介護にかかる時間 |
---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
「要介護認定等基準時間」は要介護認定の指標としても用いられています。
これに加え、認知症介護の場合は要介護者とのコミュニケーションが困難なケースも多く、ストレスが溜まりやすい傾向にあります。
認知症介護の難しさ
認知症の症状が原因になるケースもあります。
認知症が原因で以前まできていたことが、できなくなった状況に介護者が理解できず要介護者に強く当たってしまうことがあります。
また徘徊といった症状がみられる場合は片時も目を離すことができず、精神的疲労が溜まりやすい状態です。
家族間の人間関係
親の介護を巡って、家族間でのトラブルに発展しまうケースは少なくありません。
そんなとき、感情のはけ口が要介護者である両親に向いてしまい、虐待が起こることがあります。
親の介護で家族崩壊が起きたときはどう対応する?話し合いで解決しない時の対処法を解説
社会的な孤立
介護をする環境も、虐待の要因になっていることがあります。特に都市部では近所の関係も希薄な場合が多く、介護者が問題を抱え込みやすくなる傾向があります。
また、通報してくれる人も少なく、虐待が初期の段階で気づくことが難しい面もあるのです。
希望地域から老人ホームを探す認知症の方を虐待しないための対策
この項目では虐待が起こる原因を踏まえ、対策をお伝えします。以下で順にみていきましょう。
ストレス解消方法をみつける
介護者がストレスを溜め込まないことが大切です。
ストレスを要介護者にぶつけないためにも、定期的にリフレッシュできる時間をつくりましょう。以下はストレス解消方法の一例です。
- 美味しいものを食べる
- 好きな音楽を聴く
- 香りの良いものを嗅ぐ
- 好きなテレビを観る
いずれも介護から一時的に距離を置くことで、気持ちを落ち着かせることができるでしょう。
認知症について理解を深める
冒頭でもふれたように認知症の方の気持ちが理解できずに、要介護者に強く当たってしまうことがあります。
そうならないためにも、認知症の特徴や症状を理解することが大切です。
認知症の種類
認知症の種類は大きく分けて4種類あります。以下で特徴をみていきましょう。
- アルツハイマー型認知症
- 不要なタンパク質が脳に溜まり発症します。もの忘れなどの記憶障害から始まり、見当識障害や徘徊、妄想などの症状が現れます。
- 血管性認知症
- 脳疾患が原因で発症し、損傷した脳の部位によって症状は異なります。主な症状は記憶障害や判断力障害、感情失禁などです。
- レビー小体型認知症
- みえないものがみえる幻視が主な症状で、そのほかに手足が震えるパーキンソン症状も発症する場合があります。
- 前頭側頭型認知症(FTD)
- 認知症の中で唯一、難病指定を受けています。もの忘れなどの記憶障害だけでなく、人格の変化や異常行動が目立ちます。
認知症の種類については以下の記事でも解説しています。
認知症の症状
続いて、認知症の症状を解説します。症状は大きく分けて「中核症状」と「周辺症状」の2つに分類されます。
- 中核症状
- 脳がダメージを受けたことで、直接的に起こる症状を指します。主な症状は以下の通りです。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 理解・判断能力障害
- 失語・失認・失行
- 周辺症状
- 中核症状が起きたことで二次的に現れる症状を言います。主な症状は以下の通りです。
- 徘徊
- 不安・焦り
- うつ
- 暴言・暴力
認知症の症状を詳しく知りたい方は以下の記事もあわせて確認してみましょう。
周囲や専門機関に相談する
介護に限界を感じていたり、思わず要介護者に対して手をあげそうになったときは一度、知人や専門機関に相談しましょう。
誰かに相談することで気持ちを落ち着かせることができるほか、解決の糸口がつかめることがあります。
また、相談窓口として「地域包括支援センター」があります。地域包括支援センターでは介護に関するあらゆる悩みに関する相談を受け付けています。
市町村が定める日常生活圏域に必ず1ヵ所は設置されていることから、比較的相談のしやすい窓口と言えるでしょう。
介護負担を軽減する
介護者自身も介護からひととき離れ、一人の時間をつくってリフレッシュすることが大切です。
そこで介護負担を軽減する方法を3つご紹介します。
家族間で協力しあう
在宅で介護を行う場合は家族内で介護の役割分担をすることが大切です。
特定の誰かに介護負担が集中してしまうと、介護うつや家族崩壊を招くおそれがあります。
そうならないためにも、親や兄弟で協力しあいましょう。介護を担当する日、しない日を決めることで介護者の心身も休めることができます。
介護保険サービスを利用する
兄弟が遠方に暮らしている場合など、介護の協力者を得られない場合は介護保険サービスを活用しましょう。
親の介護をすべて一人で行うことは身体的・精神的な負担が大きいため、ときには介護のプロに頼ることは大切です。
介護保険サービスの種類や利用方法について以下の記事で詳しく解説しています。
老人ホームへの入居を考える
介護と仕事が両立できなくなったり、在宅での介護に限界を感じたりしたときは老人ホームへの入居を検討しましょう。
老人ホームでは介護のプロによるサポートを受けられるほか、入居者同士のコミュニケーションを楽しむことができます。
そのため、介護者だけでなく、要介護者にとってもメリットがある選択と言えます。次の項目では認知症の方におすすめの施設を紹介していますので参考にしてみてください。
認知症の方におすすめの老人ホーム
認知症初期の方はグループホーム
グループホームは認知症のケアに特化した施設です。
「認知症の方」「施設と同じ地域に住む方」などを入居対象としており、比較的自立した方が入居しています。
施設内では9人以下が一組となって共同生活を送り、ほかの入居者と家事を分担しながら、自立した生活を目指します。
また、認知症ケアに効果的な「回想法」「音楽療法」といった取り組みが充実しています。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す認知症重度の方は介護付き
介護付き有料老人ホームでは要介護認定で最も重たい「要介護5」に対応しており、重度の認知症や寝たきりの方も入居できる施設です。
24時間体制で介護サービスを受けられるほか、医療機関とも連携していることから、もしものときも安心できるでしょう。
また居室は原則個室なため、プライベート空間が保たれており、面会時も周りの目を気にすることなく話すことができます。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す認知症の方への虐待をみかけた際の対応
要介護者の家族だけでなく、周囲の人間も虐待に気づいたら相談することが求められています。
ほかの家庭環境に口を挟むことに抵抗を感じる方もいるかと思いますが、要介護者の安全を確保するためにも、おかしいと思ったら相談することが重要なのです。
この項目では、虐待をみかけたときの対応について解説します。
高齢者虐待対応窓口に相談する
相談窓口には「市区町村の保健福祉課」や「地域包括支援センター」などがあります。
相談する際、虐待の証拠を用意する必要はありません。そのため、「虐待かもしれない」という時点で相談しても大丈夫です。
なお、虐待を相談した方の名前などは公表されないため、身元がばれる心配はありません。
ケアマネージャーによる通報が多い
虐待の相談者として最も多いのはケアマネージャーです。
虐待を受けている高齢者は加害者である家族に直接言うことができず、ケアマネージャーに打ち明けるケースが多いことが理由の一つです。
まとめ
通常の介護と比べても、認知症介護は要介護者との意思疎通が困難なケースも多く、介護者の負担は大きくなる傾向にあります。
介護ストレスが要介護者への虐待という形であらわれる前に、誰かに相談したり、老人ホームへの入居を検討したりすることが大切です。