介護離職とは
介護離職とは、要介護状態になった家族の介護に専念するために、介護者が本業である仕事を辞めてしまうことを指します。
高齢者人口の増加とともに要支援・要介護認定者数も増加しており、働き盛り世代が介護者となる傾向が続くことが見込まれます。
離職者数の現状
厚労省による「令和4年就業構造基本調査」によると、1年間で介護を理由に介護離職をした人は10万人以上にものぼっています。
総数 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
2007年 | 144,800 | 25,600 | 119,200 |
2012年 | 101,100 | 19,900 | 81,200 |
2017年 | 99,000 | 24,000 | 75,000 |
2022年 | 106,000 | 26,000 | 80,000 |
男女別の内訳を見ると、女性の方が男性よりも圧倒的に多く、2022年の回答では全体の約8割が女性であることも明らかになっています。
夫婦間で収入の低いケースが多い女性の方が男性の代わりに親の介護を担うことが多いことから、こうした男女間での差が出ていると予想されます。
出典:「令和4年就業構造基本調査」(厚生労働省)
働きながら介護する人の割合(年代別)

高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者は年々増加傾向にあり、家族を介護する人の数も増えてきています。
総務省「就業構造基本調査(2012年)」によると、企業に雇用されながら介護をする人の割合は男女合計で約240万人いるとされており、自営業などをする傍ら介護を担う人を加えると、この数はもっと多くなると考えられています。
上の表を見ていただくとわかりますが、介護をしながら働いている年代を見てみると、40代から徐々に増え始め、50代がピークとなっています。
50代といえば、社内において課長や部長クラスの役職を任され重要なポジションに就くことが多い年代です。それと同時に、リストラ候補に挙がってしまう年代でもあることから、介護は大きく仕事に影響を与えることとなります。
一口に仕事と介護と両立と言っても、日本における会社組織の習慣から、介護休業制度などを利用できず、やむなく介護離職・転職をする人も多いのです。
介護離職に至る原因

介護離職は、家庭によってさまざまな事情から生じるものです。
一般的に考えられる背景には、介護を必要とする本人が、自宅での家族による介護を希望するケースが多いです。
また、施設介護にはまとまった費用が毎月かかるため、経済的な事情で老人ホームではなく在宅介護を選ぶ場合も多く見られます。
このほか、介護休業制度を利用する実績がまだまだ少ないため、雇用する企業も従業員がどこまで介護に携わっているのか、仕事と介護の両立をしているのか、実態を正確に把握していないのも社会の課題です。
勤務先に家族の介護について相談したり、介護のために職場で出勤時間や業務内容の調整を図ったりといった取り組みが求められます。
介護離職の問題点
やむを得ない事情から介護離職を選択する方が多くいるなか、離職することでより大きな問題を抱えることになったというケースは珍しくありません。
ここでは、介護離職には具体的にどのような問題点があるのか見ていきましょう。
再就職時に待ちうける困難

生活全般すべてに介助が必要な場合や、認知症を発症するなど、介護レベルが高い場合、介護離職という選択をせざるを得ない例が少なくありません。
「2012年就業構造基本調査」によると、「介護・看護」を理由に前職を離職した人は2011年10月から翌年9月までの期間で10.1万人。過去5年間で約49万人。そのうち、転職をして現在も仕事をしている人は12.3万人。無職となっている人は36.4万人にものぼります。
介護と仕事の両立が難しくなり仕事をやめた場合、介護の必要性がなくなり再就職となったときの年齢が、介護離職年齢層は50代が多いことから、再就職が難しいという現状もあります。家族の介護をする人にとって介護中の経済的負担はもちろん、介護後も金銭面で不安が残るという厳しい現実が待っています。
再就職が厳しい
日本では、介護を理由に離職してしまうと、施設への入所や親との死別により介護をする必要がなくなったとしても再就職は厳しいのが実情。
「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社」が40代・50代の正社員および正社員から介護を機会に離職した約3,000人を対象に行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査(2012年)」があります。これによると、介護離職後に離職前と同様に正社員として再就職ができているのは半数にも満たない結果となっており、4人に1人が仕事をしていない無職の状態にあることがわかっています。

