適度な刺激にあふれた高齢者も楽しめる街
東京都内の市町村では最大の人口数を誇り、政令指定都市を除くと鹿児島市、船橋市に次ぎ全国第3位の人口数となる八王子市。
なかでも多いのが若者層で、20以上の大学など(大学・短期大学・高専)があり、約11万人もの学生が学んでいることから、全国有数の学園都市としてその名を馳せています。
一方で、都心への通勤もJR中央線や京王線で1本と便利なことから、ベッドタウンとしての顔も持っています。
そのため、若者が多い割には高齢化率が高く、2011年時点で、約55万6,000人の人口に占める高齢者の割合は21.1%。
それまでの5年間で、2万人以上も高齢者が増加しており、今後もこの傾向は続くとみられています。
高齢者の多さに比例して、要支援・要介護認定者数も多くなっています。
当然老人ホームの数も多く、特に特別養護老人ホームが多く建設されています。
2011年時点では、特別養護老人ホームの利用者数は約1万9,000人でしたが、2014年には約2万5,000人まで増加。
現状では入居待ちをしている高齢者も多くいますが、環境の整備は着々と進んでいます。
今後増設されることを見込んで、早めに申し込みを行なっておくと良いでしょう。
有料老人ホームのなかでは、介護付有料老人ホームが多くなっています。
また、サービス付き高齢者向け住宅では、医療・看護ケアに注力している施設もあり、健康面に不安のある高齢者が安心して生活できる環境が整っています。
費用面では23区よりは低額のところもありますが、東京都の他の市に比べると、全体的に高めの相場となっているようです。
八王子市の地価がそれほど安くないという理由も考えられますが、入居一時金が1,000万円前後、月額利用料が15万円以上など、それなりの額が必要なようです。
八王子の駅前には、JR東日本最大級の八王子駅北口駅ビルや京王八王子駅ビル、『ヨドバシカメラ八王子店』『ドン・キホーテ八王子駅前店』『ダイエー八王子店』といった大規模な商業施設が軒を連ねています。
そのため、生活に困ることはありませんし、適度な刺激でメリハリのある暮らしを演出してくれるはずです。
また、市内は路線バスが網の目のように張り巡らされているため、高齢者自身の移動が便利というだけでなく、家族が面会に行く場合も便利です。
注意点としては、八王子市は標高がやや高く、内陸部の盆地のため、寒暖の差が激しい傾向があります。
冬場に都心は雨でも、八王子市では雪になったり、また夏場には都心より2~3度気温が高くなったりすることもしばしば。
本人の体調管理はもちろん、そういった環境に配慮した老人ホームを選ぶと良さそうです。
八王子市の高齢化率は2023年には27.6%
八王子市では、0歳~14歳までの年少人口と15歳~64歳までの生産年齢人口は緩やかに減りつつありますが、65歳以上の高齢者人口は増加の一途をたどっています。
住民基本台帳によると、2010年時点の高齢化率は20.8%。2015年に25.0%、2020年に27.1%、2023年に27.6%と、着実に上昇しています。
2023年の調査では、高齢化率の全国平均は29.1%なので、八王子市の高齢化率は全国平均を下回っているものの、4人に1人以上が高齢者という状況です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
さらに、高齢者数は2010年~2023年の13年間で3万5,610人増えています。
認知症高齢者も増えており、2013年には1万1,311人でしたが、2020年には1万4,445人まで増加。
八王子市は認知症予防や認知症対策に力を入れています。
また、市内を日常生活圏域に分けると、西部の高齢化率が最も高く、東部は低い傾向にあります。
地域によって高齢化率の偏りが大きいため、八王子市は地域に合わせた介護支援サービスを行う必要があります。
介護サービスを利用する高齢者は年々増加中
八王子市の介護保険サービス利用者は、年々増加しています。
要支援・要介護認定者の数は、2010年には1万8,352人でしたが、2024年には3万1,065人まで増加。
24年間で1万2,713人増えています。
介護保険サービスは、居宅サービスと施設サービス、そして地域密着型サービスに分かれますが、どのサービスの利用者も増加しています。
2010年には1万1,413人だった利用者数は、2015年には1万9,800人、2024年には2万9,000人にまで増加。14年間で1万5,000人近く増加しています。
介護予防支援など、介護予防系サービスも利用が多くなっており、八王子市は利用者の増加に対応するべく、訪問介護や訪問看護などを行う介護保険サービス事業所やショートステイ、グループホーム、特別養護老人ホームなどの施設を増設中です。
八王子市は、介護保険サービスを提供している指定介護事業者の実地検査を実施。
指導監督を行い、介護保険サービスの質の維持に力を入れています。
