要介護2とは
要介護2は日常的な動作(簡単な調理や買い物など)や食事、排泄などで部分的に介助を要する状態です。
見守りや手助けに必要となる時間が要介護1よりも多い場合に、要介護2と認定されます。
また、認知症を発症している方が要介護2に認定されるケースも多いです。
要介護2の心身の状態について、厚生労働省の公表する指標は以下の通りです。
また要介護2の状態について厚生労働省は以下のような具体例を挙げています。
- 買い物や簡単な調理、爪切りなどの身の回りのこと全般に何らかの介助が必要
- 起き上がりや歩行が自力ではできない
- 排泄や入浴で一部、もしくは全般的に介助が必要
- 問題行動、理解低下がみられる
この状態はあくまでも目安であり、同じ要介護度でも個人差があります。そのため、要介護認定では「介護にかかる時間」が基準として用いられています。
次の項目で「要介護認定」について見ていきましょう。
要介護2の認定基準
要介護認定の基準には、厚生労働省が定めている「要介護認定基準時間」があります。
この要介護認定基準時間とは、「介護の手間」にかかる時間を示しています。本人の能力、介助の方法に加え、障がいや認知症の有無をもとに推計されています。
以下は要介護度別に要介護認定基準時間をまとめた表です。
区分 | 介護にかかる時間 |
---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
上記表からもわかる通り、介護度が高くなるほど、介護にかかる時間が増えています。
要介護について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
要介護2の方の割合
厚生労働省が発表した『平成30年度 介護保険事業状況報告』(厚生労働省)によると、要介護(要支援)認定者数は658万人に到達しました。※2019年3月末時点
そのうち約17%にあたる約114万人が、要介護2の認定を受けています。これは要介護度別にみると、2番目に多い割合です。
要介護2と、要介護1・要介護3との違い
要介護2と1の違い
介護にかかる時間からもわかる通り、要介護1は要介護2よりも軽度の状態です。
要介護1の場合は買い物や歩行などの身の回りの動作で介助が必要です。
一方で、要介護2の場合は簡単な調理・金銭の管理・爪切りといった動作でも介助が必要になるほか、自力で起き上がったり、歩いたりすることが困難となるケースもあります。
よって、要介護1よりも要介護2の方が介護サービスを利用する頻度も増えるでしょう。
要介護2と3の違い
要介護3はトイレや入浴、衣服の着脱など身の回りのことほぼすべてに介護を要する状態です。
加えて、認知症の症状がある場合は問題行動が多々みられる場合もあります。
そのため、見守りや介護にかかる時間も要介護2の場合より長くなるでしょう。
要介護2では一人暮らしできる?
要介護2の認定を受けている方でも、一人暮らしは可能です。
ただし、認知機能の有無によっても一人暮らしの可否は分かれるので注意しましょう。
以下では、要介護2で一人暮らしをしている方の割合や、一人暮らしをする上でおさえておきたいポイントを解説します。
一人暮らしをしている人の割合
「令和2年度版高齢社会白書」(内閣府)によると、65歳以上の男性で約192万人、女性は約400万人が一人暮らしをしています。
なお、この数字は要介護認定を受けていない方(自立)も含まれていますが、要介護認定を受けた後も介護サービスを適切に利用することで、一人暮らしを続けられるでしょう。
高齢者向けサービスを利用する
見守りサービス(遠方に住む家族に代わって、高齢者の生活をサポートするサービス)などの高齢者向けサービスを活用することで、安心して一人暮らしを続けることができます。
見守りサービスには以下のような種類があります。
- 配食サービス
- 高齢者向けの食事を定期的に届けるサービスのこと
- 緊急時駆け付けサービス
- 自宅にセンサーを設置し、利用者の行動に異変が生じていると判断される場合、警備員が駆け付けるサービスのこと
- 外出時の見守りサービス
- 利用者がGPS搭載の端末を持ち歩き、緊急時に通報できるサービスのこと
配食サービスは基本的に毎日提供されることから、なにか異変があった場合も配達員に気付いてもらえる利点もあります。
離れて暮らす家族や親族にとっても、こうした見守りサービスは安心材料の一つとなるでしょう。
なお、これらサービスの利用方法はケアマネージャーや自治体の窓口などに相談すると、自分に合ったサービスを提案してくれます。
