心臓病とは?
心臓病には、心臓そのものに異常をきたすタイプや、心臓にうまく血液が流れなくなる虚血性のものなど、さまざまな種類があります。
心臓そのものに異常をきたすタイプには、心臓の壁に穴が開く「欠損症」、心臓の血流を調整する弁構造に異常が発生する「心臓弁膜症」、心臓の筋力が低下する「心筋症」などがあります。
心臓にうまく血液が流れなくなる虚血性のタイプは、心臓に栄養を供給する冠状動脈が動脈硬化を起こす「心筋梗塞」が挙げられます。
また、脈の打ち方が乱れる不整脈にはいくつかの種類があります。そのうち脈がバラバラになる「心房細動」は高齢者に多く、心臓の動きが弱くなる心不全や脳の血管を詰まらせる脳梗塞の原因になります。
心臓病の代表格は心筋梗塞
日本人の死因で第2位は心臓病。厚生労働省が3年に1度行っている「患者調査」の2014年版を見ると、心臓病の総患者数は172万9,000人です。
高血圧症、高脂血症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の患者数は多く、それらが引き金となって多くの人が心臓病を発症していると考えられます。
心臓病と大きく言っても、その種類はさまざまなものがありますが、なかでも近年増えているのが、動脈硬化が原因となる虚血性心疾患のひとつ「心筋梗塞」です。
心筋梗塞は、心臓病の中でも死亡率が最も高い
動脈硬化が原因となる虚血性心疾患は、心臓病の中でも徐々に発症率が増えており、そのひとつである急性心筋梗塞の死亡率は約20%となっています。
この病気の場合、発作が起きて数時間以内に死亡するケースが約半数。夜間の時間帯や一人暮らしだと救命救急治療が遅れることが多く、最悪の場合、死亡してしまう可能性が高いと言えます。
急性心筋梗塞は救急救命治療をいかに早く行うかが「命の分かれ道」となってくるため、すぐに救急車を呼ぶのが鉄則です。このとき、心臓疾患に関する専門的な治療室(=CCU)が整っている病院で治療を受けることが重要です。
心臓病の種類と症状
虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
虚血性心疾患は、心臓に栄養や酸素を送っている冠動脈が、動脈硬化などの影響で狭くなる疾患で、心臓の血管が詰まってしまう「心筋梗塞」や心臓が酸素不足に陥る「狭心症」などが代表的な病気です。
生活習慣病と深く関わり、最初に起こった発作による突然死の危険性も高い病気です。
心筋梗塞は冠動脈がふさがって心筋に血液が流れない状態になる症状で、心筋が壊死してしまい、重症化すると死に至るケースもあります。
以前は、心筋梗塞を発症した人の3人に1人程度は1~2週間以内に死亡していたとも言われていますが、今では冠状動脈疾患集中治療室(CCU)が設置されている病院を利用することで、死亡率を約8%まで減少させることができました。
一方、狭心症は、冠動脈が完全にはふさがれていないものの、非常に細くなっている状態です。完全に血流が止まっているわけではないので、血流量が戻れば心筋の障害は回復します。
狭⼼症の多くは動脈硬化を原因とすることが多いです。
ただ、突然冠動脈にけいれんが起こり、狭⼼症と同じ症状が出る「冠攣縮(かんれんしゅく)性狭⼼症」という症状もあります。この場合、危険な不整脈なので早期に医師の診察を受ける必要があります。
深夜の発作時の「とりあえず朝まで様子見」はNG!
