東京23区内では入居一時金・月額利用料とも低額な傾向に
東京23区の北部には埼玉県と接する区がいくつかありますが、北区はそのなかでもほぼ中央に位置する区です。
そんなロケーションの影響から、山手線圏内など都内中心部へ通勤する住民が多いエリアのひとつです。
北区の王子界隈は、行政の中心部であることもあって交通インフラが充実しており、非常に便利な地域です。
そんな北区では、施設の増設や充実化を含め、あらゆる方面から高齢者福祉対策が進められています。
特別養護老人ホームなどにおいて、医療行為が必要な高齢者の受け入れが徐々に進められていることもその一環です。
北区では、グループホームや老人保健施設など、行政と縁が深い施設の多さが目立ちます。
しかし有料老人ホームなど、民間主導の施設も増えつつあり、入居一時金が数百万円、月額使用料が30万円を超える豪勢な施設がある一方、月額使用料10万円台など手頃な施設もオープンしています。
2023年時点で4人に1人が高齢者に
北区は東京都の23区のひとつで、文京区や埼玉県川口市などの市区と隣接する街です。
先述した通り交通の便が非常に良く、電車は「湘南新宿ライン」「京浜東北線」「宇都宮線(東北本線)」「埼京線(赤羽線)」「山手線」「東京メトロ」などが乗り入れています。
また、「東京北医療センター」や「赤羽中央総合病院」「王子生協病院」など、大きな医療機関があり安心できる環境です。
このような住みやすさもあり、北区では年々人口が微増しています。
介護保険制度が始まった2000年、北区の総人口は31万9,484人でしたが、2023年には総人口31万7,227人と少々減っていますが、将来推計では概ね横ばい状態が続くと予測されています。
一方、65歳以上の高齢者数は増えています。
2000年には高齢者数6万1,469人、高齢化率は19.2%でしたが、2012年には高齢者数7万8,924人、高齢化率24.9%まで上昇。ほぼ4人に1人は高齢者となりました。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2012年以降も高齢者は緩やかに増え続けていますが、0歳~14歳までの年少人口は減少しています。
高齢者を年齢別にみると、2000年の後期高齢者は2万4,639人でしたが、2020年には4万7,314人にまで増加。
高齢者全体に対して後期高齢者の割合が53%を超えています。
居宅サービス利用率が高い傾向にある
2024年の調査によると、北区の要支援・要介護認定者数は1万\9,636人で、この数はその後も増え続けています。
北区が介護保険サービスの利用率を調べた結果、「居宅サービス利用率」は74.7%。
「施設サービス利用率」は14.2%、「地域密着型サービス利用率」は11.1%です。
炊事や掃除、買い物などの家事代行や、排泄や食事の介助が受けられる「訪問介護」、自宅で本格的なリハビリができる「訪問リハビリテーション」などの居宅サービスは需要が高く、北区はさらなるサービスの質の向上やサービス従事者の育成・増員に努めています。
北区では、介護が必要になっても「家族の介護や、介護保険サービスを利用しながらでも自宅で暮らしたい」と考えている高齢者が多いため、居宅サービスだけでなく、家から通える「デイサービス」や「通所リハビリテーション」「ショートステイなどの通所型サービス」も需要が高いです。
しかし、一人暮らしの高齢者のなかには「介護が必要になった際は、高齢者向けの住宅などに移り、介護保険サービスを受けたい」と希望している人も比較的多く、北区は「特別養護老人ホーム」や「グループホーム」など施設の充実も急いでいます。
北区では転倒予防体操「さくら体操」を実施
北区が実施した高齢者向けアンケートによると、要介護認定を「受けていない」と答えた人が比較的多く、北区では介護的なサポートをまだ必要としない、元気な高齢者が多いことがわかっています。
今後も要介護の高齢者が増えないよう、北区全体で介護予防に取り組んでいます。
健康づくりや介護予防活動を推進するために「33万人健康づくり大作戦」と銘打ち、健康にまつわるさまざまな講座や教室を実施。
健康講座が受けられる「健康フェスティバル」や、楽しく歩ける「ウォーキング大会」などのイベントも開催しています。