少しでも不安を覚えたら、施設入居を検討する
もし一人での生活に限界を感じたら、できるだけ早く施設への入所を検討しましょう。
高齢者向けサービスは便利ですが、利用頻度が増えると費用負担が大きくなります。
その点、老人ホームなら見守りサービスを契約せずとも、施設スタッフによる見守りを受けながら生活できるので、費用を安くおさえることができます。
ページ内では要介護2の方におすすめの施設も紹介しているので、合わせて確認していきましょう。
1人暮らしのケアプラン例
性別 | 年齢 | 既往症 | 身体状況 |
---|---|---|---|
女性 | 75歳 | 高血圧 | 排尿障害で医療的な対応が必要。 |
上記の身体状況にある方が、一人暮らしを続ける際に利用するケアプランと月額費用を紹介します。
サービス内容 | 利用回数 | 詳細 | 自己負担額 |
---|---|---|---|
通所介護 | 2回/週 | 9時~16時 入浴介助加算8回 |
6,328円 |
訪問介護(生活支援) | 2回/週 | 20分以上 45分未満 |
1,432円 |
訪問看護 | 2回/週 | - | 2,512円 |
杖レンタルル | 1か月 | - | 100円 |
合計 | 10,372円 |
要介護2の方が受けられるサービス
以上のケアプラン例で紹介した介護保険サービスのほかに、どのような種類があるのか確認していきましょう。
以下では、要介護2の方が使える介護保険サービスの種類と内容を解説します。
在宅介護で利用できるサービスの種類
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 夜間対応型訪問介護
- 居宅療養管理指導
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
これらサービスは「訪問型」「通所型」「短期入所型」「複合型」の4つに分類できます。それぞれの概要は以下の通りです。
- 訪問型
- 訪問介護ではヘルパーが自宅に来て、食事や排泄などの身体介護に加えて、調理や掃除、洗濯といった生活援助のサービスを受けられます
- 通所型
- 介護を必要とする方が自ら介護施設などを訪れ、リハビリや介護サービスを受けられます
- 短期入所型
- 療養生活の質向上、家族の負担軽減を目的に、介護施設にて日常生活の介護サービスを受けることです
- 複合型
- 「通所介護(通い)」「短期入所生活介護(泊まり)」「訪問介護(訪問)」のサービスを1つの事業所で受けられます。
訪問介護や通所介護を個別に契約する必要がなく、連続性のあるサービスを受けることができます。
デイサービスの回数
利用頻度は本人の身体状況によって異なりますが、デイサービスでは週3、4回利用するケースが多いです。
各サービスを週に何回、どのように組み合わせて利用するかは、要介護2に認められた支給限度額をもとに、担当のケアマネージャーと相談して決めましょう。
施設介護サービスの種類
施設介護サービスとは、介護保険施設に入居して受ける介護サービスのことです。
対象となる施設は以下の4つです。
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
なお、特別養護老人ホームは入居要件が要介護3以上となっているため、要介護2の方は原則として入居できません。
また、特定施設入居者生活介護の認定を受けている場合は以下の施設でも同様のサービスを受けることができます。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 軽費老人ホーム(ケアハウス)
ここまでは「介護保険施設」「特定施設入居者生活介護」について紹介しましたが、もうひとつ覚えておきたい施設介護サービスに「地域密着型サービス」があります。
地域密着型サービスとは、市町村指定の事業者が地域住民に提供する介護サービスです。老人ホームの一種でも「グループホーム」がこれに該当します。
いずれも施設ごとに入居要件は異なるため、本人の心身状態を正確に把握しておくことが大切です。
要介護2でレンタル・購入できる福祉用具
レンタルできる福祉用具
介護保険適用で福祉用具をレンタルできる「福祉用具貸与」というサービスがあります。
要介護2の場合だと、歩行補助杖(松葉杖や多点杖など)、手すり、介護ベッドなどが必要となるケースが多いです。
その他、以下の福祉用具をレンタルできます。
- 歩行器
