福祉用具の貸与とは
介護保険は訪問介護や通所介護といったサービスだけでなく、日常的に使用する車椅子や介護用ベッドといった介護用品をレンタル・購入する時も利用できます。
具体的には「福祉用具貸与」あるいは「特定福祉用具販売」と呼ばれる介護保険サービスに該当し、介護用品のレンタル・購入費の補助を受けられます。
ただし、すべての介護用品を介護保険で利用できるわけではありません。利用者の介護認定によっても、利用できる用品が定められています。
このページでは、介護保険の適用となる介護用品や費用、利用時の注意点などを解説します。
介護用品の役割
介護用品は、身体機能の低下した高齢者や介護を必要とする方が、自宅で自立した生活を続ける手助けをします。
また、介護用品は本人のQOL向上に寄与すると同時に、介護者の負担を軽減する役割も担っています。
例えば、怪我をしてしまって廊下を移動することに不安を感じている方には、掴まって廊下を歩くことができるよう「手すり」を設置。安心して暮らせる環境を整えます。
なお、「手すり=設置工事が伴う」と思われる方もいらっしゃいますが、設置工事を伴わない用品もあるので、住宅を傷付ける心配もありません。
次の項目では、介護用品をレンタルした場合と購入した場合の2つのケースについて、メリット・デメリットを挙げて紹介します。
レンタルと購入、どちらが良いか迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
レンタルするメリット・デメリット
メリット
介護用品をレンタルするメリットは、お金をかけずに、本人の身体状態に応じた用具を臨機応変に使えることです。
必要な物を必要な期間だけ利用でき、利用し終えた後も「置き場所に困る」ということもありません。
介護ベッドなどは実際に購入すると高額なので、利用期間にもよりますがレンタルする方が費用面でもお得です。
また、レンタル期間も月単位だけでなく、15日単位で貸し出している事業所もあり、短期利用にも向いています。
どのくらい介護が続くのか予測できない部分もありますし、気兼ねなく使えるかどうかという点も重要です。
どちらが合っているのか、ケアマネージャーに相談すると良いでしょう。
デメリット
レンタルした場合のデメリットとしては、自分の所有物として扱えないので、汚したり傷つけたりしないように気を付けて使わなければなりません。
また、利用にあたってはレンタル事業者の利用規約を守る必要もあります。
購入するメリット・デメリット
メリット
レンタルと違い、購入した場合は自分の所有物となるので、余計な気を遣わずに使用し続けることができます。
「新品にするか、それとも中古品にするか」を買う側が自由に決められるのも、購入のメリットだと言えるでしょう。
デメリット
購入のデメリットとしては身体状態に変化があっても、介護用品を交換することはできません。
また、高額な介護用品ほど初期費用が高くなり、メンテナンスも自分で手配する必要があります。
さらに不要になったときに処分に困るケースも多いでしょう。
レンタル・購入どちらを選択するかは介護用品の使用目的や期間、ケアマネージャーの意見などを参考にしながら決めると良いでしょう。
次の項目ではそれぞれの費用(自己負担額)について解説します。
レンタル・販売の対象となる種目一覧
冒頭でも少し紹介したように「レンタル(福祉用具貸与)」と「購入(特定福祉用具販売)」では、対象となる福祉用具がそれぞれ違います。
以下で対象となる介護用品をみていきましょう。
レンタル時に介護保険の対象となるもの
福祉用具貸与は介護度別に利用できる介護用品が異なります。
以下でそれぞれ確認していきましょう
要支援・要介護1の認定を受けている方が対象となる種目
福祉用具 | 機能又は構造等 |
---|---|
手すり | 取付けに際し工事を伴わないものに限る。 |
スロープ | 段差解消のためのものであって、 取付けに際し工事を伴わないものに限る。 |
歩行器 | 歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有し、移動 時に体重を支える構造を有するものであって、次の いずれかに該当するものに限る。
|
歩行補助 | つえ松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・ クラッチ、プラットホーム・クラッチ及び多点杖に限る。 |
自動排泄 | 処理装置※1排便機能を有する以外のもの。尿又は便が自動的に吸引さ れるものであり、かつ、尿や便の経路となる部分を分割す ることが可能な構造を有するものであって、居宅要介護者等 又はその介護を行う者が容易に使用できるもの ※交換可能部品(レシーバー、チューブ、タンク等のうち、 尿や便の経路となるものであって、居宅要介護者等又は その介護を行う者が容易に交換できるものをいう)を除く。 |