もし夜中に心臓発作が起こったとき、「明るくなるまで様子を見よう」と考えてしまうと、対応が遅れて取り返しのつかない事態を招くことがあります。
また、高齢者や糖尿病患者だと痛みを感じにくくなっていることも多く、症状をきちんと自覚できないまま心筋梗塞を発症しているケースもあるので注意が必要です。
もし発作が起こったら、我慢せずにできるだけ早く病院に行くことが大事。その際は、吐き気や冷や汗などの症状が出ていないかにも注意しましょう。
心臓弁膜症
心臓には、血流の逆流を防いで流れを一方通行にするために4つの弁があります。これらの弁に障害が起こる病気が「弁膜症」です。
弁膜症には、弁が硬くなってスムーズに開きにくくなる「狭窄症」と、開いた弁が閉じ切らなくなってしまい血液が漏れる「閉鎖不全症」があります。
発症原因は主に動脈硬化ですが、幼いころに発症するリウマチ熱の合併症として起こり、20代で弁の障害が進み、30~40代頃にはっきりと問題が生じる、というケースも少なくありません。
狭窄症と閉鎖不全症が一緒に発症することもあり、大動脈弁と僧帽弁に障害が生じているときは手術が必要になります。
発症することで現れる症状としては、息切れや呼吸困難といった心不全が典型例ですが、軽い状態であれば自覚症状は少なく、重症化するにつれて症状が強く出るようになることが多いです。
大動脈瘤(りゅう)
心臓から体全体に血液を送るうえで、一番太い通り道となっているのが大動脈です。
大動脈瘤とは、この大動脈における壁が弱くなり、一部がこぶのように大きくなってしまう病気のことを言います。大動脈瘤は、大動脈内のどこにでも起こる恐れがあり、発生する場所によって胸腹部大動脈瘤あるいは腹部大動脈瘤と分類されるのが通例です。
こぶが破裂すると死に至ることも多い恐ろしい疾患ですが、適切に治療を行うことで破裂を防ぐことができます。
大動脈瘤には「真性動脈瘤/仮性動脈瘤」と「解離性動脈瘤」とがあり、真性動脈瘤/仮性動脈瘤では、破裂するまではほとんど自覚症状がないので、病院で検査しない限り発見することができません。
ただ、声がかすれる、むせる、血痰が出るといった症状が出ていると、こぶが急激に大きくなっている恐れがあるので、早急に専門医に診てもらう必要があります。一方、解離性動脈瘤は、胸から背中にかけてある日突然、激痛が走るのが特徴です。
時間の経過とともに痛む場所が移動することもあります。
心房細動(不整脈)
不整脈には大きく分けて、脈が速くなる「頻脈性不整脈」と脈が遅くなる「徐脈性不整脈」があり、各不整脈はさらにさまざまな症状に分類されます。
不整脈のすべてが危険というわけではありませんが、息切れやめまいなどの症状が強く出て日常生活に支障が出る不整脈や、心不全や突然死の原因ともなる不整脈もあります。
特に高齢者世代に多いのは、「心房細動」と呼ばれる不整脈です。
心房細動によって心房の壁が細かく震える状態になると、血液の流れがスムーズにいかなくなり、壁の内側に血液が付着して血栓ができやすくなります。
日本では70歳以上人口の2%、80歳以上人口の3%が発症しているとみられています。なお、欧米では80歳以上人口の10%を占めるとの研究報告もあるので、日本は欧米よりも発症割合は低いです。
心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)
心房中隔欠損症は、右心房と左心房に挟まれた「心房中隔」という壁に、生まれたときから穴が開いている疾患です。
酸素を肺で取り込んだ動脈血は左心房から左心室に入り、そこから体全体へ送られるのが正常な心臓の状態です。
しかし心房中隔欠損症を患っていると、動脈血が一部、心房中隔の穴を通って左心房から右心房に流れてしまい、再度肺循環に入りこんでしまいます。
左心房から右心房に流れ込んだ分、右心房と右心室の負担が増えてしまい、さらに肺に対する血流が増えるので、肺うっ血や肺高血圧などの症状も現れるのです。
生まれつきの疾患とは言え、思春期までは自覚症状がないケースがほとんどで、30歳頃までに肺血管の血圧が上がるようになり、呼吸困難や不整脈といった自覚症状が出始めます。
