東京都内では費用が比較的低額。過ごしやすさも随一
中野区は、JR、東京メトロ丸ノ内線・東西線、西武新宿線など、複数の路線が乗り入れている便利な場所。
中野区内の駅からは、新宿駅までだいたい5~10分ほどで行けるアクセスの良さ。
都心に近い割には住宅街が広がっており、人口密度が高い区としても有名です。
そんな中野区の有料老人ホームの費用は、月額利用料が16万円前後という施設もあり、世田谷区や港区などの高級住宅街を擁する区よりは低額になる傾向があります。
グループホームなどはさらに低価格のため、それほど大きな負担になることはないでしょう。
中野区は住宅街が多く、そのために商店街やスーパーなどが充実しており、日常生活に困ることはほとんどありません。
区の中心部には中野サンプラザや中野ブロードウェイなど大規模な商業施設があり、気分転換も楽しめる環境です。
さらに、中野駅にはバスも通っており、移動が便利。そのほとんどがノンステップ型になっているなど、高齢者に優しい配慮がなされています。
中野区の高齢化率は減少傾向
中野区は東京都23区のひとつで、大きな繁華街を有する新宿区や渋谷区、豊島区などと隣接している便利な街です。
鉄道だけでなく、中野区から池袋駅や渋谷駅までのバス路線も確立されており、交通手段が豊富なのが特徴です。
こういった立地の良さや住みやすさから、中野区は高齢者が減ると予測されている全国でも珍しい区です。
全国的には、人口も子どもの数も減少する一方、高齢化率は上昇していますが、中野区では総人口、子どもの数ともに増加。
2015年以降、高齢化率は横ばいであり、2023年の高齢化率は20.1%です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
さらに、2018年からは高齢者が減り始め、近い将来には高齢化率が20%を下回ると予測されています。
団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年以降も、高齢化率は下がる傾向が続くとみられており、中野区はしばらく若者の多い街となりそうです。
しかし中野区では、それでも着実に数が増えている高齢者のため、「健康福祉都市なかの」というスローガンのもと高齢者が住みやすい街づくりを進めています。
今後は要支援・要介護認定者が微増していく
中野区は、区内の高齢化率が下がるのに対し、要支援・要介護認定者は微増していくと予測しています。
中野区の要支援・要介護認定者数は2010年には1万830人でしたが、2024年には1万4,036人にまで増加。
将来推計では、2025年には1万3,559人、2027年には1万3,708人と、緩やかですが増加してゆく見通しとなっています。
介護保険サービスのなかでも、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなどの「居宅サービス」は、自宅にいながら生活や健康のサポートとして活用している人に向けたサービス。
特に訪問介護は、炊事や洗濯、買物代行などの家事や、排泄など身体介助が頼めるため需要が高く、人気があります。
訪問介護などの自宅でのサービスと、デイサービスや通所型リハビリテーションなどの通所タイプのサービス、ショートステイ(短期入所)を組み合わせて利用している人が多くなっています。
中野区は、今後も居宅サービスの利用者が増えると予測し、全体のサービス量を増やすことも視野に入れています。
また、介護度別に施設サービスの利用状況を見ると、介護度が上がるほどグループホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設(老健)などの施設に入居する人が多いことがわかります。
中野区では、介護施設の増設などを行うことで「施設サービス」も徐々に充実させています。
さらに、認知症対応型デイサービスや定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護などが利用できる「地域密着型サービス」も利用者が増えており、今後も需要が高まると予測しています。
「中野区ウォーキングマップ」を配布し高齢者の運動を推奨
中野区では、要介護者や認知症高齢者の増加を食い止めるべく、健康への理解を深めるための取り組みを実施しています。
