23区内でも低額な部類のサービス付き高齢者向け住宅が増加
『男はつらいよ』や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』といった、国民的娯楽作品の舞台になることが多い葛飾区は、東京23区内でもきっての“下町”です。
風情あふれる情景の中に溶け込んでいる高齢者の姿を見かけることも多く、高齢者にとって心が落ち着く地域ということを物語っています。
そんな葛飾区の老人ホーム事情をみてみると、利用料は介護付有料老人ホームに比べて低額のところが多く、23区内で比較しても、平均的に低額のホームが多いようです。
高齢者の姿が風景にしっくりくる葛飾区では、高齢者福祉計画によってさまざまな試みが実施されています。
高齢者の社会参加を促進させるためには、介護施設などでのサポーター活動を行う「介護支援サポーター事業」や、ひきこもりの解消を図る「いきいきふれあいサロン」を設置することで、高齢者が意欲的に活動できるような策がとられています。
同時に、健康で長生きするための「シルバーエンジョイスポーツ」「うんどう教室事業」といった、身体を動かす習慣作りの支援もあります。
老人ホームの数も整備され始めており、高齢者が安心して健康に過ごしていくための素地は整っているといえるでしょう。
葛飾区の2023年の高齢化率は24.5%
葛飾区の人口は、2010年の時点で44万2,586人でしたが、2023年には46万4,175人に。
葛飾区の人口は微増が続いていましたが、今後はゆるやかな減少傾向に向かうものと推測されています。
その一方で、高齢化率は今後も増加していく見込み。
2010年時点の高齢化率は22.0%でしたが、2023年の段階では24.6%に上がりました。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年に入ると、高齢化率が25%に達することは避けられない見通しです。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
区内の後期高齢者は、2023年の調査では13.8%でした。
この割合は、2025年になると14.0%に達するものと思われます。
その背景にあるのは、第一次ベビーブームの世代が、前期高齢者から後期高齢者に変わることが挙げられます。
なお、15歳以上64歳までの生産年齢人口の割合は、今後少しずつ低下していく見通しで、15歳未満の年少人口については、今後大きな変化は起こらないと考えられています。
いずれにせよ、葛飾区は確実に増えていく後期高齢者のために、目下介護関係の政策に力を入れています。
今後を見越した施策に大いに期待したいところです。
介護予防サービスを77.9%の高齢者が利用している
2024年の調査では、介護サービスや介護予防サービスを約2割の高齢者が利用しています。
介護サービスを利用しているのは2万2,668人であり、そのうち居宅サービスを利用しているのが1万5,909人。施設サービス利用者が2,899人、地域密着型サービス利用者が3,860人でした。
葛飾区では認知症対策の強化を行っている
葛飾区は、2015年に第6期介護保険事業計画を策定しました。
この計画では、介護予防サービスについて10年後を見据えながらサービスの拡大を謳っています。
葛飾区においても、ほかの地域と同じく2025年になると後期高齢者や認知症高齢者、さらに自宅で療養を受けながら暮らし続けることを求める要介護者などがかなり増加する見込みです。
そこで、定期巡回・随時対応型訪問介護看護といった、優先順位が高いサービスを積極的に展開していくことを、資料を発行して明らかにしています。
葛飾区では、地域包括ケアシステムを追求するにあたって、7つの日常生活圏域の中から1ヵ所をモデル地域に指定して、具体的な取り組みを進めています。
さまざまな機関と連携しながら、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援といった5つのサービスを一元的に提供する体制づくりを目指しているのです。
特に力を入れているのは、在宅介護サービスと在宅医療サービスの連携です。
介護と医療は、基本的には別々に分かれており、利用者も別々に申請しなければ受けられません。
しかし、地域密着型のケアシステムを実現するために、葛飾区ではこの2つが緊密に連携することが不可欠だという結論に至りました。
今後は、自宅や介護施設を離れられない区内在住の高齢者にとって、医療と介護はいっそう身近なものに変わっていくことでしょう。
また、認知症対策の強化も、葛飾区の地域包括ケアシステムでは大きな目標となっています。
高齢者のニーズに合わせて介護予防サービスを展開
葛飾区で実施されている介護予防・日常生活支援総合事業は、2016年4月から開始されており、このサービスはすでに区内各地で成果を上げています。
この介護予防事業の最大の特徴は、要支援高齢者のニーズに合わせてサービスを展開していることでしょう。
区内の高齢者は、訪問型サービス・通所型サービス・介護予防ケアマネジメントの3種類のサービスを受けることが可能です。
葛飾区では独特の基準を設定することで、介護予防サービスを多くの高齢者が受けられるように配慮してきました。
各高齢者にとって大事なことは、自身の状態にぴったりと合った介護予防計画を手に入れることでしょう。
そのために活躍するのが、介護予防ケアマネジメントです。
このサービスを利用すると、高齢者総合相談センターや居宅介護支援事業所に所属するベテランのケアマネージャーに具体的なケアプランの作成を依頼できます。
必要がある場合は、早めに最寄りの施設を探して担当者に相談するとよいでしょう。
必要があれば調査員が自宅に訪問して調査を行うため、外出が難しい場合でも問題はありません。
訪問型サービスを受ける場合は、家事をはじめとした日常生活の支援を受けることが可能。
通所型サービスを受ける場合は、運動機能や口腔機能の訓練を受けることが可能です。
また、調査員が継続的に利用者の状況を確認して、計画の適正な見直しを随時行います。
そのため、必要なサービスを常に受けられるようになっているのです。
葛飾区の福祉サービスへの苦情や不服の受付窓口は?
葛飾区では、区内の高齢者が常に申し分なく介護サービスを受けられるように、苦情調整委員制度を設けています。
区が関与する介護サービスに、何らかの不満や落ち度があると感じたときは、我慢せずに苦情を申立ててかまいません。
調整委員に選抜されているのは、弁護士や大学教授といった法律や介護制度に精通している専門家ばかり。
調整委員はあくまでも客観的な視点から苦情の受付や実態の調査を行います。
調査を経て介護事業者側に問題点が見つかれば、早急にその業者対して是正を勧告します。
制度に欠陥がある場合もありますが、そのときは制度の改善を求める手続きが行われる可能性が高いです。
いずれにしても、苦情が闇に葬られることはありません。
申立ての結果は必ず本人に報告されるので、安心です。
現在は、毎週金曜日が相談日となっています。
時間帯は、午後1時30分から2時間程度。
利用したい場合は、前日までに福祉管理課の企画係に電話などで予約を入れましょう。
相談場所は、区役所の2階にある福祉総合窓口相談室です。
なお当日は、書面での申立てが必要です。
ただし、書面の作成が困難な場合は口頭での申立てが認められます。
その必要がある場合は、予約を入れる際に相談することが大切です。
そのほか、本人が区役所に出向けない場合でも、申立てができるようになっています。
その場合は、家族・同居者・民生委員に代役をお願いしましょう。