- スロープ(工事を伴わないもの)
- 車椅子
- 車椅子付属品
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 認知症老人徘徊感知機器
- 移動用リフト(工事を伴わないもの・つり具部分を除く)
- 自動排泄処理装置(尿のみ吸引するもの)
これらはすべて、介護保険適用で自己負担1~3割でレンタルできます。
購入できる福祉用具
毎月の介護サービスの利用上限額とは別に、年間10万円を上限として、福祉用具の購入費用の9割(高所得者は7~8割)が介護保険から支給されます。
例えば、自己負担1割の場合に1万円の福祉用具を購入する場合、自己負担額は1,000円です。
介護保険適用で購入できる福祉用具の種類は以下の通りです。
- 腰かけ便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトの吊り具部分
- ポータブルトイレ
- 固定用スロープ
- 歩行器(歩行車を除く)
- 単点杖(松葉づえを除く)
- 多点杖
要介護2でかかる費用例
要介護2で介護保険サービスを利用した場合の費用や負担割合について見ていきましょう。
要介護2の区分支給限度額(保険給付)
介護保険サービスの利用料は介護度別に支給限度額が定められています。限度額内であれば、所得に応じて1~3割の自己負担額でサービスを利用できます。
要介護2の場合、支給限度額の上限は「1ヵ月あたり19万7,050円」です。このうち1~3割を利用者が自己負担する必要があります。
例えば、1割負担で1万9,705円、2割負担なら3万9,410円です。
在宅介護と施設入居の費用を比較
要介護2と認定された場合にかかる、在宅介護と施設介護のおおまかな費用を表で比較してみましょう。
区分 | 在宅介護 | 介護付き 有料老人ホーム |
住宅型有料 老人ホーム ・サ高住 |
グループホーム (2ユニット) |
|
---|---|---|---|---|---|
年金 | 収入 | 25万円 | |||
月額利用料 ※家賃・管理費等 |
支出 | 0円 | 10万6,000円 | 7万円 | 8万円 |
生活費 ※食費・水道光熱費等 |
20万4,865円 | 10万5,000円 | 7万5,000円 | 5万4,000円 | |
介護サービス費 ※自己負担1割 |
6,060円 | 1万8,120円 | 7,736円 | 2万3,610円 | |
医療費 | 4,378円 | ||||
介護用品購入費 ※おむつ・介護食等 |
8,810円 | ||||
その他 ※妻の生活費等 |
0円 | 9万円 | |||
支出合計 | 22万4,113円 | 33万2,248円 | 25万5,924円 | 26万648円 | |
収支 | 2万5,887円 | ▲8万2,128円 | ▲5,924円 | ▲1万798円 |
老人ホームの費用については以下の記事で詳しく解説しています。
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在宅介護と施設入居のケアプランを比較
以上の項目では費用の観点から在宅介護と施設入居を比較しましたが、この項目ではケアプランの内容から違いを確認していきましょう。
冒頭で紹介したBさんのケースをもとに家族構成を変えて紹介します。
要介護2で親子3人暮らしの場合
Bさんがご主人と息子との3人で暮らしている場合のケアプランと月額費用です。
サービス | 内容利用回数 | 詳細 | 自己負担額 |
---|---|---|---|
ショート | ステイ2回 | 1泊2日を2回 | 5,720円 |
通所介護 | 2回/週 | 9時~16時 入浴介助加算8回 |
6,328円 |
訪問看護 | 1回/週 | - | 1,256円 |
杖レンタル | 1か月 | - | 100円 |
合計 | 13,404円 |
要介護2で施設入居の場合
Bさんが有料老人ホームに入居している場合のケアプランと月額費用です。
サービス内容 | 利用回数 | 詳細 | 自己負担額 |
---|---|---|---|
通所介護 | 1回/週 | 9時~16時 入浴介助加算4回 |
3,324円 |
訪問介護(生活支援) | 12回/週 | - | 8,592円 |
訪問看護 | 1回/週 | - | 1,256円 |
杖レンタル | 1か月 | - | 100円 |
合計 | 13,272円 |
要介護2の方におすすめの老人ホーム