また、介護離職から再就職するまでの期間で最も多かったのが、男女ともに1年以上経過してからです。
仕事とまったく関係のない介護を長い期間行うことでキャリアが分断され、就業への意欲も減退してしまうことなどが再就職を難しくしている要因のひとつと言えます。
こうした状況からも見て取れる通り、介護離職は介護をしていた側の生涯賃金を下げ、介護生活が終了しても自分自身の老後への金銭的不安が多く残る現状となっているのです。
介護転職後の収入は減少傾向
続いて介護離職者の転職後の働き方について見ていきましょう。

2014年、「株式会社明治安田生命生活福祉研究所」と「公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団」が共同で親の介護経験のある全国の正社員約2,300名を対象にした調査を行いました。
それによると、介護のために転職をした場合そのまま正社員で働けているのは男性で34.5%、女性で21.9%。
介護にかかる時間を確保するためにはパートやアルバイトなどに従事せざるを得ない状況が明らかになっています。
また、介護転職をした後の年収の変化においては、介護開始前と転職直後を比較すると男性が556.6万円から341.9万円にダウン。女性で350.2万円から175.2万円への減収がみられました。さらに男性は約40%、女性は約50%も収入が減っています。
転職に伴い、雇用形態を正社員からパート・アルバイトに変えている人の割合が特に女性で多くなっていることが減収の要因のひとつと考えられます。
しかし、介護と両立できる労働条件を考えると、正社員では働けないというのが現実のようです。
介護離職によるメンタルダメージ
実際に介護離職をしてみると、「こんなはずじゃなかった」というメンタルダメージも、介護をする側には常につきまといます。
「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査(2012年)」によると、介護離職をした離職者約1,000人のうち、精神面・肉体面・経済面それぞれで負担が増加したと考える人は多くいます。
精神面で約64.9%、肉体面で約56.6%、経済面においては約74.9%の人が、介護離職により負担が増したと感じていることがわかっています。