先天性心疾患全体の6~10%ほどを占めており、男性よりも女性に多くみられると言われています。
大動脈解離
大動脈は外膜と中膜、内膜の3層構造になっていますが、なんらかの理由で内膜に裂け目ができて中膜の中に血液が入り込み、血管壁が血流の方向に裂けてしまうことを大動脈解離と言います。
突然、胸や背中に激痛が走り、病状が進行するにつれて痛みが胸から腹、脚へと下向きに移動するのが特徴です。原因には高血圧や動脈硬化、遺伝性疾患、高脂血症などが考えられますが、はっきりしていません。
治療は、まず痛みを抑える薬物療法から入り、解離した血管を人工血管に置き換える手術をするのが一般的です。
心筋症
心筋症には、肥大型心筋症と拡張型心筋症の2種類がありますが、いずれも心臓の筋肉(心筋)に異常をきたすことで発症します。
肥大型心筋症は心筋が厚くなることで左心室の拡張機能が衰える病気で、原因は遺伝性の場合が多いとされています。主な症状には胸痛や息切れ、失神などがあります。
拡張型心筋症は心筋が拡大することで左心室の収縮力が衰える病気です。進行すると心不全や不整脈が生じるため、これらを抑えることが治療の中心になります。
どちらの疾患も治療は薬による対症療法です。
心臓腫瘍
心臓腫瘍は心臓由来の原発性と、ほかの部位から移る転移性の2つに分けられます。非常に稀な疾患ですが、1,000人に1~2人程度の割合でみられると言われています。また、その4分の3は良性腫瘍です。
しかし、そのまま放っておくと血栓が付着して腫瘍がはがれたり、腫瘍そのものが遊離して血管を詰まらせたりする可能性があります。突然死のリスクをなくすためにも、早期の手術が不可欠です。主な症状としては、倦怠感や発熱、ふらつき、立ちくらみ、体重減少、失神などが挙げられます。
心臓病の原因・予防
心臓病の原因
心臓病の多くは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などをきっかけに、動脈の血管壁の部分に「プラーク」と呼ばれる物質が蓄積する「粥状硬化(じゅくじょうこうか)」によって発症する病気です。
粥状硬化とは、動脈の血管壁に悪玉コレステロールである「LDLコレステロール」が入り込み、お粥のような「粥腫(じゅくしゅ)」が発生する動脈硬化のことを言います。
また、塩分の摂りすぎなどによって高血圧の状態が続くと、血管は弾力性を失っていき、動脈硬化が起こりやすくなるので注意しなければなりません。さらに高血圧の状態が続くと、血管が傷つきやすくなり、動脈硬化がさらに進みます。
心臓病リスクを上げる食品1 飽和脂肪酸
飽和脂肪酸とは、肉や乳製品といった動物性の脂肪酸のことです。
ベーコンやチーズ、クッキーなどに多く含まれていて、肝臓のコレステロール合成を促進する作用があるため、心臓病を回避したいなら過剰な摂取は控える必要があります。
一方、ごま油や魚、豆腐などに含まれる不飽和脂肪酸は、肝臓のコレステロールの合成を抑える働きがあり、できるだけ摂取することが望ましい栄養素です。
飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸かを見極める方法としては「油が固まるかどうかに注目する」ということがあります。飽和脂肪酸の油は基本的に「固まる油」です。一方、不飽和脂肪酸は「固まらない油」です。
心臓病リスクを上げる食品2 トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は、血中における善玉コレステロールである「HDLコレステロール」を減少させ、悪玉コレステロールである「LDLコレステロール」を増やす作用を持つ物質です。
普段からトランス脂肪酸を過剰に摂取していると、摂取量が少ない場合に比べて心臓病のリスクが上昇することが研究によって明らかにされています。
マーガリンやケーキ、ファストフードなどを含む加工食品に含まれていることが多いです。トランス脂肪酸は食品から摂取する必要がないと考えられており、過剰摂取にならないよう気をつける必要があります。
心臓病の予防
心筋梗塞や狭心症に対する治療は、起こってしまった動脈硬化を完全に治すものではありません。そのため、病気を発症させないためには、動脈硬化を予防することが大事になります。