2017年に実施した高齢者向けのアンケートによると、「健康である」または「どちらかといえば健康である」と答えた人が79.2%となっており、中野区では健康を実感している高齢者が多いことがわかっています。
しかし、要支援・要介護認定者は緩やかに増え続けているのが現状。介護認定調査対象者のなかで、認知症が疑われる高齢者の割合は微減傾向にあるものの、2017年の調では6,396人もいることがわかりました。
中野区では、要介護や認知症の要因となっている生活習慣病などの予防にも力を入れており、健康維持につながる栄養講座、健康や体力づくりのための運動教室を開催し、高齢者向けの予防接種を行い、健康維持をサポートしています。
2016年の調査では、中野区の死亡数は約2,600人。そのなかでも、悪性新生物(癌)が死因第1位となっているため、胃がん検診や大腸がん検診などの各種がん検診を実施し、受診率アップのための取り組みを行っています。
また、中野区歌である「中野区 未来カレンダー Forever Nakano」を歌いながら運動する「なかの元気アップ体操」は、介護予防や認知症予防、筋力アップのための体操。歌いながら楽しく体が動かせるのが魅力です。
さらに、「中野区ウォーキングマップ」を配布し、安全にウォーキングできるルートを広め、散歩を楽しんでもらっています。
「健康福祉都市なかの」を目指して地域包括ケアを実践中
中野区では、国が定めた老人福祉法や健康増進法、社会福祉法などに基づいた地域包括ケアシステムを構築し、「健康福祉都市なかの」を創ろうとしています。
高齢者だけでなく、子どもや障がいを持つ人々も含め、全ての区民が最期まで幸せに暮らせるようさまざまな策を講じているのです。
中野区の世帯数を詳しく見ると、高齢者の一人暮らしや高齢夫婦世帯など、高齢者だけの世帯が増加しています。
2020年の中野区の総世帯数は20万8,093世帯で、高齢者だけの世帯数は3万1,537世帯。そのなかで一人暮らしの高齢者世帯数は2万419世帯です。
中野区では、高齢者世帯からの生活サポートの需要が高まっていることを受け、介護、介護予防、住まいの確保、健康づくり、見守り、生活支援、医療を柱とし、さまざまな分野から高齢者を支援しています。
また、在宅生活支援の充実に加え、在宅医療と介護の連携体制の推進、認知症高齢者とその家族への支援なども重視しています。
さらに、地域での支え合いや交流も地域包括ケアシステムの要であるとして、スポーツコミュニティプラザや友愛クラブといった高齢者向けコミュニティを支援し、高齢者の社会参加を促進。見守り支え合いネットワークを構築しようとしています。
このように、中野区は多方面からのアプローチを行い、高齢者を包括的にケアしています。
中野区の福祉サービス運営適正化委員会とは?
中野区では、多様化する高齢者の相談や苦情に対応しています。
基本的に、地域包括支援センターが高齢者保健福祉サービスの相談窓口となっており、介護や高齢者福祉、生活や金銭、人間関係など、あらゆる相談が可能です。
高齢者だけでなく、その家族や親族、地域住民も気軽に相談できるという点も魅力でしょう。
中野区福祉サービス苦情調整委員「中野区福祉オンブズマン」には、福祉サービスなどへの苦情を受け付けています。
例えば、ヘルパー派遣事業所などへの苦情を提出すると、「中野区福祉オンブズマン」が第3者として介入し、公平に問題解決に向けてアドバイスや調整をしてくれる仕組みです。
「中野区福祉オンブズマン」は、弁護士や大学教授などで構成されており、臨時福祉給付金や生活保護者への費用支給などの金銭的な悩み相談も可能です。
中野区役所で、週1回の申立日を設け相談に乗っているほか、電話相談も受け付けています。
また、「スマイルなかの」にある中野区成年後見支援センターでは、成年後見制度を実施。
認知症などで金銭管理や福祉サービスへの申し込みができない人を対象に、管理や手続き代行を行っているので、手続きが進まずに悩んでいる人は、相談してみると良いでしょう。
さらに消費者センターでは、振り込め詐欺などの高齢者の消費や金銭に関する相談に対応しており、「こころといのちの相談窓口」では、精神的に悩んでいる事柄についても打ち明けられます。
中野区では、生活・消費生活・仕事に関する相談、医療・高齢者に関する相談、犯罪・遺族支援相談など、多種多様な窓口を設置しており、法律などの高度な相談も可能です。