さらに、介護予防・日常生活支援総合事業などの地域支援事業の支援事業費を増やし、内容も徐々に充実させています。
筋トレ体操「八王子版介護予防体操」を開催している
八王子市では「介護予防・日常生活支援総合事業」を導入し、高齢者の自立した生活を維持し、介護度が上がらないようサポートしています。
高齢者福祉課や高齢者あんしん相談センターが中心となり、健康維持に関する相談に対応しています。
65歳以上の人なら誰でも利用できる「一般介護予防事業」と、介護保険の要支援認定を受けた人や、事業対象者と認定された人が利用できる「介護予防・生活支援サービス事業」に分類しており、サービス内容も多彩です。
椅子を使って筋トレなどができる「八王子版介護予防体操」や、転倒予防や認知症予防、閉じこもり予防のための「介護予防教室」など、福祉部高齢者いきいき課が中心となって開催しており、講座内でレクリエーションなども行っています。
また、訪問リハビリや介護予防訪問リハビリにより、自宅で生活する高齢者の健康維持を支援。
デイサービスなどの通所サービスでも、楽しく体が動かせる体操などを実施しています。
老人ホームに入居せず自宅で暮らせるよう、NPOやボランティア団体が中心となり、掃除や洗濯、ゴミ出しなどのお手伝いを行い、自宅での自立した生活を支援。
高齢者を介護している家族を対象とした「家族介護者教室」も行い、介護や病気への知識を深め、介護保険サービスなどの利用方法を普及させています。
さらに、高齢者の生きがいづくりを重視し、高齢者の外出を促すために高齢者サロンやシニア元気塾、シニアクラブなどの活動を支援。
八王子市シルバー人材センターの整備など、就労支援も行っています。
地域包括ケアシステムでは認知症対策も実施
八王子市では、高齢者が暮らしやすい環境づくりの一環として、地域包括ケアシステムを構築中です。
実地調査による高齢者数の把握や、高齢化率の推計を行い、現実的なケアが行き届くよう配慮しています。
長期的な計画を立て、医療機関や介護サービス事業者、ボランティア団体などと連携し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、介護予防・日常生活支援総合事業、地域密着型サービスなどを推進中です。
年々増加している認知症高齢者のため、新オレンジプランなどの認知症対策を実施。
認知症見守りネット―ワークを構築し、認知症高齢者だけでなく、その家族や介護者の相談にも対応しています。
また、金銭管理ができなくなった高齢者に代わり、金銭管理を行うサービスも実施したりと、さまざまな形で高齢者とその家族を支えています。
高齢者の自立支援・重度化防止を目的とした、健康維持サポートも行っており、健康講座や体操教室を実施しています。
一方で、高齢者の家族や地域住民の介護力を高めるため、家族介護者教室なども行い、地域全体で高齢者を見守る環境づくりに励んでいます。
高齢者向け医療にも目を向けており、在宅療養者への医療や看護、介護サービスの実施事業も充実。
予防接種の普及や、看取りや終末期ケアを普及させています。
また、「高齢者あんしん相談センター」の機能を向上させ、使いやすくしていますし、高齢者の生きがいづくりのため「ふれあい・いきいきサロン」やシニアクラブの活動も支援。
さらに、就労支援、高齢者ボランティア活動の支援などを通し、高齢者がコミュニケーションを楽しめる場所を増やしています。
八王子市の福祉サービス運営適正化委員会とは?
八王子市では高齢者の悩みを解決するべく、さまざまな相談窓口を設置しています。
高齢者福祉課は、高齢者向け福祉サービスについての相談や、介護保険と高齢者生活支援事業についての説明を担当。
また、介護保険課や高齢福祉課が中心となり、介護予防・日常生活支援総合事業に関する説明会を開催し、介護予防に関する知識を普及させ悩みを解消しています。
大横福祉センター内にある「ハローワーク八王子・八王子しごと情報館」は、「仕事をしたい」という高齢者のために就労相談を行い、植木の手入れ、施設や駐車場の管理などの仕事を提供しており、60歳以上の人なら誰でも利用可能です。
近年、東京都が実施している「東京都福祉サービス第三者評価」を八王子市も導入。
これは、サービス利用者でもサービス提供者でもない第三者が、サービス状況を聞いて冷静に評価を行うシステムです。
パソコンとインターネットを使い、利用者が直接入力するシステムなので、評価機関に利用者の感想が直接届きます。
シルバーピア中野などが運営する、生活相談室主催の「八王子市シルバー見守り相談室」では、65歳以上の一人暮らしの人、高齢者のみの世帯、日中一人で過ごしている高齢者を対象に、生活相談などを実施。
緊急通報システムを活用した緊急時の対応なども行っています。
高齢者あんしん相談センターが主催している「八王子市シルバーふらっと相談室」も、「八王子市シルバー見守り相談室」同様、高齢者の全般的な悩みに対応しています。
さまざまな相談窓口がありますが、いずれも無料で利用できるのが魅力です。