介護離職には常に、無職状態になり収入源を絶たれるリスクがつきまといます。
転職ができても収入減につながる可能性が高いことから、経済的負担が増すことは明らか。
それだけでなく、介護生活によって社会から孤立し、精神的な負担も増してしまいます。
親の介護を子どもの役割としてしっかりと全うしたいと考える方も少なくありません。
しかし、介護離職は介護をする家族への負担が大きいので、よく考えてから決断すべきでしょう。
できることなら、職場の介護支援制度などを利用したり、上司と働き方について話し合い理解してもらったりするなどで調整し、介護離職以外の選択肢をまずは検討してはいかがでしょうか。
介護うつ・介護殺人
介護によるストレスや、「家族は自分できちんと見なくては」という強い責任感などが原因で、「介護うつ」の状態に陥るケースも多いです。
特に、介護者の社会的な孤立が深まってしまって強い閉塞感を持つようになると、介護者の心のバランスが崩れてしまい、精神的に追い込まれやすくなります。
さらに最近では、介護に疲れて将来を悲観するあまり、家族である被介護者を殺してしまうという「介護殺人」の事件に発展するケースも珍しくありません。
家族全員で心中を図るというケースもあり、介護疲れを放置するとこのような最悪な結果を招く恐れもあるわけです。
介護疲れは介護離職の原因となりますが、同時にこのような介護うつや介護殺人などを引き起こす危険性もあります。
「介護者となったとき、孤立を防ぐにはどうすれば良いのか」、あるいは「介護の悩みを誰に相談すれば良いか」といったことは、実際に介護に直面する前から考えておくべき問題とも言えるでしょう。
介護離職のメリット・デメリット
介護離職の最大のメリットは、介護と仕事の両立による心身の負担を軽減できることです。当然のことですが、介護は精神的にも肉体的にも大変です。仕事と両立するのは相当な負担になるため、介護だけに集中できるのは大きなメリットと言えます。
また、家族が介護に集中できることで、施設への入居や介護サービスの利用にかかる費用を軽減することができます。
一方のデメリットは、大きな収入源がなくなることです。それまでの貯蓄や親の年金だけに頼ることになるので、将来的には生活に困窮する可能性があります。さらに一度仕事を辞めてしまうと、それまで積み重ねてきたキャリアを捨てることになり、介護後の再就職も難しくなる可能性があります。
メリット
介護離職を選択すると、次のようなメリットがあります。
仕事の時間や労力を介護に投入できる
仕事を辞めれば、通勤時間や勤務時間といった時間のコストや、仕事で使う心身の負担から解放されます。
そのため、気持ちや身体面で余裕が生まれるため、家族の介護に集中して取り組めます。
家族が世話をする分、介護費用を抑えられる
家族中心で介護をすれば、外部の介護事業者の介護サービスを利用する費用を軽減できます。
仕事のストレスがないためメンタル的に安定する
通勤や仕事の業務で生まれる仕事のストレスがなくなるため、精神的にも肉体的にも落ち着いて介護ができます。
介護を受ける家族の意向に合わせたケアができる
家族同士だからこそ、受けたい介護を本音で話し合って、できるだけ応えようというきめ細かなケアが可能です。
介護のプロにはお願いしづらいことも、家族になら頼める場合は多いでしょう。
このように、仕事にかかっていた時間や体力・気力を介護に集中できることが、大きなメリットといえます。
デメリット
メリットがある一方で、介護離職にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
ひとつずつ見ていきましょう。
仕事で得ていた収入がなくなる
正社員であれば毎月の給与のほかにボーナスもなくなるため、生計が苦しくなるケースが多く見られます。
介護をする家族自身のライフスタイルが変わってしまう
介護者の人生設計を変更して家族の介護を選ぶことで、仕事や結婚、出産や引っ越しなどを諦めなければならない場合が少なくありません。
必要な介護が増えるほど家族自身の時間が取れなくなる
要介護度が高くなるにつれて、一日中介護につきっきりにならなければいけなくなります。常時介護するとなると、自分の用事や休息に充てる時間すら削ってケアする必要があります。
社会復帰が難しくなる
一度仕事から離れると、正社員での再就職が難しい、同じ賃金や役職での待遇が受けられないなどのデメリットを抱えてしまいます。
上記のように、介護離職によって経済的に不利な状況になる、介護に自分の時間をほとんど使わなければならないといったデメリットが発生します。
介護負担軽減のため老人ホームを利用する
介護離職は収入がなくなるため、経済的な不安が多く、介護で自分の時間がなくなるといったデメリットがありました。
そこで、有料老人ホームでの施設介護が選択肢として考えられます。
有料老人ホームへ入居すれば、家族は介護の負担を軽減できる可能性があります。
代表的な有料老人ホームをピックアップして、それぞれの特徴を紹介します。
介護付き有料老人ホーム
本格的な介護を中心に、食事や清掃、入浴などのさまざまな生活支援を提供しています。
また、介護職員による服薬管理や褥瘡のケアなど、入居者に応じた医療的ケアが受けられることも大きな特色です。
要介護度の高い人や認知症の症状が進行している場合でも、安心して暮らせる環境が整っています。
施設によっては看取りに対応しているため、「終の棲家」に選ぶ人もいます。
月額費用は定額となっており、入居金は0~580万円、月額費用は15.7~28.6万円が相場です。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探す住宅型有料老人ホーム
自分の必要に合わせて介護サービスを選べるため、費用面で無駄のない介護が受けられます。
また、入居者同士のコミュニケーションを図っている施設が多く、老人ホーム主催のイベントやレクリエーションが充実しているのもポイントです。
入居者の中心は要介護1~2の方です。
施設によって自立や要介護度の高い方、認知症の方も暮らしています。
入居金は0円から21万円、月額費用は9.6万円から16.3万円が目安です。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探すサービス付き高齢者向け住宅
ひとり暮らしに不安を抱えている、比較的元気なシニアが入居しています。
自立~要支援、要介護1~2の方が中心で、外出や外泊もしやすく、自由度の高い生活を送れるため人気です。
サービス付き高齢者住宅は「サ高住」と略して呼ばれることが多い施設です。
厳密には老人ホームではなくシニア向けの賃貸物件で、サ高住の大半を占める一般型の場合、入居者は必要に合わせて外部の介護サービスを利用しながら生活します。
入居金は0円から20.4万円、月額費用は11.8万円から19.5万円が相場です。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探すグループホーム
認知症患者を専門に受け入れている、1ユニットあたり5~9名の小規模施設です。
入居者は、認知症ケアの専門スタッフのもと、それぞれの能力に応じて家事を分担しながら共同生活を送ります。
施設の入所条件として、所在地のある自治体に住民票がある人が対象です。
住み慣れた地域で長く暮らし続けたいニーズにマッチする入居施設のひとつです。
入居金は0円から15.8万円、月額費用10万円から14.3万円が相場です。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す
介護休業制度について
介護の際に利用したい休業制度

