みんなの介護アンケート
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親の介護で家族崩壊が起きた際の解決策
親の介護を巡って家族仲が悪くなるケースは少なくありません。
みんなの介護が実施したアンケートでは、介護の考え方や役割分担を巡って「家族仲が悪くなった」と回答した方は全体の9割にものぼります。
そこで、このページでは家族仲を改善したい方に向けて、解決策やトラブルにつながる原因などを解説します。
高齢者支援サービスを利用する
要介護者の介助で生じる身体的・精神的疲労は、家族崩壊を招く要因の一つです。
介護に疲れていたり、協力者が居なかったりする場合は以下で紹介する高齢者支援サービスを活用してみましょう。
プロの力を借りることは介護の小休止につながり、疲労軽減やリフレッシュすることができます。
介護保険サービス
介護保険で利用できるサービスは以下の7つに区分することができます。
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
- 居宅介護支援
- 介護保険施設
- 介護予防サービス
- 地域密着型介護予防サービス
- 介護予防支援
例えば、居宅サービスは自宅で「訪問サービス」や「通所サービス」といった支援を受けることができます。
なお、介護予防支援は要支援1~2の方が利用できるサービスです。生活支援やリハビリを通して、生活機能の維持・改善につながるケアを受けられます。
介護サービスについて詳しく知りたい方は以下の記事も合わせて確認してみてください。
介護保険外サービス
介護保険外サービスとは、名称からもわかる通り「介護保険が適用されずに全額自己負担となるサービス」です。
介護保険サービスよりも費用は高くなりますが、介護保険サービスだけでは不十分な箇所を介護保険外サービスで補うことが可能です。
例えば、ホームヘルパーの生活支援サービスがあります。介護保険サービスでも生活支援は受けられますが、同居家族がいる場合は受けられません。
しかし、介護保険外サービスであれば、同居家族がいても掃除や洗濯、配膳などの支援を受けられます。
行政サービス
自治体によっては、独自の介護支援制度を設けています。例えば、紙おむつの助成や高額医療費の一部負担などがあります。
そのほかに、在宅介護を支援するサービスもあるので、積極的に活用して家族の介護負担を軽減しましょう。
詳細については、各自治体の窓口や地域包括支援センターに問い合わせ・相談ができます。
費用減免制度を活用する
介護にかかる費用を家族内で誰が負担するか決める際に、揉めるケースも少なくありません。
この場合、介護費用を抑えたり、家族内で均等に負担したりすることが大切です。
介護にかかる支出を抑えるにあたり、知っておきたい軽減制度として以下の5つがあります。
- 1. 特定入所者介護サービス費
- 所得段階に応じて居住費と食費を減免します。
- 2. 高額介護サービス費
- 1ヵ月の介護サービス費の自己負担額が超えた際に払い戻されます。
- 3. 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 医療費と介護サービス費の1年間の支払い額が基準を超えた場合に払い戻されます。
- 4. 医療費控除
- 所得税から医療費の控除を受けられます。
- 5. 社会福祉法人などの利用者負担軽減制度
- 特定の条件を満たした場合、介護サービス費の自己負担額などを4分の1軽減されます。
費用軽減制度に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
相談窓口に問い合わせる
「家族間で話し合う機会を設けづらい」「解決策が見つからなかった」といった際は以下の相談窓口を利用すると良いでしょう。
経験や知識のある職員から、状況に適したアドバイスを受けられます。第三者からの意見をもらうことで、家族だけでは気がつかなかった解決策が見つかります。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは高齢者の総合窓口として、介護や医療、保険といった相談ができます。利用対象は、各センターが担当する地域に住む65歳以上の方や支援に携わる家族などです。
