人口密度が高く、高齢者も活気あふれるエリア
もともと荒川区は、大工場を擁する工業地帯でしたが、時代の変革に伴って工場は移転。
その跡地が住宅地や公園として整備されており、特に南千住をはじめとした地域では大規模なマンションの建設が相次ぎ、若いファミリー層の移住が多くなっています。
そんな荒川区は、住宅街化してきたという背景から、入居一時金が平均で約500万円、月額利用料が20万円前後という施設もあるなど、江戸川区や東京東部のほかの区よりも若干高めの料金設定になっているようです。
そのぶん医療や看護サービスが充実しており、健康面に不安のある人にとっては、荒川区の有料老人ホームに入居するメリットは大きいでしょう。
荒川区は、1万人当たりの薬局数が第7位、1km当たりの街灯の設置基数が第7位、1km当たりの防火水槽・貯水池等設置数が第4位となっているなど、健康面、安全面、衛生面での住みやすさは23区内でも上位です。
また、交通事故件数も少数となっており、高齢者が安心して健康に暮らすための素地は整っているといえるでしょう。
荒川区の2023年の高齢化率は22.8%と高い
荒川区の人口は、今世紀に入ってからは少しずつ増加している状況です。
2010年に、約30年ぶりに人口20万人突破を達成したことはまだ記憶に新しいところです。
これは、南千住地域や日暮里駅の周辺で実施された、再開発計画の成果だと推測されています。
年代別に調べると、65歳以上の世代が占める割合は徐々に上がり、2023年の時点で、高齢化率22.8%という計算結果が発表されています。
2010年には高齢者人口は4万人を超え、それからわずか5年で4万8,000人を上回った反面、15歳未満の年少者が占める割合は、非常にゆっくりとではあるもののこの20年で確実に低下しています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
このように、区内では少子高齢化が着実に進行していることは疑いのない事実。2025年になると、団塊の世代がすべて後期高齢者の仲間入りをするため、高齢化の影響が一段と顕著になることは間違いないでしょう。
荒川区には、住宅地として使われている地区がたくさんありますが、地域によって高齢者が多い地区と少ない地区に分かれています。
例えば、尾久はもともと人口が密集している地域ですが、高齢者の人口も区内で一番多く、1万3,000人を超える高齢者が暮らしています。
日暮里や南千住も多く、両地域を合わせると高齢者人口は2万人近くに達するほどです。
また、要介護・要支援認定された高齢者も増加。2010年時点では7,725人だった要介護認定者数は、2024年には9,823人にまで増加しました。
介護保険サービス利用者の増加が近年著しい
高齢者がゆっくり増え続けている荒川区では、介護保険サービスの利用者は年々うなぎ登りとなっています。
2024年の介護保険サービス全体の利用者数は9,042人であり、もっとも多いのが居宅サービス利用者数は6,484人で全体の約7割を占めています。また、施設サービス利用者数は1,177人、地域密着型サービスの利用者は1,381人であり、ともに1割程度です。
訪問介護サービスを中心に「おうちでリハビリ」が普及
荒川区では、2015年の4月から介護予防・日常生活支援総合事業を開始しています。
この事業は幅広いサービスを含んでおり、それまで介護保険で利用できた介護予防サービスの一部を受けることも可能です。
そのうえで、新たなサービスを何種類も用意して、区内の高齢者の需要によく対応しています。
現在は、主に訪問型サービスと通所型サービスに分かれています。
訪問型サービスでは、ホームヘルパーが自宅に訪問する「第1号訪問介護」や、理学療法士が身体の機能の維持や向上を指導する「おうちでリハビリ」が中心です。
通所型サービスはたくさんの種類で成り立っており、「第1号通所介護」を用いると、デイサービスセンターで食事や入浴といったサービスを受けられ、運動の指導や栄養改善の指導などを受けることも可能です。
デイサービスセンター以外の場所でも、通所型サービスは随時行われており、区内の各地を会場にして「低栄養予防教室」や「口腔保険教室」が開催されています。
運動と会食がセットになった「おげんきランチ」や、運動・栄養指導・認知症予防など、たくさんの内容が盛り込まれている「まるごと元気アップ教室」は、大変人気があります。
このほかにも、料理が苦手な高齢者を対象とした「簡単料理教室」、地域を代表する運動「荒川ころばん体操」を習うことができる「荒川ころばん体操リーダー養成講座」などが開かれています。
地域で高齢者が円滑に支援を受けらる体制を整備してる
荒川区は、2018年から3年越しで第7期の高齢者プランを実行に移しているところ。このプランは主に5本の柱で構成されています。
1本目の柱は、「高齢者の社会参加の促進と生活支援の推進」です。高齢者が社会活動に参加しながら、生きがいを感じられるように促すことと、在宅生活の充実化を目指します。
2本目の柱は、「介護予防と重症化予防の推進」です。高齢の区民が自主的に介護予防に没頭できるように、次々と施策を行います。
3本目の柱は、「介護サービスの充実」で、要介護・要支援の認定を受けた高齢者が、必要なサービスを受けられず苦しむことがないよう、ケアマネジメントや地域密着型サービスを適正化していきます。
4本目の柱は、「高齢者の住まいの確保」。高齢者が安心して暮らせる居住環境の提供を目指し、民間の賃貸住宅などの整備事業がすでにはじまっています。
5本目の柱は、「在宅医療・介護・福祉の連携推進」です。健康で文化的な生活をあらゆる高齢者が最後まで送れるように、医療・介護・福祉のすべてが密接に協力できる体制づくりを進めます。
すでに区内では、これらのプランを実現するために具体的な活動を開始していますが、日常生活圏域を、5圏域から8圏域に変えたのはその一環。圏域を細分化することで、これまでより短い時間で必要なサービスの提供が可能となり、介護や医療といった、高齢者にとって必要性の高いサービスが、どの地域でも円滑に受けられるようになることが一連のプランの目標です。
荒川区の福祉サービス運営適正化委員会とは?
荒川区では、区民が福祉事業についてどんなことでも躊躇せず相談できるように、窓口をたくさん設置してきました。
介護サービスを必要とする高齢者に対しても、何種類もの相談窓口が開かれ、区役所の高齢者福祉課では、常に電話による相談を受け付けています。
高齢者にとって、入院や専門医による診察が突如として必要となることは日常茶飯事ですが、そのときになって戸惑うことは少なくありませんが、このような場合は、高齢者福祉課の地域包括支援係に相談するのがおすすめです。
また認知症については、荒川区の介護予防事業係では専門医や保健師が相談を受け付けるようにしています。
荒川区の社会福祉協議会も、高齢者向けのために相談窓口を設けています。
相談するだけなら費用はかからず、福祉サービスを利用するためのアドバイスはもちろん、成年後見制度の利用方法の指導や、財産管理サービス、金銭管理サービスなどがこれまでに行われてきました。
都立精神保健福祉センターでは、精神科医や看護師が、希望者の自宅に訪問して相談に応じる取り組みを行っています。その必要があるときは、精神保健福祉センターに問い合わせてみましょう。