要介護2以上の方が対象となる種目
福祉用具 | 機能又は構造等 |
---|---|
車椅子 | 自走用標準型車椅子、普通型電動車椅子、 又は介助用標準型車椅子に限る。 |
車椅子 | 付属品クッション、電動補助装置等であって、 車椅子と一体的に使用されるものに限る。 |
特殊寝台 | サイドレールが取り付けてあるもの、又は取り付け 可能なものであって、次の機能を有するもの。
|
特殊寝台 | 付属品マットレス、サイドレール等であって、 特殊寝台と一体的に使用されるものに限る。 |
床ずれ | 防止用具
|
体位 | 変換器空気パッド等を身体の下に挿入することにより、居 宅要介護者等の体位を容易に変換できる機能を有す るものに限る。体位保持を目的とするものを除く。 |
認知症 | 老人徘徊 感知機器認知症老人が屋外へ出ようとした時等、センサーに より感知し、家族、隣人等へ通報するもの。 |
移動用 | リフト床走行式、固定式又は据置式であり、かつ、身体を つり上げ又は体重を支える構造を有するものであっ て、その構造により、自力での移動が困難な者の移 動を補助する機能を有するもの(取付けに住宅の改 修を伴うものを除く)。 |
例外給付とは
要支援1~2、要介護1の認定を受けている方のうち厚生労働省が示した状態像に該当する方は、要介護2以上が対象となる介護用品もレンタルできます。
福祉用具 | 判断基準*1 |
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車椅子 及び付属品 |
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特殊寝台 及び付属品 |
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床ずれ防止用具 |
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体位変換器 | |
認知症老人徘徊感知 | 機器
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移動用 | リフト*2
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自動排泄 | 処理装置*3
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そのほか、福祉用具の必要性を医師が判断した場合は、介護保険適用でレンタルできる可能性があります。
なお、例外給付にはサービス担当者会議での話し合いや、市町村への申請手続きも必要です。例外給付を希望する方は担当医師やケアマネージャーに相談してみましょう。
購入時に介護保険の対象となるもの
利用者の肌に直接触れる介護用品(入浴・排泄用具など)は使い回しができないことから、特定福祉用具販売の対象です。
福祉用具 | 機能又は構造等 |
---|---|
腰掛便座 |
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自動排泄 交換可能 部品 |
処理装置の尿又は便が自動的に吸引されるもので、居宅要介護者等又はその介護を行う者が容易に使用できるもの。 |
入浴補助 | 用具入浴時の座位の保持、浴槽への出入り等の補助を目的とする用具。
|
簡易浴槽 | 空気式又は折りたたみ式等で容易に移動できるもので、取水又は排水のために工事を伴わないもの。*1 |
移動用 つり具部分 |
リフトの身体に適合するもので、移動用リフトに連結可能なもの。 |
ポータブル | トイレ持ち運びが可能な簡易型トイレ。トイレまでの移動が難しい場合、ベッドの近くに設置して使用する。 |
歩行補助具 | 歩行をサポートし転倒を防止する介護用具。
|
レンタルと異なり要介護度による制限はありませんが、介護保険を利用して購入するには事前にケアマネージャーへの相談が必要です。
購入・レンタルどちらの場合でも介護保険の対象とならないもの
消耗品である「紙おむつ」や「介護食」、「シルバーカー」などは、介護保険の適用外です。
なお、紙おむつはお住いの市区町村で現物支給や購入費助成を実施している場合があります。
介護用品のレンタル・購入料金
介護用品をレンタルする場合
介護用品をレンタルする場合、個々の負担割合(1~3割)に応じて費用が異なります。
レンタル料が1ヵ月5,000円であれば、500円の自己負担で利用できます。※1割負担の場合