家族崩壊に関する悩みも相談でき、専門的なアドバイスをもらうことができます。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは介護サービス計画書(ケアプラン)の作成、ケアプランが適切に行われているか確認する役割を担っています。
また、施設や居宅サービス事業者との連絡・調整やケアプランの見直しなどもケアマネージャーの役割です。
要介護者の介護状況を誰よりも把握しているので、そのときの状態に合わせた介護方法や対応のアドバイスをくれる頼もしい存在です。
かかりつけの病院、主治医
高齢になると誰しも体に不調・異常が生じるものです。その際、長年にわたって親の体を診ていて、信頼関係も構築できている「かかりつけ医」がいると、心身状態のことで何かと相談できるでしょう。
また、要介護者が病院に入院している場合は、医療ソーシャルワーカーが相談に乗ってくれるケースもあります。心身のケアに関することはもちろん、入院費用などの経済的な問題についても相談できます。
兄弟で介護の役割分担を決める
在宅介護をするということになれば、役割分担が大切です。
主体者が一番負担が大きくなる役割であるため、ほかの兄弟は「どうすれば介護の主体者の負担を軽減できるか」を話し合いましょう。
具体的には「資金援助をする」「週末だけでも手伝う」「定期的に親に電話をする」などがあります。
重要なのは、介護の負担が1人に集中しないこと、そして介護者を孤立させないことです。
「親の介護を私ばかりしている」と感じる介護者は少なくない
あらかじめ、親の介護について兄弟間で役割分担をしてしないと、いざ介護が始まったときに誰か一人に介護負担が集中してしまうことがあります。
実際、長崎大学が2015年に実施した調査では2割近くの介護者が「ほかに介護を分担してくれる家族がいない」と回答。
介護による家族崩壊の一因として考えられています。なお、兄弟が遠方に住んでいる場合は上記で紹介した介護保険サービスなどを活用すると良いでしょう。
介護の小休止にもつながる
家族崩壊を防ぐ方法に、介護者が介護から離れてゆっくり休息を取る「レスパイトケア」があります。
介護が始まると、自分の時間が取れなかったり、十分に睡眠が取れなかったりと、疲労の蓄積から家族に八つ当たりをしてしまうことがあります。
そのため、介護者のリフレッシュはとても大切です。レスパイトケアでは訪問介護やデイサービス、ショートステイを利用しましょう。
施設入居を検討する
在宅介護が難しいと感じた場合は、施設入居を検討しましょう。
施設介護は介護者の負担軽減だけでなく、要介護者にとっても「専門の職員から支援を受けられる」というメリットがあります。
親の介護による家族崩壊の事例
この項目では家族崩壊が起こりやすい原因を紹介します。
「我が家は家族仲が良いので平気!」と思っていても、いざ介護がはじまると、兄弟関係が険悪になったというケースは珍しくありません。
原因を知っておくことは家族崩壊を未然に防ぐうえでも大切なことです。以下で一つひとつ見ていきましょう。
経済的困窮
親の介助の担い手だけでなく、経済的援助の有無が原因で家族崩壊に至る場合があります。介護費はおむつ代や消耗品代など、さまざまな費用が毎月発生します。
兄弟間で介護の負担額を決めていても、長引く介護で資金援助が途絶えたり介護をしない兄弟があまり援助をしなかったりするなど、資金に対して不満を感じ家族崩壊に発展します。
介護離職
親の介護をするために、子どもが仕事を辞める介護離職は多く見られます。介護離職となる理由は、親の介護をする人がいない、近所に頼れる親戚がいないことです。
介護離職をすれば収入源がなくなるため、経済的負担が大きくなるほか、社会から孤立され精神的な負担も増えます。
また、介護保険サービスの利用ができなくなったり生活費を賄うことができなくなったりするため、心の余裕が保てなくなり家族崩壊に至る場合があります。
介護うつ
介護うつは要介護者がリフレッシュできなかったり、十分な睡眠時間が確保できなかったりする状態が続くことによって発症します。
主な症状は以下の通りです。
- 気分が落ち込み憂うつな気持ちになる
- 食欲低下、食べ過ぎ
- 寝つきが悪い
- 慢性的な疲労感、倦怠感