少子高齢化社会において、介護をする方が現役で働いているというのも、珍しい話ではありません。
しかし、介護度が高くなればそれだけ介護にかかる時間も増えますし、平日の通院付き添いや行政手続きなど、フルタイムでの仕事をしながら両立するのは簡単なことではありません。
仕事と介護、どちらも大切なことではありますが、介護をしながら仕事をすることが大変という理由から、働き慣れた職場を辞める介護離職者数も増加傾向にあります。
とはいえ、介護離職をしてしまえば日々の収入源が絶たれ、しばらくは貯金でやりくりできたとしても、だんだんと生活が苦しくなってしまうのは当然のこと。
親の介護を理由に介護離職をする人は年間10万人にも達すると言われている今、いかに介護をしながら仕事も両立していくかが、私たちの暮らしを左右する課題となっています。
働きながら介護をする人をサポートするための制度づくりが国をあげて進められているのが、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(1991年法律第76号)」です。
一般的に、「育児・介護休業法」と呼ばれるこの法律では、できるだけ現在働いている職場での仕事を続けながら介護をできるよう、さまざまな休業制度が明記されています。
ここではその内容をご紹介していきましょう。
介護休業法とは
国でも「育児・介護休業法」を制定し、仕事と家庭の両立支援策の充実を図っています。
例えば、要介護状態の家族を介護している労働者が、雇用主に対して申請を行うことで対象家族1人につき最大通算93日の介護休業が取得できます。
また、買い物や通院の付き添い、介護などを行うために年間5日まで介護休暇を取得することも定められており、働きながら介護を行うことに対し企業側も労働者の雇用を守るための処置が求められています。
こうした制度を利用し、介護休暇や介護休業を取得し、一時的に介護に集中できる環境をつくることも、仕事と介護を両立するポイントです。
介護休業 | 要介護状態の家族1人につき通算して93日の休業を申請可能 |
---|---|
介護のための 短時間勤務制度 |
希望する労働者に対して企業は以下のいずれかの処置を講じる義務がある ①短時間勤務制度 ②フレックスタイム制度 ③始業・就業時間の繰り上げ・繰り下げ |
介護休暇 | 要介護状態の家族1人につき年間5日まで1日単位で休暇を取得 |
法定時間外労働の 制限 |
1ヵ月24時間、1年で150日以上の時間外労働の禁止 |
深夜業の制限 | 深夜労働の禁止 |
転勤に対する配慮 | 就業場所の変更により介護が困難になる従業員への配慮 |
不利益取扱いの 禁止 |
介護休業などの制度申出や取得を理由とした解雇などの禁止 |
介護休業法では、約3ヵ月の休暇を申請できる「介護休業」と勤務時間の短縮などの処置を申請できる「勤務時間短縮等の処置」があります。2009年の法改正により、新たに年間家族1人につき5日まで短期休暇を申請できる「介護休暇」が創設されました。
「介護休業」とは、要介護状態の家族を介護するために通算で93日間の休業ができる制度です。
対象になる要介護家族1人に対し、1回の介護休業を申請することが可能で、正社員に限らずパートやアルバイトなどの有期契約社員でも一定要件を満たせば利用できます。
介護休業の対象となる家族範囲
介護休業の対象となるのは次の方になります。
- 配偶者
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
ただし、祖父母、兄弟姉妹、孫は、介護休業給付金を受け取る人が同居かつ扶養していることが条件です。
また、常時介護を2週間以上必要な状態にあることも求められています。
介護休業給付金の概要
介護休業給付金は、要介護状態の家族1人に対して介護休業期間中に受け取れる給付金です。
金額は給付前の賃金の67%相当。
2016年8月以前は、給付前の賃金の4割でしたが、2017年1月に施行された改正育児・介護休業法により引き上げられています。
介護休業開始時 | |
---|---|
申請方法 | 事業所を管轄しているハローワークに申請 |
提出書類 | 休業開始時賃金月額証明書 期間雇用者の休業にかかる報告(期間雇用者のみ) |
提出期限 | 介護休業開始時の翌日から10日以内 |
支給申請時 | |
申請書類 | 介護休業給付金支給申請書 |
提出期限 | 介護休業終了日の翌日から起算して2ヵ月を経過する月の末日まで |
介護給付金の算定方法 | |
賃金がない場合 | 介護休業開始時の賃金÷180日×30日×0.67 |
賃金が40%以下 | |
賃金が40%超 80%以下 |
介護休業開始時÷180日×30日×0.67-賃金額 |
賃金が80%%超 | 支給なし |
この制度は法律で定められているため、会社で介護休業に関する規定を作っていない場合でも拒否できません。
3ヵ月間の休暇が取れると、家族の介護に専念し、介護施設探しをしたりすることも。上手く使っていきたい制度です。
介護休業給付金の申請方法
介護休業給付金とは、介護休業を取得することで自動的に受け取れるわけではなく、ハローワークに支給申請をしなければいけません。
実際に介護休業の取得を会社に申請してから、介護休業給付金を受け取るまでの大まかな流れを整理してみましょう。
1.会社へ介護休業を申し出る
介護休業開始日の2週間前までに、介護休業取得を申請。会社が「休業開始時賃金月額証明書」を管轄ハローワークへ提出します。
2.ハローワークに支給申請
申請書類をまとめ、勤務先管轄のハローワークに提出期限までに提出します。
申請したその後の続きは、基本的に会社が行ってくれますが、被保険者本人が自分で申請することもできます。
会社に対応方法などを確認してみましょう。
3.主な必要書類
必要な書類は以下の通りです。
- 介護休業給付金支給申請書
- 介護休業申出書
- 介護対象家族の氏名や間柄などが確認できる書類
4.介護休業開始後に指定口座に給付される
仕事を休む期間、経済的な負担を軽減してくれる介護休業給付金は、介護生活を助けてくれる大切なお金です。
これは介護休業開始後に、指定の口座に振り込まれます。
介護休暇とは