まずは栄養バランスの取れた食事を食べることが大切です。塩分や糖分、そして脂肪分の過剰摂取に注意して、高血圧症や糖尿病、脂質異常症を防ぎましょう。
また、適度な運動を日常生活の中に取り入れておくことも大きなポイントになります。激しい運動ではなく、毎日一定の距離を歩く習慣をつけるなど、無理なく続けられる運動が望ましいです。
運動によって気分転換を図って、規則正しい生活を送るようにしましょう。遺伝性の面もあるので、もし親族に狭心症や心筋梗塞症の人がいるなら、特に生活習慣を厳しく見直す必要があります。
禁煙する
たばこの煙には数多くの有害物質が含まれていて、特に循環器に対しては、一酸化炭素やニコチンが悪影響を及ぼします。
また、血管の内皮にも害を与え、血管の収縮、血液の凝固、そして動脈硬化をもたらすので、心臓病の予防を考えるうえでは、禁煙は欠かせない条件と言えます。
長年吸い続けて高齢になってから禁煙をするのは大変なので、若いうちから禁煙に取り組むことが大事です。
さらに血圧に与える影響も大きく、たばこを吸っていない人の血圧が平均で収縮期110前後、拡張期55前後であるのに対して、たばこを吸う人は収縮期130前後、拡張期65前後まで上がります。
脈拍についても非喫煙者は毎分62回前後が平均であるのに対して、喫煙者は80回以上になります。
血圧や脈拍数が高いと心臓に余計な負担をかけてしまい、機能低下を引き起こすことによって心臓病のリスクを上昇させてしまいます。
伝統的な和食を食べる
日本が欧米に比べて狭心症や心筋梗塞の発症者数が少なかった理由は、食生活における差が大きいと言われています。
例えば長寿県として知られる沖縄県では、高たんぱくかつ低塩分で海藻をふんだんに使った琉球料理が、平均寿命の長さにつながっていると考えられています。
一方、塩分の高いファストフードやインスタント食品、糖分の多いペットボトル飲料などは、過剰に摂取すると健康に悪影響を与える食品です。
日々の食事では、海藻やキノコ類、ネギやニラをはじめとする茎野菜など食物繊維が豊富な食材を摂り、塩分は1日あたり10gに抑えることが大切。たんぱく質は大豆製品や牛乳によって補うことがおすすめです。
運動は万病予防になる
日常的に適度な運動を行うことが心臓病の予防につながります。
具体的な取り組み方としては、腕立て伏せや重量挙げのような筋力だけを鍛える無酸素運動ではなく、ウォーキングや軽いジョギング、軽い水泳などによる有酸素運動を行うことがポイントです。
運動は、1週間あたり3~4回ほど、1回あたり30分以上続けるのが理想です。
また、早朝もしくは深夜は日中よりも冠動脈が収縮していることが多いため、運動を避けることも大事。朝運動するときは、起きてすぐではなく、起床後1時間ほど経過してから行うと良いでしょう。
老人ホームでも、日頃からスタッフの付き添いでウォーキングなど適度な運動が行われています。また、専用の機能訓練室があり、さまざまな器具を使った運動に取り組める施設も多いです。
ストレスを抱えない
心身に重いストレスがかかると、血液中のコレステロールが増えて動脈硬化が進行しやすくなるほか、交感神経のホルモンが増加して血管の収縮や血圧の上昇も起こりやすくなります。
動脈硬化症や血管の収縮、そして高血圧症は、心臓病を引き起こす大敵です。
焦らず、イライラしない日常生活を送るようにし、ストレスを避けることが、心臓病を予防する上では大事です。
長年、ストレスの多い生活を送り続けると、高齢となってからでは取り返すことが難しくなってしまう恐れもあります。
食生活や運動習慣、睡眠などに気をつけたり、定期的にリフレッシュしたりして、若いうちからストレスを回避する生活を心がけましょう。
高齢者と心臓病
心不全は高齢になるほど発症しやすいことが分かっており、50代における発症率は約1%にとどまっていますが、80歳以上になると10%まで上昇するとの研究報告もあります。
このように心不全の患者数が増えていく背景には、急速な高齢化が大きく影響しています。