このような症状が見られた場合は「ほかの家族に介護をお願いする」「介護サービスを利用する」といった方法を取り、介護から離れる時間をつくりましょう。
高齢者虐待
介護負担が一人に集中した結果、溜まったストレスの矛先が要介護者に向かい、虐待してしまうことがあります。
在宅介護による虐待の割合は高く、厚生労働省の調べによると、2020年度の虐待件数は1万7,000件にものぼります。
親の介護による家族崩壊を防ぐ方法
家族間でトラブルを避けるためにはどうしたら良いのでしょうか。
トラブルになる大きな原因のひとつには「準備や心構えができていないこと」が挙げられます。
そのため、親の介護が始まる前に、兄弟間でよく話し合い、もしもに備えておくことが重要です。
両親と話し合う
まだ介護が必要ない親に対して介護の話をするのは気が引けるかもしれません。
しかし、当然ながら介護を受けるのは親です。考え方や経済的な状況は、早めに把握することが大切です。
親が元気なうちに聞きたい内容として以下の2つがあります。
- 1. 在宅介護と施設のどちらが良いのか
- 子どもたちが思い込みで話をまとめても、親が望んでいる介護の方向性と違えば、いざ介護になったときに親子間で亀裂が生じる可能性があります。
- 例えば、子どもが施設入居の方向性で話し合っていたとしても、当の本人は施設入居に不安を抱き、拒否をする場合もあります。
- また、施設入居をしたいのに、金銭面を理由に諦めている場合もあります。本人の意向をしっかりと聞いておくことが重要です。
- 介護の主体者は誰が良いのか
- 介護の主体者は誰が良いと望んでいるのかという点も重要です。
- 以下は「平成29年高齢者の健康に関する調査(全体版)」をもとに、「介護を頼みたい人」について男女別の結果をまとめた図です。
- 男性の場合は「配偶者」が56.9%、女性の場合は「ヘルパーなど介護サービスの人」が39.5%という結果となっており、男女間でも意識が違うことがわかります。
介護費用の捻出方法を考える
両親の年金や預金だけで介護費用をまかなうことが厳しい場合、兄弟で介護貯金を積み立てておくのもひとつの手段です。
介護費用は親の貯金から出していくと決めた場合でも、介護には出費がつきものです。
介護が始まってからでも遅くはないので、「毎月○○円ずつ積み立てる」といったルールを決めておくと、不平等さもなくなるでしょう。
親の貯蓄・収入から賄う
親の「経済的状況」を把握することで、兄弟間での介護費用の分担がスムーズになります。
親の年金額や預貯金がどのくらいあるかを先に聞いておけば、足りない分を早い時期から兄弟間で貯金するなどの対策ができ、介護が始まっても慌てることもないでしょう。
また、親が介護の状態になってから、抱えているローンの存在を知った…というケースもあるため、借金などを抱えていないかについても確認しておきましょう。
2025年には5人に1人が認知症になると言われています。通帳や印鑑、権利証などの重要書類の場所も、認知症などの状態になる前に知っておくことが大切です。
介護する場所を在宅か施設か決める
両親が介護状態になってからだと、費用捻出や兄弟の役割分担などが曖昧になりトラブルに発展しやすいです。そのため介護状態になる前から、介護方針を考えることが大切です。
また、両親と離れて暮らしている場合は移動費もかかります。考えておきましょう。
入居目的に合ったおすすめの老人ホーム
この項目では、心身状況や入居目的にあった施設を紹介します。
親の心身の状態や希望条件はもちろんですが、家族の要望も照らし合わせながら見ていきましょう。
手厚い認知症ケアを受けたい方は「グループホーム」
親が認知症のため、充実した認知症ケアを受けたいときはグループホームがおすすめです。
グループホームは、認知症の進行を遅らせるケアを受けられる施設で、1ユニット9人以下のグループで共同生活を過ごします。家庭的な雰囲気のなか、入居者同士で家事をして脳を活性化させ、症状や進行を緩和します。
また入居者同士のふれあいもありますが、少人数で顔ぶれも変わらないため、環境変化を苦手とする認知症の方も安心して暮らせます。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す最期まで同じ施設で暮らしたい方は「介護付き」