シニア元気応援事業では、「70歳からのスマートウォーキング」や「元気な高齢者のための芝居を見る会」を実施し、高齢者の外出や社会参加を促しています。
また、運動教室「ゆったリズム」、筋力アップ体操教室、転倒予防体操「さくら体操」を実施。
区民が仲間と一緒に健康づくりに取り組む「健康づくり応援団」を支援しています。
北区の死因別死亡順位を見てみると、「悪性新生物(がん)」「脳血管疾患」「心疾患」が多いのが現状です。
死因の多くが、いわゆる生活習慣病のため、メタボリックシンドローム予防・生活習慣病予防教室などを実施し、予防に力を入れています。
生活習慣病予防や介護予防のためには食事が重要とし、「高齢者ふれあい食事会」や食育に関する講演会、栄養指導、「健康づくり推進店」での「シニア元気メニュー」の提供などを支援しています。
認知症の早期診断・早期対応ができる仕組みを構築中
2011年に「介護サービスの基盤強化のための、介護保険法等の一部を改正する法律」が公布され、全国的に医療や介護、介護予防、住まい、生活の支援といった福祉サービスを包括的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が推進されるようになりました。
高齢者の増加にともない、介護側の家族の負担の増加や、十分な在宅医療が受けられない高齢者の増加、一人暮らし高齢者など「高齢者だけの世帯」の増加、認知症高齢者の増加などの問題が出ており、北区は地域全体で高齢者を支える環境づくりに取り組んでいます。
特に、認知症高齢者は増加の一途をたどっており、2013年の調査によると、認知症高齢者は高齢者人口の約13.9%に達していました。
北区は認知症予防や認知症の早期診断・早期対応ができる仕組みづくり、認知症高齢者とその家族へのフォローなどを推進しています。
また、北区は日常生活圏域を赤羽圏域・王子圏域・滝野川圏域の3圏域に設定しており、圏域ごとにサービスの提供体制を整えています。
高齢者人口や高齢化率の推移を日常生活圏域ごとにみると、どの圏域も高齢者数は増加し、高齢化率が上昇中です。
なかでも赤羽地区、王子地区で高齢化率が上昇すると予測されているため、北区は圏域別の高齢化対策を実施しています。
北区のアンケート調査によると、住まいが「持ち家(一戸建て)がある」と答えた人は、高齢者全体の51.7%でした。
老朽化する自宅の維持やバリアフリー化などが課題となっており、北区は「住宅改修」などの支援を行い暮らしやすい住まいの確保を支援しています。
さらに、介護と医療が同時に受けられるように、相互連携を強化。そのほかにも防災・防犯対策、交通安全対策など、さまざまな福祉サービスを実施し高齢者の生活を支えています。
北区の福祉サービス運営適正化委員会とは?
北区が実施したアンケート調査によると、「今後北区が力を入れていくべき高齢者施策は?」という質問に、「介護について相談しやすい窓口の充実や情報提供」と答えた人が全体の50.6%でした。
その対策のため、北区では高齢者とその家族が気軽に相談できる窓口を設置しています。
北区の地域包括支援センターである「高齢者あんしんセンター」では、高齢者と家族や親族、そして地域住民の悩み相談などを受け付けています。
介護や福祉、人間関係のトラブル、金銭的なトラブルなど、あらゆる相談に乗ってくれるのが魅力です。
また、健康福祉部の高齢福祉課「高齢相談係」が実施している「高齢者・介護者のこころの相談室」では、高齢者とその家族だけでなく、介護に関わるスタッフの悩みごとに対応。
完全予約制で日時も決まっていますが、こころの専門家である臨床心理士が無料で話を聞き、専門的なアドバイスをします。
さらに、社会福祉協議会の福祉サービス苦情調整委員による福祉サービスの苦情受付もあり、「介護施設に入居しているけれど、職員さんがいじめる…でも関係が悪化したら困るから誰にもいえない」といった苦情が申請できます。
福祉サービス苦情調整委員は、弁護士や医師といった専門家が担当しており、問題解決のために公平に動いてくれます。
権利擁護センターに電話すれば、相談内容などに合わせて面談や電話相談などを実施してもらえます。