2009年に行われた介護休業法の改正により、仕事と介護の両立支援のために新たに「介護休暇」制度が創設されました。
「介護休暇」とは、要介護状態にある家族1人につき1年間に5日間まで、介護やそのほかの世話をすることを目的の場合に、休暇を取得できる制度です。
これは、多くの人が欠勤や年休消化などをして介護のために時間を確保していたことから創設された短期の休暇制度で、有給休暇のようなイメージで取得を申請することが可能です。
1年間で介護のために休みを取らなければいけないケースのすべてをこの介護休暇で対応することは難しいかもしれません。
それでも、利用できる制度は利用した方が良いですし、介護休暇を申請することで職場の同僚や上司に介護のことを理解してもらう良いチャンス。
積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
勤務時間短縮等の制度

介護休業法では申請した労働者に対して1ヵ月あたり24時間、1年で150時間を超える時間外労働をさせてはいけないということが定められています。
1回の申請で1ヵ月以上、1年以内の期間について申請できるだけでなく、申請回数に上限はないので、まずはこの申請をして勤務時間を調整してみるのもひとつの手です。
同じように、制度の申請をすればフレックスタイム制度や短時間勤務制度なども利用できます。さらに、企業が深夜時残業をさせてはいけない「深夜残業の制限」や「転勤に対する配慮」なども法律で定められているので、こうした制度を積極的に活用することで、ご自身の生活を守っていきましょう。
介護休業法を利用できないケース