介護付きは要介護5まで受け入れる介護サービスの整った施設です。入居途中で要介護が重くなっても変わらずに入居でき、看取り可能な施設も多いです。
介護付きでは介護サービスを定額で利用できます。毎月定額なので費用を把握しやすく、多くの介護サービスを使う方は費用負担を軽減できます。
同じ有料老人ホームの住宅型にはありませんが、介護付きは医療機関との協力関係を結び、施設内では看護職員が日中常駐しており、医療を必要とする方におすすめです。また居室は個室タイプなので、プライベートも確保しやすいです。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す介護サービスを選びたい方は「住宅型」
住宅型では食事の提供、掃除などの生活支援や見守りサービスを受けられます。
介護サービスの提供はなく、外部のサービスを利用します。そのため、必要な介護サービスを自由に決めたり必要なときだけ使ったりしたい方に人気の施設です。
また、住宅型はバリエーションが豊富なレクや趣味を活かしたサークル、季節ごとのイベントが盛りだくさんです。ほかの入居者や職員とコミュニケーションが取りやすいので、ひとり暮らしの方も一緒に楽しめます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探すプライベートを重視したい方は「サ高住」
サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)は自宅と近い環境で暮らしたい方におすすめです。有料老人ホームだと自由な外出は難しいですが、サ高住は好きなタイミングで外出できます。また居室にはキッチンや浴室が完備され、自由に料理をつくったり入浴を楽しんだりすることも可能です。
設備は施設ごとで異なりますが、レストランや温泉施設、シアタールームを備えており、ほかの入居者と楽しく過ごせます。
サ高住で提供されるサービスは安否確認・見守りサービスで、必要に応じて外部のサービスを利用できます。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す話し合いによる解決が困難な場合
もしも兄弟間の話し合いで解決できなったときは、法的手段を取って解決していくことも考えましょう。
家庭裁判所(調停・審判)
兄弟間のトラブルにより、話し合いだけでは解決できない場合もあります。そのようなときは、家庭裁判所に「扶養請求調停」を申し立てることができます。話し合いをするうえで、調停委員は以下について確認します。
- 生活状況…介護に必要な人的負担はどれくらいか具体的な状況を把握します。
- 経済状況…親、兄弟の収入を源泉徴収票や所得証明書などで提出してもらいます。
最後に「兄弟間の感情の行き違い」や「親に対する想い」、そして「介護に対する考え方の違い」などを調停員が聞き取りを行います。そして客観的な資料をもとに調停委員が解決策を提示します。
例えば「介護の人的負担をしていない兄弟に毎月〇万円の金銭援助をする」といった解決策を提示された場合、双方が合意すれば調停成立となります。
その後、裁判所が合意内容の書面(調停調書)を作成し、その内容を履行します。もしも支払い義務を果たさない場合は、強制執行が可能で、債務者の財産が差し押さえられます。
調停で合意されなければ「審判」に移行
もし調停の話し合いで合意に至らなかった場合、「審判」という手続きに移行されます。
- 審判とは
- 調停で合意がとれなかった事項について提出書類や調査結果をもとに、裁判所が当事者に代わって取り決めを行うこと
最終的に裁判官が決定し、兄弟はその決定事項に従うことになります。
親との同居や費用の負担を命じた例も
家庭裁判所が親との同居を命じたり、他の兄弟姉妹に対して費用の負担を命じたりと、裁判官が役割分担をする機能を担った例もあります。
審判結果に納得がいかなければ抗告することができますが、審判結果が通知され2週間が経過すると、審判が確定します。
まとめ
兄弟とはいえ、お互いの生活期間が長くなれば、本音で話し合う機会は自然と減っていきます。
お互いに自立して接点が薄れていた兄弟が、親の介護によってさらに疎遠になってしまうのではなく、連絡を取り合って支え合っていける関係になるのが一番望ましいです。
大切なのは、各家族に合った介護の形を探し、模索していくことなのではないでしょうか。