身元保証人とは

身元保証人は、利用者の認知症進行や病状の悪化などにより、本人が入居に関するさまざまな判断や手続きを行えなくなった場合に、それらを代わって行う役割を担っています。
具体的な役割は「連帯保証人」と「身元引受人」の2つです。
それぞれの概要は以下の通りです。
- 連帯保証人
- 入居者が月々の入居費用の支払いができなくなったとき、利用者に代わって支払いを行います。
- 身元引受人
- 利用者が亡くなったとき、身柄を引き受け、退去時の清算や手続き、荷物の引き取りなど行います。
身元保証人を依頼する側も、身元保証人になる側も、お互いにどのような役割を担っているかを正確に理解しておくことが大切です。
なおページ内では「身元保証人が担う4つの役割」を詳しく解説していますので、合わせて確認しましょう。
身元保証人と身元引受人の違い
一般的に「身元保証人」が本人に代わる意思決定、トラブル時の対応、支払い債務の連帯保証の役割などを担うことが多いです。
対して「身元引受人」は、亡くなった際の身柄の引き受け、荷物の引き取りや退去時の手続きを行う人のことを指します。
ただ明確な線引はないことから、施設によっては身元保証人と身元引受人が同じ意味で使用されることも珍しくはありません。
身元保証人が必要な理由
身元保証人は施設側にとっても、安定経営を存続するうえで重要な役割を担っていることから、ほとんどの老人ホームでは身元保証人(身元引取人)を必須としています。
以下は(公社)全国有料老人ホーム協会が、全国の各施設を対象に「身元保証人を立てる必要があるか否か」アンケート調査を行った結果をまとめた表です。

「入居時に第三者の身元保証人を立てる必要がある」と回答した介護付き有料老人ホームでは89.2%。一方で「立てる必要がない」と回答した介護付き有料老人ホームは7.0%でした。
また住宅型有料老人ホームも同様に82.2%が「立てる必要がある」、12.5%が「立てる必要がない」と回答。
つまり、約9割の有料老人ホームが、身元保証人の存在を必要としていることがわかっています。
身元保証人の条件
保証人に関する概要を紹介したところで、この項目では身元保証人になるためにはどのような条件があるのか見ていきましょう。
身元保証人になるうえで明確な基準は法律などで定められてはいませんが、多くの施設では以下の条件を設けています。
- 資産・収入を証明する書類
- 入居者の親族であること
- 年齢が高すぎないこと
身元保証人を必要とする施設のほとんどで、保証人の役割を任せられる人かどうかの審査があります。そのため、老人ホームに入居する際は身元保証人に依頼できる人を2人以上決めておくと安心です。
一般的には、年収がわかる収入証明の書類を提出することが多く、施設によっては複数の条件を設定しているところもあります。
また、配偶者や兄弟など高齢者の場合は身元保証人になれない施設もあるので、可能な限り年齢が若い親族に頼むのがおすすめです。
審査では「責任を負えるかどうか」が重要
入居者に代わって意思決定をしたり、支払いの肩代わりをしたりと、責任が重い身元保証人。
そのため「老人ホームにおける保証人の責任を負える人であるか」という観点で審査が行われます。
審査の厳しさは、施設ごとに大きな差があります。入居前に提出する書類では、一定以上の年収、資産状況、年齢、血縁関係などが確認できるものが必要です。
条件さえ満たしていれば知人でも身元保証人になれる老人ホームがある一方で、審査が厳しく親族ですら拒否される施設もあるので注意が必要です。
保証人は変更することもできる
保証人が死亡した場合や資産状況が変わってしまった場合など、身元保証人を変更せざるを得ない場合があります。
そういった時は、老人ホームに入居後したでも保証人を変更することができます。
なお、身元保証人になる条件を満たしているかの審査がもう一度必要となるので、老人ホームに事情を説明してから必要書類を提出しましょう。
身元保証人の4つの役割
身元保証人になる条件がわかったところで、この項目では保証人が担う役割をもう少し詳しく解説します。
身元保証人の役割は、大きく分けて以下の4つに分けられます。
- 家賃などの支払いにおける経済的保証
- 事故や病気、死亡時など緊急時の連絡
- 病気や怪我の治療方針の確認、入院手続き
- 死亡後の退去手続きや身柄引き取り
以下でそれぞれの内容を見ていきましょう。
1. 家賃などの支払いにおける経済的保証