また費用は要介護度別に定められている区分支給限度額の範囲内で利用する必要があり、超過した場合は全額自己負担となるので注意しましょう。
利用限度額 | 自己負担分(1割) | 自己負担分(2割) | 自己負担分(3割) | |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 5万 | 320 円5,032 | 円1万 | 64 円1万5,096 | 円
要支援2 | 10万5,310 | 円1万 | 531 円2万1,062 | 円3万1,593 | 円
要介護1 | 16万7,650 | 円1万6,765 | 円3万3,530 | 円5万 | 295 円
要介護2 | 19万7,050 | 円1万9,705 | 円3万9,410 | 円5万9,115 | 円
要介護3 | 27万480 | 円2万7,048 | 円5万4,096 | 円8万1,144 | 円
要介護4 | 30万9,380 | 円3万 | 938 円6万1,876 | 円9万2,814 | 円
要介護5 | 36万2,170 | 円3万6,217 | 円7万2,434 | 円10万8,651 | 円
例えば、要介護1(負担割合1割)の場合、16万7,650円までは1割負担で利用できますが、16万7,651円からは全額自己負担です。
また介護用品のレンタルだけでなく、通所・訪問介護といったほかのサービスとの兼ね合いも考慮する必要があります。
介護用品を購入する場合
続いて、介護用品を購入した場合の費用について解説します。
介護用品を購入する場合、年間10万円まで補助を受けることができます。
なお、年度(4月から翌年3月)が変わると毎年更新され、次の年度には新たに上限10万円までの福祉用具を購入することができます。
レンタルと同様に負担割合が1割の場合、1万円の介護用品を1,000円で購入できます。
以下では車椅子と介護ベッドを例に、レンタルと購入それぞれのケースに分けて、どちらがお得になるのかを見ていきましょう。
車椅子の場合
車椅子は「特定福祉用具販売」の対象外なので、全額自己負担です。
一般的な製品でも、3~15万円のものが多く、少なくない出費となるので慎重な判断が求められます。
300円~600円で利用できます(1割負担)。続いて、レンタルする場合の費用は月あたり3,000円~6,000円が相場です。介護保険を適用した場合300円~600円で利用できます(1割負担)。
ただし、事業者や車椅子の種類によっても左右される点に注意しましょう。
上記の内容を踏まえ、レンタルと購入それぞれの費用を比較してみましょう。
以下の表では車椅子を「1ヵ月300円でレンタルした場合」と「3万円で購入した場合」で費用を比較しています。
年数 | レンタル | 購入 |
---|---|---|
1年 | 3,600円 | 3万円 |
3年 | 1万800円 | |
5年 | 1万8,000円 |
購入するよりも、レンタルした方が費用を安くおさえられることがわかります。
また、身体状況が変化して要介護度が上がった場合、使っている車椅子が合わなくなることがあります。
そのようなとき、中古品をインターネットショップで安く買うこともできますが、レンタルであれば、定期的に点検を受けられ、身体状況に合った車椅子にすぐに変更できるメリットがあります。
介護ベッドの場合
「特殊寝台」と呼ばれる介護ベッドも、福祉用具貸与の対象です。
レンタル料の平均相場としては1ヵ月600~1,200円ほどです。
一方で、特殊寝台は車椅子同様に「特定福祉用具販売」の対象外なので、全額自己負担です。
仮に介護ベッドを実費で購入する場合、1モーター付きのベッドで8万円程度、高機能介護ベッドの場合は30万円以上する場合もあります。
以下の表では介護ベッドを「1ヵ月1,200円でレンタルした場合」と「8万円で購入した場合」で費用を比較しています。
年数 | レンタル | 購入 |
---|---|---|
1年 | 1万4,400円 | 8万円 |
3年 | 4万3,200円 | |
5年 | 7万2,000円 |
介護ベッドを5年間使い続けた場合、レンタルと購入に差はほぼ無くなります。
ただし、介護度が上がり施設入居の必要が出てくる可能性も考えると現実的とは言えないでしょう。
もし施設入居した場合、介護ベッドを処分する必要性も出てくることから、レンタルの方が結果的にお得になる可能性が高いです。
福祉用具を選ぶときのポイント
複数種類ある介護用品のなかから、自分に合ったものを選ぶのは難しいですよね。
そこで介護用品を選ぶときのポイントとして、以下の3つ紹介します。
- 身体の状態に合わせて何を使うかを決める
- この福祉用具は本当に必要かを考える