介護休業法に基づいて、労働者は介護休業・介護休暇を利用できますが、残念ながらすべての人が取得できるわけではありません。
以下のような方は取得ができないので、注意してください。
- 専業主婦
- 個人事業主
- 入社から1年未満の方
- 93日よりも雇用期間が短い方
- 週2日以下の勤務体系の方
ご自身がこれらの条件をクリアできているかどうかを確認し、介護離職をせずに仕事と介護が両立できる方法を模索してみましょう。
介護離職者の制度利用割合
介護休業制度は、企業が介護と仕事を両立している労働者をサポートする制度ですが、実際は制度利用はそれほど進んでいないのも現状です。
総務省が5年に1度発表している「就業構造基本調査」では、介護をしている労働者のうち、介護休業や介護休暇などの制度を利用したことがある人の割合は、全体のたった15.7%の約37万8,000人と報告されています。
その一方で、過去5年の間に家族の介護や看護を理由に離職した人は48万7,000人と報告されているので、介護休業制度などを利用せずに介護離職に踏み切っている方が多いことが伺えます。
雇用形態 | 全体の 総数 |
制度の 利用なし |
制度の利用あり | |||||
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総数 | 制度の種類 | |||||||
介護休業 | 短時間勤務 | 介護休暇 | その他 | |||||
実数 | 総数 (役員を含む雇用者) |
2,399.3 千人 |
1,998.0 千人 |
377.6 千人 |
75.7 千人 |
56.2 千人 |
55.4 千人 |
196.5 千人 |
割合 | 総数 (役員を含む雇用者) |
100.0% | 83.3% | 15.7% | 3.2% | 3.2% | 2.3% | 8.2% |
正規の職員・従業員 | 100.0% | 82.3% | 16.8% | 3.9% | 1.6% | 3.4% | 8.2% | |
非正規の職員・従業員 | 100.0% | 84.3% | 14.6% | 2.2% | 3.1% | 1.4% | 8.1% |
介護と仕事を両立するための工夫

仕事と在宅介護の両立を目指す場合は、介護サービスを利用したり相談相手を持っておくようにするなどの工夫が必要になります。
在宅介護サービスを利用する
仕事と在宅介護の両立を目指す場合は、介護サービスを上手に利用したいところです。
デイサービスには送迎があり、食事の提供や入浴介助を受けたり、介護を受けるだけでなくレクリエーションを楽しんだりすることができます。また、ショートステイは介護施設に宿泊するので、介護者が息抜きをしたいときにも利用できます。
ボディメカニクスで疲れない体をつくる
介護は重労働のうえ、休みがありません。
どんどん疲れが溜まっていき、「もうどうしようもない」と追い込まれてしまうこともあるのではないでしょうか。
疲労の蓄積を避ける方法のひとつに、「ボディメカニクス」の活用があります。
ボディメカニクスとは、力学の原理を応用して体の負担を軽減する技術のことです。
この技術に基づいた動作であれば、介護時の動作に無理がなくなるほか、消費エネルギーが少なくなり、腰痛などのリスクを回避しやすくなります。
ディメカニクスを行ううえでのポイントは以下の通りです。
- 重心を低くして、被介護者を支える面積を広くするために、両足を広げる
- 相手にできるだけ近づく
- てこの原理を使う
- 被介護者の腕を曲げたり膝をそろえたりして、相手の体をできるだけ小さくまとめる
常に相談できる人を持つ