介護施設に入居したり、病院に入院したりした際に必ず発生するのが、料金の支払いです。
介護施設の月額利用料などの支払いが遅れてしまった場合、身元保証人がこの債務(支払う責任のこと)を担います。
身元保証人がいない場合には、「連帯債務」を負う人にこれらの支払いを求めることができます。
そのため介護施設のなかには、身元保証・身元引取を行う保証人とは別に、支払い能力がある「連帯保証人」が必要となるケースもあります。
2. 事故や病気、死亡時など緊急時の連絡

入居者が持病を持っていたり、介護を必要としたりする場合には、どうしても事故や急変などのリスクが高まります。
そのため、身元保証人は急変時や事故発生時の緊急連絡先となります。
3. 病気や怪我の治療方針の確認、入院の手続き
高齢になると、認知症などによって判断能力が低下するリスクが高まります。いざというときに本人が意思決定できず、医療処置や介護方針を定まらないケースも少なくありません。
身元保証人は、本人に意思決定が難しくなった場合に、医療的侵襲行為(検査・投薬・注射・手術等)などの判断をする役割は付与されていません。
しかし、ガイドラインに沿って医療・ケアチームと話し合って、「本人の推定意思」を検討するメンバーとして参加できます。
4. 死亡後の退去手続きや身柄引き取り

身元保証人は入居者が老人ホームで亡くなった場合に、ご遺体の引き取りや葬儀の手配などを行います。
退去時の荷物の引き取りや、医療費と未払い分の利用料を清算することも必要です。
このように大切な役割と責任がある身元保証人は、なかなか安易に任せることができないため、「身元保証人がいない…」という高齢者も少なくありません。
保証人や身元引取人がいないときの対処方法

施設入居を希望するにあたり、身元保証人がいない場合はどうすれば良いのでしょうか。
この項目からは「身元保証人が居ない高齢者がどのくらい居るのか」、また「身元保証人が居ない場合の対処方法」を紹介します。
身元保証人がいない高齢者が増えている
未婚率の増加や、一人暮らしをしている高齢者の増加に伴って、家族や親族に頼ることができない方は年々増えています。
以下は内閣府が発表した「令和3年版高齢社会白書」の統計データをもとに作成したグラフです。

上記表からもわかる通り、2015年時点の一人暮らしをする高齢者男性が約192万人、女性が約400万人となっており、その数は今後も増えていくことが予想されています。
続いて、以下の表で高齢者人口に占める一人暮らしをしている高齢者の割合を見ていきましょう。

高齢化がこのまま進んでいけば、2040年には4人に1人の高齢者が一人暮らしをしている可能性があります。
こうした現状を踏まえ、身元保証人が居ない場合でも施設入居できる方法がいくつかあります。以下で詳しく見ていきましょう。
方法1. 身元保証人がいらない老人ホームを探す

老人ホームの中には、身元保証人を不要としている施設もあります。また、施設側に相談することで、身元保証がいなくても入居できるケースもあります。
身元保証人がいない場合は、その点を検索条件として施設を探すと良いでしょう。
以下のボタンから、「身元保証人相談可」とする施設を検索できます。
身元保証人相談可の施設を探す方法2. 身元保証人サービスを使う