- 介護する側の負担が軽減される福祉用具かもチェック
身体の状態に合わせて何を使うかを決める
基本的に、福祉用具は自分の身体の状態に合わせて必要なものを選びます。
メーカーも気になるかと思いますが安全性や自由度、自立度などを考慮。福祉専門相談員の専門的な視点を交えて決めることが大切です。
この福祉用具は本当に必要かを考える
福祉用具を利用して自立度や自由度が増すと、便利になる反面、筋肉が衰えてできないことが増えてきてしまいます。
自分でできることはなるべく減らさないような福祉用具を選び、「今できていることは維持し続ける」ことも意識して選びましょう。
介護する側の負担が軽減される福祉用具かもチェック
冒頭でも紹介したように福祉用具のレンタルには、介護する方の負担を減らす目的もあります。
使うことで介護者の負担が少しでも軽くなるものがあれば、積極的に福祉用具の助けを借りましょう。
介護ベッド選びはモーターの数を確認
介護ベッドを選ぶ際にひとつのポイントとなるのは、「モーターの数」です。
離床時間が短く、ほぼ寝たきり状態の方の場合はモーターの数が多く、細やかな動きができる高性能の介護ベッドがおすすめです。
以下は、介護ベッドの機能をモーター数別にまとめた表です。
モーター数 | 機能 |
---|---|
1モーター |
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1+1 | モーター
|
2モーター |
|
3モーター |
|
4モーター |
|
介護ベッドに置くマットレスも重要で、本人の身体状況や好みに応じたものを選ばないと、QOL(生活の質)を悪化させることにもなりかねません。
要介護者の皮膚の状態を考え、床ずれができにくいマットレスを選ぶことが肝心です。
また、介護ベッドを普段から利用するのは要介護者だけでなく、介護者も同様です。介助者の体格に合わせて、細かく高さが調節できるような介助しやすいベッドを選ぶことも大事です。
介護用品のレンタルの申込方法
利用の手順
この項目からは介護用品を利用する際の流れについて解説します。
福祉用具の申込から使用中のメンテナンスまでの流れは以下の通りです。
- ケアマネージャーか地域包括支援センターに福祉用具のレンタルができるかどうかを相談
- ケアプランを作成して福祉用具のレンタル事業者を選ぶ
- 福祉用具専門相談員が利用者の自宅を訪問し、福祉用具を選定して提案
- 事業者が用具を納品して利用者が使いやすいかを確認
- 福祉用具を決定したのち、利用者が福祉用具貸与事業者と契約
- 福祉用具のレンタルを開始
- 福祉用具専門相談員が定期的なメンテナンスやアフターサービスを実施
以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
ケアマネージャーに相談
福祉用具貸与は介護保険サービスの一種なので、利用する場合は必ずケアプランに盛り込まなければなりません。
そのため、介護用品を保険適用でレンタルしたいときは、まずは担当のケアマネージャーに相談しましょう。
その後は実際に貸与事業者のもとを訪れて、専門相談員からアドバイスを受けながらレンタルする品を決めていき、内容に納得がいけば申し込みを行います。
もし気になる点があるなら、遠慮せずにどんどん質問することが大切です。納品されるときには、使いやすいように専門相談員が用具の調整を行ってくれます。
ケアプランの作成
ケアマネージャーは、介護用品を希望する利用者から相談を受けると利用者を訪問して、身体状況をはじめ自宅の住環境や家族の介護状況などのヒアリングをおこないます。
ケアマネージャーはヒアリングした内容を参考にしながら、介護用品ごとに購入またはレンタルする内容を盛り込んだケアプランを作成します。
利用者やその家族の希望を考慮した上で、より適切な介護用品の購入・レンタルを実現できるように気をつけます。
サービス事業者と契約
利用者はケアマネージャーのほかに、福祉用具専門相談員のアドバイスを受けながら、介護用品を購入・レンタルするサービス事業者との契約を進めます。
- 福祉用具専門相談員とは
- 介護用品の選び方や使用方法、メンテナンスなど、介護用品全般の知識とスキルを持つ資格者です。
不明点などがあれば遠慮せず、積極的に質問するようにしましょう。
利用開始・定期メンテンス
レンタルした福祉用具の使用中に不都合が発生したとき、あるいは使っているうちに利用者の心身状態に変化が生じたとき、事業者側にお願いして調整や選び直しをする必要があります。
使っていて違和感を覚えたら、レンタルした事業者に速やかに相談することが大事です。
なお、福祉用具専門相談員は利用者宅を訪れて定期的にメンテナンスを実施し、利用者が問題なく使えているかどうかを確かめることが制度上義務付けられています。