この項目では、要介護2の方が入居できる老人ホームを紹介しています。
入居目的や身体状況別に、それぞれの施設の特徴を解説しています。ぜひ老人ホームを選びの参考にしてください。
「サ高住」は自宅同様の生活を送ることができる
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では、上記で紹介した見守りサービスを受けることができます。
見守りサービスの費用は月額利用料に含まれているので、追加で料金が発生することもありません。
また外出や1日の過ごし方に制限はなく、自分のライフスタイルに合わせて生活できます。
さらにサ高住は通常の賃貸住宅とは異なり、バリアフリーな住環境が整っています。そのため、自宅のリフォームを考えている方にもおすすめの施設と言えるでしょう。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す「住宅型」は入居者同士のふれあいを楽しめる
住宅型有料老人ホーム(住宅型)はサ高住とは異なり、入居者同士でスケジュールに沿った共同生活を送ります。
一人暮らしに寂しさを感じていた方も、レクリエーションやイベントなどを通して、交流を楽しむことができます。
介護サービスに関しては居宅サービスのなかから、必要としているサービスを自分で選んで利用します。
なお、介護サービスの費用はサービスを利用した分のみ支払います。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す「介護付き」は追加費用を気にせず介護サービスを利用できる
介護付き有料老人ホーム(介護付き)は住宅型とは違い、介護サービスの費用は月額定額です。
そのため、追加費用を気にせずに好きなだけ介護サービスを利用できます。
ただし、そこまで介護サービスを必要としない場合は、かえって費用が高くついてしまうことがあるので注意しましょう。
要介護5の方、寝たきりの方の受け入れにも対応しているため、介護度が上がっても転居の必要がありません。
居室も原則個室となっているため、プライベートも確保しやすい環境です。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す「グループホーム」は手厚い認知症ケアを受けられる
グループホームは、要支援2または要介護1以上の認定を受け、医師から認知症の診断を受けている方を入居対象とする施設です。
また、地域密着型サービスの施設であるため、施設と同じ地域に住民票のあることも入居条件となっています。
入居後は5~9人の入居者でユニットと呼ばれるグループを作って共同生活を送ります。
共同生活では他の入居者と調理や清掃、洗濯などの家事を分担。家事作業を通して認知機能の維持・改善を図ります。
また、認知症の進行を遅らせるためのレクリエーションやリハビリを専門スタッフから受けることも可能です。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す要介護2に関するQ&A
特別養護老人ホーム(特養)への入居は可能か
特養は原則「要介護3以上」でなければ入居できません。
ただし、以下の条件を満たす場合は、要介護2であっても特例として入居できる場合があります。
- 特別養護老人ホーム(特養)の特例条件
-
- 認知症や精神障がい、あるいは知的障がいによって日常生活に支障が生じる行動が多く、周囲の人との意思疎通が困難になる状況が頻繁にみられる
- 家族などによって虐待が行われ、本人の心身の安全、安心の確保が困難
- 単身、あるいは同居する家族が高齢・病弱で家族の支援が期待できない。さらに地域サービス、生活支援サービスの提供が不十分である
なお、実際に要介護2でも入居できるかどうかは、同じ特養でも地域や施設によって変わってきます。入居を希望する場合は、各施設に確認しましょう。
【わかりやすく解説】特養(特別養護老人ホーム)とは?入所条件・費用・申し込み方法
障害者控除は受けられるか
障害者控除は配偶者もしくは扶養親族に障害者がいる場合に、所得控除を受けられる制度です。
「精神や身体に障害のある年齢満65歳以上の人」も障害者控除の対象に含まれていますが、要介護2の認定を受けただけでは控除対象とはなりません。
障害者控除を受けるには、市町村や福祉事務所長から別途認定を受ける必要があります。
認定基準は自治体によって違いますが、要介護2の方であれば申請さえすれば対象になるケースもあるので、まずはお住まいの市区町村役所のホームページでご確認ください。