身元保証人サービスとは、家族などに代わって、身元保証人を代理就任してくれるサービスです。
入居時における手続きのサポートや、病院への緊急搬送時の対応、財産管理などを有料で請け負ってくれます。
サービスを提供している企業や団体は弁護士事務所やNPO法人、公益社団法人などです。
運営元によってサービス内容や料金も異なるから、しっかりと内容を確認したうえで利用することが大切です。
身元保証会社の料金・費用
身元保証会社を利用するには多くの場合、契約時に支払う初期費用と継続的に支払う月額利用料が発生します。
サービスの例としては、以下のようなものがあります。
- 老人ホームに入居する際の身元保証人になる
- 退去時の身柄引取人になる
- 保有財産を年次で確認する
- 退去時の原状回復責任を負う
プランによっては、老人ホーム入居後に利用者が亡くなられた後までサポートをしてくれます。そのときには、以下のような契約書を交わす場合があります。
- 死後事務委任公正証書契約
- 亡くなった後の諸手続きになどに代理権を付与して委任する契約のこと
- 死後事務委任公正証書契約
- 亡くなった後の諸手続きになどに代理権を付与して委任する契約
- 任意後見構成証書契約
- 任意後見人に財産管理などを代理してもらう契約
- 尊厳死宣言公正証書契約
- 延命措置をせずに尊厳死をする意思表示をする公正証書
生涯で支払う費用は数百万円にも上ることがあるので、保証内容や契約内容を精査し、必要がないサービスは契約しないように注意しましょう。
保証会社を選ぶときには、その法人の信頼度や実績を加味し、慎重に決めなければなりません。
身元保証人がいない場合でも、検討できる施設は多数あります。詳しくは『みんなの介護』入居相談センターまでお問い合わせください。
方法3. 成年後見制度を活用する
老人ホームによっては、成年後見人を立てることで入居できる施設もあります
成年後見人とは、認知症などにより判断能力が低下した人のために、本人に代わって契約の締結や財産の管理、各種手続きを行う人のことです。
成年後見人には「任意後見人」と「法定後見人」の2種類があります。
以下が任意後見人と法定後見人の概要です。
- 任意後見人
- 現在まだ判断能力を有する人が、前もって選定しておく後見人のこと
- 法定後見人
- 既に判断能力が失われた人のために選ぶ後見人のこと
任意後見人は、後見を受ける本人が後見人を任意に選べる点が特徴です。
後見人に対して、どのような権利を任せるのかも事前に決めておくことができます。
なお法定後見人は、家庭裁判所の判断によって後見人が選定されます。
成年後見制度の注意点
成年後見制度は認知機能が低下している人をサポートするための制度です。
以上でも解説したように、任意後見制度は認知機能が低下した状態では利用できません。そのため、すでに認知機能の低下が見られる場合は法定後見制度を活用しましょう。
また、必ずしも成年後見制度を活用すれば全ての施設に入居できるわけではないことに注意してください。
成年後見人を立てることで入居できるかは施設によって異なるので、制度を利用する前に確認することが重要です。
方法4. 高齢者家賃債務保証制度を活用する
家賃債務保証制度とは、所定の要件を満たす人が賃貸住居に入居する場合、家賃債務を保証することで賃貸住宅への入居をサポートする制度です。
運営者である高齢者住宅財団が連帯保証人の役割を担い、家賃などの債務を保証してくれます。
家賃債務保証制度の対象となるのは、以下に該当する方です。
- 高齢者(60歳以上)世帯
- 障がい者世帯
- 扶養義務のある子ども(18歳以下)が同居している世帯
- 外国人世帯
- 住居退去世帯(会社を解雇されたなど、収入状況の変化が原因)
高齢者住宅財団と基本約定などを締結している賃貸住宅であれば、保証人がいない方でも保障人を必要とする施設に入居できる可能性があります。
まとめ

一人暮らしの高齢者の増加に伴い、なかなか身元保証人を頼むことができないケースも増えてきています。
そんな時は身元保証人サービスの利用や、身元保証人を必要としない施設への入居を検討しましょう。
もし「どうしたら良いかわからない」という方はプロの相談員に相談してみることをおすすめします。
『みんなの介護』入居相談センターでは、プロの相談員が一人ひとりの状況や希望に合った施設を無料で紹介しています。
他の人はこちらも質問
老人ホームの保証人は誰?
老人ホームの身元保証人は誰でもなれるとは限りません。施設によっては、配偶者や兄弟などの高齢者は身元保証人になれないと定めています。できるだけ若い親族2人以上に依頼すると安心です。身元保証人がいない場合は、身元保証人の不要な施設の検討、身元保証サービスを活用するなどしましょう。
老人ホームの契約者は誰?
老人ホームの契約者は基本的に入居する本人です。しかし本人の心身の状態によって契約が難しい場合は、身元引受人が代理で契約できます。
身寄りのない高齢者はどうする?
身元引受人がいない場合、成年後見人や保証会社を利用することで、施設の入居が可能となるケースが増えています。成年後見人は財産など身の回りのことを本人に代わり意思決定を行います。
高齢者住宅は何歳から入居可能ですか?
有料老人ホームは60歳以上から入居できる場合があります。グループホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などは65歳以上からとなります。ただし、特定疾病が認定されていれば64歳未満でも入居が可能です。

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