在宅介護と施設介護、どちらにすべきか
介護用品をレンタルを検討している方のなかには「在宅介護と施設介護のどちらにすべきか」と悩んでいる方は少なくないでしょう。
そこで、この項目ではそれぞれのメリットとデメリットについて解説します。
在宅介護と施設介護のメリット・デメリット
区分 | メリット | デメリット |
---|---|---|
在宅介護 |
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施設介護 |
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在宅介護は、住み慣れた自宅で過ごしながら介護を受けられることが最大のメリットです。
介護サービスと家族のケアを組み合わせると、施設入居よりも介護費用が安くおさえることも可能でしょう。
ただし、要介護度が高くなるにつれて介護者の負担が大きくなるので、本人の心身状態を考えながら在宅介護を継続するか考える必要があります。
一方で、施設介護の大きなメリットは介護のプロによる本格的な介護サービスが受けられることです。
要介護度が高い方も24時間体制で介護サービスを提供している施設なら、安心して過ごせます。
褥瘡ケアや胃ろうの管理といった医療的ケアにも対応している施設もあるため、在宅介護では対応が難しい世話が必要なケースでも安心です。
ただし、施設を利用する場合は介護費用が割高になることが多いため、家計状況によっては経済的な不安が伴います。
介護費用の心配で施設入居をためらっている方は一度『みんなの介護 入居相談センター』にお問い合わせください。
予算や希望にあった老人ホーム探しを無料でお手伝いします。
老人ホームに入居するタイミング
上記を踏まえ、施設入居を考えるタイミングについて紹介します。
おもに老人ホームへの入居を考えるきっかけとして多いのが以下の3つです。
- 要介護度が上がった
- 医療ケアが必要となった
- 認知症の症状が進行した
要介護度が上がった
加齢や病気・ケガをきっかけに、より手厚い介護が必要となって施設入居を考えるケースが一般的です。
要介護度が上がるにつれて、介護の内容や質、必要な時間が増えていきます。その結果、家族による介護や居宅サービスだけでは、本人が快適に過ごすことが難しくなるからです。
また、認知症の発症や症状の進行が目立ち始めたりすると、意思疎通が難しくなることから、プロの介護スタッフによる24時間体制のケアが必要になってきます。
このように、要介護度の変化があったタイミングで、プロの介護や認知症のケアに精通したスタッフのサポートが受けられる施設入居を検討することをおすすめします。
医療ケアが必要となった
一人暮らしをしていたり、家族の手助けだけで身の回りのことをこなせていたりした方も、病気やケガがきっかけに急に介護が必要になる場合が多く見られます。
痰の吸引や胃ろうの管理といった医療的ケアが必要になると、在宅介護でうまく対応できないことが多いため、看護職員のいる施設への入居が必要なケースが少なくありません。
医療的ケアは専門的なスキルや定期的な処置が必要です。
そのため、医療的ケアに対応している施設に入居すれば、本人や家族も医療や介護の点で安心できます。
認知症の症状が進行した
認知症は加齢による物忘れや感情の起伏が激しくなるといった初期症状から、やがて感情のコントロールが困難になる、幻覚症状や徘徊が始まる、といった症状が現れます。
認知症の症状が進行すると、生活に大きな支障をきたすため、在宅介護だけでは介護者の負担が大きくなってケアが難しくなります。
そのうち本人とのコミュニケーションも取りづらくなると、家族による介護は限界に近づくため認知症ケアに対応している施設への入居がおすすめです。
次の項目で紹介するグループホームのような、認知症ケアの専門施設を検討するようにしましょう。
入居目的にあったおすすめの老人ホーム
この項目では、入居目的や心身状態に応じて、各施設の特徴を解説しています。
在宅介護をしていくか、施設介護を選ぶべきか悩んでいる方は参考にしてみてください。
介護認定を受けていなくても入居できる「サ高住」
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー設計のシニア向け賃貸住宅です。
老人ホームとちがって、生活の自由度が高く、施設に届出することなく外出や外泊が可能です。
居室は個室型でキッチンや浴室があるため、自宅暮らしのような自由なスタイルで生活ができます。
自立の方で「一人暮らしでは寂しい」、要介護度は低いものの「いざというときが心配」といった方におすすめです。