高齢になると、さまざまな持病をはじめ、心身状態に多数の問題を抱えやすくなります。例えば、身体機能、認知機能、栄養状態、活動性など幅広い意味で虚弱状態となる「フレイル」や、筋肉量の減少によって身体機能が低下する「サルコペニア」、認知症などです。さらに、心不全もそのひとつであると言えます。
もし一人暮らしをしていて発症の恐れが出たときは、老人ホームに入居して見守りのケアを受けるというのもひとつの方法です。
高齢者は「心臓の収縮が保たれたままの心不全」が多い
心臓には、血液を循環させるうえで2つの機能を持っています。体中に血液を送るための「収縮機能」と、体中を巡って戻ってくる血液を取り入れる「拡張機能」です。
近年、高齢者における心不全の半数は、心臓の収縮力があるにもかかわらず、左心室が広がりにくくなるために発症する「拡張機能不全」を原因とすることが、研究により明らかにされています。
高齢化が進む日本では、拡張機能不全に陥る潜在的な患者数は相当数に上るのではないかと指摘する専門家もいます。
高齢者は高血圧や糖尿病など基礎疾患を持ち、日頃から活動的に動いていないことも多いため、拡張機能不全が起こっていることを認識しにくく、放置してしまうケースも少なくありません。
拡張機能不全は血液を心臓に戻す力が弱くなっているので、うっ血やむくみなどの症状が現れます。心臓に不安のある人でこうした症状がみられたら、早めに医師に相談しましょう。
老人ホームだと、日頃から健康検査が行われているので、兆候を早く発見してもらいやすくなります。
高齢者の心不全とフレイル・サルコペニア
高齢者の心不全には、フレイルやサルコペニアが深く関係しています。
特に、老人ホームなどで普段から安静にしている人は、運動量が不足して、筋肉量が低下して、寝たきりになることも・・・。
では、そのフレイル、サルコペニアについて、具体的に見ていきましょう。
フレイルとは、日本語で「虚弱」を意味する言葉で、高齢者における心身の活力や筋力が低下した状態のことです。
心不全を発症すると、息苦しくなりやすいので体を動かす頻度が減り、フレイル状態に陥るリスクが高まります。また、もともとフレイル状態で栄養状況もよくない人が心不全を起こした場合は治療が難しく、症状がなかなか改善しないということも多いです。
このことから、心不全とフレイルは相互に悪影響を与えあう関係にあるといえます。心不全が軽い段階から、フレイルの改善につながるような適切な対処をしていくことが望まれます。
一方、サルコペニアは、ギリシャ語で「筋肉」と「喪失」を意味する言葉を組み合わせたもので、筋肉量が減って身体機能が下がっている状態を意味します。
心不全を発症すると長期間の安静が必要になるので、サルコペニアになるリスクが高まります。発症者本人はもちろん、普段介助をしている家族や介護職員も、身体機能が過度に低下しないような生活習慣を心がけましょう。
特に、老人ホームの利用者には安静にしすぎている人も多いので、フレイルやサルコペニアに陥らないよう注意する必要があります。
心筋梗塞になった高齢者は継続的なリハビリテーションが必須
心筋梗塞を一度発症した人は一部の心筋が壊死しているため、心臓が十分に収縮することができません。そのため、壊死した心筋部分に代わって心筋の健康な部分が補うように働き、患部が全体的に広がっていきます。
その結果、健康な部分の心筋に負担がかかるようになり、最終的には心臓全体が弱っていくのです。心筋梗塞発症後は、次第に心機能が衰弱していく「慢性心不全」に悩むことになります。
そのため、一度でも心筋梗塞を発症した人は、再発を防ぐために積極的に治療に取り組む必要があります。
コレステロールを下げる薬を服用して血液をサラサラにすることも大事ですが、最も注意すべきなのは、患者自身の生活習慣の見直しです。
心臓の肥大や機能低下を引き起こすアルコールや過剰摂取を避けることや、血圧を上昇させる塩分を控えること、たばこを吸っていた人は禁煙することが、心筋梗塞の発症を防ぎ、心不全を予防するうえで不可欠と言えます。
さらに心臓のリハビリを行うために、運動をして負荷をかけることも重要です。各患者の運動能力に合わせた運動療法を継続することで、心筋梗塞発症後の死亡率が低下することが研究によって明らかにされています。