介護をしていると、外出する機会が減っていつの間にか社会的に孤立していたり、悩みを1人で抱え込んでしまったりすることがあります。
そんなとき、周りに味方となってくれる相談相手がいると、精神的な負担を軽くすることができるでしょう。
相談相手として家族に協力をお願いすることはもちろんですが、社会の中にも相談相手を見つけることができます。
そのひとつが、各市町村に設置されている地域包括支援センターや役所などの介護相談専用の窓口です。
また、通院先の病院に所属するソーシャルワーカーなどの専門職員に相談することもできます。
さらに、要介護者を担当しているケアマネージャーも介護者にとっては貴重な相談相手です。
ケアマネージャーには原則として守秘義務もあり、介護生活の中で最も身近な相談相手の1人にもなり得ます。
それから、同じ悩みを抱えている「介護家族の会」などに参加するのもおすすめです。
介護をしていることを隠す方もいるようですが、そうした姿勢は社会的な孤立を深め、精神的な疲労の蓄積を早めることにもなりかねないので、望ましくない傾向と言えるでしょう。
会社の上司や人事担当者に相談する
上司に自分がおかれている状況について相談し、職場全体で協力してもらえないかお願いしてみましょう。
また、人事の担当者にも話を聞いてもらい、介護と仕事を両立していくためにどのような支援制度を活用できるのか確かめます。その際、きちんとお礼の気持も伝えましょう。
ケアマネージャーと話し合う
- ケアマネージャーに介護離職したくないという自分の意思を伝え、介護サービスを利用するなど仕事と介護が両立できるケアプランを作ってもらうことが大事です。
家族や親族に協力を要請する
仕事と介護の両立が難しくなったときは、その状況を家族や親族に対して率直に話し、「介護の手助けをしてほしい」という明確な意思表示をしましょう。困っていることを伝え、はっきりと手助けをお願いすれば、協力してくれる人もいるはずです。
介護に協力してもらえなくても、資金の協力や親に電話をしたり手紙を出してもらったりなど、なんらかの役割を担ってもらうようにお願いをします。ひとりで抱え込まない体制づくりを心がけましょう。
地域包括支援センターや役所などに相談する
地域包括支援センターは、社会福祉士やケアマネージャー、看護師など介護関連の専門職が常駐する頼りになる相談先です。
各自治体に設置されている相談窓口でも、介護に関する悩みごとの相談を受付ています。
ショートステイなどのレスパイトケア
在宅介護では、介護される本人はもとより、介護者自身の体調にも気をつけなければなりません。なかでも、介護によるストレスを上手く解消することは、先の見えない介護には欠かせません。
ストレス解消の方法として利用したいのが、ショートステイなどの「レスパイトケア」です。レスパイトケアとは、介護者が少しの間だけ介護を休息し、リフレッシュするための家族支援サービスです。
レスパイトケアの開始当初は介護者の病気、事故、冠婚葬祭といったやむを得ない理由でのみ利用可能でした。しかし現在では介護者の気晴らしのための趣味や旅行などにも利用できます。
介護される側もショートステイなどで新たな出会いがあると刺激になり、その後の介護に良い影響を与えることがあります。
リモートワークの活用

リモートワーク(テレワーク)とは、オフィスではなく自宅などで仕事を行う働き方のことです。通勤の必要がなく、1日のスケジュールを柔軟に組むことができるので、介護と仕事の両立を実現しやすい新しい働き方として、注目が集まっています。
リモートワークには大きく分けて2種類あり、ひとつが被雇用者によって実施されている「雇用型」、もうひとつが個人事業者による「自営型」です。
雇用型には、電話やチャットツールなどで連絡を取りながら自宅で勤務する形態やサテライトオフィスなどを使った遠隔勤務の形態があります。
そして「午前中は在宅勤務し、午後は喫茶店など好きな場所で勤務する」など自由に場所を変えながら勤務する形態なども存在しています。
一方、自営型は、フリーランスのライターやエンジニアとして個別に仕事を受注して在宅で働く形態や、さまざまなアンケート調査にモニターとして回答するといった内職に近い形態などが一般的です。
他の人はこちらも質問
介護離職の女性が多いのはなぜ?
女性の介護離職がよくみられる背景には、夫婦間でみた場合、収入の少ない女性が介護を担うケースが多いからです。約8割の女性が介護を理由に離職しています。介護離職をする理由は要介護者の介護度があがり、仕事との両立が難しいためです。
介護職の離職率は何%?
介護職の離職率は2020年度で14.9%です。全産業の離職率は14.2%だったため、やや高いように感じます。しかし、2010年の介護職の離職率17.8から大幅に離職率は低下しています。
介護離職は何が問題?
介護離職をすることで心身の負担は減らせますが、経済的な不安は募るばかりです。収入源がなくなるため、将来の生活への心配は尽きないことがデメリットです。
また介護後に転職をしても離職前の年収を比べると、男性は40%、女性は50%ほど減っています。
介護離職は年間何人?
介護離職率は2011〜2012年だけでも10万人以上です。