施設側は、定期的に施設を巡回して安否確認をする見守りサービスや、悩み事にアドバイスする生活相談サービスを提供します。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す入居者とのコミュニケーションを楽しめる「住宅型」
住宅型有料老人ホームは、レクリエーションやイベントが充実しているので、健康な方がシニアライフを楽しみたいニーズに応える施設です。
入居者同士のコミュニケーションが盛んなことも特色といえます。
入居者の身体状況に合わせた食事を提供していて、介護食や治療食が必要な方も安心です。
介護が必要な場合は、外部の介護事業者と契約して、訪問介護や訪問リハビリテーションなどから必要に応じて利用します。
したがって、24時間体制の施設に比べて、介護費用を抑えられる可能性があります。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す認知症ケアの手厚い「グループホーム」
グループホームは、認知症のケアを専門としている入居施設です。
1ユニット5名から9名の少人数で共同生活を送りながら、生活リハビリを通して認知症の進行緩和を図っています。
認知症ケアのためのレクリエーションやイベント、リハビリが充実していることも、大きな魅力です。
民間施設の中では介護にかかる費用は割安の傾向があります。
ただし、住み慣れた地域で暮らし続けることを目的とした地域密着型の介護施設のため、施設の所在地に住民票がある方が入居条件となっているので注意してください。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す2018年改正でレンタル料金が適正化
事業者ごとに差があったレンタル料金
福祉用具貸与サービスでは、レンタル費用と利用者が負担する自己負担額は種目ごとに全国一律で規定されているわけではなく、貸与事業者が自由に設定できます。
そのため、まったく同じ種目・製品であっても、事業者によってレンタル費用が変わってくるのです。
事業者ごとにサービス内容やサービスにかかるコストが異なるためではあるのですが、中には悪質な業者がいて高額な費用を請求してくるケースもあり、問題視されていました。
2018年の制度改正では、国・厚労省が全国の平均レンタル金額を公表し、サービスにかかるコストなどを考慮したうえでレンタル価格の上限額を定めることに変更されました。
手続きが変わる?
介護保険制度の改正により、福祉用具のレンタルを行う事業者は、利用者に対して全国平均貸与価格と貸与事業者の貸与価格の両方を利用者に説明することが義務づけられました。
また、機能や価格帯が異なる複数の商品を提示して、利用者に製品の選択機会を増やすことも改正に含まれています。
利用者は事業者から提示された金額が妥当なのかの判断材料を得ることができますし、今までより多くの選択肢の中から使いたいものを選ぶことができます。
また、利用者に公布される福祉用具貸与計画書を担当のケアマネージャーにも交付することが義務付けられました。
これにより、福祉用具事業者の知識や知見がケアマネージャーに引き継がれ、より適正なケアプラン作成に役立てられることでしょう。
他の人はこちらも質問
介護用品のレンタルは医療費控除の対象ですか?
介護用品は、基本的にレンタルや購入いずれの場合も、医療費控除の対象外です。
介護保険を利用して車椅子や介護用ベッドなどをレンタルしている場合も確定申告の所得控除はできないので注意しましょう。
介護ベッドのレンタルは自費でいくら?
介護ベッドをレンタルする場合は自費だと8,000円〜1万2,000円ですが、介護保険だと1,000円からレンタルが可能です。
介護ベッドのレンタルは介護保険を利用すれば、自己負担1〜3割で使用できます。ただし購入をする場合は介護サービスの対象外となります。
福祉用具のレンタルはなぜ?
福祉用具をレンタルするメリットは費用の安さです。
購入すると介護保険サービスが適用されない福祉用具もあります。しかしレンタルだと、要介護2以上であれば自己負担1〜3割で利用できます。また必要な期間だけ利用できるため、利用後の置き場所にも困らないです。
福祉用具貸与はどこでできる?
福祉用具貸与は、都道府県や市区町村の指定を受けた事業者になります。福祉用具貸与事業者には、福祉用具専門相談員が駐在しており、身体の状況などから本人に適した福祉用具を選びます。
介護保険車椅子レンタルいくら?
車椅子のレンタル料は、月3,000円〜6,000円ほどで、介護保険で自己負担1割の場合、レンタル料は300円〜600円となります。
車椅子のレンタルを介護保険で利用できるのは要介護2以上です。また、購入での介護保険サービスは対象外となります。